6.2. 再現可能なコンテナービルドがさまざまな環境に与える影響
RHEL 上の再現可能なコンテナービルドにより、ビルドの時間や場所に関係なく、一貫性のある同一のコンテナーイメージが実現します。再現可能なコンテナービルドがさまざまな環境に与える影響は次のとおりです。
Konflux
- ソフトウェアサプライチェーンの完全性の向上: 再現可能なコンテナービルドは、セキュアで透明性の高いソフトウェアサプライチェーンを提供するという Konflux の使命を強化します。Konflux は再現可能なビルドを使用して、ビルド済みのコンテナイメージが、そのソースコードどおりに作られたものであることを検証します。どのサードパーティーも同じ入力からコンテナーを再ビルドし、出力がビット単位で同一であることを検証できます。また、RHEL の再現可能なコンテナービルドは、"転送中" の脆弱性から保護します。この脆弱性を突かれると、攻撃者によって配布用ミラーが侵害されたり、ビルドプロセスに悪意のあるコードを注入されたりするおそれがあります。Konflux は、リリースされたバイナリーがソースと一致することを証明でき、それによって自身のビルドインフラストラクチャーへの攻撃を軽減します。
- コンプライアンスと透明性の向上: Konflux は SLSA セキュリティーポリシーを適用します。再現可能な RHEL イメージの出所と来歴を検証し、コンプライアンス確保を簡素化します。Konflux は Tekton Chains を使用して、ビルドプロセス全体をドキュメント化したイミュータブルな署名済みアテステーションを作成します。RHEL の再現可能なコンテナービルドは、ベースイメージが信頼できるものであり、かつ検証可能な状態でビルドされていることを保証することで、このアテステーションの信頼の基礎となる層を追加します。
- 開発とセキュリティーのワークフロー: 再現可能なビルドは、複数回実行してもコンテナーイメージのダイジェストが一貫していることを保証し、テストとデバッグを簡素化します。Konflux はこれを活用して、RHEL コンテナー内の脆弱なパッケージを効率的にスキャンして更新します。Konflux は検証済みのアテステーションを使用して、基準に準拠していないビルドを自動的にブロックし、柔軟性を低下させることなくセキュリティーポリシーを適用します。
Bootc
- 検証可能なサプライチェーンとセキュリティーの強化: RHEL の再現可能なコンテナービルドは、起動可能な OS イメージのために、よりセキュアで信頼性が高く、透明性のあるビルドプロセスを構築することで、rhel-bootc を強化します。ユーザーは、特定の bootc イメージが、その元であると主張されているソースコードからビルドされたことを検証できます。そのため、攻撃者がビルドパイプラインを侵害し、コンテナーイメージに悪意のあるコードを注入することがより困難になります。
- CI/CD および GitOps ワークフローの効率化: Git ベースのワークフロー (GitOps) を使用して、再現性を保ちながら OS 設定とアプリケーションスタック全体を管理できます。Containerfile を変更しても、すべての環境で一貫した起動可能なイメージが生成されることが保証されます。再現可能なビルドは、自動化された CI/CD パイプラインの基礎となります。
RHEL AI
- 再現可能なコンテナービルドは、RHEL AI にとって重要です。AI モデルの開発とデプロイに欠かせない基本的な一貫性、セキュリティー、効率性を提供するためです。RHEL AI は起動可能なコンテナーイメージを提供します。つまり、オペレーティングシステム自体をコンテナーアーティファクトとして管理します。再現性により、このような基盤となる AI 環境の一貫性と信頼性が常に確保されます。