第12章 Kafka Bridge
本章では、Red Hat Enterprise Linux 上の AMQ Streams Kafka Bridge の概要を紹介し、その REST API を使用して AMQ Streams と対話する方法を説明します。ローカル環境で Kafka Bridge を試すには、本章で後述する 「Kafka Bridge クイックスタート」 を参照してください。
その他のリソース
- リクエストおよび応答の例など、API ドキュメントを確認するには、『Strimzi Kafka Bridge Documentation 』を参照してください。
- 分散トレーシング Kafka Bridge を設定するには、「Kafka Bridge のトレースの有効化」 を参照してください。
12.1. Kafka Bridge の概要
Kafka Bridge では、HTTP ベースのクライアントと Kafka クラスターとの対話を可能にする RESTful インターフェースが提供されます。また、クライアントアプリケーションによる Kafka プロトコルの変換は必要なく、Web API コネクションの利点が AMQ Streams に提供されます。
API には主に 2 つの resources-consumers
と topics
-- があります。これは、Kafka クラスターでコンシューマーおよびプロデューサーと対話するためにエンドポイント経由で公開され、アクセスが可能になります。リソースと関係があるのは Kafka ブリッジのみで、Kafka に直接接続されたコンシューマーやプロデューサーとは関係はありません。
HTTP リクエスト
Kafka Bridge は、以下の方法で Kafka クラスターへの HTTP リクエストをサポートします。
- トピックにメッセージを送信する。
- トピックからメッセージを取得する。
- トピックのパーティションリストを取得する。
- コンシューマーを作成および削除する。
- コンシューマーをトピックにサブスクライブし、このようなトピックからメッセージを受信できるようにする。
- コンシューマーがサブスクライブしているトピックの一覧を取得する。
- トピックからコンシューマーのサブスクライブを解除する。
- パーティションをコンシューマーに割り当てる。
- コンシューマーオフセットの一覧をコミットする。
- パーティションで検索して、コンシューマーが最初または最後のオフセットの位置、または指定のオフセットの位置からメッセージを受信できるようにする。
上記の方法で、JSON 応答と HTTP 応答コードのエラー処理を行います。メッセージは JSON またはバイナリー形式で送信できます。
クライアントは、ネイティブの Kafka プロトコルを使用する必要なくメッセージを生成して使用できます。
AMQ Streams インストールと同様に、Red Hat Enterprise Linux にインストールする Kafka Bridge ファイルをダウンロードできます。「Kafka Bridge アーカイブのダウンロード」 を参照してください。
KafkaBridge
リソースのホストおよびポートの設定に関する詳細は、「Kafka Bridge プロパティーの設定」 を参照してください。
12.1.1. 認証および暗号化
HTTP クライアントと Kafka Bridge 間の認証と暗号化はまだサポートされていません。そのため、クライアントから Kafka Bridge に送信されるリクエストは以下のようになります。
- 暗号化されず、HTTPS ではなく HTTP を使用する必要がある。
- 認証なしで送信される。
Kafka Bridge と Kafka クラスターとの間で TLS または SASL ベースの認証を設定できます。
プロパティーファイルを介して認証用に Kafka Bridge を設定します。
12.1.2. Kafka Bridge へのリクエスト
データ形式と HTTP ヘッダーを指定し、有効なリクエストが Kafka Bridge に送信されるようにします。
API リクエストおよびレスポンス本文は、常に JSON としてエンコードされます。
12.1.2.1. コンテンツタイプヘッダー
すべてのリクエストについて Content-Type
ヘッダーを提出する必要があります。唯一の例外は、POST
リクエストボディーが空で、Content-Type
ヘッダーを追加するとリクエストが失敗します。
コンシューマー操作(/consumers
エンドポイント)およびプロデューサー操作(エンドポイント)には異なる/topics
ヘッダーが必要です。Content-Type
コンシューマー操作の Content-Type ヘッダー
埋め込みデータ形式に関係なく、リクエストボディーにデータが含まれる場合に、コンシューマー操作のPOST
リクエストは以下の Content-Type
ヘッダーを提供する必要があります。
Content-Type: application/vnd.kafka.v2+json
プロデューサー操作の Content-Type ヘッダー
プロデューサー操作の実行時に、POST
リクエストは、生成されたメッセージの 埋め込みデータ形式 を指定する Content-Type
ヘッダーを提供する必要があります。これは、json
または binary
のいずれかになります。
埋め込みデータ形式 | Content-Type ヘッダー |
---|---|
JSON |
|
バイナリー |
|
次のセクションで説明どおり、埋め込みデータ形式はコンシューマーごとに設定されます。
POST
リクエストに空のボディーがある場合は、Content-Type
を設定しないでください。空のボディーを使用して、デフォルト値のコンシューマーを作成できます。
12.1.2.2. 埋め込みデータ形式
埋め込みデータ形式は、Kafka メッセージが Kafka Bridge によりプロデューサーからコンシューマーに HTTP で送信される際の形式です。サポートされる埋め込みデータ形式には、JSON またはバイナリーの 2 つがサポートされます。
/consumers/groupid
エンドポイントを使用してコンシューマーを作成する場合、POST
リクエスト本文で JSON またはバイナリーいずれかの埋め込みデータ形式を指定する必要があります。これは、要求ボディーの format
フィールドに指定されます。以下に例を示します。
{
"name": "my-consumer",
"format": "binary", 1
...
