第23章 レプリケーショントポロジーの管理
本章では、Identity Management(IdM) ドメイン内のサーバー間のレプリケーションを管理する方法を説明します。
23.1. レプリカ合意、トポロジー接尾辞、およびトポロジーセグメントの説明
レプリカを作成すると、Identity Management (IdM) が初期サーバーとレプリカ間にレプリカ合意を作成します。複製されるデータはトポロジーの接尾辞に保存され、2 つのレプリカの接尾辞間でレプリカ合意があると、接尾辞がトポロジーセグメントを形成します。これらの概念は、以下のセクションで詳細に説明されています。
23.1.1. IdM レプリカ間のレプリカ合意
管理者が、既存のサーバーに基づいてレプリカを作成すると、Identity Management (IdM) は、初期サーバーとレプリカとの間に レプリカ合意 を作成します。レプリカ合意は、データと設定が 2 台のサーバー間で継続的に複製されることを保証します。
IdM は、複数の読み取り/書き込みレプリカ複製 を使用します。この設定では、レプリカ合意に参加しているすべてのレプリカが更新の受信と提供を行うので、サプライヤーとコンシューマーとみなされます。レプリカ合意は常に双方向です。
図23.1 サーバーとレプリカ合意
IdM は、2 種類のレプリカ合意を使用します。
- ドメインレプリカ合意 は、アイデンティティー情報をレプリケートします。
- 証明書レプリカ合意 は、証明書情報をレプリケートします。
両方の複製チャンネルは独立しています。2 台のサーバー間で、いずれかまたは両方の種類のレプリカ合意を設定できます。たとえば、サーバー A とサーバー B にドメインレプリカ合意のみが設定されている場合は、証明書情報ではなく ID 情報だけが複製されます。
23.1.2. トポロジー接尾辞
トポロジー接尾辞は、レプリケートされるデータを保存します。IdM は、domain
と ca
の 2 種類のトポロジー接尾辞に対応します。それぞれの接尾辞は、個別のサーバーである個別のレプリケーショントポロジーを表します。
レプリカ合意が設定されると、同じタイプのトポロジー接尾辞を 2 つの異なるサーバーに結合します。
domain
接尾辞: dc=example,dc=comdomain
接尾辞には、ドメイン関連のデータがすべて含まれています。2 つのレプリカの
domain
接尾辞間でレプリカ合意が設定されると、ユーザー、グループ、およびポリシーなどのディレクトリーデータが共有されます。ca
接尾辞: o=ipacaca
接尾辞には、Certificate System コンポーネントのデータが含まれます。これは認証局 (CA) がインストールされているサーバーにのみ存在します。2 つのレプリカの
ca
接尾辞間でレプリカ合意が設定されると、証明書データが共有されます。
図23.2 トポロジー接尾辞
新規レプリカのインストール時には、ipa-replica-install
スクリプトが 2 つのサーバー間に初期トポロジーレプリカ合意をセットアップします。
例23.1 トポロジー接尾辞の表示
ipa topologysuffix-find
コマンドでトポロジー接尾辞のリストが表示されます。
$ ipa topologysuffix-find --------------------------- 2 topology suffixes matched --------------------------- Suffix name: ca Managed LDAP suffix DN: o=ipaca Suffix name: domain Managed LDAP suffix DN: dc=example,dc=com ---------------------------- Number of entries returned 2 ----------------------------
23.1.3. トポロジーセグメント
2 つのレプリカの接尾辞間でレプリカ合意があると、接尾辞は トポロジーセグメント を形成します。各トポロジーセグメントは、左ノードと右ノード で構成されます。ノードは、レプリカ合意に参加しているサーバーを表します。
IdM のトポロジーセグメントは常に双方向です。各セグメントは、サーバー A からサーバー B、およびサーバー B からサーバー A への 2 つのレプリカ合意を表します。そのため、データは両方の方向でレプリケートされます。
図23.3 トポロジーセグメント
例23.2 トポロジーセグメントの表示
ipa topologysegment-find
コマンドで、ドメインまたは CA 接尾辞に設定されたトポロジーセグメントが表示されます。たとえば、ドメイン接尾辞の場合は、以下のようになります。
$ ipa topologysegment-find Suffix name: domain ----------------- 1 segment matched ----------------- Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com Left node: server1.example.com Right node: server2.example.com Connectivity: both ---------------------------- Number of entries returned 1 ----------------------------
この例では、ドメイン関連のデータのみが server1.example.com
と server2.example.com
の 2 つのサーバー間で複製されます。
特定セグメントの詳細を表示するには、ipa topologysegment-show
コマンドを使用します。
$ ipa topologysegment-show Suffix name: domain Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com Left node: server1.example.com Right node: server2.example.com Connectivity: both