4.10. コンパイラーおよび開発ツール
新しい GCC Toolset 14
GCC Toolset 14 は、最新バージョンの開発ツールを提供するコンパイラーツールセットです。これは、AppStream リポジトリー内の Software Collection の形式で Application Stream として利用できます。
GCC Toolset 14 では、RHEA-2024:8851 アドバイザリーのリリースに伴い、次のツールとバージョンが提供されます。
- GCC 14.2
- GDB 14.2
-
binutils2.41 -
annobin12.70 -
dwz0.14
GCC Toolset 14 をインストールするには、root として次のコマンドを実行します。
yum install gcc-toolset-14
# yum install gcc-toolset-14
GCC Toolset 14 のツールを実行するには、以下のコマンドを実行します。
scl enable gcc-toolset-14 <tool>
$ scl enable gcc-toolset-14 <tool>
GCC Toolset 14 のツールバージョンによってこのツールのシステムバージョンをオーバーライドするシェルセッションを実行するには、以下のコマンドを実行します。
scl enable gcc-toolset-14 bash
$ scl enable gcc-toolset-14 bash
GCC Toolset 14 コンポーネントは、gcc-toolset-14-toolchain コンテナーイメージで利用できます。
詳細は、GCC Toolset 14 および GCC Toolset の使用 を参照してください。
Jira:RHEL-34596[1], Jira:RHEL-30411
GCC Toolset 14: GCC がバージョン 14.2 にリベース
GCC Toolset 14 では、RHEA-2024:8864 アドバイザリーのリリースに伴い、GNU コンパイラーコレクション (GCC) がバージョン 14.2 に更新されました。
主な変更点は、以下のとおりです。
- 最適化と診断の改善
-
一連のハードニングフラグを有効化する新しい包括的な
-fhardenedオプション -
関数の途中に制御を移す攻撃を検出する新しい
-fharden-control-flow-redundancyオプション -
関数と変数のスタックスクラビングプロパティーを制御する新しい
strub型属性 -
特定の
mem*関数のインライン展開を強制する新しい-finline-stringopsオプション - 新しい OpenMP 5.1、5.2、6.0 機能のサポート
- いくつかの C23 の新機能
- 複数の新しい C++23 および C++26 機能
- いくつかの C++ 不具合報告の解決
- C++ ライブラリーにおける C++20、C++23、C++26 の実験的サポートの新規追加と改良
- 64 ビット ARM アーキテクチャーの新しい CPU のサポート
- 64 ビット Intel アーキテクチャーの複数の新しい命令セットアーキテクチャー (ISA) 拡張 (例: AVX10.1、AVX-VNNI-INT16、SHA512、SM4)
- GCC の静的アナライザーの新しい警告
- 一部の警告をエラーに変更 (詳細は、GCC 14 への移植 を参照)
- さまざまなバグ修正
GCC 14 の変更点の詳細は、アップストリームの GCC リリースノート を参照してください。
Jira:RHEL-30412[1]
GCC Toolset 14: GDB がバージョン 14.2 にリベース
GCC Toolset 14 では、RHBA-2024:8862 アドバイザリーのリリースに伴い、GDB がバージョン 14.2 に更新されました。以下の段落では、GDB 12.1 以降の主な変更点を示します。
全般:
-
info breakpointsコマンドは、無効なブレークポイントの有効なブレークポイントの位置をy-状態で表示するようになりました。 -
ELF の Zstandard (
ELFCOMPRESS_ZSTD) で圧縮されたデバッグセクションのサポートが追加されました。 -
テキストユーザーインターフェイス (TUI) では、現在の位置を示すインジケーターで強調表示されるソースコードとアセンブリコードのスタイルがデフォルトで設定されなくなりました。スタイルを再度有効にするには、新しいコマンド
set style tui-current-positionを使用します。 -
新しい簡易変数
$_inferior_thread_countには、現在の inferior 内のライブスレッドの数が含まれます。 -
コード位置が複数あるブレークポイントの場合、GDB は
<breakpoint_number>.<location_number>構文を使用してコードの場所を出力するようになりました。 -
ブレークポイントにヒットすると、GDB は
$_hit_bpnumおよび$_hit_locno簡易変数をヒットしたブレークポイント番号とコード位置番号に設定するようになりました。これで、disable $_hit_bpnumコマンドを使用して最後にヒットしたブレークポイントを無効にしたり、disable $_hit_bpnum.$_hit_locnoコマンドを使用して特定のブレークポイントコードの位置のみを無効にしたりできるようになりました。 -
