19.17. NTP の設定
NTP
サービスのデフォルト設定を変更するには、root
でテキストエディターを使用して /etc/ntp.conf
ファイルを編集します。このファイルは、ntpd
とともにインストールされ、Red Hat プールからのタイムサーバーを使用するデフォルト設定になっています。ntp.conf(5)
man ページでは、アクセスおよびレート制限コマンドを除く、設定ファイルで使用可能なコマンドオプションが説明されています。アクセスおよびレート制限コマンドは、ntp_acc(5)
man ページで説明されています。
19.17.1. NTP サービスへのアクセス制御の設定
システム上で実行中の NTP
サービスへのアクセスを制限または制御するには、ntp.conf
ファイル内の restrict
コマンドを利用します。コメントアウトされた例は以下のとおりです。
# Hosts on local network are less restricted. #restrict 192.168.1.0 mask 255.255.255.0 nomodify notrap
restrict
コマンドは以下の形式になります。
restrict
address [mask mask] option
address および mask は、制限を適用する IP アドレスを指定します。option は 1 つ以上の制限になります。
-
ignore
:ntpq
およびntpdc
クエリーを含むすべてのパケットが無視されます。 -
kod
: Kiss-o'-death パケットが送信され、不要なクエリーが少なくなります。 -
limited
: パケットがレート制限のデフォルト値またはdiscard
コマンドで指定された値に違反する場合は、タイムサービス要求に応答しません。ntpq
およびntpdc
クエリーは影響を受けません。discard
コマンドおよびデフォルト値に関する詳細情報は、「NTP サービスへのレート制限アクセスの設定」 を参照してください。 -
lowpriotrap
: 一致するホストがトラップを低い優先度に設定します。 -
nomodify
: 設定に変更を加えられないようにします。 -
noquery
:ntpq
およびntpdc
クエリーに応答しないようにしますが、タイムクエリーは除外されます。 -
nopeer
: ピア関連付けの形成をできないようにします。 -
noserve
:ntpq
およびntpdc
クエリーを除くすべてのパケットを拒否します。 -
notrap
:ntpdc
制御メッセージプロトコルトラップをできないようにします。 -
notrust
: 暗号法で認証されないパケットを拒否します。 -
ntpport
: 発信元ポートが標準のNTP
UDP
ポート123
の場合、一致アルゴリズムが制限のみを適用するように修正します。 -
version
: 現在のNTP
バージョンに一致しないパケットを拒否します。
レート制限アクセスがクエリーに対してまったく応答しないように設定するには、各 restrict
コマンドに limited
オプションを指定する必要があります。ntpd
が KoD
パケットで応答するには、restrict
コマンドにオプションが limited
および kod
を指定する必要があります。
ntpq
および ntpdc
クエリーは増幅攻撃に使用できます (詳細は CVE-2013-5211 を参照)。そのため、アクセスを公開しているシステムでは、restrict default
コマンドから noquery
オプションの指定を外さないでください。
19.17.2. NTP サービスへのレート制限アクセスの設定
システムで実行している NTP
サービスへのレート制限アクセスを有効にするには、「NTP サービスへのアクセス制御の設定」 で説明しているように、limited
オプションを restrict
コマンドに追加します。デフォルトの discard パラメーターを使用したくない場合は、以下の説明にあるように discard
コマンドも使用できます。
discard
コマンドは以下の形式を取ります。
discard
average
valueminimum
valuemonitor
value
-
average
: 許可される最小平均パケット範囲を指定します。log2 秒で引数を受け入れます。デフォルト値は 3 (23 は 8 秒) です。 -
minimum
: 許可される最小限のパケット間隔を指定し、log2 秒の引数を取ります。デフォルト値は 1 (21 は 2 に相当) です。 -
monitor
: 許可されるレート制限を超えた場合のパケットの discard の確率を指定します。デフォルト値は、3000 秒です。このオプションは、1 秒あたり 1000 以上のリクエストを受信するサーバー用に用意されています。
discard
コマンドの例は次のとおりです。
discard average 4
discard average 4 minimum 2
19.17.3. ピアアドレスの追加
ピアのアドレス、つまり同一 stratum の NTP
サービスを実行しているサーバーのアドレスを追加するには、ntp.conf
ファイルの peer
コマンドを利用します。
peer
コマンドは以下の形式になります。
peer
address
ここでの address は、IP
ユニキャストアドレスまたは DNS
