第23章 起動オプション
Red Hat Enterprise Linux インストールシステムには、特定の機能を有効 (または無効) にして、インストールプログラムのデフォルトの動作を変更する、管理者用に各種起動オプションが含まれています。起動オプションを使用するには、「ブートメニューによるインストールシステムの設定」 の説明に従って、起動コマンドラインに追加します。複数のオプションを追加する場合は、それらのオプションを単一スペースで区切ってください。
本章では基本的な 2 種類のオプションタイプについて説明します。
- 末尾に等号(
=
)と表示されるオプションでは、値を指定する必要があります。これらは独自に使用できません。たとえば、inst.vncpassword=
オプションには値 (この場合はパスワード) も指定する必要があります。このため、正しい形式はinst.vncpassword=password
です。パスワードを指定しないでオプションだけを使用した場合、このオプションは無効になります。 =
記号なしで表示されるオプションは、値やパラメーターを受け入れません。たとえば、rd.live.check
オプションでは、インストール開始前に Anaconda によりインストールメディアの検証が強制されます。このオプションが存在する場合はチェックが行われ、存在しない場合はチェックは省略されます。
23.1. ブートメニューによるインストールシステムの設定
注記
カスタムの起動オプションの設定方法は各システムのアーキテクチャーごとに異なります。アーキテクチャー固有の設定方法については次を参照してください。
- 64 ビット AMD、Intel、および ARM システムの場合は「ブートメニュー」を参照してください。
- IBM Power Systems サーバーの場合は「ブートメニュー」を参照してください。
- IBM Z の場合は21章IBM Z でのパラメーターと設定ファイルを参照してください。
ブートメニュー (インストールメディアの起動後に表示されるメニュー) で起動オプションを編集する方法はいくつかあります。
- 起動メニューの任意の場所で Esc キーを押してアクセスされる
boot:
プロンプト。このプロンプトでは、まず先頭のオプションで読み込むべきインストールプログラムのイメージを指定する必要があります。ほとんどの場合、イメージはlinux
キーワードを使用して指定できます。必要に応じて、この文字列のあとに追加オプションを指定できます。このプロンプトで Tab キーを押すと、該当する場合に使用可能なコマンドの形式でヘルプが表示されます。オプションでインストールを開始するには、Enter キーを押します。boot:
プロンプトからブートメニューに戻るには、コンピューターを再起動してインストールメディアから再度起動します。 - BIOS ベースの AMD64 および Intel 64 システムの
>
プロンプトは、ブートメニューのエントリーを強調表示し、Tab キーを押してアクセスできます。boot:
プロンプトとは異なり、このプロンプトで定義済みの起動オプションセットを編集できます。たとえば、 というラベルが付いたエントリーを強調表示すると、このメニューエントリーで使用されるオプションの完全なセットがプロンプトに表示され、独自のオプションを追加できます。Enter を押すと、指定したオプションを使用してインストールが開始されます。編集をキャンセルして起動メニューに戻るには、いつでも Esc キーを押します。 - GRUB2 メニュー(UEFI ベースの 64 ビット AMD、Intel、および ARM システム)。システムで UEFI を使用している場合は、エントリーを強調表示し、e キーを押して起動オプションを編集できます。編集が終了したら、F10 または Ctrl+X を押して、指定したオプションでインストールを開始します。
本章で説明するオプションに加えて、ブートプロンプトは dracut カーネルオプションも使用できます。これらのオプションの一覧は、
dracut.cmdline (7)
の man ページで確認できます。
注記
インストールプログラムに固有の起動オプションは、本ガイドでは常に
inst.
で始まります。現在、この接頭辞はオプションです。たとえば resolution=1024x768
は inst.resolution=1024x768
と全く同じように機能します。ただし、今後のリリースでは inst.