NO_COLOR環境変数のサポートが追加されました。 - 64 ビットを超える整数型のサポートが追加されました。
-
マルチターゲット機能設定用の新しいコマンドを使用して、リモートターゲット機能セットを設定できます (コマンドの
set remote <name>-packetとshow remote <name>-packetを参照)。 - デバッガーアダプタープロトコルのサポートが追加されました。
-
新しい
inferiorキーワードを使用して、ブレークポイントを inferior 固有のブレークポイントに設定できるようになりました (コマンドのbreakまたはwatchを参照)。 -
新しい
$_shell()簡易関数を使用して、式の評価中にシェルコマンドを実行できるようになりました。
既存コマンドの変更点:
break、watch-
breakおよびwatchコマンドでthreadまたはtaskキーワードを複数回使用すると、キーワードの最後のインスタンスのスレッドまたはタスク ID が使用されるのではなく、エラーが発生するようになりました。 -
同じ
breakまたはwatchコマンドでthread、task、inferiorキーワードを複数使用できなくなりました。
-
printf、dprintf-
printfおよびdprintfコマンドは、printコマンドと同じ方法で式をフォーマットする%V出力形式を受け入れるようになりました。たとえばprintf "%V[-array-indexes on]", <array>のように、コマンドの後に括弧[…]で囲んだ追加の print オプションを使用して、出力形式を変更することもできます。
-
list-
.引数を使用して、現行フレームの実行ポイント付近の位置、または inferior が開始されていない場合はmain()関数の開始付近の位置を出力できるようになりました。 -
ファイル内で利用可能な行数より多くのソース行をリストしようとすると、警告が出され、ユーザーに
.引数を参照するよう指示されます。
-
document user-defined- ユーザー定義のエイリアスを文書化できるようになりました。
新しいコマンド:
-
set print nibbles [on|off](デフォルト:off)、show print nibbles-print/tコマンドを使用した場合に 4 ビット (ニブル) のグループでバイナリー値を表示するかどうかを制御します。 -
set debug infcall [on|off](デフォルト:off)、show debug infcall- inferior 関数呼び出しに関する追加のデバッグメッセージを出力します。 -
set debug solib [on|off](デフォルト:off)、show debug solib- 共有ライブラリーの処理に関する追加のデバッグメッセージを出力します。 -
set print characters <LIMIT>、show print characters、print -characters <LIMIT>- 文字列うち何文字を出力するか制御します。 -
set debug breakpoint [on|off](デフォルト:off)、show debug breakpoint- ブレークポイントの挿入と削除に関する追加のデバッグメッセージを出力します。 -
maintenance print record-instruction [ N ]- 指定された命令の記録された情報を出力します。 -
maintenance info frame-unwinders- 現在有効なフレームアンワインダーを優先度の高いものから順にリストします。 -
maintenance wait-for-index-cache- インデックスキャッシュへの保留中の書き込みがすべて完了するまで待機します。 -
info main- プログラムのエントリーポイントを識別するためにメインシンボルに関する情報を出力します。 -
set tui mouse-events [on|off](デフォルト:on)、show tui mouse-events- マウスクリックイベントを、TUI および Python エクステンションに送信するか (onの場合)、ターミナルに送信するか (offの場合) を制御します。
Machine Interface (MI) の変更:
- MI バージョン 1 は削除されました。
-
MI は、逆実行履歴をすべて使用すると、
no-historyが報告されるようになりました。 -
-break-insertコマンドの出力で、threadおよびtaskブレークポイントフィールドが 2 回報告されなくなりました。 - 存在しないスレッド ID でスレッド固有のブレークポイントを作成できなくなりました。
-
-stack-list-arguments、-stack-list-locals、-stack-list-variables、および-var-list-childrenコマンドの--simple-values引数は、ターゲットが simple の場合に参照型を simple として扱うようになりました。 -
-break-insertコマンドは、inferior 固有のブレークポイントを作成するための新しい-g thread-group-idオプションを受け入れるようになりました。 -
ブレークポイント作成通知と
-break-insertコマンドの出力に、メインブレークポイントと各ブレークポイントの位置のオプションフィールドinferiorを追加できるようになりました。 -