の解決可能な名前になります。アドレスは、同一 stratum のメンバーに既知のシステムのものである必要があります。ピアは、相互に異なる時間ソースを少なくとも 1 つ持っている必要があります。ピアは通常、同一管理制御下にあるシステム群です。
19.17.4. サーバーアドレスの追加
サーバーのアドレス、つまり一段階上の stratum の NTP
サービスを実行しているサーバーのアドレスを追加するには、ntp.conf
ファイルの server
コマンドを利用します。
server
コマンドは以下の形式になります。
server
address
ここでの address は、IP
ユニキャストアドレスまたは DNS
の解決可能な名前になります。パケットの送信元となるリモートリファレンスサーバーまたはローカルリファレンスクロックのアドレスになります。
19.17.5. ブロードキャストまたはマルチキャストサーバーアドレスの追加
送信用のブロードキャストまたはマルチキャストアドレス、つまり NTP
パケットをブロードキャストまたはマルチキャストする宛先のアドレスを追加 するには、ntp.conf
ファイルの broadcast
コマンドを利用します。
ブロードキャストおよびマルチキャストの両モードは、デフォルトで認証を必要とします。「NTP の認証オプション」を参照してください。
broadcast
コマンドは以下の形式になります。
broadcast
address
ここでの address は、パケットの送信先となる IP
ブロードキャストまたはマルチキャストアドレスになります。
このコマンドは、システムが NTP
ブロードキャストサーバーとして作動するように設定します。使用するアドレスは、ブロードキャストかマルチキャストアドレスである必要があります。ブロードキャストアドレスの場合は、IPv4
アドレス 255.255.255.255
を意味します。デフォルトでは、ルーターはブロードキャストメッセージを渡しません。マルチキャストアドレスの場合は、IPv4
Class D アドレスか IPv6
アドレスになります。IANA は IPv4
マルチキャストアドレス 224.0.1.1
と IPv6
アドレス FF05::101
(サイトローカル) を NTP
に割り当てています。RFC 2365 Administratively Scoped IP Multicast の説明にあるように、管理者が範囲指定した IPv4
マルチキャストアドレスも使用可能です。
19.17.6. Manycast クライアントアドレスの追加
manycast クライアントアドレスを追加する、つまり NTP
サーバーの発見に使用するマルチキャストアドレスを設定するには、ntp.conf
ファイルの manycastclient
コマンドを利用します。
manycastclient
コマンドは以下の形式になります。
manycastclient
address
ここでの address は IP
マルチキャストアドレスで、ここからパケットが受信されます。クライアントはこのアドレスにリクエストを送信し、応答から最善のサーバーを選んで他を無視します。その後は、NTP
通信は発見された NTP
サーバーが ntp.conf
リストされているかのようにユニキャスト関連付けを使用します。
このコマンドは、システムが NTP
クライアントのように動作するように設定します。システムは、同時にクライアントとサーバーの両方になることができます。
19.17.7. ブロードキャストクライアントアドレスの追加
ブロードキャストクライアントのアドレスを追加するには、つまりブロードキャスト NTP
パケット用にブロードキャストアドレスを監視するように設定するには、ntp.conf
ファイルの broadcastclient
コマンドを利用します。
broadcastclient
コマンドは以下の形式になります。
broadcastclient
ブロードキャストメッセージを受信可能にします。デフォルトで認証を必要とします。「NTP の認証オプション」を参照してください。
このコマンドは、システムが NTP
クライアントのように動作するように設定します。システムは、同時にクライアントとサーバーの両方になることができます。
19.17.8. Manycast サーバーアドレスの追加
manycast サーバーのアドレスを追加する、つまり NTP
パケットをマルチキャストすることでクライアントがサーバーを発見できるようにするアドレスを設定するには、ntp.conf
ファイルの manycastserver
コマンドを利用します。
manycastserver
コマンドは以下の形式になります。
manycastserver
address
マルチキャストメッセージの送信ができるようになります。ここでの address は、マルチキャスト送信先のアドレスになります。これは認証と合わせて使用して、サービス中断を防ぎます。
このコマンドは、システムが NTP
サーバーのように動作するように設定します。システムは、同時にクライアントとサーバーの両方になることができます。
19.17.9. マルチキャストクライアントアドレスの追加
マルチキャストクライアントのアドレスを追加するには、つまりマルチキャスト NTP
パケット用にマルチキャストアドレスを監視するように設定するには、ntp.conf
ファイルの multicastclient
コマンドを利用します。
multicastclient
