第9章 アプリケーション用 Debezium コネクターの設定
Debezium コネクターのデフォルトの動作がアプリケーションに適していない場合、以下の Debezium 機能を使用して必要な動作を設定することができます。
- トピックルーター SMT
- データ変更イベントレコードを指定したトピックに再ルーティングする単一メッセージ変換。
- コンテンツベースルーター SMT
- データ変更イベントレコードの内容を評価し、内容に応じてイベントレコードを特定のトピックに再ルーティングする単一メッセージ変換。
- Kafka Connect 自動トピック作成
- Connect が実行時にトピックを作成し、トピックの名前に基づいて設定設定をトピックに適用するのを許可します。
- フィルター SMT
- 指定した式を使用してデータ変更イベントレコードを評価する単一メッセージ変換。コネクターは、true と評価されるイベントだけをストリーミングします。
- イベントフラット化 SMT
- データ変更イベントレコードの複雑な構造を一部の Kafka コンシューマーが必要とする簡素化したフォーマットにフラット化する単一メッセージ変換。
- Avro シリアライゼーション
- Debezium PostgreSQL、MongoDB、または SQL Server コネクターが Avro を使用してメッセージのキーと値をシリアライズする設定をサポートします。これにより、変更イベントレコードのコンシューマーがレコードスキーマの変更に容易に適応できるようにします。
- 送信トレイ (Outbox) イベントルーター SMT
- 送信トレイパターンをサポートする単一メッセージ変換。
- CloudEvents コンバーター
- Debezium コネクターが CloudEvents 仕様に準拠する変更イベントレコードを出力できるようにします。
9.1. 指定したトピックへの Debezium イベントレコードのルーティング
データ変更イベントが含まれるそれぞれの Kafka レコードは、デフォルトのルーティング先トピックを持ちます。必要に応じて、レコードが Kafka Connect コンバーターに到達する前に、指定したトピックにレコードを再ルーティングすることができます。そのために、Debezium ではトピックルーティング単一メッセージ変換 (SMT) を利用することができます。Debezium コネクターの Kafka Connect 設定でこの変換を設定します。設定オプションにより、以下の項目を指定することができます。
- 再ルーティングするレコードを識別するための式。
- ルーティング先トピックに解決する式。
- 宛先トピックに再ルーティングされるレコード間でキーの一意性を確保する方法。
変換の設定により必要な動作が得られるようにするのは、ユーザー側の範疇です。Debezium は、変換の設定により得られる動作を検証しません。
トピックルーティング変換は Kafka Connect SMT です。
詳細は以下のセクションを参照してください。
9.1.1. 指定したトピックに Debezium レコードをルーティングするユースケース
Debezium コネクターのデフォルト動作では、それぞれの変更イベントレコードは、名前がデータベースおよび変更が加えられたテーブルの名前から作られるトピックに送信されます。つまり、トピックは 1 つの物理テーブルのレコードを受け取ります。トピックが複数の物理テーブルのレコードを受け取るようにするには、Debezium コネクターを設定してレコードをそのトピックに再ルーティングする必要があります。
論理テーブル
論理テーブルは、複数の物理テーブルのレコードを 1 つのトピックにルーティングする場合の一般的なユースケースです。論理テーブル内には、すべて同じスキーマを持つ複数の物理テーブルがあります。たとえば、シャーディングされたテーブルのスキーマは同一です。論理テーブルは、db_shard1.my_table
および db_shard2.my_table
という 2 つ以上のシャード化されたテーブルで設定されているかもしれません。テーブルは異なるシャードにあり物理的に別個のものですが、1 つにまとまり論理テーブルを形成します。任意のシャード内のテーブルの変更イベントレコードを、同じトピックに再ルーティングすることができます。
パーティションで分割された PostgreSQL テーブル
Debezium PostgreSQL コネクターがパーティションで分割されたテーブルの変更をキャプチャーする場合、デフォルトの動作では、変更イベントレコードはパーティションごとに異なるトピックにルーティングされます。すべてのパーティションからのレコードを 1 つのトピックに出力するには、トピックルーティング SMT を設定します。パーティションで分割されたテーブルの各キーは必ず一意であるため、キーの一意性を確保するために SMT がキーフィールドを追加しないように key.enforce.uniqueness=false
を設定します。デフォルトの動作では、キーフィールドが追加されます。
9.1.2. 複数テーブルの Debezium レコードを 1 つのトピックにルーティングする例
複数の物理テーブルの変更イベントレコードを同じトピックにルーティングするには、Debezium コネクターの Kafka Connect 設定でトピックルーティング変換を設定します。トピックルーティング SMT を設定するには、以下の項目を決定する正規表現を指定する必要があります。
- レコードをルーティングするテーブル。これらのテーブルのスキーマは、すべて同一でなければなりません。
- ルーティング先トピックの名前。
たとえば、.properties
ファイルの設定は以下のようになります。
transforms=Reroute transforms.Reroute.type=io.debezium.transforms.ByLogicalTableRouter transforms.Reroute.topic.regex=(.*)customers_shard(.*) transforms.Reroute.topic.replacement=$1customers_all_shards
topic.regex
変更イベントレコードを特定のトピックにルーティングする必要があるかどうかを決定するために、変換がそれぞれのレコードに適用する正規表現を指定します。