接頭辞が必須になることが予想されます。
インストールソースの指定
inst.repo=
- インストールソースを指定します。インストールソースとは、インストールプログラムが必要なイメージやパッケージを見つけることができる場所です。以下に例を示します。
inst.repo=cdrom
値は次のいずれかになります。- インストール可能なツリー(インストールプログラムのイメージ、パッケージ、リポジトリーデータ、および有効な
.treeinfo
ファイルを含むディレクトリー構造) - DVD (システムの DVD ドライブにある物理的なディスク)
- (ハードドライブ、またはインストールシステムからアクセスできるネットワークの場所) にある Red Hat Enterprise Linux のフルインストール用 DVD の ISO イメージ (インストールソースとして NFS Server を指定する必要があります)
このオプションでは、異なる形式を使用することでさまざまなインストール方法を設定することができます。以下の表に構文を示します。表23.1 インストールソース インストールソース オプションの形式 CD/DVD ドライブ、指定なし inst.repo=cdrom
CD/DVD ドライブ、指定あり inst.repo=cdrom:device
ハードドライブ inst.repo=hd:device:/path
HMC inst.repo=hmc
HTTP サーバー inst.repo=http://host/path
HTTPS サーバー inst.repo=https://host/path
FTP サーバー inst.repo=ftp://username:password@host/path
NFS サーバー inst.repo=nfs:[options:]server:/path
[a][a] このオプションでは、デフォルトで NFS プロトコルのバージョン 3 が使用されます。別のバージョンを使用するには、nfsvers=X
を オプション に追加し、X を、使用するバージョン番号に置き換えます。注記Red Hat Enterprise Linux の以前のリリースでは、NFS (nfs
オプション) でアクセスできるインストール可能なツリーと、NFS ソースにある ISO イメージ (nfsiso
オプション) にそれぞれ異なるオプションがありました。Red Hat Enterprise Linux 7 では、ソースがインストール可能なツリーなのか、ISO イメージを含むディレクトリーなのかインストールプログラムが自動的に検知できるので、nfsiso
オプションが非推奨になりました。ディスクデバイス名は、次の形式で指定します。- カーネルデバイス名(例:
/dev/sda1
またはsdb2
) - ファイルシステムラベル(
LABEL=Flash
またはLABEL=RHEL7
など) - ファイルシステムの UUID (例:
UUID=8176c7bf-04ff-403a-a832-9557f94e61db
)
英数字以外の文字は\xNN
として表す必要があります。NN は文字の 16 進数表現です。たとえば、\x20
は空白(" " inst.stage2=
- 読み込み対象のインストールプログラムのランタイムイメージの場所を指定します。構文は インストールソースの指定 と同じです。このオプションは、有効な
.treeinfo
ファイルを含むディレクトリーへのパスを想定します。ランタイムイメージの場所は、このファイルから読み取られます(見つかった場合)。.treeinfo
ファイルが利用できない場合には、Anaconda はLiveOS/squashfs.img
からイメージを読み込もうとします。複数の HTTP、HTTPS、または FTP ソースを指定する場合は、オプションを複数回使用します。inst.stage2=host1/install.img inst.stage2=host2/install.img inst.stage2=host3/install.img
注記デフォルトでは、インストールメデイアでinst.stage2=
起動オプションが使用され、特定のラベル (たとえばinst.stage2=hd:LABEL=RHEL7\x20Server.x86_64
) に設定されます。ランタイムイメージを含むファイルシステムのデフォルトラベルを修正するか、インストールシステムの起動にカスタマイズした手順を使用する場合は、このオプションを正しい値に設定する必要があります。 inst.dd=
- インストール時にドライバーを更新する必要がある場合は、
inst.dd=
オプションを使用します。複数回の使用が可能です。ドライバーの RPM パッケージの場所は、インストールソースの指定 で詳述されている任意の形式で指定できます。inst.dd=cdrom
オプション以外は、常にデバイス名を指定する必要があります。以下に例を示します。inst.dd=/dev/sdb1
このオプションにパラメーターを付けずに使用すると (inst.dd
のみ)、対話形式のメニューでドライバー更新ディスクの選択が求められます。ドライバーディスクは、ネットワーク経由またはinitrd
から読み込むのではなく、ハードディスクドライブまたは同様のデバイスから読み込むこともできます。以下の手順に従います。- ハードディスクドライブ、USB、または同様のデバイスにドライバーディスクを読み込みます。
- このデバイスに対して DD などのラベルを設定します。
- 起動の引数として以下を指定して、
inst.dd=hd:LABEL=DD:/dd.rpm
インストールを開始します。