breakpoint-hitの停止理由を示す非同期レコードに、ブレークポイントの位置が複数の場合にコードの位置番号を示すオプションフィールドlocnoが含まれるようになりました。
GDB Python API の変更点:
Events
-
新しい
gdb.ThreadExitedEventイベント。 -
progspaceおよびreload属性を持つExecutableChangedEventオブジェクトを出力する新しいgdb.executable_changedイベントレジストリー。 -
新しい
gdb.events.new_progspaceおよびgdb.events.free_progspaceイベントレジストリー。NewProgpspaceEventおよびFreeProgspaceEventイベント型を出力します。両方のイベント型に、GDB に追加または GDB から削除されるgdb.Progspaceプログラムスペースを指定するための単一の属性progspaceがあります。
-
新しい
gdb.unwinder.Unwinderクラス-
name属性は読み取り専用になりました。 -
__init__関数の name 引数はstr型である必要があります。そうでない場合はTypeErrorが発生します。 -
enabled属性はbool型のみを受け入れるようになりました。
-
gdb.PendingFrameクラス-
新しいメソッド:
name、is_valid、pc、language、find_sal、block、function。これらはgdb.Frameクラスの同様のメソッドを反映しています。 -
create_unwind_info関数のframe-id引数は、pc、sp、およびspecial属性に対して整数またはgdb.Valueオブジェクトのいずれかにできるようになりました。
-
新しいメソッド:
-
gdb.PendingFrame.create_unwind_info関数に渡すことができる新しいgdb.unwinder.FrameIdクラス。 -
gdb.disassembler.DisassemblerResultクラスはサブクラス化できなくなりました。 -
gdb.disassemblerモジュールにスタイルサポートが含まれるようになりました。 -
新しい
gdb.execute_mi(COMMAND, [ARG]…)関数。GDB/MI コマンドを呼び出して結果を Python ディクショナリーとして返します。 -
新しい
gdb.block_signals()関数。GDB が処理する必要のあるすべてのシグナルをブロックするコンテキストマネージャーを返します。 -
threading.Threadクラスの新しいgdb.Threadサブクラス。startメソッドでgdb.block_signals関数を呼び出します。 -
gdb.parse_and_eval関数に、グローバルシンボルの解析を制限するための新しいglobal_contextパラメーターが追加されました。 gdb.Inferiorクラス-
新しい
arguments属性。既知の場合に inferior へのコマンドライン引数を保持します。 -
新しい
main_name属性。既知の場合に inferior のmain関数の名前を保持します。 -
新しい
clear_env、set_env、およびunset_envメソッド。inferior が開始される前にその環境を変更できます。
-
新しい
gdb.Valueクラス-
オブジェクトの値を割り当てる新しい
assignメソッド。 -
配列のような値を配列に変換する新しい
to_arrayメソッド。
-
オブジェクトの値を割り当てる新しい
gdb.Progspaceクラス-
新しい
objfile_for_addressメソッド。指定されたアドレス (存在する場合) をカバーするgdb.Objfileオブジェクトを返します。 -
Progspace.filename変数に対応するgdb.Objfileオブジェクトを保持する新しいsymbol_file属性 (ファイル名がNoneの場合はNone)。 -
新しい
executable_filename属性。exec-fileまたはfileコマンドによって設定されたファイル名の文字列を保持します (実行可能ファイルが設定されていない場合はNone)。
-
新しい
gdb.Breakpointクラス-
新しい
inferior属性。inferior 固有のブレークポイントの inferior ID (整数) が含まれます (そのようなブレークポイントが設定されていない場合はNone)。
-
新しい
gdb.Typeクラス-
新しい
is_array_likeおよびis_string_likeメソッド。型の実際の型コードにかかわらず、配列型か文字列型かを反映します。
-
新しい
-
新しい
gdb.ValuePrinterクラス。pretty-printer を適用した結果の基本クラスとして使用できます。 -
新しく実装された
gdb.LazyString.__str__メソッド。 gdb.Frameクラス-
新しい
static_linkメソッド。ネストされた関数フレームの外側のフレームを返します。 -
新しい
gdb.Frame.languageメソッド。フレームの言語の名前を返します。
-
新しい
gdb.Commandクラス-
GDB は、文字列をヘルプ出力として使用する前に、
gdb.Commandクラスとgdb.Parameterサブクラスのドキュメント文字列を再フォーマットして、各行の先頭の不要な空白を削除するようになりました。
