27.2. キックスタートを使ったインストールの実行方法


キックスタートを使用したインストールは、ローカルの DVD またはローカルのハードドライブを使用するか、NFS、FTP、HTTP、HTTPS などにより実行できます。
キックスタートを使用する場合、次の手順を行う必要があります。
  1. キックスタートファイルを作成する
  2. リムーバブルメディア、ハードドライブ、ネットワークの場所のいずれかの場所でキックスタートファイルを利用可能にする
  3. インストール開始に使用する起動メディアを作成する
  4. インストールソースを準備する
  5. キックスタートを使ったインストールを開始する
本章では、これらの手順について詳しく見ていきます。

27.2.1. キックスタートファイルの作成

キックスタートファイル自体は、「キックスタート構文の参考資料」 に記載のキーワードを含むプレーンテキストファイルで、インストールでの指示出しのロールを果たします。ファイルを ASCII テキストとして保存できるテキストエディター(Linux システムの Gedit または vim、Windows システムの ノートパッド など)は、キックスタートファイルの作成および編集に使用できます。キックスタート設定ファイルには任意の名前を付けることができますが、後で他の設定ファイルやダイアログでこの名前を指定する必要があるため、シンプルな名前にしておくことが推奨されます。
まず任意のシステムに手動のインストールを行うことが、キックスタートファイル作成の推奨方法となります。インストールが完了すると、インストール中に行ったすべての選択肢が、インストール済みシステムの /root/ ディレクトリーにある anaconda-ks.cfg という名前のファイルに保存されます。このファイルをコピーして、必要に応じて変更を加えると、この後のインストールでこの設定ファイルを使用することができます。
重要
Red Hat カスタマーポータルのアカウントをお持ちの場合は、カスタマーポータル Labs の で入手 https://access.redhat.com/labs/kickstartconfig/ 可能な キックスタート設定ツール を使用できます。このツールは基本的な設定を説明し、作成されるキックスタートファイルのダウンロードを可能にします。ただし、このツールは現在、高度なパーティション作成をサポートしていません。
Kickstart Configurator (キックスタートファイルを作成するグラフィカルツール)は引き続き利用可能です。ただし、今後更新されることはなく、Red Hat Enterprise Linux 6 から 7 へのキックスタート構文における変更を反映しません。
キックスタートファイルを作成する際は次の点に注意してください。
  • 各セクションは決められた順序で指定してください。セクション内の項目については、特に指定がない限り順序は関係ありません。セクションの順序は次のようになります。
    重要
    %addon%packages%onerror%pre、および %post セクションは、%end で終了する必要があります。そうしないと、インストールプログラムがキックスタートファイルを拒否する必要があります。
  • 必須項目以外は省略しても構いません。
  • 必須項目が省略されている場合は、通常のインストール中のプロンプトと同様、インストールプログラムにより、その関連項目についての回答が求められます。回答を入力すると、インストールが自動的に続行されます (他にも省略されている部分があればその部分まで)。
  • ポンド(数字)記号(#)で始まる行はコメントとして扱われ、無視されます。

27.2.2. キックスタートファイルの維持

27.2.2.1. キックスタートファイルの確認

キックスタートファイルの作成時もしくはカスタマイズ時には、ファイルをインストールで使用する前にその有効性を確認すると便利です。Red Hat Enterprise Linux 7 には、これに使用できる ksvalidator コマンドラインユーティリティーが含まれています。このツールは、pykickstart パッケージに含まれます。このパッケージをインストールするには、root で以下のコマンドを実行します。
# yum install pykickstart
パッケージをインストールしたら、以下のコマンドを使用してキックスタートファイルを検証できます。
$ ksvalidator /path/to/kickstart.ks
/path/to/kickstart.ks は、確認するキックスタートファイルへのパスに置き換えます。
このツールの詳細は、ksvalidator (1) の man ページを参照してください。
重要
検証ツールには制限があることに留意してください。キックスタートファイルは非常に複雑になる場合があります。ksvalidator は構文が正しいこと、およびファイルに非推奨のオプションが含まれていないことを確認できますが、インストールの成功を保証することはできません。また、キックスタートファイルの %pre セクション、%post セクション、および %packages セクションは検証されません。

27.2.2.2. キックスタート構文の違い

Red Hat Enterprise Linux の主要リリース間では、キックスタートを使ったインストールの全般的な原則はほぼ同じですが、コマンドおよびオプションが変更されることがあります。ksverdiff コマンドを使用すると、2 つのバージョンのキックスタート構文の違いを表示できます。これは、既存のキックスタートファイルを新しいリリースで使用するための更新をする際に便利なコマンドです。Red Hat Enterprise Linux 6 と 7 の構文の変更一覧を表示するには、以下のコマンドを使用します。
$ ksverdiff -f RHEL6 -t RHEL7
-f オプションは、比較を開始するリリースを指定し、-t オプションは、終了するリリースを指定します。詳細は、ksverdiff (1) man ページを参照してください。