DD を具体的なラベルに、dd.rpm は具体的な名前に置き換えます。LABEL ではなく、inst.repo コマンドで対応している内容を使用して、ハードディスクドライブを指定します。インストール時のドライバー更新についての詳細は、6章AMD64 および Intel 64 システムへのインストール中におけるドライバー更新 (AMD64 および Intel 64 システム)、および11章IBM Power Systems へのインストール中におけるドライバー更新 (IBM Power Systems サーバー) を参照してください。
キックスタート起動オプション
inst.ks=
- インストールの自動化に使用するキックスタートファイルの場所を入力します。ロケーションは、
inst.repo
に有効ないずれかの形式で指定できます。詳細は インストールソースの指定 を参照してください。複数の HTTP、HTTPS、または FTP ソースを指定する場合は、オプションを複数回使用します。複数の HTTP、HTTPS、または FTP の場所が指定されると、それらの場所はいずれかが成功するまで順番に試行されます。inst.ks=host1/directory/ks.cfg inst.ks=host2/directory/ks.cfg inst.ks=host3/directory/ks.cfg
パスではなくデバイスのみを指定すると、インストールプログラムは指定したデバイスの/ks.cfg
でキックスタートファイルを検索します。デバイスを指定せずにこのオプションを使用すると、インストールプログラムは次を使用します。inst.ks=nfs:next-server:/filename
上記の例では、next-server は DHCP のnext-server
オプションまたは DHCP サーバーの IP アドレスで、filename は DHCP のfilename
オプションまたは/kickstart/
です。指定のファイル名が/
文字で終わる場合は、ip-kickstart
が追加されます。以下に例を示します。表23.2 デフォルトのキックスタートファイルの場所 DHCP サーバーのアドレス クライアントのアドレス キックスタートファイルの場所 192.168.122.1
192.168.122.100
192.168.122.1
:/kickstart/192.168.122.100-kickstart
さらに、Red Hat Enterprise Linux 7.2 以降、インストーラーはOEMDRV
のラベルが付いたボリュームからks.cfg
という名前のキックスタートファイル(存在する場合)を読み込もうとします。キックスタートファイルがこの場所にある場合は、inst.ks=
起動オプションを使用する必要がありません。 inst.ks.sendmac
- すべてのネットワークインターフェイスの MAC アドレスを持つ
HTTP
送信要求にヘッダーを追加します。以下に例を示します。X-RHN-Provisioning-MAC-0: eth0 01:23:45:67:89:ab
これは、inst.ks=http
を使用してシステムをプロビジョニングする場合に便利です。 inst.ks.sendsn
HTTP
送信リクエストにヘッダーを追加します。このヘッダーには、/sys/class/dmi/id/product_serial
から読み取られたシステムのシリアル番号が含まれます。ヘッダーの構文は以下のとおりです。X-System-Serial-Number: R8VA23D
コンソール、環境、ディスプレイの各オプション
console=
- このカーネルオプションでは、プライマリーコンソールとして使用するデバイスを指定します。たとえば、最初のシリアルポートでコンソールを使用するには、
console=ttyS0
を使用します。このオプションは、inst.text
オプションと併用する必要があります。このオプションは複数回使用できます。この場合、起動メッセージが指定したコンソールすべてで表示されますが、これ以降インストールプログラムが使用するのは最後のコンソールのみです。たとえば、console=ttyS0 console=ttyS1
を指定すると、インストールプログラムはttyS1
を使用します。 noshell
- インストール中の root シェルへのアクセスを無効にします。これは、自動(キックスタート)インストールに役立ちます。このオプションを使用すると、ユーザーはインストールの進捗を確認できますが、Ctrl+Alt+F2 を押して root シェルにアクセスして干渉することはできません。
inst.lang=
- インストール時に使用する言語を設定します。言語コードは、「キックスタートのコマンドとオプション」 で説明されている lang キックスタートコマンドで使用されるものと同じです。system-config-language パッケージがインストールされているシステムでは、有効な値の一覧は
/usr/share/system-config-language/locale-list
で確認できます。 inst.geoloc=
- インストールプログラムで地理位置情報の使用を設定します。地理位置情報は、言語およびタイムゾーンの事前設定に使用され、
inst.geoloc=value
構文を使用します。value パラメーターは次のいずれかにします。表23.3 inst.geoloc オプションに使用できる値 地理位置情報の無効化 inst.geoloc=0
Fedora GeoIP API の使用 inst.geoloc=provider_fedora_geoip
Hostip.info GeoIP API の使用 inst.geoloc=provider_hostip
このオプションを指定しないと、Anaconda はprovider_fedora_geoip
