第1章 Red Hat Enterprise Linux 10.2 の概要


Red Hat Enterprise Linux 10.2 におけるコアコンポーネントの主な変更点と、サポート対象のインプレースアップグレードパスついて説明します。

1.1. RHEL 10.2 における主な変更点

1.1.1. セキュリティー

Red Hat Enterprise Linux 10.2 のセキュリティーに関する最も注目すべき変更点について説明します。

keylime-agent パッケージが、アップストリームバージョン 0.2.9 にリベースされました。これには、新しいエージェント駆動型プッシュアテステーションモデル、拡張されたハードウェア暗号化、柔軟な TPM RSA サポート、および ECC 署名済み TLS 証明書の使用が含まれています。

clevis-pin-trustee パッケージは、新しい Clevis pin trustee を提供します。これにより、Trustee Key Broker Service (KBS) によるリモートアテステーションを利用して、LUKS 暗号化ボリュームの自動暗号化および復号が可能になります。

fapolicyd パッケージはアップストリームバージョン 1.4.3 にリベースされ、ルールをフィルタリングできるようになりました。

RHEL 10.2 では、capnproto パッケージが導入されました。このパッケージは、従来のデータエンコードおよびデコードに伴うオーバーヘッドを排除するために、ゼロコピーシリアライゼーションを使用した高性能なデータ交換およびリモートプロシージャーコール (RPC) システムを提供します。

今回の openssh パッケージのリリースでは、FIPS モードにおいて、National Institute of Standards and Technology (NIST) によって標準化された楕円曲線と組み合わせた ML-KEM (Module-Lattice-Based Key-Encapsulation Mechanism) 耐量子計算機 (PQ) 鍵交換のサポートが導入されました。

また、libssh ライブラリーは、耐量子 ML-KEM 標準と従来の Elliptic-curve Diffie-Hellman (ECDH) 鍵交換スキームに基づいた、耐量子計算機従来型 (PQ/T) ハイブリッド鍵交換方式のサポートも導入しています。

p11-kit パッケージがアップストリームバージョン 0.26.1 にアップグレードされ、PKCS #11 ヘッダーにおける耐量子計算機暗号 (PQC) 定義のサポートが提供されるようになりました。

podman-sequoia ライブラリーは、複合耐量子計算機署名をサポートしています。

詳細は、新機能 - セキュリティー を参照してください。

1.1.2. カーネル

Red Hat Enterprise Linux 10.2 における最も注目すべきカーネル更新について説明します。

  • RHEL 10 では、カーネルライブパッチのサポートが利用可能になりました。
  • 新しい Intel Core、Uncore、C-state、およびパッケージのパフォーマンスイベントに対応したほか、perf の機能追加により、カーネルのオブザーバビリティーを拡張しました。
  • perf を最新のアップストリームバージョンに更新し、debuginfod サポートを有効にすることで、perf および BPF ツールをよりアップストリームに近い構成に整合させました。
  • 最新の Intel プラットフォームの uncorecore パフォーマンスカウンターを拡張し、CPU とメモリーの分析を向上させるために AMD IBS の負荷レイテンシーフィルタリングを追加しました。
  • Intel EDAC、Intel QAT、および Intel/AMD アクセラレーターと暗号化デバイスのドライバー ID とデバイス ID を追加または更新し、ハードウェアの対応状況を改善しました。
  • rtla のしきい値オーバーフローアクションを拡張し、cpupower Python バインディングを追加して、rteval を更新することにより、リアルタイム分析とチューニングを改善しました。
  • カーネルと kdump ユーティリティーの両方において、crash をリベースし、LUKS 対応の kdump 処理を強化することで、カーネルのデバッグとクラッシュ分析を更新しました。

1.1.3. 動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー

Red Hat Enterprise Linux 10.2 における動的プログラミング言語、Web サーバー、データベースサーバーに関する最も注目すべき変更点について説明します。

以下の Application Streams の新しいバージョンが利用可能になりました。

  • Node.js 24

以下の Web サーバーの最新バージョンが利用可能になりました。

  • Apache HTTP Server 2.4.63

以下のデータベースサーバーの最新バージョンが利用可能になりました。

  • MariaDB 11.8

詳細は、新機能 - 動的プログラミング言語、Web サーバー、およびデータベースサーバー を参照してください。

1.1.4. コンパイラーおよび開発ツール

Red Hat Enterprise Linux 10.2 におけるコンパイラーと開発ツールの最も注目すべき変更点について説明します。

システムツールチェーン

RHEL 10.2 では、以下のシステムツールチェーンコンポーネントが利用可能です。

  • GCC 14.3
  • glibc 2.39
  • Annobin 13.02
  • Binutils 2.41
パフォーマンスツールおよびデバッガー

RHEL 10.2 では、以下のパフォーマンスツールとデバッガーが利用可能です。

  • GDB 16.3
  • Valgrind 3.26.0
  • SystemTap 5.4
  • Dyninst 13.0.0
  • elfutils 0.194
  • libabigail 2.9
パフォーマンス監視ツール

RHEL 10.2 では、以下のパフォーマンス監視ツールが利用可能です。

  • PCP 6.3.7
  • Grafana 10.2.6
.NET 10.0 が RHEL で利用可能になりました

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、自動メモリー管理と最新のプログラミング言語を備えた汎用開発プラットフォームである .NET をサポートしており、高品質のアプリケーションを効率的に構築できます。今回のアップデートにより、最新バージョンである .NET 10.0 (Long-Term Support) のサポートが追加され、RHEL で利用可能なバージョンが拡充されました。サポートされているその他のバージョンには、.NET 9.0 (Standard-Term Support) と、以前の長期サポートバージョンである .NET 8.0 があります。

詳細は、.NET 10.0 RPM パッケージのリリースノート および .NET 10.0 コンテナーのリリースノート を参照してください。

コンパイラーツールセット

RHEL 10.2 では、以下のコンパイラーツールセットが利用可能です。

  • GCC Toolset 15

    • GCC 15.2
    • Binutils 2.44

      Annobindwz は、バージョン 15 以降の GCC Toolset では提供されないことに注意してください。

  • LLVM Toolset 21.1.8
  • Rust Toolset 1.92.0
  • Go Toolset 1.26.2
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