17.5. クラスター内のリソースの移動
Pacemaker は、リソースを別のノードに移動するように設定し、必要に応じて手動でリソースを移動するように設定する様々なメカニズムを提供します。
クラスターリソースの手動による移行 に従って、pcs resource move
コマンドと pcs resource relocate
コマンドで、クラスターのリソースを手動で移動します。このコマンドの他にも、クラスターリソースの無効化、有効化、および禁止 に従ってリソースを有効、無効、および禁止にしてクラスターリソースの挙動を制御することもできます。
失敗した回数が、定義した値を超えると、新しいノードに移動し、外部接続が失われた時にリソースを移動するようにクラスターを設定できます。
17.5.1. 障害発生によるリソースの移動
リソースの作成時に、リソースに migration-threshold
オプションを設定し、定義した回数だけ障害が発生した場合にリソースが新しいノードに移動されるように設定できます。このしきい値に一度到達すると、このノードでは、以下が行われるまで、障害が発生したリソースを実行できなくなります。
-
リソースの
failure-timeout
値に到達します。 -
管理者は
pcs resource cleanup
コマンドを使用して、リソースの失敗数を手動でリセットします。
デフォルトで、migration-threshold
の値が INFINITY
に設定されています。INFINITY
は、内部的に非常に大きな有限数として定義されます。0 にすると、migration-threshold
機能が無効になります。
リソースの migration-threshold
を設定するのと、リソースの状態を維持しながら別の場所に移動させるようにリソースの移動を設定するのは同じではありません。
次の例では、dummy_resource
リソースに、移行しきい値 10 を追加します。この場合は、障害が 10 回発生すると、そのリソースが新しいノードに移動します。
# pcs resource meta dummy_resource migration-threshold=10
次のコマンドを使用すると、クラスター全体にデフォルトの移行しきい値を追加できます。
# pcs resource defaults update migration-threshold=10
リソースの現在の障害ステータスと制限を確認するには、pcs resource failcount show
コマンドを使用します。
移行しきい値の概念には、リソース起動の失敗とリソース停止の失敗の 2 つの例外があります。クラスタープロパティー start-failure-is-fatal
が true
に設定された場合 (デフォルト) は、起動の失敗により failcount
が INFINITY
に設定され、リソースが常に即座に移動するようになります。
停止時の失敗は、起動時とは若干異なり、極めて重大となります。リソースの停止に失敗し STONITH が有効になっていると、リソースを別のノードで起動できるように、クラスターによるノードのフェンスが行われます。STONITH を有効にしていない場合はクラスターに続行する手段がないため、別のノードでのリソース起動は試行されません。ただし、障害のタイムアウト後に再度停止が試行されます。
17.5.2. 接続状態の変更によるリソースの移動
以下の 2 つのステップに従って、外部の接続が失われた場合にリソースが移動するようにクラスターを設定します。
-
ping
リソースをクラスターに追加します。ping
リソースは、同じ名前のシステムユーティリティーを使用して、マシン (DNS ホスト名または IPv4/IPv6 アドレスによって指定されるリスト) にアクセス可能であるかをテストし、その結果を使用してpingd
と呼ばれるノード属性を維持します。 - 接続が失われたときに別のノードにリソースを移動させる、リソース場所制約を設定します。
以下の表には、ping
リソースに設定できるプロパティーを紹介しています。
フィールド | 説明 |
---|---|
| 今後の変更が発生するまでに待機する (弱める) 時間。これにより、クラスターノードが、わずかに異なる時間に接続が失われたことに気が付いたときに、クラスターでリソースがバウンスするのを防ぎます。 |
| 接続された ping ノードの数は、ノードの数にこの値を掛けて、スコアを取得します。複数の ping ノードが設定された場合に便利です。 |
| 現在の接続状態を判断するために接続するマシン。使用できる値には、解決可能な DNS ホスト名、IPv4 アドレス、および IPv6 アドレスが含まれます。ホストリストのエントリーはスペースで区切られます。 |
次のコマンド例は、gateway.example.com
への接続を検証する ping
リソースを作成します。実際には、ネットワークゲートウェイやルーターへの接続を検証します。リソースがすべてのクラスターノードで実行されるように、ping
リソースをクローンとして設定します。
# pcs resource create ping ocf:pacemaker:ping dampen=5s multiplier=1000 host_list=gateway.example.com clone
以下の例は、既存のリソース Webserver
に場所制約ルールを設定します。これにより、Webserver
リソースが現在実行しているホストが gateway.example.com
へ ping できない場合に、Webserver リソースを gateway.example.com
へ ping できるホストに移動します。
# pcs constraint location Webserver rule score=-INFINITY pingd lt 1 or not_defined pingd