第16章 ディスククォータ
ディスク領域はディスククォータによって制限できます。ディスククォータは、ユーザーが過度のディスク領域を消費するか、パーティションが満杯になる前にシステム管理者に警告をします。
ディスククォータは、ユーザーグループにも個別のユーザーにも設定できます。これにより、ユーザーが参加しているプロジェクトに割り振られた領域 (プロジェクトごとに所有グループが存在すると想定) とは別に、ユーザー固有のファイル (電子メールなど) に割り振った領域を管理することが可能になります。
さらにクォータは、消費されるディスクブロックの数の制御だけでなく、inode (UNIX ファイルシステム内のファイルに関する情報を含むデータ構造) の数も制御するように設定できます。inode はファイル関連の情報を組み込むように使用されるため、これが作成されるファイルの数を制御することも可能にします。
ディスククォータを実装するには、quota RPM をインストールしておく必要があります。
16.1. ディスククォータの設定
ディスククォータを実装するには、以下の手順を行います。
/etc/fstab
を修正することで、ファイルシステムごとのクォータを有効にします。- ファイルシステムを再マウントします。
- クォータデータベースファイルを作成して、ディスク使用状況テーブルを生成します。
- クォータポリシーを割り当てます。
この各ステップは、以下のセクションで詳しく説明します。
16.1.1. クォータの有効化
root でテキストエディターを使用して、
/etc/fstab
ファイルを編集します。
例16.1 /etc/fstab
の編集
たとえば、テキストエディター
vim
を使用するには、以下を入力します。
# vim /etc/fstab
クォータを必要とするファイルシステムに usrquota および/または grpquota オプションを追加します。
例16.2 クォータの追加
/dev/VolGroup00/LogVol00 / ext3 defaults 1 1 LABEL=/boot /boot ext3 defaults 1 2 none /dev/pts devpts gid=5,mode=620 0 0 none /dev/shm tmpfs defaults 0 0 none /proc proc defaults 0 0 none /sys sysfs defaults 0 0 /dev/VolGroup00/LogVol02 /home ext3 defaults,usrquota,grpquota 1 2 /dev/VolGroup00/LogVol01 swap swap defaults 0 0 . . .
この例では、
/home
ファイルシステムがユーザーとグループの両方のクォータを有効にしています。
備考
以下の例では、Red Hat Enterprise Linux のインストール時に別の /home パーティションが作成されたことを仮定します。root (/) パーティションは
/etc/fstab
ファイル内でクォータポリシーを設定するために使用できます。
16.1.2. ファイルシステムの再マウント
usrquota および grpquota オプションを追加し たら、fstab
エントリー
が変更された各ファイルシステムを再マウントします。ファイルシステムが使用されていない場合は、以下のコマンドを使用します。
umount /mount-point
たとえば、umount /work です。
mount /file-system /mount-point
たとえば、/dev/vdb1 /work をマウントします。
ファイルシステムが現在使用中の場合、そのファイルシステムを再マウントする最も簡単な方法は、システムを再起動することです。
16.1.3. クォータデータベースファイルの作成
クォータが有効にされたそれぞれのファイルシステムを再マウントした後は、quotacheck コマンドを実行します。
quotacheck コマンドは、クォータが有効なファイルシステムを検証し、現在のディスク使用状況のテーブルをファイルシステムごとに構築します。このテーブルは、ディスク使用状況のオペレーティングシステム用コピーを更新するのに使用されます。また、ファイルシステムのディスククォータが更新されます。
ファイルシステムにクォータファイル(a
quota.user
および aquota.group
)を作成するには、quota check コマンドの -c
オプションを使用します。
例16.3 クォータファイルの作成
たとえば、ユーザーおよびグループのクォータが
/home
ファイルシステムに対して有効になっている場合は、/home
ディレクトリーにファイルを作成します。
# quotacheck -cug /home
-c
オプションは、クォータが有効になっている各ファイルシステムにクォータファイルを作成する必要があることを指定し、- u
オプションはユーザークォータの確認を指定し、- g
オプションはグループクォータをチェックするように指定します。
-u
オプションまたは -g
オプションがいずれも指定されていないと、ユーザーのクォータファイルのみが作成されます。-g
のみを指定すると、グループクォータファイルのみが作成されます。