を使用します。 inst.keymap=
- インストールプログラムで使用するキーボードのレイアウトを指定します。レイアウトコードは、「キックスタートのコマンドとオプション」 で説明されている keyboard キックスタートコマンドで使用されるものと同じです。
inst.text
- インストールプログラムをグラフィカルモードではなくテキストモードで強制実行します。テキストユーザーインターフェイスの場合、パーティションレイアウトの変更ができなかったり、LVM を設定できないなどの制限があります。グラフィック機能に制限のあるマシンにシステムをインストールする場合は、リモートアクセスの有効化で説明されている VNC の使用をお勧めします。
inst.cmdline
- インストールプログラムをコマンドラインモードで強制実行します。このモードでは一切のやりとりができないため、オプションはすべてキックスタートファイル内またはコマンドライン上で指定する必要があります。
inst.graphical
- インストールプログラムをグラフィカルモードで強制実行します。これがデフォルトのモードです。
inst.resolution=
- グラフィカルモードでの画面解像度を指定します。NxM の形式をとります。ここでは、N は、画面の幅、M は画面の高さ (ピクセル) に置き換えます。 サポートされる最小解像度は
800x600
です。 inst.headless
- インストールしているマシンにディスプレイ用ハードウェアがないことを指定します。つまり、このオプションを設定するとインストールプログラムによる画面の検出が試行されなくなります。
inst.xdriver=
- インストール中およびインストール済みシステムで使用される
X
ドライバーの名前を指定します。 inst.usefbx
- ハードウェア固有のドライバーではなく、フレームバッファー
X
ドライバーを使用するようにインストールプログラムに指示します。このオプションは、inst.xdriver=fbdev
と同じです。 modprobe.blacklist=
- ドライバーをブラックリストに登録します (完全無効)。このオプションで無効にしたドライバー (mods) はインストール開始時の読み込みから除外され、インストール終了後、インストールが完了したシステムでもこの設定が維持されます。ブラックリストに登録されたドライバーは、
/etc/modprobe.d/
ディレクトリーにあります。複数のドライバーを無効にするには、コンマ区切り一覧を使用します。以下に例を示します。modprobe.blacklist=ahci,firewire_ohci
inst.sshd=0
- デフォルトでは、
sshd
は IBM Z でのみ自動的に起動され、その他のアーキテクチャーでは、inst.
オプションが使用されない限り、sshd は起動しません。このオプションは、IBM Z でsshd
sshd
が自動的に起動しないようにします。 inst.sshd
- インストール時に
sshd
サービスを開始します。これにより、SSH
を使用してインストール中にシステムに接続し、その進捗を監視できます。SSH の詳細は、ssh (1)
の man ページと、Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイドの 該当する章を参照してください。デフォルトでは、sshd
は IBM Z でのみ自動的に起動され、その他のアーキテクチャーでは、inst.
オプションが使用されない限り、sshd は起動しません。sshd
注記インストール時に、root
アカウントにはデフォルトではパスワードがありません。「キックスタートのコマンドとオプション」 で説明されているように、sshpw キックスタートコマンドを使用して、インストール中に使用する root パスワードを設定できます。 inst.kdump_addon=
- インストーラーで Kdump 設定画面(アドオン)を有効または無効にします。この画面はデフォルトで有効になっているため、無効にする場合は
inst.kdump_addon=off
を使用します。アドオンを無効にすると、グラフィカルおよびテキストベースのインターフェイスと %addon com_redhat_kdump Kickstart コマンドの両方で Kdump 画面が無効になることに注意してください。
ネットワーク起動オプション
初期ネットワークの初期化は dracut によって処理されます。本セクションでは、より一般的に使用されるオプションについてのみ一覧表示します。完全な一覧は、
dracut.cmdline (7)
の man ページを参照してください。ネットワークに関する追加情報は、Red Hat Enterprise Linux 7 ネットワークガイドも併せて参照してください。
ip=
- ネットワークインターフェイスを設定します。複数のインターフェイスを設定するには、インターフェイスごとに 1 回ずつ、
ip
オプションを複数回使用できます。複数のインターフェイスを設定する場合は、rd.neednet=1
オプションも使用する必要があり、以下で説明されているbootdev
オプションを使用してプライマリー起動インターフェイスを指定する必要があります。または、ip
オプションを 1 回使用してから、キックスタートを使用してさらにインターフェイスを設定することもできます。このオプションでは、複数の形式が使用できます。最も一般的な形式は、表23.4「ネットワークインタフェースの設定形式」 で説明されています。表23.4 ネットワークインタフェースの設定形式 設定方法 オプションの形式 全インターフェイスの自動設定 ip=method
