7.2.2. Debezium PostgreSQL コネクターによるデータベーススナップショットの実行方法


ほとんどの PostgreSQL サーバーは、WAL セグメントにデータベースの完全な履歴を保持しないように設定されています。つまり、PostgreSQL コネクターは WAL のみを読み取ってもデータベースの履歴全体を確認できません。そのため、コネクターが最初に起動すると、データベースの最初の 整合性スナップショット が実行されます。スナップショットを実行するためのデフォルト動作は、以下の手順で設定されます。この動作を変更するには、snapshot.mode コネクター設定プロパティーinitial 以外の値に設定します。

  1. SERIALIZABLE、READ ONLY、DEFERRABLE 分離レベルでトランザクションを開始し、このトランザクションでの後続の読み取りがデータの単一バージョンに対して行われるようにします。他のクライアントによる後続の INSERTUPDATE、および DELETE 操作によるデータの変更は、このトランザクションでは確認できません。
  2. サーバーのトランザクションログの現在の位置を読み取ります。
  3. データベーステーブルとスキーマをスキャンし、各行の READ イベントを生成し、そのイベントを適切なテーブル固有の Kafka トピックに書き込みます。
  4. トランザクションをコミットします。
  5. コネクターオフセットにスナップショットの正常な完了を記録します。

コネクターに障害が発生した場合、コネクターのリバランスが発生した場合、または 1 の後で 5 の完了前に停止した場合、コネクターは再起動後に新しいスナップショットを開始します。コネクターが最初のスナップショットを完了すると、PostgreSQL コネクターは手順 2 で読み取る位置からストリーミングを続行します。これにより、コネクターが更新を見逃さないようします。何らかの理由でコネクターが再び停止した場合、コネクターは再起動後に最後に停止した位置から変更のストリーミングを続行します。

表7.1 snapshot.mode コネクター設定プロパティーのオプション
オプション説明

always

コネクターは起動時に常にスナップショットを実行します。スナップショットが完了した後、コネクターは上記の手順の 3. から変更のストリーミングを続行します。このモードは、以下のような状況で使用すると便利です。

  • 一部の WAL セグメントが削除され、利用できなくなったことを認識している。
  • クラスターの障害後に、新しいプライマリーが昇格された。always スナップショットモードを使用すると、新しいプライマリーが昇格された後、コネクターが新しいプライマリーで再起動するまでに加えられた変更をコネクターが見逃さないようにすることができます。

never

コネクターはスナップショットを実行しません。このようにコネクターを設定したすると、起動時の動作は次のようになります。Kafka オフセットトピックに以前保存された LSN がある場合、コネクターはその位置から変更をストリーミングを続行します。保存された LSN がない場合、コネクターはサーバーで PostgreSQL の論理レプリケーションスロットが作成された時点で変更のストリーミングを開始します。never スナップショットモードは、対象のすべてのデータが WAL に反映されている場合にのみ便利です。

initial_only

コネクターはデータベースのスナップショットを実行し、変更イベントレコードをストリーミングする前に停止します。コネクターが起動していても、停止前にスナップショットを完了しなかった場合、コネクターはスナップショットプロセスを再起動し、スナップショットの完了時に停止します。

exported

非推奨、全てのモードがロックレスになります。

7.2.2.1. アドホックスナップショット

デフォルトでは、コネクターは初回スナップショット操作の開始後にのみ実行されます。通常の状況では、この最初のスナップショットが作成されると、コネクターではスナップショットプロセスは繰り返し処理されません。コネクターがキャプチャーする今後の変更イベントデータはストリーミングプロセス経由でのみ行われます。

ただし、場合によっては、最初のスナップショット中にコネクターを取得したデータが古くなったり、失われたり、または不完全となったり可能性があります。テーブルデータを再キャプチャーするメカニズムを提供するため、Debezium にはアドホックスナップショットを実行するオプションがあります。データベースで以下が変更されたことで、アドホックスナップショットが実行される場合があります。

  • コネクター設定は、異なるテーブルセットをキャプチャーするように変更されます。
  • Kafka トピックを削除して、再構築する必要があります。
  • 設定エラーや他の問題が原因で、データの破損が発生します。

アドホックと呼ばれるスナップショット を開始することで、以前にスナップショットをキャプチャーしたテーブルのスナップショットを再実行できます。アドホックスナップショットには、シグナルテーブル を使用する必要があります。シグナルリクエストを Debezium シグナルテーブルに送信して、アドホックスナップショットを開始します。

既存のテーブルのアドホックスナップショットを開始すると、コネクターはテーブルにすでに存在するトピックにコンテンツを追加します。既存のトピックが削除された場合には、トピックの自動作成 が有効になっているのであれば、Debezium は自動的にトピックを作成できます。

アドホックのスナップショットシグナルは、スナップショットに追加するテーブルを指定します。スナップショットは、データベースの内容全体をキャプチャーしたり、データベース内のテーブルのサブセットのみをキャプチャーしたりできます。

execute-snapshot メッセージをシグナルテーブルに送信してキャプチャーするテーブルを指定します。以下の表で説明されているように、run-snapshot シグナルのタイプを incremental に設定し、スナップショットに追加するテーブルの名前を指定します。

表7.2 アドホックの execute-snapshot シグナルレコードの例
フィールドデフォルト

type

incremental

実行するスナップショットのタイプを指定します。
タイプの設定は任意です。現在要求できるのは、incremental スナップショットのみです。

data-collections

該当なし

スナップショットを作成するテーブルの完全修飾名が含まれる配列。
名前の形式は signal.data.collection 設定オプションと同じです。

アドホックスナップショットのトリガー

execute-snapshot シグナルタイプのエントリーをシグナルテーブルに追加して、アドホックスナップショットを開始します。コネクターがメッセージを処理した後に、スナップショット操作を開始します。スナップショットプロセスは、最初と最後のプライマリーキーの値を読み取り、これらの値を各テーブルの開始ポイントおよびエンドポイントとして使用します。テーブルのエントリー数と設定されたチャンクサイズに基づいて、Debezium はテーブルをチャンクに分割し、チャンクごとに 1 度に 1 つずつスナップショットを順番に作成していきます。

現在、execute-snapshot アクションタイプは 増分スナップショット のみをトリガーします。詳細は、スナップショットの増分を参照してください。

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