6.12. 高可用性およびクラスター
pcs
がリソースの作成または更新時にリソースパラメーターを検証するようになる
クラスターリソースを作成または更新すると、pcs
コマンドラインインターフェイスは、入力したパラメーターを検証するようにリソースエージェントに自動的に要求するようになりました。--agent-validation
を指定すると、無効なパラメーターによってエラーが発生します。下位互換性を維持するために、--agent-validation
を指定しない場合、無効なパラメーターによって警告が出力されますが、誤った設定を防ぐことはできません。
潜在的に破壊的なアクションを確認するための新しい --yes
フラグ
クラスターの破棄、クォーラムのブロック解除、またはフェンスされているノードの確認など、潜在的に破壊的なアクションを確認するために、pcs
コマンドラインインターフェイスは --yes
フラグをサポートするようになりました。以前は、これらの操作を確認するために --force
フラグを使用していましたが、このフラグは検証エラーをオーバーライドするためにも使用されていました。これら 2 つの機能が単一のフラグに統合されたことで、ユーザーが検証エラーをオーバーライドする意図だけで、誤って破壊的な操作を確認してしまう可能性があります。検証エラーをオーバーライドにするには --force
フラグを使用し、潜在的に破壊的なアクションを確認するには --yes
フラグを使用する必要があります。
新しい pcs status wait
コマンド
pcs
コマンドラインインターフェイスで、pcs status wait
コマンドを使用できるようになりました。このコマンドにより、Pacemaker は Cluster Information Base (CIB) を変更したことで必要になるアクションが確実に完了され、実際のクラスター状態と要求されたクラスター状態を一致させるための追加アクションは不要になります。
Jira:RHEL-38491[1]
クラスター内のリソースのステータスをクエリーする新しいコマンドに対する pcs
サポート
pcs
コマンドラインインターフェイスで、クラスター内の 1 つのリソースのさまざまな属性をクエリーするために pcs status query resource
コマンドを使用できるようになりました。これらのコマンドは以下のクエリーを実行します。
- リソースの存在
- リソースのタイプ
- リソースの状態
- 集合リソースのメンバーに関する各種情報
- リソースが実行されているノード
プレーンテキストの出力を解析する必要がないため、これらのコマンドは pcs ベースのスクリプトに使用できます。
Jira:RHEL-38489[1]
テキスト、JSON、およびコマンド形式で設定を表示するための新しい pcs resource defaults
および pcs resource op defaults
オプション
pcs resource defaults
コマンドと pcs resource op defaults
コマンド、およびそのエイリアスである pcs stonith defaults
と pcs stonith op defaults
で、--output-format
オプションを使用できるようになりました。
-
--output-format=text
を指定すると、このオプションのデフォルト値である設定済みのリソースのデフォルトまたは操作のデフォルトがプレーンテキスト形式で表示されます。 -
--output-format=cmd
を指定すると、現在のクラスターのデフォルト設定から作成されたpcs resource defaults
またはpcs resource op defaults
コマンドが表示されます。これらのコマンドを使用して、別のシステム上で設定済みのリソースのデフォルトまたはリソース操作のデフォルトを再作成できます。 -
--output-format=json
を指定すると、設定済みのリソースのデフォルトまたはリソース操作のデフォルトが JSON 形式で表示されます。これは、マシンの解析に適しています。
Jira:RHEL-38487[1]
pcsd
Web UI が RHEL Web コンソールアドオンとして利用可能になる
cockpit-ha-cluster
パッケージがインストールされている場合、pcsd
Web UI は HA Cluster Management RHEL Web コンソールアドオンとして利用できるようになりました。スタンドアロンインターフェイスとしては動作しなくなりました。
パニックが発生したノードをシャットダウンし、自動的に再起動しない新しい Pacemaker オプション
/etc/sysconfig/pacemaker
設定ファイルの PCMK_panic_action
変数を off
または sync-off
に設定できるようになりました。この変数を off
または sync-off
に設定すると、パニック状態が発生した後、ノードはシャットダウンされ、自動的に再起動されません。
クラスターリソースタグをテキスト、JSON、コマンド形式で表示するための新しい pcs tag
コマンドオプション
pcs tag [config]
コマンドは、次のユースケースで --output-format
オプションをサポートするようになりました。
-
--output-format=text
を指定して、設定されたテキストをプレーンテキスト形式で表示します。これはこのオプションのデフォルト値です。 -
--output-format=cmd
を指定して、現在のクラスタータグ設定から作成されたコマンドを表示します。これらのコマンドを使用して、別のシステムで設定されたタグを再作成できます。 -
--output-format=json
を指定して、設定されたタグを機械解析に適した JSON 形式で表示します。
フェンシングレベル設定を JSON 形式および pcs
コマンドとしてエクスポートすることをサポート
pcs stonith config
コマンドと pcs stonith level config
コマンドは、フェンシングレベル設定を JSON 形式と pcs
コマンドとして表示するための --output-format=
オプションをサポートするようになりました。
-