特定インターフェイスの自動設定 ip=interface:method
静的設定 ip=ip::gateway:netmask:hostname:interface:none
オーバーライドを使用した特定インターフェイスの自動設定 [a] ip=ip::gateway:netmask:hostname:interface:method:mtu
[a]dhcp
など、指定した自動設定方法を使用して、指定したインターフェイスを起動しますが、自動取得した IP アドレス、ゲートウェイ、ネットマスク、ホスト名、またはその他の指定パラメーターが上書きされます。パラメーターはすべてオプションです。無効にするパラメーターだけを指定します。それ以外のパラメーターには自動取得した値が使用されます。method
パラメーターには、以下のいずれかを使用します。表23.5 自動インターフェイス設定方法 自動設定の方法 値 DHCP dhcp
IPv6 DHCP dhcp6
IPv6 自動設定 auto6
iBFT (iSCSI Boot Firmware Table) ibft
注記ip
オプションを指定せずに、inst.ks=http://host/path
などのネットワークアクセスが必要な起動オプションを使用している場合は、インストールプログラムでip=dhcp
が使用されます。重要iSCSI ターゲットに自動接続するには、ターゲットにアクセスするネットワークデバイスがアクティベートされている必要があります。こにれついての推奨の方法として、起動オプションip=ibft
を使用します。上記の表では ip パラメーターはクライアントの IP アドレスを指定しています。IPv6
アドレスは、角括弧で囲むことで指定できます([2001:DB8::1]
など)。gateway パラメーターはデフォルトのゲートウェイになります。IPv6 アドレスはここでも使用できます。netmask パラメーターは使用するネットマスクです。これは、IPv4 の完全ネットマスク(255.255.255.0
など)または IPv6 の接頭辞(64
など)のいずれかになります。hostname パラメーターはクライアントシステムのホスト名です。このパラメーターは任意です。 nameserver=
- ネームサーバーのアドレスを指定します。このオプションは複数回使用できます。
rd.neednet=
- 複数の
ip
オプションを使用する場合はrd.neednet=1
オプションを使用する必要があります。また、複数のネットワークインターフェイスを設定する場合は、一度そのip
を使用してから、キックスタートで追加インターフェイスを設定することもできます。 bootdev=
- 起動インターフェイスを指定します。このオプションは、
ip
オプションを複数回使用する場合に必要になります。 ifname=
- 特定の MAC アドレスを持たせた指定インターフェイス名をネットワークデバイスに割り当てます。複数回の使用が可能です。構文は
ifname=interface:MAC
です。以下に例を示します。ifname=eth0:01:23:45:67:89:ab
注記インストール中にカスタムのネットワークインターフェイス名を設定する場合にサポートされる唯一の方法として、ifname=
オプションを使用します。 inst.dhcpclass=
- DHCP のベンダークラス識別子を指定します。
dhcpd
サービスは、この値をvendor-class-identifier
として認識します。デフォルト値はanaconda-$(uname -srm)
です。 inst.waitfornet=
- inst.waitfornet=SECONDS 起動オプションを使用すると、インストールシステムはインストール前にネットワーク接続を待機します。SECONDS で指定する秒数は、タイムアウトして、ネットワーク接続がない場合でもインストールプロセスを継続するまでの最大秒数になります。
vlan=
- 仮想 LAN (VLAN) デバイスに特定の名前を付けて、指定インターフェイス上にセットアップします。構文は
vlan=name:interface
です。以下に例を示します。vlan=vlan5:em1
上記により、vlan5
という名前の VLAN デバイスがem1
インターフェイスに設定されます。name は以下のような形式をとります。表23.6 VLAN デバイスの命名規則 命名スキーム 例 VLAN_PLUS_VID vlan0005
VLAN_PLUS_VID_NO_PAD vlan5
DEV_PLUS_VID em1.0005
.DEV_PLUS_VID_NO_PAD em1.5
. bond=
- ボンディングデバイスは
bond=name[:slaves][:options]
の構文を使用して設定します。name は、ボンディング名に置き換え、slaves は、コンマで区切った物理 (イーサネット) インターフェイスに置き換え、options は、コンマで区切ったボンディングオプションに置き換えます。以下に例を示します。bond=bond0:em1,em2:mode=active-backup,tx_queues=32,downdelay=5000
利用可能なオプションの一覧は、modinfo bonding コマンドを実行します。パラメーターを何も付けずにこのオプションを使用すると、bond=bond0:eth0,eth1:mode=balance-rr
となります。 team=
team=master:slaves
構文でチームデバイスを設定します。master は、マスターのチームデバイス名に置き換え、slaves は、チームデバイスでスレーブとして使用する物理 (イーサネット) デバイスをコンマで区切った一覧形式で入力します。以下に例を示します。team=team0:em1,em2