-
GDB は、文字列をヘルプ出力として使用する前に、
gdb.Objfileクラス-
新しい
is_file属性。
-
新しい
-
新しい
gdb.format_address(ADDRESS, PROGSPACE, ARCHITECTURE)関数。逆アセンブラーからアドレス、シンボル、オフセット情報を出力する際に同じ形式を使用します。 -
新しい
gdb.current_language関数。現在の言語の名前を返します。 -
GDB の逆アセンブラーをラップするための新しい Python API。
gdb.disassembler.register_disassembler(DISASSEMBLER, ARCH)、gdb.disassembler.Disassembler、gdb.disassembler.DisassembleInfo、gdb.disassembler.builtin_disassemble(INFO, MEMORY_SOURCE)、gdb.disassembler.DisassemblerResultが含まれます。 -
新しい
gdb.print_options関数。gdb.Value.format_string関数で受け入れられる形式で、一般的な出力オプションのディクショナリーを返します。 gdb.Value.format_string関数-
gdb.Value.format_stringは、printまたはその他の同様の操作中に呼び出された場合に、printコマンドで提供される形式を使用するようになりました。 -
gdb.Value.format_stringは、summaryキーワードを受け入れるようになりました。
-
-
新しい
gdb.BreakpointLocationPython 型。 -
gdb.register_window_typeメソッドは、受け入れられるウィンドウ名のセットを制限するようになりました。
アーキテクチャー固有の変更:
AMD アーキテクチャーおよび Intel 64 ビットアーキテクチャー
-
libopcodesライブラリーを使用した逆アセンブラースタイルのサポートが追加されました。現在、これがデフォルトとして使用されています。set style disassembler *コマンドを使用して、逆アセンブラーの出力スタイルを変更できます。代わりに Python Pygments スタイルを使用するには、新しいmaintenance set libopcodes-styling offコマンドを使用します。
-
64 ビット ARM アーキテクチャー
- Memory Tagging Extension (MTE) のメモリータグデータをダンプするためのサポートが追加されました。
- Scalable Matrix Extension 1 および 2 (SME/SME2) のサポートが追加されました。ZA 状態での手動関数呼び出しや、DWARF に基づく Scalable Vector Graphics (SVG) の変更の追跡など、一部の機能はまだ試験版またはアルファ版と見なされています。
- Thread Local Storage (TLS) 変数のサポートが追加されました。
- ハードウェアウォッチポイントのサポートが追加されました。
64 ビット IBM Z アーキテクチャー
-
IBM Z ターゲット上の新しい
arch14命令の記録および再生のサポート (specialized-function-assist 命令NNPAを除く)。
-
IBM Z ターゲット上の新しい
IBM Power Systems (リトルエンディアン)
- POWER11 のベース有効化のサポートを追加しました。
Jira:RHELDOCS-18598[1], Jira:RHEL-36225, Jira:RHEL-36518
GCC Toolset 14: annobin がバージョン 12.70 にリベース
GCC Toolset 14 では、RHBA-2024:8863 アドバイザリーのリリースに伴い、annobin がバージョン 12.70 に更新されました。更新されたバイナリーテスト用の annobin ツールセットにより、さまざまなバグ修正が提供され、新しいテストが導入され、新しいバージョンの GCC、Clang、LLVM、および Go コンパイラーをビルドして使用するようにツールが更新されます。強化されたツールにより、非標準的な方法でビルドされたプログラムの新しい問題を検出できます。
Jira:RHEL-30409[1]
GCC Toolset 13: GCC が AMD Zen 5 をサポートするようになる
RHBA-2024:8829 アドバイザリーのリリースに伴い、GCC の GCC Toolset 13 バージョンに AMD Zen 5 プロセッサーマイクロアーキテクチャーのサポートが追加されました。サポートを有効にするには、-march=znver5 コマンドラインオプションを使用します。
Jira:RHEL-36524[1]
LLVM ツールセットが 18.1.8 に更新される
RHBA-2024:8828 アドバイザリーのリリースに伴い、LLVM Toolset がバージョン 18.1.8 に更新されました。
LLVM の主な更新点:
-
以下の命令の定数式バリアントが削除されました。
and、or、lshr、ashr、zext、sext、fptrunc、fpext、fptoui、fptosi、uitofp、sitofp。 -