この例では、正規表現
(.*)customers_shard(.*)
は、名前にcustomers_shard
文字列が含まれるテーブルに対する変更のレコードがマッチします。この場合、以下の名前のテーブルのレコードが再ルーティングされます。myserver.mydb.customers_shard1
myserver.mydb.customers_shard2
myserver.mydb.customers_shard3
topic.replacement
-
ルーティング先トピックの名前を表す正規表現を指定します。変換により、マッチする各レコードがこの式で識別されるトピックにルーティングされます。この例では、上記 3 つのシャーディングされたテーブルのレコードが
myserver.mydb.customers_all_shards
トピックにルーティングされます。
9.1.3. 同一トピックにルーティングされる Debezium レコード間でのキーの一意性確保
Debezium の変更イベントキーは、テーブルのプライマリーキーを設定するテーブル列を使用します。複数の物理テーブルのレコードを 1 つのトピックにルーティングするには、それらの全テーブルに渡ってイベントキーが一意でなければなりません。ただし、それぞれの物理テーブルは、そのテーブル内でのみ一意なプライマリーキーを持つことができます。たとえば、myserver.mydb.customers_shard1
テーブルの行は、myserver.mydb.customers_shard2
テーブルの行と同じキー値を持つ場合があります。
変更イベントレコードが同じトピックにルーティングされる全テーブルに渡ってそれぞれのイベントキーが必ず一意になるように、トピックルーティング変換は変更イベントキーにフィールドを挿入します。デフォルトでは、挿入されるフィールドの名前は __dbz__physicalTableIdentifier
です。挿入されるフィールドの値は、デフォルトのルーティング先トピックの名前です。
必要に応じて、別のフィールドをキーに挿入するようにトピックルーティング変換を設定することができます。そのためには、key.field.name
オプションを指定し、それを既存のプライマリーキーフィールド名と競合しないフィールド名に設定します。以下に例を示します。
transforms=Reroute transforms.Reroute.type=io.debezium.transforms.ByLogicalTableRouter transforms.Reroute.topic.regex=(.*)customers_shard(.*) transforms.Reroute.topic.replacement=$1customers_all_shards transforms.Reroute.key.field.name=shard_id
この例では、ルーティングされるレコードのキー構造に shard_id
フィールドが追加されます。
キーの新しいフィールドの値を調整する場合は、以下の両方のオプションを設定します。
key.field.regex
- 1 つまたは複数の文字グループをキャプチャーするために、変換がデフォルトのルーティング先トピックの名前に適用する正規表現を指定します。
key.field.replacement
- キャプチャーされるこれらのグループに関して、挿入されるキーフィールドの値を決定するための正規表現を指定します。
以下に例を示します。
transforms.Reroute.key.field.regex=(.*)customers_shard(.*) transforms.Reroute.key.field.replacement=$2
この設定では、デフォルトのルーティング先トピックの名前を以下のように仮定します。
myserver.mydb.customers_shard1
myserver.mydb.customers_shard2
myserver.mydb.customers_shard3
変換では、2 番目にキャプチャーされたグループの値であるシャード番号が、キーの新しいフィールドの値として使用されます。この例では、挿入されるキーフィールドの値は 1
、2
、または 3
です。
テーブルにグローバルに一意なキーが含まれ、キー構造を変更する必要がない場合は、key.enforce.uniqueness
プロパティーを false
に設定することができます。
... transforms.Reroute.key.enforce.uniqueness=false ...
9.1.4. Debezium トピックルーティング変換設定用のオプション
以下の表で、トピックルーティングの SMT 設定オプションを紹介します。
オプション | デフォルト | 説明 |
---|---|---|
変更イベントレコードを特定のトピックにルーティングする必要があるかどうかを決定するために、変換がそれぞれのレコードに適用する正規表現を指定します。 | ||
ルーティング先トピックの名前を表す正規表現を指定します。変換により、マッチする各レコードがこの式で識別されるトピックにルーティングされます。この式により、 | ||
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レコードの変更イベントキーにフィールドを追加するかどうかを定義します。キーフィールドを追加することで、変更イベントレコードが同じトピックにルーティングされる全テーブルに渡って、それぞれのイベントキーの一意性が確保されます。この設定は、同じキーを持つが異なるソーステーブルに由来するレコードの変更イベントの競合を防ぐのに役立ちます。 | |
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変更イベントキーに追加されるフィールドの名前。このフィールドの値により、元のテーブル名が識別されます。SMT がこのフィールドを追加するには | |
1 つまたは複数の文字グループをキャプチャーするために、変換がデフォルトのルーティング先トピックの名前に適用する正規表現を指定します。SMT がこの正規表現を適用するには、 | ||
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