高度なインストールオプション
inst.kexec
- このオプションを指定すると、インストーラーは、再起動を実行する代わりに、インストールの最後に kexec システムコールを使用します。これにより新システムが即座に読み込まれ、BIOS またはファームウェアが通常実行するハードウェアの初期化が省略されます。重要kexec を使用したシステムのブートには複雑であるため、すべての状況で明示的にテストして機能することが保証されていません。kexec を使用すると、(完全なシステム再起動で通常はクリアされる)デバイスレジスタにデータが入ったままになり、デバイスドライバーによっては問題が発生する可能性があります。
inst.gpt
- インストールプログラムがパーティション情報を Master Boot Record (MBR) ではなく GUID Partition Table (GPT) にインストールするように強制します。UEFI ベースのシステムでは、BIOS 互換モードになっていなければ、このオプションは意味がありません。通常、BIOS 互換モードの BIOS ベースのシステムおよび UEFI ベースのシステムでは、ディスクのサイズが 232 セクター以上でない限り、パーティション情報の格納には MBR スキーマを使用しようとします。通常はディスクの 1 セクターは 512 バイトで、これは 2 TiB にあたります。このオプションを使用することでこの動作が変更され、このサイズより小さいディスクにも GPT の書き込みが可能になります。GPT および MBR 「MBR と GPT に関する注意点」 の詳細はを参照してください。また、GPT、MBR、およびディスクパーティション設定全般に関する詳細情報は、「GUID パーティションテーブル (GPT)」 を参照してください。
inst.multilib
- multilib パッケージ用にシステムを設定し (つまり、64 ビットの AMD64 もしくは Intel 64 システムに 32 ビットのパッケージをインストールできるようにする)、このセクションで説明しているようにパッケージをインストールします。通常、AMD64 または Intel 64 のシステムでは、このアーキテクチャー用のパッケージ(
x86_
64 の印が付いている)と、すべてのアーキテクチャー用のパッケージ(noarch
の印が付いている)のみがインストールされます。このオプションを使用すると、32 ビットの AMD または Intel システム用のパッケージ(i686
の印が付いている)が、利用可能な場合は自動的にインストールされます。これは、%packages
セクションで直接指定されたパッケージにのみ適用されます。依存パッケージとしてインストールされる場合は、依存パッケージに該当するものしかインストールされません。たとえば、bash パッケージをインストールするときにこのパッケージが glibc パッケージに依存している場合に、前者は複数のバリアントにインストールされ、後者は、特別に必要とされるバリアントにだけインストールされます。 selinux=0
- デフォルトでは、SELinux はインストーラーでは
Permissive
モードで動作し、インストール済みシステムではEnforcing
モードで動作します。このオプションは、インストールおよびインストールされたシステム全体での SELinux の使用を無効にします。注記selinux=0
とinst.selinux=0
のオプションは同じではありません。selinux=0
オプションは、インストーラーおよびインストール済みシステムで SELinux の使用を無効にしますが、inst.selinux=0
はインストーラーでのみ SELinux を無効にします。デフォルトでは、SELinux はインストーラーでPermissive
モードで動作するように設定されているため、無効にしてもほとんど影響はありません。 inst.nosave=
- Red Hat Enterprise Linux 7.3 から導入されたこのオプションは、インストールするシステムに保存するキックスタートファイルとインストールログを指定します。OEM のオペレーティングシステムのインストールを実行している場合や、内部リポジトリー URL などの機密ソースを使用してイメージを生成する場合など、これらのデータの保存を無効にする場合に特に便利です。無効にしないと、これらのリソースはキックスタートファイルもしくはイメージ上のログ、またはそれら両方に記述されることになるためです。使用可能な値は以下のとおりです。
input_ks
: 入力キックスタートファイルの保存を無効にします(存在する場合)。output_ks
: Anaconda が生成した出力キックスタートファイルの保存を無効にします。all_ks
: 入出力キックスタートファイルの両方の保存を無効にします。logs
: すべてのインストールログの保存を無効にします。all:すべて
のキックスタートファイルとすべてのインストールログの保存を無効にします。複数の値はコンマ区切りリストとして組み合わせることができます(例:input_ks,logs
)。 inst.zram
- このオプションは、インストール中の zRAM swap の使用量を制御します。これはシステムの RAM の内部に圧縮ブロックデバイスを作成し、これをハードドライブではなく swap 領域向けに使用します。これにより、インストーラーが利用可能なメモリー量が実質上増えることになり、メモリーが少ないシステムでのインストールが迅速にできるようになります。デフォルトでは、zRAM 上のスワップは、搭載されている RAM が 2 GiB 以下のシステムで有効になり、2 GiB を超えるシステムでは無効になります。このオプションを使用するとこの動作を変更できます。RAM が 2 GiB を超えるシステムでは
