4.4. レプリカの作成


  1. マスターサーバーで、レプリカ情報ファイル を作成します。このファイルには、マスターサーバーから取得したレルムや設定情報が含まれており、情報はレプリカサーバーの設定に使用します。
    マスター IdM サーバーipa-replica-prepare ユーティリティーを実行します。このユーティリティーには、レプリカ マシンの完全修飾ドメイン名が必要です。
    --ip-address オプションを使用すると、DNS へのレプリカの A および PTR レコードなど、レプリカの DNS エントリーが自動的に作成されます。
    重要
    IdM サーバーが統合 DNS で設定されている場合にのみ --ip-address オプションを渡します。これ以外の場合にこのオプションを渡すと、更新する DNS レコードが存在しないため、DNS レコード操作が失敗して、レプリカ作成も失敗することになります。
    注記
    レプリカの IP アドレスに他のサーバーが到達できないと、ipa-replica-prepare スクリプトは、その IP アドレスの確認や検証を実行しないことに注意してください。
    [root@server ~]# ipa-replica-prepare ipareplica.example.com --ip-address 192.168.1.2 
    
    Directory Manager (existing master) password: 
    Preparing replica for ipareplica.example.com from ipaserver.example.com 
    Creating SSL certificate for the Directory Server 
    Creating SSL certificate for the dogtag Directory Server 
    Saving dogtag Directory Server port 
    Creating SSL certificate for the Web Server 
    Exporting RA certificate 
    Copying additional files 
    Finalizing configuration 
    Packaging replica information into /var/lib/ipa/replica-info-ipareplica.example.com.gpg 
    Adding DNS records for ipareplica.example.com 
    Using reverse zone 1.168.192.in-addr.arpa. 
    The ipa-replica-prepare command was successful
    これは、数字、アルファベット文字、およびハイフン (-) のみが使用された有効な DNS 名でなければなりません。ホスト名にアンダースコアなどの他の文字が含まれていると、DNS が正常に機能しなくなります。さらに、ホスト名がすべて小文字である必要があります。大文字は使用できません。
    各レプリカ情報ファイルは、GPG 暗号化ファイルとして /var/lib/ipa/ ディレクトリーに作成されます。各ファイルには、replica-info-ipareplica.example.com.gpg など、レプリカサーバー向けの名前が付けられます。
    注記
    レプリカ情報ファイルを使用して、複数のレプリカを作成できません。このファイルを使用できるのは、対象として作成された特定のレプリカとマシンだけです。
    警告
    レプリカ情報ファイルには機密情報が含まれています。適切な措置を講じてこの情報を保護してください。
    ipa-replica-prepare の他のオプションは、ipa-replica-prepare(1) の man ページを参照してください。
  2. レプリカ情報ファイルは、レプリカサーバーにコピーします。
    [root@server ~]# scp /var/lib/ipa/replica-info-ipareplica.example.com.gpg root@ipaserver:/var/lib/ipa/
  3. レプリカサーバーで、レプリカのインストールスクリプトを実行し、このレプリカ情報ファイルを参照します。サーバーのインストールスクリプトのように、DNS を設定する方法は他にもあります。さらに、レプリカの CA を設定するオプションがあります。CA はサーバー用にデフォルトでインストールされますが、レプリカでは任意です。
    DNS フォワーダーの情報が必要です。フォワーダーごとに --forwarder オプションを使用して、設定した DNS フォワーダーの一覧を指定するか、--no-forwarders オプションを指定してフォワーダーの設定をスキップできます。
    たとえば、以下のようになります。
    [root@ipareplica ~]# ipa-replica-install --setup-ca --setup-dns --no-forwarders /var/lib/ipa/replica-info-ipareplica.example.com.gpg
    
    Directory Manager (existing master) password:
    
    Warning: Hostname (ipareplica.example.com) not found in DNS
    Run connection check to master
    Check connection from replica to remote master 'ipareplica. example.com':
       Directory Service: Unsecure port (389): OK
       Directory Service: Secure port (636): OK
       Kerberos KDC: TCP (88): OK
       Kerberos Kpasswd: TCP (464): OK
       HTTP Server: Unsecure port (80): OK
       HTTP Server: Secure port (443): OK
    
