6.3. 設定コンプライアンススキャン


6.3.1. RHEL の設定コンプライアンス

設定コンプライアンススキャンを使用して、特定の組織で定義されているベースラインに準拠できます。たとえば、米国政府と協力している場合は、システムを Operating System Protection Profile (OSPP) に準拠させ、支払い処理業者の場合は、システムを Payment Card Industry Data Security Standard (PCI-DSS) に準拠させなければならない場合があります。設定コンプライアンススキャンを実行して、システムセキュリティーを強化することもできます。

Red Hat は、対象コンポーネント向けの Red Hat のベストプラクティスに従っているため、SCAP Security Guide パッケージで提供される Security Content Automation Protocol (SCAP) コンテンツに従うことを推奨します。

SCAP Security Guide パッケージは、SCAP 1.2 および SCAP 1.3 標準規格に準拠するコンテンツを提供します。openscap scanner ユーティリティーは、SCAP Security Guide パッケージで提供される SCAP 1.2 および SCAP 1.3 コンテンツの両方と互換性があります。

重要

設定コンプライアンススキャンを実行しても、システムが準拠しているとは限りません。

SCAP Security Guide スイートは、データストリームドキュメントの形式で、複数のプラットフォームのプロファイルを提供します。データストリームは、定義、ベンチマーク、プロファイル、および個々のルールが含まれるファイルです。各ルールでは、コンプライアンスの適用性と要件を指定します。RHEL は、セキュリティーポリシーを扱う複数のプロファイルを提供します。Red Hat データストリームには、業界標準の他に、失敗したルールの修正に関する情報も含まれます。

コンプライアンススキャンリソースの構造

Data stream
   ├── xccdf
   |      ├── benchmark
   |            ├── profile
   |            |    ├──rule reference
   |            |    └──variable
   |            ├── rule
   |                 ├── human readable data
   |                 ├── oval reference
   ├── oval          ├── ocil reference
   ├── ocil          ├── cpe reference
   └── cpe           └── remediation

プロファイルは、OSPP、PCI-DSS、Health Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA) などのセキュリティーポリシーに基づく一連のルールです。これにより、セキュリティー標準規格に準拠するために、システムを自動で監査できます。

プロファイルを変更 (調整) して、パスワードの長さなどの特定のルールをカスタマイズできます。プロファイルの調整の詳細は、SCAP Workbench を使用したセキュリティープロファイルのカスタマイズ を参照してください。

6.3.2. OpenSCAP スキャン結果の例

OpenSCAP スキャンに適用されるデータストリームとプロファイル、およびシステムのさまざまなプロパティーに応じて、各ルールから特定の結果が生成される場合があります。以下に考えられる結果とその意味の簡単な説明を示します。

Pass
スキャンでは、このルールとの競合が見つかりませんでした。
Fail
スキャンで、このルールとの競合が検出されました。
Not checked
OpenSCAP はこのルールの自動評価を実行しません。システムがこのルールに手動で準拠しているかどうかを確認してください。
Not applicable
このルールは、現在の設定には適用されません。
Not selected
このルールはプロファイルには含まれません。OpenSCAP はこのルールを評価せず、結果にこのようなルールは表示されません。
Error
スキャンでエラーが発生しました。詳細は、--verbose DEVEL オプションを指定して oscap コマンドで確認できます。Red Hat カスタマーポータル でサポートケースを作成するか、Red Hat Jira の RHEL プロジェクト でチケットを作成します。
Unknown
スキャンで予期しない状況が発生しました。詳細は、`--verbose DEVEL オプションを指定して oscap コマンドを入力できます。Red Hat カスタマーポータル でサポートケースを作成するか、Red Hat Jira の RHEL プロジェクト でチケットを作成します。