inst.zram=1
を使用して有効にし、2 GiB 以下のメモリーのシステムではinst.zram=0
を使用してこの機能を無効にします。
リモートアクセスの有効化
リモートグラフィカルインストール用に Anaconda を設定するには、以下のオプションが必要です。詳細は 25章VNC の使用 を参照してください。
inst.vnc
- インストールプログラムのグラフィカルインターフェイスを
VNC
セッションで実行するように指定します。このオプションを指定する場合、インストールプログラムと通信することができる VNC クライアントアプリケーションを使ってシステムを接続しておく必要があります。VNC 共有を有効にすることで、複数のクライアントを同時にシステムに接続できるようになります。注記VNC でインストールしたシステムは、デフォルトではテキストモードで起動します。 inst.vncpassword=
- インストールプログラムが使用する VNC サーバーでパスワードを設定します。これにより、このシステムに接続を試行する VNC クライアントはすべて、正しいパスワードを入力しないとアクセスできなくなります。たとえば、
inst.vncpassword=testpwd
は、パスワードをtestpwd
に設定します。VNC パスワードは 6 文字から 8 文字に設定する必要があります。注記無効なパスワードを指定すると (長すぎるまたは短すぎるパスワード)、インストールプログラムにより別のパスワードの指定を求めるメッセージが出力されます。VNC password must be six to eight characters long. Please enter a new one, or leave blank for no password. Password:
inst.vncconnect=
- インストールの開始後、指定ホストのポートで待機している VNC クライアントに接続します。正しい構文は
inst.vncconnect=host:port
です。ここでは、host は VNC クライアントのホストのアドレスに置き換え、port は使用するポートを指定します。port パラメーターは任意です。指定しないと、インストールプログラムは5900
を使用します。
デバッグとトラブルシューティング
inst.updates=
- インストールプログラムランタイムに適用される
updates.img
ファイルの場所を指定します。構文は、inst.repo
オプションと同じです。詳細は 表23.1「インストールソース」 を参照してください。すべての形式では、ファイル名を指定せずにディレクトリーのみを指定すると、インストールプログラムはupdates.img
という名前のファイルを検索します。 inst.loglevel=
- ターミナルでログ表示されるメッセージの最低レベルを指定します。このオプションで設定するのはターミナル表示のみです。ログファイルには常に全レベルのメッセージが記録されます。このオプションに使用できる値は、最小レベルから最高レベルまで、
debug
、info
、warning
、error
、およびcritical
です。デフォルト値はinfo
です。これは、デフォルトではinfo
からcritical
までのメッセージがロギング端末に表示されます。 inst.syslog=
- インストールが開始されると、このオプションはログメッセージを、指定されたホスト上の syslog プロセスに送ります。リモート syslog プロセスは、着信接続を受け入れるように設定する必要があります。syslog サービスが着信接続を受け入れるように設定する方法については、Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイドを参照してください。
inst.virtiolog=
- ログの転送に使用する
virtio
ポート(/dev/virtio-ports/名
のキャラクターデバイス)を指定します。デフォルト値はorg.fedoraproject.anaconda.log.0
です。このポートが存在する場合は使用されます。 rd.live.ram
- このオプションを指定すると、ステージ 2 イメージが RAM にコピーされます。インストールは NFS リポジトリー上のステージ 2 イメージ上に構築された環境内のネットワーク再設定に影響される場合があるので、NFS 上のステージ 2 イメージが使用されると、このオプションによりインストールがスムーズに進む場合があります。NFS サーバー上にステージ 2 イメージがある場合にこのオプションを使用すると、イメージで必要となる最小メモリーがおよそ 500 MiB 増えることに注意してください。
inst.nokill
- 致命的なエラーが発生した場合、またはインストールプロセスの終了時に、anaconda がリブートしないようにするデバッグオプションです。これを使用すると、リブートすると失われてしまうインストールのログが取得できます。
23.1.1. 廃止予定および削除された起動オプション
廃止予定の起動オプション
この一覧に記載されているオプションは 廃止予定 です。動作はしますが同じ機能を提供している別のオプションがあります。廃止予定のオプションの使用は推奨されせん。今後のリリースで削除される予定です。
注記
「ブートメニューによるインストールシステムの設定」 では、インストールプログラムに固有のオプションが
inst.