llvm.exp10組み込み関数が追加されました。 -
グローバル変数の
code_model属性が追加されました。 - AArch64、AMDGPU、PowerPC、RISC-V、SystemZ、x86 アーキテクチャーのバックエンドが改善されました。
- LLVM ツールが改善されました。
Clang の主な機能拡張:
C++20 機能のサポート:
-
Clang は、グローバルモジュールフラグメント内の宣言に対して One Definition Rule (ODR) チェックを実行しなくなりました。より厳密な動作を有効にするには、
-Xclang -fno-skip-odr-check-in-gmfオプションを使用してください。
-
Clang は、グローバルモジュールフラグメント内の宣言に対して One Definition Rule (ODR) チェックを実行しなくなりました。より厳密な動作を有効にするには、
C++23 機能のサポート:
-
ラムダでの属性の使用に関する警告するための新しい診断フラグ
-Wc++23-lambda-attributesが追加されました。
-
ラムダでの属性の使用に関する警告するための新しい診断フラグ
C++2c 機能のサポート:
-
同じスコープ内で、
_文字をプレースホルダー変数名として複数回使用できるようになりました。 - 属性が、文字列リテラルである属性パラメーター内で未評価の文字列を要求するようになりました。
- C++26 の列挙型に対する非推奨の算術変換が削除されました。
- テンプレートパラメーター初期化の仕様が改善されました。
-
同じスコープ内で、
- 変更点の完全なリストは、Clang のアップストリームのリリースノート を参照してください。
Clang の ABI の変更点:
-
x86_64 の SystemV ABI に従い、
__int128引数がレジスターとスタックスロット間で分割されなくなりました。 - 詳細は、Clang の ABI 変更点のリスト を参照してください。
後方互換性のない主な変更点:
- テンプレート化された演算子の引数の逆順に関するバグ修正により、以前は C++17 で受け入れられていたコードが C++20 では機能しなくなります。
-
GCC_INSTALL_PREFIXCMake 変数 (デフォルトの--gcc-toolchain=を設定する変数) が非推奨になり、削除される予定です。代わりに、設定ファイルで--gcc-install-dir=または--gcc-triple=オプションを指定してください。 -
プリコンパイル済みヘッダー (PCH) 生成 (
-c -xc-headerおよび-c -xc++-header) のデフォルトの拡張子名が、.gchではなく.pchになりました。 -
-include a.hがa.h.gchファイルをプローブするときに、そのファイルが Clang PCH ファイルまたは Clang PCH ファイルを含むディレクトリーでない場合、include がa.h.gchを無視するようになりました。 -
__has_cpp_attributeおよび__has_c_attributeが特定の C++-11 スタイルの属性に対して誤った値を返すバグが修正されました。 -
逆の
operator==の追加時に一致するoperator!=を検出する際のバグが修正されました。 - 関数テンプレートの名前マングリングルールが変更され、テンプレートパラメーターリストまたは requires 句で関数をオーバーロードできるようになりました。
-
-Wenum-constexpr-conversion警告が、システムヘッダーとマクロでデフォルトで有効になりました。これは、次の Clang リリースでハード (ダウングレード不可能な) エラーに変更されます。 - C++20 名前付きモジュールのインポートされたモジュールへのパスが、ハードコードできなくなりました。依存するすべてのモジュールをコマンドラインから指定する必要があります。
-
import <module>を使用してモジュールをインポートできなくなりました。Clang は明示的にビルドされたモジュールを使用します。 - 詳細は、互換性を破壊する可能性のある変更点のリスト を参照してください。
詳細は、LLVM リリースノート および Clang リリースノート を参照してください。
LLVM Toolset は Rolling Application Stream であり、最新バージョンのみがサポートされます。詳細は、Red Hat Enterprise Linux Application Streams ライフサイクル ドキュメントを参照してください。
Jira:RHEL-30907[1]
Rust Toolset がバージョン 1.79.0 にリベース
RHBA-2024:8827 アドバイザリーのリリースに伴い、Rust Toolset がバージョン 1.79.0 に更新されました。以前提供されていたバージョン 1.75.0 以降の主な機能拡張は次のとおりです。
-
新しい
offset_of!マクロ - C 文字列リテラルのサポート
-
インライン
const式のサポート - 関連型の位置における境界のサポート
- 一時的な自動有効期間延長の改善
-
unsafe前提条件のデバッグアサーション
Rust ツールセットは Rolling Application Stream であり、最新バージョンのみがサポートされます。詳細は、Red Hat Enterprise Linux Application Streams ライフサイクル ドキュメントを参照してください。
