第1章 Red Hat High Availability Add-On 設定および管理リファレンスの概要


本章では、Pacemaker を使用する Red Hat High Availability Add-On がサポートするオプションと機能について説明します。ステップごとの基本設定の例は『Red Hat High Availability Add-On の管理』を参照してください。
pcs 設定インターフェイスまたは pcsd GUI インターフェイスを使用して、Red Hat High Availability Add-On クラスターを設定できます。

1.1. 新機能と変更点

本セクションでは、Red Hat Enterprise Linux 7 の初回リリース以降に追加された Red Hat High Availability Add-On の新機能を取り上げます。

1.1.1. Red Hat Enterprise Linux 7.1 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.1 には、ドキュメントや機能を対象とする以下の更新および変更が含まれています。
  • 「クラスターリソースのクリーンアップ」 に記載されているように、pcs resource cleanup コマンドが、すべてのリソースの状態と failcount をリセットできるようになりました。
  • 「リソースを手作業で移動する」 に記載されているように、pcs resource move コマンドの lifetime パラメーターを指定できます。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.1 より、pcs acl コマンドを使用してローカルユーザーのパーミッションを設定し、アクセス制御リスト(ACL)を使用してクラスター設定への読み取り専用アクセスまたは読み書きアクセスを許可できます。ACL の詳細は、「ユーザーのパーミッション設定」 を参照してください。
  • 「順序付けされたリソースセット」 および 「リソースのコロケーション」 が大幅に更新および明確化されました。
  • 「リソースの作成」 に、pcs resource create コマンドの disabled パラメーターが追加され、作成されたリソースが自動的に起動しないことが示されました。
  • 「クォーラムオプションの設定」 に、クォーラムの確立時にクラスターがすべてのノードを待たないようにする cluster quorum unblock 機能が記載されています。
  • 「リソースの作成」 に、リソースグループの順序付けを設定するために使用できる pcs resource create コマンドの before および after パラメーターの説明が追加されました。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.1 リリースでは、クラスター設定を tarball にバックアップし、pcs config コマンドの backup および restore オプションを使用して、バックアップからすべてのノードのクラスター設定ファイルを 復元 できます。この機能の詳細は 「クラスター設定のバックアップおよび復元」 を参照してください。
  • 内容を明確にするため本書全体に小変更が加えられました。

1.1.2. Red Hat Enterprise Linux 7.2 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.2 ではドキュメントと機能が以下のように更新/変更されています。
  • pcs resource relocate run コマンドを使用して、現在のクラスターのステータス、制約、リソースの場所、およびその他の設定によって決定される優先ノードにリソースを移行できるようになりました。このコマンドの詳細は、「リソースの優先ノードへの移動」 を参照してください。
  • 「モニタリングのリソースを使ったイベント通知」 外部プログラムを実行してクラスター通知の処理を判断するために ClusterMon リソースを設定する方法をより深く説明するため、変更および拡張されました。
  • 冗長な電源供給用のフェンスを設定する場合に各デバイスを 1 度のみ設定する必要があり、ノードのフェンシングには両方のデバイスが必要になることを指定する必要があります。冗長な電源供給にフェンスを設定する方法の詳細は、「冗長電源のフェンシング設定」 を参照してください。
  • このドキュメントの 「クラスターノードの追加」 に、ノードを既存のクラスターに追加する手順が追加されました。
  • 表7.1「簡単な場所の制約オプション」 の説明にあるように、新しい resource-discovery の場所制約オプションにより、Pacemaker が指定されたリソースのノードでリソース検出を実行すべきかどうかを指定できます。
  • ドキュメント全体にわたり、記載内容の明確化を図り、若干の修正を加えました。

