7.2.5. フラットプロバイダーネットワークのパケットフローが機能する仕組み
本項では、フラットプロバイダーネットワークが設定された状況で、インスタンスに対するトラフィックがどのように送付されるかについて詳しく説明します。
フラットプロバイダーネットワークでの送信トラフィックのフロー
以下の図で、インスタンスから送信され直接外部ネットワークに到達するトラフィックのパケットフローについて説明します。br-ex
外部ブリッジを設定した後に、物理インターフェースをブリッジに追加してインスタンスをコンピュートノードに作成すると、得られるインターフェースとブリッジの構成は、以下の図のようになります (iptables_hybrid
ファイアウォールドライバーを使用する場合)。
1. パケットはインスタンスの eth0
インターフェースから送信され、linux ブリッジ qbr-xx
に到達します。
2. ブリッジ qbr-xx
は、veth ペア qvb-xx <-> qvo-xxx
を使用して br-int
に接続されます。これは、セキュリティーグループによって定義されている受信/送信のファイアウォールルールの適用にブリッジが使用されるためです。
3. インターフェース qvb-xx
は qbr-xx
linux ブリッジに、qvo-xx
は br-int
Open vSwitch (OVS) ブリッジに接続されています。
`qbr-xx`Linux ブリッジの設定例:
# brctl show qbr269d4d73-e7 8000.061943266ebb no qvb269d4d73-e7 tap269d4d73-e7
br-int
上の qvo-xx
の設定:
# ovs-vsctl show Bridge br-int fail_mode: secure Interface "qvof63599ba-8f" Port "qvo269d4d73-e7" tag: 5 Interface "qvo269d4d73-e7"
ポート qvo-xx
は、フラットなプロバイダーネットワークに関連付けられた内部 VLAN タグでタグ付けされます。この例では VLAN タグは 5
です。パケットが qvo-xx
に到達する際に、VLAN タグがパケットのヘッダーに追加されます。
次にこのパケットは、パッチピア int-br-ex <-> phy-br-ex
を使用して br-ex
OVS ブリッジに移動します。
br-int
でのパッチピアの設定例を以下に示します。
# ovs-vsctl show Bridge br-int fail_mode: secure Port int-br-ex Interface int-br-ex type: patch options: {peer=phy-br-ex}
br-ex
でのパッチピアの設定例
Bridge br-ex Port phy-br-ex Interface phy-br-ex type: patch options: {peer=int-br-ex} Port br-ex Interface br-ex type: internal
このパケットが br-ex
の phy-br-ex
に到達すると、br-ex
内の OVS フローにより VLAN タグ (5) が取り除かれ、物理インターフェースに転送されます。
以下の出力例では、phy-br-ex
のポート番号は 2
となっています。
# ovs-ofctl show br-ex OFPT_FEATURES_REPLY (xid=0x2): dpid:00003440b5c90dc6 n_tables:254, n_buffers:256 capabilities: FLOW_STATS TABLE_STATS PORT_STATS QUEUE_STATS ARP_MATCH_IP actions: OUTPUT SET_VLAN_VID SET_VLAN_PCP STRIP_VLAN SET_DL_SRC SET_DL_DST SET_NW_SRC SET_NW_DST SET_NW_TOS SET_TP_SRC SET_TP_DST ENQUEUE 2(phy-br-ex): addr:ba:b5:7b:ae:5c:a2 config: 0 state: 0 speed: 0 Mbps now, 0 Mbps max
以下の出力例では、VLAN タグが 5
(dl_vlan=5
) の phy-br-ex
(in_port=2
) に到達するパケットを示しています。また、br-ex の OVS フローにより VLAN タグが取り除かれ、パケットが物理インターフェースに転送されます。
# ovs-ofctl dump-flows br-ex NXST_FLOW reply (xid=0x4): cookie=0x0, duration=4703.491s, table=0, n_packets=3620, n_bytes=333744, idle_age=0, priority=1 actions=NORMAL cookie=0x0, duration=3890.038s, table=0, n_packets=13, n_bytes=1714, idle_age=3764, priority=4,in_port=2,dl_vlan=5 actions=strip_vlan,NORMAL cookie=0x0, duration=4702.644s, table=0, n_packets=10650, n_bytes=447632, idle_age=0, priority=2,in_port=2 actions=drop
物理インターフェースが別の VLAN タグ付けされたインターフェースの場合、その物理インターフェースはパケットにタグを追加します。
フラットプロバイダーネットワークでの受信トラフィックのフロー
本項では、外部ネットワークからの受信トラフィックがインスタンスのインターフェースに到達するまでのフローについて説明します。
1. 受信トラフィックは、物理ノードの eth1
に到達します。
2. パケットは br-ex
ブリッジに移動します。
3. このパケットは、パッチピア phy-br-ex <--> int-br-ex
を通じて br-int
に移動します。
以下の例では、int-br-ex
はポート番号 15
を使用します。15(int-br-ex)
が含まれるエントリーに注目してください。
# ovs-ofctl show br-int OFPT_FEATURES_REPLY (xid=0x2): dpid:00004e67212f644d n_tables:254, n_buffers:256 capabilities: FLOW_STATS TABLE_STATS PORT_STATS QUEUE_STATS ARP_MATCH_IP actions: OUTPUT SET_VLAN_VID SET_VLAN_PCP STRIP_VLAN SET_DL_SRC SET_DL_DST SET_NW_SRC SET_NW_DST SET_NW_TOS SET_TP_SRC SET_TP_DST ENQUEUE 15(int-br-ex): addr:12:4e:44:a9:50:f4 config: 0 state: 0 speed: 0 Mbps now, 0 Mbps max
br-int のトラフィックフローの確認
1. パケットが int-br-ex
に到達すると、br-int
ブリッジ内の OVS フロールールにより、内部 VLAN タグ 5
を追加するようにパケットが変更されます。actions=mod_vlan_vid:5
のエントリーを参照してください。
# ovs-ofctl dump-flows br-int NXST_FLOW reply (xid=0x4): cookie=0x0, duration=5351.536s, table=0, n_packets=12118, n_bytes=510456, idle_age=0, priority=1 actions=NORMAL cookie=0x0, duration=4537.553s, table=0, n_packets=3489, n_bytes=321696, idle_age=0, priority=3,in_port=15,vlan_tci=0x0000 actions=mod_vlan_vid:5,NORMAL cookie=0x0, duration=5350.365s, table=0, n_packets=628, n_bytes=57892, idle_age=4538, priority=2,in_port=15 actions=drop cookie=0x0, duration=5351.432s, table=23, n_packets=0, n_bytes=0, idle_age=5351, priority=0 actions=drop
2. 2 番目のルールは、VLAN タグのない (vlan_tci=0x0000) int-br-ex (in_port=15) に到達するパケットを管理します。このルールにより、パケットに VLAN タグ 5 が追加され (actions=mod_vlan_vid:5,NORMAL
)、qvoxxx
に転送されます。
3. qvoxxx
は、VLAN タグを削除した後に、パケットを受け入れて qvbxx
に転送します。
4. 最終的にパケットはインスタンスに到達します。
VLAN tag 5 は、フラットプロバイダーネットワークを使用するテスト用コンピュートノードで使用したサンプルの VLAN です。この値は neutron-openvswitch-agent
により自動的に割り当てられました。この値は、お使いのフラットプロバイダーネットワークの値とは異なる可能性があり、2 つの異なるコンピュートノード上にある同じネットワークにおいても異なる可能性があります。