Jira:RHEL-30073[1]
Go Toolset がバージョン 1.23 にリベース
RHBA-2025:3823 アドバイザリーのリリースに伴い、Go Toolset がバージョン 1.23 に更新されました。
主な機能拡張は、次のとおりです。
for-rangeループは、次のタイプのイテレーター関数を受け入れます。-
func(func() bool) -
func(func(K) bool) func(func(K, V) bool)for-rangeループのイテレーション値は、イテレーター引数関数の呼び出しによって作成されます。参照リンクは、アップストリームのリリースノート を参照してください。
-
- Go Toolchain により、使用状況や破損統計情報を収集できます。これは、Go チームが Go Toolchain がどのように使用され、どのように機能するかを理解するのに役立ちます。デフォルトでは、Go Telemetry はテレメトリーデータをアップロードせず、ローカルにのみ保存します。詳細は、アップストリームの Go Telemetry ドキュメント を参照してください。
-
go vetサブコマンドには、参照ファイルで使用する Go のバージョンに対して新しすぎるシンボルへの参照にフラグを立てるstdversionアナライザーが含まれています。 -
cmdおよびcgo機能は、C リンカーにフラグを渡すための-ldflagsオプションをサポートしています。goコマンドは、非常に大きなCGO_LDFLAGS環境変数を使用する場合に、argument list too longエラーを回避するために、このフラグを自動的に使用します。 -
traceユーティリティーは、部分的に壊れたトレースを許容し、トレースデータを回復しようとします。これはクラッシュが発生した場合にクラッシュに至るまでのトレースを取得できるため、特に便利です。 -
未処理のパニックまたはその他の致命的なエラーの後にランタイムによって出力されるトレースバックには、
goroutineのスタックトレースを最初のgoroutineと区別するためのインデントが含まれます。 - プロファイルガイドによる最適化を使用したコンパイラービルド時間のオーバーヘッドが 1 桁のパーセンテージに削減されました。
-
新しい
-bindnowリンカーフラグにより、動的にリンクされた ELF バイナリーをビルドするときに即時の関数バインディングが有効になります。 -
//go:linknameリンカーディレクティブは、定義で//go:linknameでマークされていない標準ライブラリーおよびランタイムの内部シンボルを参照しなくなりました。 -
プログラムが
TimerまたはTickerを参照しなくなった場合、Stopメソッドが呼び出されていなくても、これらはガベージコレクションによってすぐにクリーンアップされます。TimerまたはTickerに関連付けられたタイマーチャネルは、現在バッファーなし (容量 0) になっています。これにより、ResetメソッドまたはStopメソッドが呼び出されるたびに、呼び出し後に古い値が送受信されなくなります。 -
新しい
uniqueパッケージは、interningまたはhash-consingなどの値を正規化する機能を提供します。 -
新しい
iterパッケージは、ユーザー定義のイテレーターを使用するための基本的な定義を提供します。 -
slicesおよびmapsパッケージには、イテレーターで使用するいくつかの新しい関数が導入されています。 -
新しい
structsパッケージは、メモリーレイアウトなど、含まれる struct 型のプロパティーを変更する struct フィールドの型を提供します。 次のパッケージにマイナーな変更が加えられました。
-
archive/tar -
crypto/tls -
crypto/x509 -
database/sql -
debug/elf -
encoding/binary -
go/ast -
go/types -
math/rand/v2 -
net -
net/http -
net/http/httptest -
net/netips -
path/filepath -
reflect -
runtime/debug -
runtime/pprof -
runtime/trace -
slices -
sync -
sync/atomic -
syscall -
testing/fstest -
text/template -
time -
unicode/utf16
-
詳細は、アップストリームのリリースノート を参照してください。
Go Toolset は Rolling Application Stream であり、Red Hat は最新バージョンのみをサポートします。詳細は、Red Hat Enterprise Linux Application Streams ライフサイクル ドキュメントを参照してください。
Jira:RHEL-83447[1]
Go Toolset がバージョン 1.22 にリベース
RHSA-2024:8876 アドバイザリーのリリースに伴い、Go Toolset がバージョン 1.22 に更新されました。
主な機能拡張は、次のとおりです。
- for ループ内の変数がイテレーションごとに作成されるようになりました。これにより、不慮の共有バグを防ぐことができます。さらに、for ループは整数の範囲をカバーできるようになりました。
