4.9. ファイルシステムおよびストレージ
ファイルシステムのサイズ制限の設定がサポートされるようになる
この更新により、ユーザーはファイルシステムを作成または変更する際に、ファイルシステムのサイズ制限を設定できるようになりました。stratisd
サービスは、動的なファイルシステムの拡張を可能にしますが、XFS ファイルシステムを過度に拡張すると重大なパフォーマンスの問題が発生する可能性があります。この機能の追加により、XFS ファイルシステムが特定のしきい値を超えて拡張された際に発生する可能性のあるパフォーマンスの問題を予防します。ファイルシステムのサイズ制限を設定することで、ユーザーはこのような問題を回避し、最適なパフォーマンスを確保できます。さらに、この機能により、ユーザーがファイルシステムのサイズに上限を設定できるようになり、効率的なリソース割り当てが保証されるため、プールのモニタリングとメンテナンスが向上します。
lvconvert
を使用して標準 LV をシン LV に変換できるようになりました
標準論理ボリューム (LV) をシンプールデータとして指定することで、lvconvert
コマンドを使用して標準 LV をシン LV に変換できるようになりました。この更新により、既存の LV を変換してシンプロビジョニング機能を使用できるようになります。
multipathd
が、NVMe デバイスの FPIN-Li イベントの検出をサポートするようになりました
以前は、multipathd
コマンドは SCSI デバイス上の Integrity Fabric Performance Impact Notification (PFIN-Li) イベントのみを監視していました。multipathd
は、ファイバーチャネルファブリックが送信するリンク整合性イベントをリッスンし、それを使用してパスをマージナルとしてマークすることができました。この機能は、SCSI デバイス上のマルチパスデバイスでのみサポートされていました。この機能の使用の制限により、multipathd
は Non-volatile Memory Express (NVMe) デバイスパスをマージナルとしてマークすることができませんでした。
この更新により、multipathd
は、SCSI デバイスと NVMe デバイスの両方で FPIN-Li イベントの検出をサポートするようになりました。その結果、マルチパスは、他のパスが利用可能である間は、ファブリック接続が良好でないパスを使用しなくなりました。これにより、そのような状況での IO 遅延を回避できます。
max_retries
オプションが multipath.conf
の defaults
セクションに追加されました
この機能拡張により、multipath.conf
ファイルの defaults
セクションに max_retries
オプションが追加されました。デフォルトではこのオプションは設定されておらず、5 回の再試行を指定する SCSI レイヤーのデフォルト値が使用されます。このオプションの有効な値は 0
から 5
です。このオプションを設定すると、SCSI デバイスの max_retries
sysfs
属性のデフォルト値がオーバーライドされます。この属性は、特定のエラータイプが発生した場合に、SCSI 層が失敗を返す前に I/O コマンドを再試行する回数を制御します。
マルチパスのパスチェッカーが成功を返すものの、デバイスへの I/O がハングしているという問題に遭遇した場合、このオプションを設定して、別のパスで I/O が再試行されるまでの時間を短縮できます。
Jira:RHEL-1729[1]
auto_resize
オプションが multipath.conf
の defaults
セクションに追加されました
以前は、マルチパスデバイスのサイズを変更するには、multipathd resize map <name>
コマンドを手動で実行する必要がありました。この更新により、multipath.conf
ファイルの defaults
セクションに auto_resize
オプションが追加されました。このオプションは、multipathd
コマンドがマルチパスデバイスのサイズを自動的に変更できるタイミングを制御します。auto_resize
のさまざまな値を以下に示します。
-
デフォルトでは、
auto_resize
はnever
に設定されています。この場合、multipathd
は変更なしで動作します。 -
auto_resize
がgrow_only
に設定されている場合、multipathd
は、デバイスのパスのサイズが拡大した際にマルチパスデバイスのサイズを自動的に変更します。 -
auto_resize
がgrow_shrink
に設定されている場合、multipathd
は、デバイスのパスのサイズが縮小した際にマルチパスデバイスを自動的に縮小します。
したがって、このオプションを有効にすると、マルチパスデバイスのサイズを手動で変更する必要がなくなります。
Jira:RHEL-986[1]
Arcus NVMeoFC multipath.conf
設定の変更がカーネルに含まれるようになりました
Device-mapper-multipath に、HPE Alletra 9000 NVMeFC アレイ用の設定が組み込まれるようになりました。Arcus は、NVMeoFC の ANA (非対称名前空間アクセス) のサポートを追加しました。これは SCSI の ALUA に似ています。RHEL ホストがこの機能を使用し、利用可能な場合は ANA 最適化パスにのみ I/O を送信するには、multipath.conf
の変更が必要です。この変更なしでは、デバイスマッパーは ANA 最適化パスと ANA 非最適化パスの両方に I/O を送信していました。
この変更は NVMeoFC のみに適用されます。FCP multipath.conf
コンテンツには、この ALUA をサポートする設定が以前から含まれていました。
stratis-cli
がバージョン 3.6.0 にリベース
stratis-cli
パッケージがバージョン 3.6.0 にアップグレードされました。主なバグ修正と機能拡張は、以下のとおりです。
-
stratis-cli
コマンドラインインターフェイスは、ファイルシステムの作成時にファイルシステムのサイズ制限を設定するための追加オプションをサポートします。set-size-limit
とunset-size-limit
という 2 つの新しいファイルシステムコマンドは、ファイルシステムの作成後にファイルシステムのサイズ制限を設定または設定解除します。 -
stratis-cli
では、手動入力を使用してカーネルキーリングにキーを設定するときに、パスワード検証が組み込まれるようになりました。 -
stratis-cli
は、プールを停止するときに名前または UUID でプールを指定することをサポートするようになりました。 -
stratis-cli
の更新にはさまざまな内部改善も含まれ、パッケージ設定で少なくとも Python 3.9 バージョンの要件が強制されるようになりました。
Jira:RHEL-2265[1]
boom
がバージョン 1.6.0 にリベース
boom
パッケージがバージョン 3.6.0 にアップグレードされました。主な機能拡張は、次のとおりです。
-
systemd
コマンドがサポートするマルチボリュームスナップショットブート構文のサポート。 -
ブートエントリーでマウントする追加のボリュームを指定する、
new --mount
オプションおよび--no-fstab
オプションの追加。
SAN からの NVMe-FC ブートが完全にサポートされるようになりました
Red Hat Enterprise Linux 9.2 でテクノロジープレビューとして導入された Non-volatile Memory Express (NVMe) over Fibre Channel (NVMe/FC) ブートが、完全にサポートされるようになりました。一部の NVMe/FC ホストバスアダプターは、NVMe/FC ブート機能をサポートします。NVMe/FC ブート機能を有効にするようにホストバスアダプター (HBA) をプログラミングする方法の詳細は、NVMe/FC ホストバスアダプターの製造元のドキュメントを参照してください。
Jira:RHEL-1492[1]