接頭辞を使用するようになったことに注意してください。たとえば、vnc=
オプションは非推奨とみなされ、inst.vnc=
オプションに置き換えられます。これらの変更は、ここでは一覧表示されていません。
method=
- インストール方法の設定に使用されていました。代わりに
inst.repo=
オプションを使用してください。 repo=nfsiso:server:/path
- NFS インストールで、ターゲットがインストール可能なツリーではなく、NFS サーバー上にある ISO イメージであることを指定。この違いは自動的に検出されるようになったため、このオプションは
inst.repo=nfs:server:/パスと同じです
。 dns=
- ドメインネームサーバー (DNS) の設定に使用していました。代わりに
nameserver=
オプションを使用してください。 netmask=
,gateway=
,hostname=
,ip=
,ipv6=
- これらのオプションは、
ip=
オプションに統合されました。 ksdevice=
- インストールの初期段階で使用するネットワークデバイスを選択します。値、オプションともに変更があります。以下の表を参照してください。
表23.7 自動インターフェイス設定方法 値 現在の動作 存在しない 目的のデバイスと設定が ip=
オプションまたはBOOTIF
オプションで指定されていない限り、dhcp
を使用してすべてのデバイスのアクティブ化を試みます。ksdevice=link
上記と同様ですが、(必要の有無にかかわらず) ネットワークが initramfs で常にアクティブにされる点が異なります。同じ結果を得るには、サポートされる rd.neednet
dracut オプションを使用する必要があります。ksdevice=bootif
無視されます (指定すると BOOTIF= オプションがデフォルトで使用されます)。 ksdevice=ibft
ip=ibft
dracut オプションに置き換えksdevice=MAC
BOOTIF=MAC
に置き換えksdevice=device
replace は、 ip=
dracut オプションを使用してデバイス名を指定します。 blacklist=
- 指定したドライバーの無効化に使用していました。
これは、modprobe.blacklist=
オプションで処理するようになりました。 nofirewire=
- FireWire インターフェイスのサポートの無効化に使用していました。代わりに
modprobe.blacklist=
オプションを使用して、FireWire ドライバー(firewire_ohci
)を無効にすることができます。modprobe.blacklist=firewire_ohci
nicdelay=
- ネットワークアクティブであると認識されるまでの遅延の表示に使用されていました。システムは、ゲートウェイが ping に成功するか、パラメーターで指定されている経過時間 (秒数) まで待機しました。RHEL 7 では、dracut モジュールによりインストールの初期段階でネットワークデバイスが設定され、アクティベートされます。これにより、続行する前にゲートウェイにアクセスできるようになります。dracut の詳細は、
dracut.cmdline (7)
の man ページを参照してください。 linksleep=
- デバイス上のリンクをアクティベートするまでの anaconda の待機時間を設定していました。この機能は、特定の
rd.net.timeout.*
オプションを、ネットワークデバイスの初期化が遅いことが原因で発生する問題を処理するように設定できる dracut モジュールで利用できるようになりました。dracut の詳細は、dracut.cmdline (7)
の man ページを参照してください。
削除済みの起動オプション
次のオプションは削除されました。これらは、Red Hat Enterprise Linux の以前のリリースに存在していましたが、使用できません。
askmethod
,asknetwork
- インストールプログラムの
initramfs
は完全に非対話型になったため、これらのオプションは利用できなくなりました。代わりに、inst.repo=
を使用してインストール方法とip=
を指定してネットワーク設定を行います。 serial
- このオプションにより、Anaconda は
/dev/ttyS0
コンソールを出力として強制的に使用します。代わりにconsole=/dev/ttyS0
(または同様のもの) を使用してください。 updates=
- インストールプログラムの更新の場所を指定するときに使用していました。代わりに
inst.updates=
オプションを使用してください。 essid=
,wepkey=
,wpakey=
- ワイヤレスのネットワークアクセスを設定する際に使用していました。ネットワーク設定は dracut により処理されます。これはワイヤレスネットワークに対応していないため、これらのオプションが無駄になります。
ethtool=
- 低レベルのネットワーク設定に使用していました。ネットワーク設定はすべて、
ip=
オプションで処理されています。 gdb
- ローダーのデバッグを許可する場合に使用していました。代わりに
rd.debug
を使用してください。 mediacheck
- インストール開始前のインストールメディアの検証に使用していました。
rd.live.check
オプションに置き換えられました。 ks=floppy
- 3.5 インチのディスクをキックスタートファイルのソースとして指定していました。このドライブはサポートされていません。
display=
- リモートディスプレイの設定に使用していました。
inst.vnc
オプションに置き換えられました。 utf8
- テキストモードでのインストール時に UTF8 サポートを追加。UTF8 サポートは自動的に機能するようになりました。
noipv6
- インストールプログラムで IPv6 サポートを無効化するために使用していました。IPv6 はカーネルに組み込まれるため、ドライバーはブラックリストに登録できなくなりますが、
ipv6.disable dracut オプションを使用して IPv6 を無効
にできます。 upgradeany
- アップグレードは、Red Hat Enterprise Linux 7 では別の方法で行われます。システムのアップグレードの詳細は、29章現在のシステムのアップグレード を参照してください。
vlanid=
- 仮想 LAN (802.1q tag) デバイスの設定に使用していました。代わりに
vlan=
dracut オプションを使用してください。