第8章 カーネル整合性サブシステムによるセキュリティーの強化
カーネル整合性サブシステムのコンポーネントを使用して、システムの保護を強化できます。関連するコンポーネントとその設定の詳細をご覧ください。
8.1. カーネル整合性サブシステム
整合性サブシステムは、システムデータの全体的な整合性を維持するカーネルコンポーネントです。このサブシステムは、システムを構築時と同じ状態に維持するのに役立ちます。このサブシステムを使用すると、実行可能ファイル、ライブラリー、および設定ファイルを保護できます。
カーネル整合性サブシステムは、次の 2 つの主要コンポーネントで構成されています。
- Integrity Measurement Architecture (IMA)
- IMA は、ファイルが実行されるか開かれるたびに、暗号学的にハッシュするか、暗号化キーで署名することにより、ファイルの内容を測定します。キーは、カーネルキーリングサブシステムに格納されます。
- IMA は、測定値をカーネルのメモリー空間内に格納します。これにより、システムのユーザーが測定値を変更できなくなります。
- IMA は、ローカルおよびリモートのユーザーが測定値を検証できるようにします。
- IMA は、カーネルメモリー内の測定リストに以前に格納された値に対して、ファイルの現在の内容をローカルで検証します。この拡張機能は、現在の測定と以前の測定が一致しない場合に、特定のファイルに対して操作を実行することを禁止します。
- Extended Verification Module (EVM)
- EVM は、IMA 測定値や SELinux 属性など、システムセキュリティーに関連するファイルの拡張属性 (xattr とも呼ばれます) を保護します。EVM は、対応する値を暗号的にハッシュするか、暗号鍵で署名します。キーは、カーネルキーリングサブシステムに格納されます。
カーネル整合性サブシステムは、TPM (Trusted Platform Module) を使用して、システムセキュリティーをさらに強化できます。
TPM は、暗号化鍵が統合されたハードウェア、ファームウェア、または仮想コンポーネントで、重要な暗号化機能のために Trusted Computing Group (TCG) による TPM 仕様に従って構築されています。TPM は通常、プラットフォームのマザーボードに接続された専用ハードウェアとして構築されます。ハードウェアチップの保護された改ざん防止領域から暗号化機能を提供することにより、TPM はソフトウェアベースの攻撃から保護されます。TPM は次の機能を提供します。
- 乱数ジェネレーター
- 暗号化キーのジェネレーターと安全なストレージ
- ハッシュジェネレーター
- リモート認証