コマンドは以下の形式になります。
multicastclient
address
マルチキャストメッセージの受信ができるようになります。ここでの address は、サブスクライブするアドレスになります。これは認証と合わせて使用して、サービス中断を防ぎます。
このコマンドは、システムが NTP
クライアントのように動作するように設定します。システムは、同時にクライアントとサーバーの両方になることができます。
19.17.10. Burst オプションの設定
公開サーバーに対して burst
オプションを使用することは、濫用とみなされます。公開 NTP
サーバーでは、このオプションを使用しないでください。このオプションは、組織内のアプリケーションにのみ使用するようにしてください。
時間オフセットの統計情報の平均的な品質を向上させるには、サーバーコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
burst
サーバーが反応している場合は、ポーリングの間隔ごとにシステムが通常の 1 パケットではなく、最大 8 パケットのバーストを送信します。server
コマンドを使うと、時間オフセット計算の平均的な質が向上します。
19.17.11. iburst オプションの設定
初回同期にかかる時間を改善するには、サーバーコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
iburst
サーバーに到達できない場合は、1 パケットではなく、8 パケットのバーストが送信されます。パケットの間隔は通常は 2 秒間隔ですが、1 番目と 2 番目のパケット間の間隔は、モデムまたは ISDN 呼び出しの完了に必要な追加の時間を許可できるように calldelay
コマンドを使用して変更することができます。server
コマンドと使用すると、初回の同期にかかる時間が短縮されます。これが設定ファイルでのデフォルトオプションになります。
19.17.12. 鍵を使用した対称認証の設定
鍵を使用した対称認証を設定するには、サーバーまたはピアコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
key
number
ここでの number は、1
から 65534
までの数字になります。このオプションを使うと、パケット内で メッセージ認証コード (MAC) が使えるようになります。このオプションは、peer
、server
、broadcast
、および manycastclient
の各コマンドで使用します。
このオプションは、/etc/ntp.conf
内で以下のように使用します。
server 192.168.1.1 key 10 broadcast 192.168.1.255 key 20 manycastclient 239.255.254.254 key 30
「NTP の認証オプション」 も参照してください。
19.17.13. ポーリング間隔の設定
デフォルトのポーリング間隔を変更するには、サーバーまたはピアコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
minpoll
value andmaxpoll
value
デフォルトのポーリング間隔を変更するオプション。ここでは、秒単位の間隔を 2 の 値 乗で計算します。つまり、間隔は log2 秒で表示されます。デフォルトの minpoll
値は 6 で、26 は 64 に相当します。maxpoll
のデフォルト値は 10 で、1024 秒に相当します。使用できる値は、3 から 17 の範囲で、それぞれ 8 s から 36.4 h に相当する値になります。これらのオプションは、peer
または server
で使用します。maxpoll
を短く設定すると、クロックの精度が向上する場合があります。
19.17.14. サーバー優先順位の設定
特定のサーバーが他の同様の統計情報のサーバーよりも優先されるよう指定するには、サーバーまたはピアコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
prefer
他の同様の統計情報のサーバーに優先して、このサーバーが同期に使用されます。このオプションは、peer
または server
コマンドで使用します。
19.17.15. NTP パケットの Time-to-Live (有効期限) の設定
デフォルトで使用される特定の time-to-live (TTL: 有効期限) の値を指定するには、サーバーまたはピアコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
ttl
value
ブロードキャストサーバーおよびマルチキャスト NTP
サーバーが送信するパケットで使用される TTL の値を指定します。manycast クライアントが expanding ring search を使用するには、TTL の最大値を指定します。デフォルト値は 127
です。
19.17.16. 使用する NTP バージョンの設定
デフォルトで使用される特定バージョンの NTP
を指定するには、サーバーまたはピアコマンドの最後に以下のオプションを追加します。
version
value
作成された NTP
パケット内の NTP
セットのバージョンを指定します。値は 1
から 4
になります。デフォルト値は 4
です。