}
- 1
- バイナリー埋め込みデータ形式。
コンシューマーの埋め込みデータ形式が指定されていない場合は、バイナリー形式が設定されます。
コンシューマーの作成時に指定する埋め込みデータ形式は、コンシューマーが消費する Kafka メッセージのデータ形式と一致する必要があります。
バイナリー埋め込みデータ形式を指定する場合は、以降のプロデューサーリクエストで、リクエスト本文にバイナリーデータが Base64 でエンコードされた文字列として含まれる必要があります。たとえば、POST
要求を /topics/topicname
エンドポイントに指定してメッセージを送信する場合は、value
を Base64 でエンコードする必要があります。
{ "records": [ { "key": "my-key", "value": "ZWR3YXJkdGhldGhyZWVsZWdnZWRjYXQ=" }, ] }
プロデューサーリクエストは、埋め込みデータ形式に対応する Content-Type
ヘッダーも提供する必要があります (例: Content-Type: application/vnd.kafka.binary.v2+json
)。
12.1.2.3. メッセージの形式
/topics
エンドポイントを使用してメッセージを送信する場合は、records
パラメーターでリクエストボディーにメッセージペイロードを入力します。
records
パラメーターには、以下のオプションフィールドを含めることができます。
-
メッセージの
key
-
メッセージの
value
-
宛先の
partition
-
メッセージの
headers
トピックへの POST
リクエストの例
curl -X POST \
http://localhost:8080/topics/my-topic \
-H 'content-type: application/vnd.kafka.json.v2+json' \
-d '{
"records": [
{
"key": "my-key",
"value": "sales-lead-0001"
"partition": 2
"headers": [
{
"key": "key1",
"value": "QXBhY2hlIEthZmthIGlzIHRoZSBib21iIQ==" 1
}
]
},
]
}'
- 1
- バイナリー形式のヘッダー値。Base64 としてエンコードされます。
12.1.2.4. Accept ヘッダー
コンシューマーを作成したら、以降のすべての GET リクエストには Accept
ヘッダーが以下のような形式で含まれる必要があります。
Accept: application/vnd.kafka.embedded-data-format.v2+json
embedded-data-format は、json
または binary
のいずれかです。
たとえば、サブスクライブされたコンシューマーのレコードを JSON 埋め込みデータ形式で取得する場合、この Accept ヘッダーが含まれるようにします。
Accept: application/vnd.kafka.json.v2+json
12.1.3. Kafka Bridge のロガーの設定
AMQ Streams Kafka ブリッジでは、関連する OpenAPI 仕様によって定義される操作ごとに異なるログレベルを設定できます。
それぞれの操作には、ブリッジが HTTP クライアントから要求を受信する対応する API エンドポイントがあります。各エンドポイントのログレベルを変更すると、受信および送信 HTTP 要求に関する詳細なログ情報を生成することができます。
ロガーは log4j.properties
ファイルで定義されます。このファイルには healthy
および ready
エンドポイントの以下のデフォルト設定が含まれています。
log4j.logger.http.openapi.operation.healthy=WARN, out log4j.additivity.http.openapi.operation.healthy=false log4j.logger.http.openapi.operation.ready=WARN, out log4j.additivity.http.openapi.operation.ready=false
その他すべての操作のログレベルは、デフォルトで INFO
に設定されます。ロガーは以下のようにフォーマットされます。
log4j.logger.http.openapi.operation.<operation-id>
ここで、<operation-id>
は特定の操作の識別子です。以下は、OpenAPI 仕様によって定義される操作の一覧です。
-
createConsumer
-
deleteConsumer
-
subscribe
-
unsubscribe
-
poll
-
assign
-
commit