- ワークスペース内のコマンドで、ワークスペースの依存関係にベンダーディレクトリーを使用できるようになりました。
-
go getコマンドが、従来のGOPATHモードをサポートしなくなりました。この変更は、go buildコマンドとgo testコマンドには影響しません。 -
vetツールが、for ループの新しい動作に合わせて更新されました。 - 型ベースのガベージコレクションメタデータを各ヒープオブジェクトの近くに保持することで、CPU パフォーマンスが向上するようになりました。
- インライン化の最適化が改善され、プロファイルに基づく最適化のサポートの強化によりパフォーマンスが向上しました。
-
新しい
math/rand/v2パッケージが利用可能です。 - メソッドとワイルドカードのサポートにより、HTTP ルーティングパターンが強化されました。
詳細は、アップストリームの Go リリースノートを参照してください。
Go ツールセットは Rolling Application Stream であり、最新バージョンのみがサポートされます。詳細は、Red Hat Enterprise Linux Application Streams ライフサイクル ドキュメントを参照してください。
Jira:RHEL-46972[1]
elfutils がバージョン 0.190 にリベース
elfutils パッケージが、バージョン 0.190 に更新されました。以下は、主な改善点です。
-
libelfライブラリーが、相対再配置 (RELR) をサポートするようになりました。 -
libdwライブラリーが、.debug_[ct]u_indexセクションを認識するようになりました。 -
eu-readelfユーティリティーが、ELF セクションを使用せずに動的セグメントを使用してシンボルを表示する、新しい-Ds,--use-dynamic --symbolオプションをサポートするようになりました。 -
eu-readelfユーティリティーが、.gdb_indexバージョン 9 を表示できるようになりました。 -
新しい
eu-scrlinesユーティリティーは、指定された DWARF または ELF ファイルに関連付けられたソースファイルのリストをコンパイルします。 -
debuginfodサーバースキーマが変更され、ファイル名の表現が 60% 圧縮されました (インデックスの再作成が必要です)。
valgrind が 3.22 に更新される
valgrind パッケージがバージョン 3.22 に更新されました。以下は、主な改善点です。
-
valgrindmemcheckは、C 関数memalign、posix_memalign、およびaligned_allocに指定された値と、C++17 で調整されたnewOperator が有効なアラインメント値であるかどうかをチェックするようになりました。 -
valgrindmemcheckは、C++14 サイズおよび C++17 に揃えられたnewおよびdeleteOperator の不一致検出をサポートするようになりました。 -
DWARF デバッグ情報の遅延読み取りのサポートが追加され、
debuginfoパッケージがインストールされている場合に起動が高速化されました。
Clang リソースディレクトリーが移動しました
Clang が内部ヘッダーとライブラリーを保存する Clang リソースディレクトリーが、/usr/lib64/clang/17 から /usr/lib/clang/17 に移動しました。
新しい grafana-selinux パッケージ
以前は、grafana-server のデフォルトのインストールは unconfined_service_t SELinux タイプとして実行されていました。この更新では、grafana-server 用の SELinux ポリシーが含まれ、grafana-server とともにデフォルトでインストールされる、新しい grafana-selinux パッケージが追加されます。その結果、grafana-server は grafana_t SELinux タイプとして実行されるようになりました。
GCC Toolset 13 の更新
GCC Toolset 13 は、最新バージョンの開発ツールを提供するコンパイラーツールセットです。これは、AppStream リポジトリー内の Software Collection の形式で Application Stream として利用できます。
RHEL 8.10 で導入された注目すべき変更点は次のとおりです。
- GCC コンパイラーがバージョン 13.2.1 に更新され、アップストリーム GCC で利用可能な多くのバグ修正と機能拡張が提供されます。
-
binutilsは、-march=znver5コンパイラースイッチを通じて、znver5コアに基づく AMD CPU をサポートするようになりました。 -
annobinがバージョン 12.32 に更新されました。 -
GCC の
annobinプラグインは、オブジェクトファイルに保存するメモに対して、より圧縮された形式をデフォルトで使用するようになりました。その結果、特に大規模で複雑なプログラムでは、オブジェクトファイルが小さくなり、リンク時間が短縮されます。
次のツールとバージョンが GCC Toolset 13 によって提供されます。
| ツール | バージョン |
|---|---|
| GCC | 13.2.1 |
| GDB | 12.1 |
