第17章 RAID (Redundant Array of Independent Disks)
RAID の登場した背景には、容量が小さく手頃なディスクドライブを複数集めてアレイに結合させ、容量が大きく高価なドライブに負けないパフォーマンスと冗長性を実現しようとする動きがありました。この複数のデバイスからなるアレイは、コンピューター上では単一の論理ストレージユニットまたはドライブとして表されます。
RAID では複数のディスクに情報を拡散させることができます。ディスクのストライピング (RAID レベル 0)、ディスクのミラーリング (RAID レベル 1)、パリティーによるディスクのストライピング (RAID レベル 5) などの技術を使用して冗長性を得ながら待ち時間を抑え、帯域幅を増幅させることでハードディスクがクラッシュした場合の復元力を最大限に引き出します。
データは、一貫して同じサイズの大きさのチャンク (通常は 256K または 512K、 ただし他の値も可) に分割され、アレイ内の各ドライブに分散されます。各チャンクは、使用している RAID レベルに応じて、RAID アレイのハードドライブに書き込まれます。データが読み込まれるとこのプロセスが逆をたどります。その動作はアレイ内の複数のドライブがまるで一台の大容量ドライブであるかのように見えます。
システム管理者や大容量のデータを管理しているユーザーは、RAID 技術を使用することでメリットが得られます。RAID をデプロイする主な理由を以下に示します。
- 速度を高める
- 1 台の仮想ディスクを使用してストレージ容量を増加する
- ディスク障害によるデータ損失を最小限に抑える
17.1. RAID のタイプ
考えられる RAID アプローチには、ファームウェア RAID、ハードウェア RAID、およびソフトウェア RAID の 3 つがあります。
ファームウェア RAID
ファームウェア RAID (ATARAID とも呼ばれる) とは、ソフトウェア RAID の種類で、ファームウェアベースのメニューを使用して RAID セットを設定できます。このタイプの RAID で使用されるファームウェアは BIOS にもフックされるため、その RAID セットから起動できます。異なるベンダーは、異なるオンディスクメタデータ形式を使用して、RAID セットのメンバーをマークします。Intel Matrix RAID は、ファームウェア RAID システムの一例を示しています。
ハードウェア RAID
ハードウェアベースのアレイは、RAID サブシステムをホストとは別に管理します。ホストに対して、1 RAID アレイごとに 1 つのディスクを表します。
ハードウェア RAID デバイスはシステムの内部にあっても外部にあっても構いません。内部デバイスは一般的には特殊なコントローラーカードで構成され、RAID の作業はオペレーティングシステムに対して透過的に処理されます。外部デバイスは一般的には SCSI、ファイバーチャネル、iSCSI、InfiniBand、他の高速ネットワークなどの相互接続でシステムに接続され、システムには論理ボリュームとして表されます。
RAID コントローラーカードは、オペレーティングシステムへの SCSI コントローラーのように動作し、実際のドライブ通信をすべて処理します。ドライブはユーザーによって RAID コントローラに接続されてから (通常の SCSI コントローラー同様に)、RAID コントローラーの構成に追加されます。オペレーティングシステムはこの違いを認識できません。
ソフトウェア RAID
ソフトウェア RAID では、カーネルディスク (ブロックデバイス) コード内に各種の RAID レベルを実装しています。高価ディスクコントローラーカードやホットスワップシャーシなど、最優先的な解決策を提供します。 [4] 必須ではありません。ソフトウェア RAID は、SCSI ディスクだけでなく安価な IDE ディスクでも機能します。最近の高速な CPU でもソフトウェア RAID は一般的にハードウェア RAID より優れたパフォーマンスを見せます。
Linux カーネルには マルチディスク (MD) ドライバーが含まれ、これにより RAID ソリューションは完全にハードウェアに依存しなくてもよくなります。ソフトウェアベースのアレイのパフォーマンスは、サーバーの CPU パフォーマンスと負荷によって異なります。
Linux ソフトウェア RAID スタックの主な機能の一部は次のとおりです。
- マルチスレッド設計
- 再構築なしで Linux マシン間でのアレイの移植性
- アイドルシステムリソースを使用したバックグラウンドのアレイ再構築
- ホットスワップ可能なドライブのサポート
- CPU の自動検出でストリーミング SIMD サポートなどの特定 CPU の機能を活用
- アレイ内のディスク上にある不良セクターの自動修正
- RAID データの整合性を定期的にチェックしアレイの健全性を確保
- 重要なイベントで指定された電子メールアドレスに送信された電子メールアラートによるアレイのプロアクティブな監視
- 書き込みを集中としたビットマップ、アレイ全体を再同期させるのではなく再同期を必要とするディスク部分を正確にカーネルに認識させることで再同期イベントの速度を大幅に高速化
- チェックポイントを再同期して、再同期中にコンピューターを再起動すると、起動時に再同期が中断したところから再開し、最初からやり直さないようにします。
- インストール後のアレイのパラメーター変更が可能です。たとえば、新しいデバイスを追加しても、4 つのディスクの RAID5 アレイを 5 つのディスク RAID5 アレイに増大させることができます。この拡張操作はライブで行うため、新しいアレイで再インストールする必要はありません。