-
send
-
sendToPartition
-
seekToBeginning
-
seekToEnd
-
seek
-
healthy
-
ready
-
openapi
12.1.4. Kafka Bridge API リソース
リクエストやレスポンスの例などを含む REST API エンドポイントおよび説明の完全リストは、「Kafka Bridge API reference」を参照してください。
12.1.5. Kafka Bridge アーカイブのダウンロード
AMQ Streams Kafka Bridge の zip 形式のディストリビューションは、Red Hat の Web サイトからダウンロードできます。
12.1.6. Kafka Bridge プロパティーの設定
この手順では、AMQ Streams Kafka Bridge によって使用される Kafka および HTTP 接続プロパティーを設定する方法を説明します。
Kafka 関連のプロパティーの適切な接頭辞を使用して、他の Kafka クライアントとして Kafka Bridge を設定します。
-
kafka.
サーバー接続やセキュリティーなどのプロデューサーとコンシューマーに適用される一般的な設定。 -
kafka.consumer.
コンシューマーのみに渡されるコンシューマー固有の設定。 -
kafka.producer.
プロデューサー固有の設定では、プロデューサーのみに渡されます。
HTTP プロパティーは、Kafka クラスターへの HTTP アクセスを有効にする他に、CPRS (Cross-Origin Resource Sharing) により Kafka Bridge のアクセス制御を有効化または定義する機能を提供します。CORS は、複数のオリジンから指定のリソースにブラウザーでアクセスできるようにする HTTP メカニズムです。CORS を設定するには、許可されるリソースオリジンのリストと、それらにアクセスする HTTP メソッドを定義します。リクエストの追加の HTTP ヘッダーには Kafka クラスターへのアクセスが許可されるオリジンが記述 されています。
手順
AMQ Streams Kafka Bridge インストールアーカイブで提供される
application.properties
ファイルを編集します。プロパティーファイルを使用して Kafka および HTTP 関連のプロパティーを指定し、分散トレーシングを有効にします。
Kafka コンシューマーやプロデューサー固有のプロパティーなど、標準の Kafka 関連のプロパティーを設定します。
以下を使用します。
-
kafka.bootstrap.servers
Kafka クラスターへのホスト/ポート接続を定義します。 -
kafka.producer.acks
HTTP クライアントに確認応答を提供する kafka.consumer.auto.offset.reset
Kafka でオフセットのリセットを管理する方法を判断する。Kafka プロパティーの設定に関する詳細は、Apache Kafka の Web サイトを参照してください。
-
HTTP 関連のプロパティーを設定し、Kafka クラスターへの HTTP アクセスを有効にします。
以下に例を示します。
http.enabled=true http.host=0.0.0.0 http.port=8080 1 http.cors.enabled=true 2 http.cors.allowedOrigins=https://strimzi.io 3 http.cors.allowedMethods=GET,POST,PUT,DELETE,OPTIONS,PATCH 4
分散トレースを有効または無効にします。
bridge.tracing=jaeger
プロパティーからコードコメントを削除して、分散トレースを有効にします。
その他のリソース
12.1.7. Kafka Bridge のインストール
以下の手順に従って、Red Hat Enterprise Linux に AMQ Streams Kafka Bridge をインストールします。
前提条件
手順
- まだ設定していない場合は、AMQ Streams Kafka Bridge インストールアーカイブを任意のディレクトリーに展開します。
設定プロパティーをパラメーターとして使用して、Kafka Bridge スクリプトを実行します。
以下に例を示します。
./bin/kafka_bridge_run.sh --config-file=_path_/configfile.properties
ログインでインストールが正常に行われたことを確認します。
HTTP-Kafka Bridge started and listening on port 8080 HTTP-Kafka Bridge bootstrap servers localhost:9092