| binutils | 2.40 |
| dwz | 0.14 |
| annobin | 12.32 |
GCC Toolset 13 をインストールするには、root として次のコマンドを実行します。
yum install gcc-toolset-13
# yum install gcc-toolset-13
GCC Toolset 13 からツールを実行するには、以下を使用します。
scl enable gcc-toolset-13 tool
$ scl enable gcc-toolset-13 tool
GCC Toolset 13 のツールバージョンがこれらのツールのシステムバージョンをオーバーライドするシェルセッションを実行するには、以下を使用します。
scl enable gcc-toolset-13 bash
$ scl enable gcc-toolset-13 bash
詳細は、GCC Toolset 13 および GCC Toolset の使用 を参照してください。
Jira:RHEL-25405[1]
LLVM Toolset がバージョン 17.0.6 にリベース
LLVM Toolset がバージョン 17.0.6 に更新されました。
主な機能拡張は、次のとおりです。
- Opaque ポインターの移行が完了しました。
- ミドルエンド最適化におけるレガシーパスマネージャーのサポートが削除されました。
Clang の変更:
- C++20 コルーチンは実験的なものとはみなされなくなりました。
-
最適化されていないビルドでの
std::move関数などのコード生成が改善されました。
詳細は、LLVM および Clang のアップストリームリリースノートを参照してください。
Rust Toolset がバージョン 1.75.0 にリベース
Rust Toolset がバージョン 1.75.0 に更新されました。
主な機能拡張は、次のとおりです。
- 定数評価時間が無制限になる
- よりクリーンなパニックメッセージ
- Cargo レジストリー認証
-
トレイト内の
async fnと不透明な戻り値のタイプ
Go Toolset がバージョン 1.21.0 にリベース
Go Toolset がバージョン 1.21.0 に更新されました。
主な機能拡張は、次のとおりです。
-
min、max、clearビルトインが追加されました。 - プロファイルに基づく最適化の正式サポートが追加されました。
- パッケージの初期化順序がより正確に定義されるようになりました。
- 型推論が改善されました。
- 下位互換性のサポートが改善されました。
詳細は、アップストリームの Go リリースノートを参照してください。
Jira:RHEL-11872[1]
papi は、新しいプロセッサーマイクロアーキテクチャーをサポートする
この機能拡張により、次のプロセッサーマイクロアーキテクチャー上の papi イベントプリセットを使用して、パフォーマンス監視ハードウェアにアクセスできるようになります。
- AMD Zen 4
- 第 4 世代 Intel® Xeon® スケーラブルプロセッサー
Jira:RHEL-9336[1]、Jira:RHEL-9320、Jira:RHEL-9337
Ant がバージョン 1.10.9 にリベース
ant:1.10 モジュールストリームがバージョン 1.10.9 に更新されました。このバージョンでは、プロバイダークラスとプロバイダー引数を使用したコード署名のサポートが提供されます。
更新された ant:1.10 モジュールストリームは、ant および ant-lib パッケージのみを提供します。Ant に関連する残りのパッケージは、サポートされていない CodeReady Linux Builder (CRB) リポジトリーの javapackages-tools モジュールで配布されており、更新されていません。
更新された ant:1.10 モジュールストリームからのパッケージは、javapackages-tools モジュールからのパッケージと並行して使用することはできません。Ant 関連パッケージの完全なセットを使用する場合は、ant:1.10 モジュールをアンインストールして無効にし、CRB リポジトリーを有効 にして、javapackages-tools モジュールをインストールする必要があります。
新しいパッケージ: maven-openjdk21
maven:3.8 モジュールストリームに、maven-openjdk21 サブパッケージが含まれるようになりました。このサブパッケージは、OpenJDK 21 用の Maven JDK バインディングを提供し、システム OpenJDK 21 を使用するように Maven を設定します。
Jira:RHEL-17126[1]
cmake がバージョン 3.26 にリベース
cmake パッケージがバージョン 3.26 に更新されました。以下は、主な改善点です。
- C17 および C18 の言語規格のサポートが追加されました。
-
cmakeは、/etc/os-releaseファイルでオペレーティングシステムの識別情報をクエリーできるようになりました。 -
CUDA 20 および
nvtx3ライブラリーのサポートが追加されました。 - Python 安定アプリケーションバイナリーインターフェイスのサポートが追加されました。
- Simplified Wrapper and Interface Generator (SWIG) ツールに Perl 5 のサポートが追加されました。