24.3. RHEL 9 仮想化で対応していない機能
以下の機能は、Red Hat Enterprise Linux 9 (RHEL 9) に含まれる KVM ハイパーバイザーでは対応していません。
この制限の多くは、Red Hat が提供するその他の仮想化ソリューション (Red Hat Virtualization (RHV) や Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) など) には適用されない場合があります。
他の仮想化ソリューションでサポートされる機能については、次の段落で説明します。
ホストシステムのアーキテクチャー
KVM を使用した RHEL 9 は、RHEL 9 仮想化で推奨される機能 に記載されていないホストアーキテクチャーではサポートされません。
ゲストのオペレーティングシステム
RHEL 9 ホストは、次のゲストオペレーティングシステム (OS) を使用する KVM 仮想マシンには対応していません。
- Windows 8.1 以前
- Windows Server 2012 R2 以前
- MacOS
- x86 システム用の Solaris
- 2009 年以前にリリースされたオペレーティングシステム
RHEL ホストおよびその他の仮想化ソリューションでサポートされるゲスト OS の一覧は、Certified Guest Operating Systems in Red Hat OpenStack Platform, Red Hat Virtualization, OpenShift Virtualization and Red Hat Enterprise Linux with KVM を参照してください。
コンテナーでの仮想マシンの作成
Red Hat は、RHEL 9 ハイパーバイザーの要素を含むコンテナーの種類 (QEMU
エミュレーターや libvirt
パッケージなど) に関係なく、KVM 仮想マシンの作成に対応していません。
コンテナーに仮想マシンを作成する場合は、OpenShift Virtualization オファリングの使用を推奨します。
特定の virsh コマンドおよびオプション
virsh
ユーティリティーで使用できるすべてのパラメーターが Red Hat によってテストされ、本番環境で使用できると認定されているわけではありません。したがって、Red Hat のドキュメントで明示的に推奨されていない virsh
コマンドおよびオプションは、正しく機能しない可能性があります。Red Hat では、実稼働環境でのこれらの使用を推奨しません。
特に、サポートされていない virsh
コマンドには次のものがあります。
-
virsh iface-*
コマンド (virsh iface-start
やvirsh iface-destroy
など) -
virsh blkdeviotune
-
virsh snapshot-*
コマンド (virsh snapshot-create
やvirsh snapshot-revert
など)
QEMU コマンドライン
QEMU は、RHEL 9 における仮想化アーキテクチャーの必須コンポーネントですが、手動で管理することが難しく、QEMU 設定に誤りがあるとセキュリティーの脆弱性を引き起こす可能性があります。したがって、qemu-kvm
などの qemu-*
コマンドラインユーティリティーの使用は、Red Hat ではサポートされていません。代わりに、virt-install
、virt-xml
、およびサポートされている virsh
コマンドなどの libvirt ユーティリティーを使用してください。これらはベストプラクティスに従って QEMU を調整します。ただし、仮想ディスクイメージの管理 には qemu-img
ユーティリティーがサポートされています。
vCPU のホットアンプラグ
実行中の仮想マシンから仮想 CPU (vCPU) を削除することは vCPU ホットアンプラグと呼ばれますが、RHEL 9 では対応していません。
メモリーのホットアンプラグ
実行中の仮想マシンに接続されているメモリーデバイスの削除 (メモリーのホットアンプラグとも呼ばれる) は、RHEL 9 では対応していません。
QEMU 側の I/O スロットリング
virsh blkdeviotune
ユーティリティーを使用して、仮想ディスクでの操作の最大入出力レベルを設定することは、QEMU 側の I/O スロットリング としても知られていますが、RHEL 9 では対応していません。
RHEL 9 で I/O スロットリングを設定するには、virsh blkiotune
を使用します。これは、libvirt 側の I/O スロットリングとしても知られています。手順は、Disk I/O throttling in virtual machines を参照してください。
その他のソリューション:
- QEMU 側の I/O スロットリングは RHOSP でもサポートされています。詳細は、RHOSP ストレージガイド の ディスクでのリソース制限の設定 およびサービス品質の仕様の使用セクションを参照してください。
