第1章 はじめに
Red Hat OpenStack Platform director は、完全な OpenStack 環境をインストールおよび管理するためのツールセットで、OpenStack のプロジェクト TripleO (OpenStack-On-OpenStack の略) をベースとしています。このプロジェクトは、OpenStack のコンポーネントを活用して、完全に機能する OpenStack 環境をインストールします。これには、OpenStack ノードとして使用するベアメタルシステムのプロビジョニングや制御を行う OpenStack のコンポーネントが含まれます。director により、効率的で堅牢性の高い、完全な Red Hat OpenStack Platform 環境を簡単にインストールできます。
Red Hat OpenStack Platform director は、アンダークラウドとオーバークラウドという 2 つの主要な概念を採用しています。以下の数項では、それぞれの概念について説明します。
図1.1 アンダークラウドおよびオーバークラウドの基本レイアウト
1.1. アンダークラウド
アンダークラウドは、director の主要ノードで、OpenStack をインストールした単一システムです。このノードには、OpenStack 環境 (オーバークラウド) を構成する OpenStack ノードのプロビジョニング/管理のためのコンポーネントが含まれます。アンダークラウドを形成するコンポーネントは、以下の機能を提供します。
- 環境プランニング: アンダークラウドは、コンピュート、コントローラー、各種ストレージロールなどの Red Hat OpenStack Platform ロールを割り当てるプランニング機能を提供します。
- ベアメタルシステムの制御: アンダークラウドは、電源管理の制御には各ノードの Intelligent Platform Management Interface (IPMI) を使用し、ハードウェア属性の検出や OpenStack の各ノードへのインストールには PXE ベースのサービスを使用します。この機能により、ベアメタルシステムを OpenStack ノードとしてプロビジョニングする方法が提供されます。
- オーケストレーション: アンダークラウドは、OpenStack 環境を構築するための YAML テンプレートセットの提供および読み込みを行います。
Red Hat OpenStack Platform director は、ターミナルベースのコマンドラインインターフェースで、これらのアンダークラウド機能を実行します。
アンダークラウドは、以下のコンポーネントで構成されます。
- OpenStack Bare Metal (Ironic) および OpenStack Compute (Nova): ベアメタルノードの管理
- OpenStack Networking (Neutron) および Open vSwitch: ベアメタルノードのネットワークの制御
- OpenStack Image Server (Glance): ベアメタルマシンへ書き込むイメージの格納
- OpenStack Orchestation (Heat) および Puppet: director がオーバークラウドイメージをディスクに書き込んだ後のノードのオーケストレーションおよび設定
- OpenStack Telemetry (Ceilometer): 監視とデータの収集
- OpenStack Identity (Keystone): director のコンポーネントの認証と承認
- MariaDB: director のデータベースバックエンド
- RabbitMQ: director コンポーネントのメッセージキュー