ファイルが作成されたら、以下のコマンドを実行して、クォータが有効なファイルシステムごとの現在のディスク使用量の表を生成します。
# quotacheck -avug
使用されるオプションは以下のとおりです。
- a
- クォータが有効にされた、ローカルマウントのファイルシステムをすべてチェック
- v
- クォータチェックの進行状態について詳細情報を表示
- u
- ユーザーディスククォータの情報をチェック
- g
- グループディスククォータの情報をチェック
quotacheck の実行が終了すると、有効なクォータ(ユーザーまたはグループ)に対応するクォータファイルに、/
home
などのローカルにマウントされた各ファイルシステムのデータが設定されます。
16.1.4. ユーザーごとのクォータ割り当て
最後のステップは、edquota コマンドを使用したディスククォータ割り当てです。
ユーザーにクォータを設定するには、シェルプロンプトで、root で次のコマンドを実行します。
# edquota username
クォータが必要な各ユーザーに対して、この手順を実行します。たとえば、クォータが
/home
パーティションの /etc/fstab
(以下の例では /dev/VolGroup00/LogVol02
) に対して有効であり、コマンド edquota testuser を実行すると、システムでデフォルトとして設定されたエディターで以下のような出力が表示されます。
Disk quotas for user testuser (uid 501): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440436 0 0 37418 0 0
備考
EDITOR
環境変数により定義されたテキストエディターは、edquota により使用されます。エディターを変更するには、~/.bash_profile
ファイルの EDITOR
環境変数を、使用するエディターのフルパスに設定します。
最初の列は、クォータが有効になっているファイルシステムの名前です。2 列目には、ユーザーが現在使用しているブロック数が示されます。その次の 2 列は、ファイルシステム上のユーザーのソフトブロック制限およびハードブロック制限を設定するのに使用されます。
inodes
列には、ユーザーが現在使用している inode の数が表示されます。最後の 2 列は、ファイルシステムのユーザーに対するソフトおよびハードの inode 制限を設定するのに使用されます。
ハードブロック制限は、ユーザーまたはグループが使用できる最大ディスク容量 (絶対値) です。この制限に達すると、それ以上のディスク領域は使用できなくなります。
ソフトブロック制限は、使用可能な最大ディスク容量を定義します。ただし、ハード制限とは異なり、ソフト制限は一定時間超過する可能性があります。この時間は 猶予期間 として知られています。猶予期間の単位は、秒、分、時間、日、週、または月で表されます。
いずれかの値が 0 に設定されていると、その制限は設定されません。テキストエディターで必要な制限に変更します。
例16.4 必要な制限の変更
以下に例を示します。
Disk quotas for user testuser (uid 501): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440436 500000 550000 37418 0 0
ユーザーのクォータが設定されていることを確認するには、以下のコマンドを使用します。
# quota username Disk quotas for user username (uid 501): Filesystem blocks quota limit grace files quota limit grace /dev/sdb 1000* 1000 1000 0 0 0
16.1.5. グループごとのクォータ割り当て
クォータは、グループごとに割り当てることもできます。
devel
グループのグループクォータを設定するには (グループはグループクォータを設定する前に存在している必要があります)、次のコマンドを使用します。
# edquota -g devel
このコマンドにより、グループの既存クォータがテキストエディターに表示されます。
Disk quotas for group devel (gid 505): Filesystem blocks soft hard inodes soft hard /dev/VolGroup00/LogVol02 440400 0 0 37418 0 0
この制限を変更して、ファイルを保存します。
グループクォータが設定されたことを確認するには、次のコマンドを使用します。
# quota -g devel
16.1.6. ソフト制限の猶予期間の設定
所定のクォータがソフトリミットを持つ場合、その猶予期間 (ソフトリミットを超過してもよい期間の値) は以下のコマンドで編集できます。
# edquota -t
このコマンドはユーザーまたはグループのいずれかの inode またはブロックのクォータに対して機能します。
重要
他の edquota コマンドは特定のユーザーまたはグループのクォータで機能しますが、-t オプションはクォータが有効になっているすべてのファイルシステムで機能します。