6.3.3. 設定コンプライアンスのプロファイルの表示

スキャンまたは修復にプロファイルを使用することを決定する前に、oscap info サブコマンドを使用して、プロファイルを一覧表示し、詳細な説明を確認できます。

前提条件

  • openscap-scanner パッケージおよび scap-security-guide パッケージがインストールされている。

手順

  1. SCAP Security Guide プロジェクトが提供するセキュリティーコンプライアンスプロファイルで利用可能なファイルをすべて表示します。

    $ ls /usr/share/xml/scap/ssg/content/
    ssg-firefox-cpe-dictionary.xml  ssg-rhel6-ocil.xml
    ssg-firefox-cpe-oval.xml        ssg-rhel6-oval.xml
    …
    ssg-rhel6-ds-1.2.xml          ssg-rhel8-oval.xml
    ssg-rhel8-ds.xml              ssg-rhel8-xccdf.xml
    …
  2. oscap info サブコマンドを使用して、選択したデータストリームに関する詳細情報を表示します。データストリームを含む XML ファイルは、名前に -ds 文字列で示されます。Profiles セクションでは、利用可能なプロファイルと、その ID のリストを確認できます。

    $ oscap info /usr/share/xml/scap/ssg/content/ssg-rhel8-ds.xml
    Profiles:
    …
      Title: Health Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA)
        Id: xccdf_org.ssgproject.content_profile_hipaa
      Title: PCI-DSS v3.2.1 Control Baseline for Red Hat Enterprise Linux 8
        Id: xccdf_org.ssgproject.content_profile_pci-dss
      Title: OSPP - Protection Profile for General Purpose Operating Systems
        Id: xccdf_org.ssgproject.content_profile_ospp
    …
  3. データストリームファイルからプロファイルを選択し、選択したプロファイルに関する追加情報を表示します。そのためには、oscap info--profile オプションを指定した後に、直前のコマンドの出力で表示された ID の最後のセクションを指定します。たとえば、HIPPA プロファイルの ID は xccdf_org.ssgproject.content_profile_hipaa で、--profile オプションの値は hipaa です。

    $ oscap info --profile hipaa /usr/share/xml/scap/ssg/content/ssg-rhel8-ds.xml
    …
    Profile
    	Title: Health Insurance Portability and Accountability Act (HIPAA)
    
    	Description: The HIPAA Security Rule establishes U.S. national standards to protect individuals’ electronic personal health information that is created, received, used, or maintained by a covered entity.
    …

関連情報

6.3.4. 特定のベースラインによる設定コンプライアンスの評価

oscap コマンドラインツールを使用して、システムまたはリモートシステムが特定のベースラインに準拠しているかどうかを判断し、結果をレポートに保存できます。

前提条件

  • openscap-scanner パッケージおよび scap-security-guide パッケージがインストールされている。
  • システムが準拠する必要があるベースライン内のプロファイルの ID を知っている必要があります。ID を見つけるには、設定コンプライアンスのプロファイルの表示 セクションを参照してください。

手順

  1. ローカルシステムをスキャンして、選択したプロファイルへの準拠を評価し、スキャン結果をファイルに保存します。

    $ oscap xccdf eval --report <scan-report.html> --profile <profileID> /usr/share/xml/scap/ssg/content/ssg-rhel8-ds.xml

    以下を置き換えます。

    • <scan-report.html> は、oscap がスキャン結果を保存するファイル名です。
    • <profileID> は、システムが準拠する必要があるプロファイル ID (例: hipaa) です。
  2. リモートシステムをスキャンして、選択したプロファイルへの準拠を評価し、スキャン結果をファイルに保存します。

    $ oscap-ssh <username>@<hostname> <port> xccdf eval --report <scan-report.html> --profile <profileID> /usr/share/xml/scap/ssg/content/ssg-rhel8-ds.xml

    以下を置き換えます。

    • <username>@<hostname> は、リモートシステムのユーザー名とホスト名に置き換えます。
    • <port> は、リモートシステムにアクセスできるポート番号です。
    • <scan-report.html> は、oscap がスキャン結果を保存するファイル名です。
    • <profileID> は、システムが準拠する必要があるプロファイル ID (例: hipaa) です。

関連情報

  • システム上の scap-security-guide(8) man ページ
  • /usr/share/doc/scap-security-guide/ ディレクトリーにある SCAP Security Guide ドキュメント
  • /usr/share/doc/scap-security-guide/guides/ssg-rhel8-guide-index.html - scap-security-guide-doc パッケージでインストールされた Red Hat Enterprise Linux 8 のセキュアな設定ガイド
  • OpenSCAP のメモリー消費の問題
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