第14章 アイデンティティー: フォレスト間の信頼との統合 (テクノロジープレビュー)


Kerberos は 信頼 という概念を実装しています。信頼では、Kerberos レルムからのプリンシパルが別の Kerberos レルムのサービスにチケットを要求できます。プリンシパルはこのチケットを使って、別のレルムに属するマシン上のリソースに対して認証を行うことができます。
Kerberos には、レルム間の信頼 と呼ばれる、2 つのレルム間の関係を作成する機能があります。この信頼の一部となっているレルムは、共有のチケットとキーのペアを使用します。1 つのレルムのメンバーが両方のレルムのメンバーとして認識されるようなります。
Active Directory と Identity Management の両方が、Kerberos、LDAP、DNS、証明書サービスなどのさまざまなコアサービスを管理します。このため、Kerberos レルム間の信頼を確立するだけでは、レルムのユーザーが別のレルムにあるリソースにアクセスするには不十分になります。別の通信レベルでのサポートも必要になってきます。このような目的を実現するため、IdM を使用すると、IdM ドメインと AD ドメインの間で フォレスト間の信頼 を設定できます。フォレスト間の信頼は、2 つのフォレスト Root ドメイン間で確立された信頼のことで、異なるフォレストからのユーザーとサービスが通信できるようにします。
注記
複数の AD ドメインは、1 つの Active Directory フォレスト にまとめることができます。このフォレストの root ドメインは、フォレスト内で作成される最初のドメインになります。IdM ドメインは既存の AD フォレストに含めることができないので、常に別個のフォレストとみなされます。

Red Hat Enterprise Linux 6 のフォレスト間の信頼 (テクノロジープレビュー機能)

Red Hat Enterprise Linux 6 では、フォレスト間の信頼機能はテクノロジープレビュー機能 として提供されます。Red Hat は、Red Hat Enterprise Linux 6 IdM クライアントを Red Hat Enterprise Linux 7 IdM サーバーに接続してフォレスト間の信頼機能を確保することを推奨します。信頼は、Red Hat Enterprise Linux 7 を実行するサーバーで完全にサポートされています。Red Hat Enterprise Linux 6 クライアントを Red Hat Enterprise Linux 7 サーバーに接続してフォレスト間の信頼を確立する設定も、完全にサポートされています。このような設定では、クライアント側に最新の Red Hat Enterprise Linux 6 を、サーバー側に最新の Red Hat Enterprise Linux 7 を使用することを推奨します。
Red Hat では、Red Hat Enterprise Linux 6 でのフォレスト間の信頼機能を、テクノロジープレビュー機能からサポート対象機能にアップグレードしていません。特定の AD デプロイメントで、Red Hat Enterprise Linux 6 のフォレスト間の信頼機能が動作しない場合には、最新の Red Hat Enterprise Linux 7 IdM バージョンを使用し、特定の設定で Red Hat Enterprise Linux 7 をアップグレードする必要があるかどうかを確認してください。
Red Hat Enterprise Linux 7 のフォレスト間の信頼の詳細にわたる説明が含まれるドキュメントについては、『Red Hat Enterprise Linux 7 『Windows 統合ガイド』を参照してください。

Red Hat Enterprise Linux 6 のフォレスト間の信頼機能の概要

Red Hat Enterprise Linux 6 のフォレスト間の信頼機能には、以下のような機能が含まれます。
  • 1 つの AD フォレストへの信頼を確立する。
  • 信頼された AD フォレストの rootドメインからユーザーの IdM リソースにアクセスできる。
Red Hat Enterprise Linux 6 のフォレスト間の信頼機能は、以下の機能がありません。
  • ログインシェルまたはホームディレクトリーなど AD ユーザーのデフォルトの属性を一元的に上書きする。これには、Red Hat Enterprise Linux 7 で IdM を使用して ID ビューをデプロイします。
  • レガシークライアントの互換性ツリーを使用して、AD ユーザーおよびグループを公開する。レガシークライアントが AD ユーザーおよびグループにアクセスできるようにするには、Red Hat Enterprise Linux 7 で IdM を使用します。

信頼と同期

信頼と同期は、IdM ドメインと AD ドメイン統合するための、根本的に異なるアプローチです。どちらのアプローチも、AD ドメインのユーザーが透過的に Linux システムおよびサービスにアクセスできるようにすると共に、このようなシステムに関連する Linux システムとポリシーを一元管理できる利点があります。
信頼ベースおよび同期ベースのソリューションの比較については、『Red Hat Enterprise Linux 7 『Windows 統合ガイド』を参照してください。Red Hat Enterprise Linux 6 での同期を使用した AD との統合に関する情報は、「15章アイデンティティー: 同期による Microsoft Active Directory との統合」を参照してください。
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