- さらに、OpenShift Virtualizaton は QEMU 側の I/O スロットリングもサポートします。
ストレージのライブマイグレーション
実行している仮想マシンのディスクイメージをホスト間で移行することは、RHEL 9 では対応していません。
その他のソリューション:
- ストレージライブマイグレーションは RHOSP でサポートされますが、制限がいくつかあります。詳細は ボリュームの移行 を参照してください。
内部スナップショット
仮想マシンの内部スナップショットの作成と使用は、RHEL 9 では非推奨であり、実稼働環境では使用しないことを強く推奨します。代わりに、外部スナップショットを使用してください。詳細は、仮想マシンのスナップショットのサポート制限 を参照してください。
その他のソリューション:
- RHOSP はライブスナップショットをサポートしています。詳細は、Importing virtual machines into the overcloud を参照してください。
- ライブスナップショットは OpenShift Virtualization でもサポートされています。
vHost Data Path Acceleration
RHEL 9 ホストでは、virtio デバイス用に vHost Data Path Acceleration (vDPA) を設定できますが、Red Hat は現在この機能をサポートしておらず、実稼働環境では使用しないことを強く推奨します。
vhost-user
RHEL 9 は、ユーザー空間の vHost インターフェイスの実装には対応していません。
その他のソリューション:
-
vhost-user
は RHOSP でサポートされていますが、対象は、virtio-net
インターフェイスのみです。詳細は virtio-net implementation および vhost user ports を参照してください。 -
OpenShift Virtualization は
vhost-user
もサポートします。
S3 および S4 のシステムの電力状態
仮想マシンを Suspend to RAM (S3) または Suspend to disk (S4) のシステム電源状態にサスペンドすることには対応していません。この機能はデフォルトでは無効になっており、有効にすると、仮想マシンが Red Hat のサポート対象外となります。
現在、S3 および S4 の状態は、Red Hat が提供する他の仮想化ソリューションでもサポートされていないことに注意してください。
マルチパス化された vDisk の S3-PR
マルチパス化された vDisk の SCSI3 の永続的な予約 (S3-PR) は、RHEL 9 では対応していません。これにより、RHEL 9 では、Windows Cluster に対応していません。
virtio-crypto
RHEL 9 での virtio-crypto デバイスの使用はサポートされておらず、RHEL では使用しないことを強く推奨します。
virtio-crypto デバイスは、Red Hat が提供する他の仮想化ソリューションでもサポートされていないことに注意してください。
virtio-multitouch-device、virtio-multitouch-pci
RHEL 9 での virtio-multitouch-device および virtio-multitouch-pci デバイスの使用はサポートされておらず、RHEL では使用しないことを強く推奨します。
インクリメンタルバックアップ
最後のバックアップ (増分ライブバックアップとも呼ばれる) 以降の VM の変更のみを保存する VM バックアップの設定は、RHEL 9 ではサポートされておらず、Red Hat はこれを使用しないことを強く推奨しています。
net_failover
RHEL 9 では、net_failover
ドライバーを使用した自動ネットワークデバイスフェイルオーバーメカニズムの設定はサポートされていません。
現在、net_failover
は、Red Hat が提供する他の仮想化ソリューションでもサポートされていないことに注意してください。
TCG
QEMU および libvirt には、QEMU Tiny Code Generator (TCG) を使用した動的な変換モードが含まれます。このモードでは、ハードウェアの仮想化のサポートは必要ありません。ただし、TCG は Red Hat ではサポートされていません。
TCG ベースのゲストは、virsh dumpxml
コマンドを使用するなど、XML 設定を調べることで確認できます。
TCG ゲストの設定ファイルでは、以下の行が含まれます。
<domain type='qemu'>
KVM ゲストの設定ファイルでは、以下の行が含まれます。
<domain type='kvm'>
SR-IOV InfiniBand ネットワークデバイス
シングルルート I/O 仮想化 (SR-IOV) を使用した VM への InfiniBand ネットワークデバイスの接続はサポートされていません。