5.11. 統合フェンスデバイスで使用する ACPI の設定
クラスターが統合フェンスデバイスを使用する場合は、即時かつ完全なフェンシングを実行できるように、ACPI (Advanced Configuration and Power Interface) を設定する必要があります。
クラスターノードが統合フェンスデバイスでフェンシングされるように設定されている場合は、そのノードの ACPI Soft-Off を無効にします。ACPI Soft-Off を無効にすると、統合フェンスデバイスはクリーンシャットダウンを試行するのではなく、ノードを即時かつ完全にオフにできます(例: shutdown -h now)。それ以外の場合は、ACPI Soft-Off が有効になっていると、統合フェンスデバイスがノードをオフにするのに 4 秒以上かかることがあります (以下の注記部分を参照してください)。さらに、ACPI Soft-Off が有効になっていて、ノードがシャットダウン時にパニック状態になるか、フリーズすると、統合フェンスデバイスがノードをオフにできない場合があります。このような状況では、フェンシングが遅延するか、失敗します。したがって、ノードが統合フェンスデバイスでフェンシングされ、ACPI Soft-Off が有効になっている場合は、クラスターが徐々に復元します。または管理者の介入による復旧が必要になります。
注記
ノードのフェンシングにかかる時間は、使用している統合フェンスデバイスによって異なります。統合フェンスデバイスの中には、電源ボタンを押し続けるのと同じ動作を実行するものもあります。この場合は、ノードがオフになるのに 4 秒から 5 秒かかります。また、電源ボタンを押してすぐ離すのと同等の動作を行い、ノードの電源をオフにする行為をオペレーティングシステムに依存する統合フェンスデバイスもあります。この場合は、ノードがオフになるのにかかる時間は 4~ 5 秒よりも長くなります。
- ACPI Soft-Off を無効にする場合は、BIOS 設定を instant-off、またはこれに類似する設定に変更することが推奨されます。これにより、「BIOS で ACPI Soft-Off を無効化」 で説明しているように、ノードは遅延なくオフになります。
システムによっては、BIOS で ACPI Soft-Off を無効にできません。お使いのクラスターでは、BIOS で ACPI Soft-Off を無効にできない場合に、以下のいずれかの方法で ACPI Soft-Off を無効にできます。
- 「logind.conf ファイルで ACPI Soft-Off の無効化」 の説明に従って、
HandlePowerKey=ignore
を/etc/systemd/logind.conf
ファイルに設定し、ノードがフェンシングされるとすぐにオフになることを確認します。これが、ACPI Soft-Off を無効にする 1 つ目の代替方法です。 acpi=off
で説明されているように、カーネル起動コマンドラインに 「GRUB 2 ファイルでの ACPI の完全な無効化」 を追加します。これは、ACPI Soft-Off を無効にする 2 つ目の代替方法です。この方法の使用が推奨される場合、または 1 つ目の代替方法が利用できない場合に使用してください。重要この方法は、ACPI を完全に無効にします。コンピューターの中には、ACPI が完全が無効になってるとシステムが正しく起動しないものもあります。お使いのクラスターに適した方法が他にない場合に 限り、この方法を使用してください。
5.11.1. BIOS で ACPI Soft-Off を無効化
以下の手順で、各クラスターノードの BIOS を設定して、ACPI Soft-Off を無効にできます。
注記
BIOS で ACPI Soft-Off を無効にする手順は、サーバーシステムにより異なる場合があります。この手順は、お使いのハードウェアのドキュメントで確認する必要があります。
- ノードを再起動して、BIOS CMOS セットアップユーティリティー プログラムを起動します。
- 例5.1「BIOS CMOS セットアップユーティリティー: を に設定します。」 が に設定された メニューを表示します。メニューで、 (またはそれと同等の機能)を に設定します(または、遅延なく電源ボタンでノードをオフにする同等の設定)。注記
- BIOS CMOS セットアップユーティリティー プログラムを終了し、BIOS 設定を保存します。
- ノードがフェンシングされるとすぐにオフになることを確認します。フェンスデバイスのテストの詳細は 「フェンスデバイスのテスト」 を参照してください。
例5.1 BIOS CMOS セットアップユーティリティー: を に設定します。
+---------------------------------------------|-------------------+ | ACPI Function [Enabled] | Item Help | | ACPI Suspend Type [S1(POS)] |-------------------| | x Run VGABIOS if S3 Resume Auto | Menu Level * | | Suspend Mode [Disabled] | | | HDD Power Down [Disabled] | | | Soft-Off by PWR-BTTN [Instant-Off | | | CPU THRM-Throttling [50.0%] | | | Wake-Up by PCI card [Enabled] | | | Power On by Ring [Enabled] | | | Wake Up On LAN [Enabled] | | | x USB KB Wake-Up From S3 Disabled | | | Resume by Alarm [Disabled] | | | x Date(of Month) Alarm 0 | | | x Time(hh:mm:ss) Alarm 0 : 0 : | | | POWER ON Function [BUTTON ONLY | | | x KB Power ON Password Enter | | | x Hot Key Power ON Ctrl-F1 | | | | | | | | +---------------------------------------------|-------------------+
以下の例は、
を に設定し、 に設定していることを示しています。
5.11.2. logind.conf ファイルで ACPI Soft-Off の無効化
/etc/systemd/logind.conf
ファイルで電源キーの処理を無効にするには、以下の手順を行います。
/etc/systemd/logind.conf
ファイルで以下の設定を定義します。HandlePowerKey=ignore
systemd
設定をリロードします。#
systemctl daemon-reload
- ノードがフェンシングされるとすぐにオフになることを確認します。フェンスデバイスのテストの詳細は 「フェンスデバイスのテスト」 を参照してください。
5.11.3. GRUB 2 ファイルでの ACPI の完全な無効化
カーネルの GRUB メニューエントリーに
acpi=off
を追加すると、ACPI Soft-Off を無効にできます。
重要
この方法は、ACPI を完全に無効にします。コンピューターの中には、ACPI が完全が無効になってるとシステムが正しく起動しないものもあります。お使いのクラスターに適した方法が他にない場合に 限り、この方法を使用してください。
以下の手順で、GRUB 2 ファイルで ACPI を無効にします。
- 以下のように
--args
オプションを grubby ツールの--update-kernel
オプションと組み合わせて使用し、各クラスターノードのgrub.cfg
ファイルを変更します。#
grubby --args=acpi=off --update-kernel=ALL
GRUB 2 の概要は、 システム管理者のガイド のGRUB 2 での作業を参照してください。 - ノードを再起動します。
- ノードがフェンシングされるとすぐにオフになることを確認します。フェンスデバイスのテストの詳細は 「フェンスデバイスのテスト」 を参照してください。