1.1.3. Red Hat Enterprise Linux 7.3 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.3 ではドキュメントと機能が以下のように更新、変更されています。
  • このバージョンでは、「pacemaker_remote サービス」 全体が書き直されました。
  • アラートエージェントを使用して Pacemaker アラートを設定できます。アラートエージェントは、リソース設定と操作を処理するためにクラスター呼び出しのリソースエージェントと同様にクラスターが呼び出す外部プログラムです。Pacemaker アラートエージェントの説明は 「Pacemaker アラートエージェント (Red Hat Enterprise Linux 7.3 以降)」 を参照してください。
  • このリリースでは新しいクォーラム管理コマンドがサポートされ、クォーラムの状態を表示し、expected_votes パラメーターを変更できます。これらのコマンドの説明は 「クォーラム管理コマンド (Red Hat Enterprise Linux 7.3 以降)」 を参照してください。
  • 「クォーラムオプションの変更 (Red Hat Enterprise Linux 7.3 以降)」 の説明に従って、pcs quorum update コマンドを使用してクラスターの一般的なクォーラムオプションを変更できるようになりました。
  • クラスターのサードパーティー判別デバイスとして動作する個別のクォーラムデバイスを設定できます。この機能は主に、標準のクォーラムルールが許可するよりも多くのノード障害をクラスターで維持できるようにするために使用されます。この機能はテクニカルリビューとしてのみ提供されます。クォーラムデバイスの説明は 「クォーラムデバイス」 を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.3 には、Booth クラスターチケットマネージャーを使用して複数のサイトにまたがる高可用性クラスターを設定する機能が提供されます。この機能はテクニカルリビューとしてのみ提供されます。Booth クラスターチケットマネージャーの説明は 14章Pacemaker を用いたマルチサイトクラスターの設定 を参照してください。
  • pacemaker_remote サービスを実行している KVM ゲストノードを設定する場合、グループにゲストノードを含めることができます。これにより、ストレージデバイス、ファイルシステム、および VM をグループ化できます。KVM ゲストノードの設定に関する詳細は 「設定の概要: KVM ゲストノード」 を参照してください。
さらに、ドキュメント全体にわたり記載内容の明確化を図り、若干の修正を加えました。

1.1.4. Red Hat Enterprise Linux 7.4 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.4 では、ドキュメントと機能が以下のように更新、変更されています。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 には、Booth クラスターチケットマネージャーを使用して複数のサイトにまたがる高可用性クラスターを設定する機能が完全に提供されます。Booth クラスターチケットマネージャーの説明は 14章Pacemaker を用いたマルチサイトクラスターの設定 を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 は、個別のクォーラムを設定する機能に完全に対応しています。この機能は主に、標準のクォーラムルールが許可するよりも多くのノード障害をクラスターで維持できるようにするために使用されます。クォーラムデバイスの説明は 「クォーラムデバイス」 を参照してください。
  • ノード名で適用した正規表現と、ノード属性とその値によってフェンシングトポロジーでノードを指定できるようになりました。フェンシングレベルの説明は、「フェンスレベルの設定」 を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 は、NodeUtilization リソースエージェントをサポートします。これは、利用可能な CPU、ホストメモリーの可用性、およびハイパーバイザーメモリーの可用性のシステムパラメーターを検出し、これらのパラメーターを CIB に追加します。このリソースエージェントの詳細は、「NodeUtilization リソースエージェント (Red Hat Enterprise Linux 7.4 以降)」 を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 では、クラスターノード add-guest コマンドおよび クラスターノード remove-guest コマンドは、cluster remote-node add および cluster remote-node remove コマンドを置き換えます。pcs cluster node add-guest コマンドはゲストノードの authkey をセットアップし、pcs cluster node add-remote コマンドはリモートノードの authkey を設定します。更新したゲストとリモートノード設定手順は、「リソースとしての仮想ドメインの設定」 を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 は、systemd resource-agents-deps ターゲットに対応しています。これにより、「Pacemaker で管理されていないリソースの依存関係の起動順の設定 (Red Hat Enterprise Linux 7.4 以降)」 で説明しているように、クラスターにより管理されない依存関係を持つリソースを含むクラスターに適切な起動順序を設定できるようになります。
  • マスター/スレーブクローンとしてリソースを作成するコマンドの形式は、このリリースで変更されています。マスター/スレーブクローンの作成の説明は、「多状態のリソース: 複数モードのリソース」 を参照してください。

1.1.5. Red Hat Enterprise Linux 7.5 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.5 では、ドキュメントと機能が以下のように更新、変更されています。

1.1.6. Red Hat Enterprise Linux 7.8 の新機能および変更された機能

Red Hat Enterprise Linux 7.8 では、ドキュメントと機能が以下のように更新、変更されています。
  • Red Hat Enterprise Linux 7.8 以降では、ノードが正常にシャットダウンすると、ノードに接続されているリソースがノードにロックされ、シャットダウンしたノードがクラスターに再度参加するときに再び起動するまで、他の場所で起動できないように、Pacemaker を設定できます。これにより、ノードのリソースをクラスター内の他のノードにフェイルオーバーせずに、サービスの停止が許容できるメンテナンスウィンドウ中にノードの電源を切ることができます。ノードの正常なシャットダウン時に停止したままになるようにリソースを設定する方法は、「 クリーンノードのシャットダウンで停止するようにリソースを設定 (Red Hat Enterprise Linux 7.8 以降) 」 を参照してください。
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