第18章 ファームウェア支援ダンプの仕組み
ファームウェア支援ダンプ (fadump) は、IBM POWER システムの kdump
メカニズムの代わりに提供されるダンプ取得メカニズムです。kexec
および kdump
のメカニズムは、AMD64 および Intel 64 システムでコアダンプを取得する際に役立ちます。ただし、ミニシステムやメインフレームコンピューターなどの一部のハードウェアでは、オンボードファームウェアを使用してメモリー領域を分離し、クラッシュ分析で重要なデータが誤って上書きされることを防ぎます。fadump
ユーティリティーは、fadump
メカニズムと IBM POWER システム上の RHEL とのインテグレーション向けに最適化されています。
18.1. IBM PowerPC ハードウェアにおけるファームウェア支援ダンプ
fadump
ユーティリティーは、PCI デバイスおよび I/O デバイスが搭載され、完全にリセットされたシステムから vmcore
ファイルをキャプチャーします。この仕組みでは、クラッシュするとファームウェアを使用してメモリー領域を保存し、kdump
ユーザー空間スクリプトをもう一度使用して vmcore
ファイルを保存します。このメモリー領域には、ブートメモリー、システムレジスター、およびハードウェアのページテーブルエントリー (PTE) を除く、すべてのシステムメモリーコンテンツが含まれます。
fadump
メカニズムは、パーティションを再起動し、新規カーネルを使用して以前のカーネルクラッシュからのデータをダンプすることで従来のダンプタイプに比べて信頼性が向上されています。fadump
には、IBM POWER6 プロセッサーベースまたはそれ以降バージョンのハードウェアプラットフォームが必要です。
PowerPC 固有のハードウェアのリセット方法など、fadump
メカニズムの詳細は、/usr/share/doc/kexec-tools/fadump-howto.txt
ファイルを参照してください。
保持されないメモリー領域はブートメモリーと呼ばれており、この領域はクラッシュ後にカーネルを正常に起動するのに必要なメモリー容量です。デフォルトのブートメモリーサイズは、256 MB または全システム RAM の 5% のいずれか大きい方です。
kexec
で開始されたイベントとは異なり、fadump
メカニズムでは実稼働用のカーネルを使用してクラッシュダンプを復元します。PowerPC ハードウェアは、クラッシュ後の起動時に、デバイスノード /proc/device-tree/rtas/ibm.kernel-dump
が proc
ファイルシステム (procfs
) で利用できるようにします。fadump-aware kdump
スクリプトでは、保存された vmcore
があるかを確認してから、システムの再起動を正常に完了させます。