--output-format=cmd
を指定すると、フェンシングレベルを設定する現在のクラスター設定から作成されたpcs
コマンドが表示されます。これらのコマンドを使用して、別のシステムで設定されたフェンシングレベルを再作成できます。 -
--output-format=json
を指定すると、マシン解析に適した JSON 形式でフェンシングレベル設定が表示されます。
pcs
コマンド 1 つで複数のリソースを削除する
この更新前は、pcs resource delete
、pcs resource remove
、pcs stonith delete
、および pcs stonith remove
コマンドは、一度に 1 つのリソースのみの削除をサポートしていました。この更新により、1 つのコマンドで複数のリソースを一度に削除できるようになりました。
グローバルに一意なクラスターリソースクローンの簡素化された設定
クラスターリソースクローンをグローバルに一意になるように設定する場合は、以前に作成したリソースまたはリソースグループのクローンを作成するときに、クローンオプション clone-node-max > 1
を設定するだけで十分となりました。クローンオプション globally-unique="true"
に設定する必要はなくなりました。
SL/TLS 証明書を使用した Pacemaker リモート接続の暗号化のサポート
X.509 (SSL/TLS) 証明書を使用して Pacemaker リモート接続を暗号化できるようになりました。以前は、暗号化には事前共有鍵 (PSK) のみがサポートされていました。SL/TLS 証明書のサポートにより、Pacemaker リモート接続に既存のホスト証明書を使用できます。
Pacemaker リモート接続用の SSL/TLS 証明書を設定するには、以下を実行します。
-
pcs cluster node add-guest
コマンドまたはpcs cluster node add-remote command
コマンドを使用して、リモート接続を作成します。リモート接続を作成すると、接続では PSK 暗号化が使用されます。 -
すべてのクラスターノードと Pacemaker リモートノードで
PCMK_ca_file
、PCMK_cert_file
、PCMK_key_file
、およびオプションでPCMK_crl_file
変数を更新して、証明書を使用するようにリモート接続を変換します。
SL/TLS 証明書を使用した暗号化の設定の詳細は、pacemaker_remote
ノードのホストおよびゲスト認証 を参照してください。
Pacemaker ルールの日付指定と期間オプションが更新される
Pacemaker ルールでは、次のオプションはサポートされなくなりました。
-
無効な
duration
オプション:monthdays
、moon
、weekdays
、weekyears
、yearsdays
-
無効な
date-spec
オプション:moon
、yearsdays
Pacemaker ルールでは、次のオプションがサポートされるようになりました。
-
現在サポートされている
duration
オプションは、seconds
、minutes
、hours
、days
、weeks
、months
、およびyears
です。 -
現在サポートされている
date-spec
オプションは、seconds
、minutes
、hours
、monthdays
、weekdays
、yeardays
、months
、weeks
、years
、およびweekyears
です。
次の pcs
コマンドで、duration
と date-spec
オプションを組み込んだルールを設定できます。
-
pcs resource defaults
-
pcs stonith defaults
-
pcs resource op defaults
-
pcs stonith op defaults
-
pcs constraint location
Jira:RHEL-49527、Jira:RHEL-49524
Booth 設定から削除した後、CIB から Booth クラスターチケットを削除する
pcs booth ticket remove
コマンドを使用して Booth クラスターチケットを削除した後も、Booth チケットの状態は Cluster Information Base (CIB) にロードされたままになります。これは、1 つのサイトの Booth 設定からチケットを削除し、pcs booth pull
コマンドを使用して Booth 設定を別のサイトにプルした後も同様です。これは、チケット制約を設定する際に問題が発生する可能性があります。チケット制約は、チケットが削除された後でも付与される可能性があるためです。その結果、クラスターがノードをフリーズまたはフェンスする可能性があります。pcs booth ticket cleanup
コマンドを使用して、CIB から Booth チケットを削除することで、これを防ぐことができます。
CIB から Booth チケットを削除する方法は、Booth チケットの削除 を参照してください。
Jira:RHEL-12709、Jira:RHEL-7602
新しい HA Cluster Management 機能のサポート
RHEL 10 では、pcsd
Web UI が RHEL Web コンソールのアドオンとして利用可能になり、HA Cluster Management アプリケーションとして提供されます。スタンドアロンインターフェイスとしては動作しなくなりました。HA Cluster Management アプリケーションは、次の機能をサポートするようになりました。
-
placement-strategy
クラスタープロパティーをdefault
に設定すると、HA Cluster Management アプリケーションは、ノードとリソースの使用率属性の近くに警告を表示します。この警告は、placement-strategy
の設定が使用率に影響しないことを示しています。 - HA Cluster Management アプリケーションはダークモードをサポートしています。これは、マストヘッドのユーザーメニューから設定できます。
Jira:RHEL-38493[1]、Jira:RHEL-38496