    The following list of ports use UDP protocol and would need to be
    checked manually:
       Kerberos KDC: UDP (88): SKIPPED
       Kerberos Kpasswd: UDP (464): SKIPPED
    
    Connection from replica to master is OK.
    Start listening on required ports for remote master check
    Get credentials to log in to remote master
    admin@EXAMPLE.COM password:
    
    Execute check on remote master
    admin@example.com's password:
    Check connection from master to remote replica 'ipareplica. example.com':
       Directory Service: Unsecure port (389): OK
       Directory Service: Secure port (636): OK
       Kerberos KDC: TCP (88): OK
       Kerberos KDC: UDP (88): OK
       Kerberos Kpasswd: TCP (464): OK
       Kerberos Kpasswd: UDP (464): OK
       HTTP Server: Unsecure port (80): OK
       HTTP Server: Secure port (443): OK
    
    Connection from master to replica is OK.
    
    Connection check OK
    レプリカのインストールスクリプトは、テストを実行し、インストールされているレプリカファイルが現在のホスト名と一致することを確認します。一致しない場合には、このスクリプトで警告メッセージが表示され、確認するように求められます。これは、ホスト名が一致しなくても問題とならないマルチホームマシンで発生する可能性があります。
    レプリカのインストールスクリプトの他のオプションについては、ipa-replica-install(1) man ページに一覧表示されます。
    注記
    ipa-replica-install で使用できるオプションの 1 つに --ip-address オプションがあります。ipa-replica-install に追加すると、このオプションは、ローカルインターフェースに関連付けられた IP アドレスだけを許可します。
  4. プロンプトが表示されたら、Directory Manager のパスワードを入力します。次に、スクリプトはレプリカ情報ファイルの情報に基づいて Directory Server インスタンスを設定し、複製プロセスを開始し、マスターサーバーからレプリカにデータをコピーします。このプロセスは、初期化 と呼ばれます。
  5. IdM クライアントが新しいサーバーを検出できるように、適切な DNS エントリーが作成されていることを確認します。必須のドメインサービスには、DNS エントリーが必要です。
    • _ldap._tcp
    • _kerberos._tcp
    • _kerberos._udp
    • _kerberos-master._tcp
    • _kerberos-master._udp
    • _ntp._udp
    DNS が有効な状態で最初のサーバーを作成した場合には、適切な DNS エントリーでレプリカが作成されます。以下に例を示します。
    [root@ipareplica ~]# DOMAIN=example.com
    [root@ipareplica ~]# NAMESERVER=ipareplica
    [root@ipareplica ~]# for i in _ldap._tcp _kerberos._tcp _kerberos._udp _kerberos-master._tcp _kerberos-master._udp _ntp._udp; do echo ""; dig @${NAMESERVER} ${i}.${DOMAIN} srv +nocmd +noquestion +nocomments +nostats +noaa +noadditional +noauthority; done | egrep -v "^;" | egrep _
    
    _ldap._tcp.example.com. 86400   IN      SRV     0 100 389 ipaserver1.example.com.
    _ldap._tcp.example.com. 86400   IN      SRV     0 100 389 ipaserver2.example.com.
    _kerberos._tcp.example.com. 86400 IN    SRV     0 100 88  ipaserver1.example.com.
    ...8<...
    DNS を有効にせずに最初の IdM サーバーを作成した場合には、サービスの TCP および UDP エントリー両方など、各 DNS エントリーは手作業で追加してください。以下に例を示します。
    [root@ipareplica ~]# kinit admin
    [root@ipareplica ~]# ipa dnsrecord-add example.com _ldap._tcp --srv-rec="0 100 389 ipareplica.example.com."
  6. 任意。レプリカの DNS サービスを設定します。マスターサーバーが DNS を使用している場合でも、レプリカの DNS サービスは、設定スクリプトでは設定されません。
    ipa-dns-install コマンドを使用して手動で DNS をインストールし、ipa dnsrecord-add コマンドで必要な DNS レコードを追加します。たとえば、以下のようになります。
    [root@ipareplica ~]# ipa-dns-install
    
    [root@ipareplica ~]# ipa dnsrecord-add example.com @ --ns-rec ipareplica.example.com.
    重要
    最後のピリオド (.) を含めてレプリカの完全修飾ドメイン名を使用します。このピリオドを含めない場合には、BIND はホスト名をドメインの相対値として扱います。
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