15.5. メールユーザーエージェント
Red Hat Enterprise Linux には、利用可能な電子メールプログラムが多数あります。たとえば、Evolution のようなグラフィカル電子メールクライアントプログラムと、mutt
のようなテキストベースの電子メールプログラムがあります。
本セクションでは、クライアントとサーバー間の通信のセキュリティー保護について重点的に説明していきます。
15.5.1. 通信のセキュリティー保護
Thunderbird、Evolution、Mutt など、Red Hat Enterprise Linux に装備されている MUA は、SSL 暗号化電子メールセッションを提供します。
暗号化されていないネットワークを行き来する他のサービスと同様に、ユーザー名、パスワード、メッセージ全体などの電子メールに関する重要な情報は、ネットワーク上のユーザーによって傍受、閲覧される可能性があります。また、標準の POP
および IMAP
プロトコルは、認証情報を暗号化せずに渡すため、ユーザー名とパスワードはネームサーバー上で渡される時に攻撃者がそれらを収集して、ユーザーのアカウントに侵入することが可能性があります。
15.5.1.1. セキュアな電子メールクライアント
リモートサーバー上の電子メールを確認するように設計されている Linux MUA のほとんどは、SSL 暗号化に対応しています。電子メールを取得する時に SSL を使用するためには、SSL は電子メールクライアントとサーバーの両方で有効である必要があります。
SSL はクライアント側で簡単に有効にできます。多くの場合、MUA の設定ウィンドウでボタンをクリックするか、MUA 設定ファイルのオプションを使用して実行できます。セキュアな IMAP
および POP
には、MUA がメッセージの認証およびダウンロードに使用する既知のポート番号 (993 と 995) があります。
15.5.1.2. 電子メールクライアントの通信のセキュリティー保護
電子メールサーバー上の IMAP
および POP
のユーザーに SSL 暗号化を行うことは簡単です。
最初に SSL 証明書を作成します。これは、認証局 (CA) に SSL 証明書を申請するか、自己署名証明書を作成するかのいずれかの方法が選択できます。
自己署名証明書は、テスト目的のみで使用することを推奨します。実稼働環境で使用するサーバーは、CA が署名した SSL 証明書を使用してください。
IMAP
や POP
に対し自己署名 SSL 証明書を作成するには、 /etc/pki/dovecot/
ディレクトリーに移動し、/etc/pki/dovecot/dovecot-openssl.cnf
設定ファイルの証明書パラメーターを編集し、root
で次のコマンドを入力します。
dovecot]# rm -f certs/dovecot.pem private/dovecot.pem dovecot]# /usr/libexec/dovecot/mkcert.sh
終了したら、/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
ファイルに次の設定ファイルがあることを確認してください。
ssl_cert = </etc/pki/dovecot/certs/dovecot.pem ssl_key = </etc/pki/dovecot/private/dovecot.pem
以下のコマンドを実行して、dovecot
デーモンを再起動します。
~]# systemctl restart dovecot
別の方法として、stunnel
コマンドを IMAP
サービスまたは POP
サービスへの標準的なセキュアでない接続で暗号化ラッパーとして使用することも可能です。
stunnel
ユーティリティーは、Red Hat Enterprise Linux に装備されている外部の OpenSSL ライブラリーを使用して、強力な暗号化を実現し、ネットワーク接続を保護します。SSL 証明書を取得するためには、CA に申請することが推奨されますが、自己署名証明書を作成することも可能です。
stunnel のインストール方法とその基本設定の作成方法は、Red Hat Enterprise Linux 7 セキュリティーガイドの stunnel の使用
を参照してください。stunnel
を IMAPS
と POP3S
のラッパーとして設定するには、以下の行を /etc/stunnel/stunnel.conf
設定ファイルに追加します。
[pop3s] accept = 995 connect = 110 [imaps] accept = 993 connect = 143
セキュリティーガイドでは、stunnel
の起動および停止の方法を説明します。起動後は、IMAP
または POP
の電子メールクライアントを使用し、SSL 暗号化を使用して電子メールサーバーに接続できます。