第12章 仮想マシンの移行


仮想マシンの現在のホストが不安定な場合や使用できない場合や、ホストワークロードを再分散する場合は、仮想マシンを別の KVM ホストに移行できます。

12.1. 仮想マシンの移行の仕組み

仮想マシンの移行は、仮想マシンの XML 設定を別のホストマシンにコピーします。移行した仮想マシンがシャットダウンしていない場合、移行では、仮想マシンのメモリーと仮想デバイスの状態も移行先ホストマシンに転送されます。移行先ホストで仮想マシンが機能し続けるには、仮想マシンのディスクイメージが利用可能なままである必要があります。

デフォルトでは移行された仮想マシンは、移行先ホスト上では一時的なもので、移行元ホストでもそのまま定義されたままとなります。

ライブ マイグレーションまたは 非ライブ マイグレーションを使用して、実行中の仮想マシンを移行できます。シャットダウンした仮想マシンを移行するには、オフライン マイグレーションを使用する必要があります。詳細は、以下の表を参照してください。

表12.1 仮想マシンの移行タイプ
移行タイプ説明ユースケースストレージ要件

ライブマイグレーション

仮想マシンは移行元ホストマシンでそのまま実行を続け、KVM が仮想マシンのメモリーページを移行先ホストに転送します。移行がほぼ完了すると、KVM はごく短い間仮想マシンを中断し、移行先ホストで再開します。

常に稼働する必要がある仮想マシンに役に立ちます。ただし、I/O 負荷が高い仮想マシンなど、KVM の転送時間よりもメモリーページの変更が早く行われる仮想マシンでは、ライブマイグレーションを使用できないため、非ライブマイグレーション を使用する必要があります。

移行中、仮想マシンのディスクイメージに、ソースホストと宛先ホストの両方からアクセスできる必要があります。(1)

非ライブマイグレーション

仮想マシンを一時停止して、その設定とメモリーを移行先ホストにコピーし、仮想マシンを再開します。

仮想マシンに対するダウンタイムが発生しますが、一般的にはライブマイグレーションよりも信頼性が高くなります。メモリー負荷が大きい仮想マシンに推奨されます。

移行中、仮想マシンのディスクイメージに、ソースホストと宛先ホストの両方からアクセスできる必要があります。(1)

ハイブリッドマイグレーション

ライブマイグレーション非ライブマイグレーション を組み合わせたものです。ライブマイグレーション中にソース仮想マシンを一時停止すると、新たなダーティーメモリーページが生成されなくなります。その結果、移行が完了する可能性が大幅に高まります。

たとえば、移行完了の妨げになる、非常に多くの vCPU または大量のメモリーを使用する仮想マシンをライブマイグレーションする場合に推奨されます。

移行時のゲストのワークロードと静的ページ数によっては、ハイブリッドマイグレーションのほうが、非ライブマイグレーションよりも、ダウンタイムが大幅に短縮される可能性があります。

移行中、仮想マシンのディスクイメージに、ソースホストと宛先ホストの両方からアクセスできる必要があります。(1)

オフラインマイグレーション

仮想マシンの設定を移行先ホストに移動します。

シャットダウンした仮想マシンや、仮想マシンをシャットダウンしてもワークロードを中断しない場合に推奨されます。

仮想マシンのディスクイメージは、共有ネットワークに配置する必要はなく、移行先ホストに手動でコピーまたは移動できます。

(1) これを実現するには、次のいずれかを使用します。

  • 共有ネットワーク上 にあるストレージ
  • virsh migrate コマンドの --copy-storage-all パラメーターで、ネットワーク経由でソースから宛先にディスクイメージの内容をコピーします。
  • ストレージエリアネットワーク (SAN) の論理ユニット (LUN)。
  • Ceph Storage クラスター
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