27.2.3. キックスタートファイルの準備

キックスタートファイルは次のいずれかの場所に配置しておく必要があります。
  • DVD や USB フラッシュドライブなどの リムーバブルメディア
  • インストールするシステムに接続している ハードドライブ
  • インストールするシステムからアクセスできる ネットワーク共有
通常、キックスタートファイルはリムバーブルメディアやハードドライブにコピーするか、ネットワーク上で利用できるようにしておきます。ファイルをネットワーク上の場所に置くことで、キックスタートインストールへの通常のアプローチが補完されます。通常のアプローチもネットワークベースです。PXE サーバーを使ってシステムが起動され、キックスタートファイルがネットワーク共有からダウンロードされます。そして、ファイルで指定されているソフトウェアパッケージがリモートのリポジトリーからダウンロードされます。
キックスタートファイルを準備して、インストールするシステムからアクセスできるようにする手順は、インストール ISO イメージまたはツリーの代わりにキックスタートファイルを使用する点以外は、インストールソースの準備とまったく同じになります。全手順は、「インストールソースの準備」 を参照してください。

27.2.4. インストールソースの準備

システムに必要なパッケージをインストールするため、キックスタートを使ったインストールではインストールソースにアクセスする必要があります。ソースは、Red Hat Enterprise Linux のフルインストール DVD ISO イメージまたは インストールツリー のいずれかになります。インストールツリーは、同じディレクトリー構造を持つバイナリー Red Hat Enterprise Linux DVD のコピーです。
DVD ベースのインストールの場合は、キックスタートインストールを開始する前に、Red Hat Enterprise Linux インストール DVD をコンピューターに挿入します。インストールソースとして Red Hat Enterprise Linux DVD を使用する方法は、「インストールソース - DVD」 を参照してください。
(ハードドライブまたは USB フラッシュドライブのいずれかを使った) ハードドライブインストールを実行する場合は、バイナリー Red Hat Enterprise Linux DVD の ISO イメージがコンピューターのハードドライブ上にあることを確認してください。インストールソースにハードドライブを使用する方法は、「インストールソース - ハードドライブ」 を参照してください。
ネットワークベース (NFS、FTP、HTTP など) のインストールを実行する場合は、ネットワーク経由でインストールツリーやバイナリー DVD ISO イメージ (使用するプロトコルによる) などにアクセスできることを確認してください。詳細は 「インストールソース - ネットワーク」 を参照してください。

27.2.5. キックスタートを使ったインストールの開始

注記
inst.ks= 起動オプションを指定せずにキックスタートファイルを自動的に読み込むには、ファイルに ks.cfg という名前を付け、OEMDRV というラベルが付いたストレージボリュームに配置します。
インストールシステムを起動する場合は、起動オプション inst.ks=location を使用します。location は、キックスタートファイルの場所に置き換えます。起動オプションを指定する方法は、システムのアーキテクチャーによって異なります。詳細は 23章起動オプション を参照してください。
64 ビット AMD、Intel、および ARM システム、ならびに IBM Power Systems サーバーでは、PXE サーバーを使って起動する機能があります。PXE サーバーの設定時に、ブートローダー設定ファイルに起動オプションを追加できます。これにより、インストールを自動的に開始できるようになります。このアプローチにより、ブートプロセスを含めたインストールを完全に自動化できるようになります。PXE サーバーの設定方法は24章ネットワークからのインストールの準備を参照してください。
本セクションでは、キックスタートファイルがインストールシステムからアクセスできる場所に既に配置されていること、また起動メディアまたはシステムを起動しインストールを開始することができる PXE サーバーのいずれかの準備が整っていることを前提としています。記載されている手順は、一部がシステムのアーキテクチャーによって異なるため、一般的な説明としてご利用ください。また、すべてのアーキテクチャーですべてのオプションが使用できるわけではありません (IBM Z では PXE 起動は使用できないなど)。

27.2.5.1. 手動でのキックスタートインストールの開始

本セクションでは、手動でキックスタートインストールを開始する方法を説明します。つまり、boot: プロンプトで起動オプションを追加する必要があります。

手順27.1 起動オプションを使ってキックスタートを使ったインストールを開始する

  1. ローカルメディア (CD、DVD、USB フラッシュドライブなど) のいずれかを使ってシステムを起動します。アーキテクチャー固有の詳細については以下をご覧ください。
  2. 起動プロンプトで、inst.ks= 起動オプションと、キックスタートファイルの場所を指定します。キックスタートファイルがネットワークの場所にある場合は、ip= オプションを使用したネットワークの設定が必要になる場合があります。必要なパッケージがインストールされるソフトウェアソースにアクセスするには、inst.repo= オプションが必要になる場合があります。
    起動オプションと有効な構文に関する詳細は、23章起動オプション を参照してください。
  3. 追加した起動オプションを確認してインストールを開始します。
これにより、キックスタートファイルで指定されているインストールオプションを使用したインストールが開始します。キックスタートファイルに問題がなく、必要なコマンドがすべて含まれていれば、この時点からインストールは完全に自動化で行われます。

27.2.5.2. 自動的なキックスタートインストールの開始

以下の手順では、ネットワーク起動 (PXE) サーバーと適切に設定されたブートローダーを使って、キックスタートを使ったインストールを完全に自動化する方法を説明します。この方法に従うと、必要な作業はシステムをオンにすることだけになります。この時点からインストールが完了するまで、他の対話形式は一切不要となります。
注記
IBM Z では PXE インストールは利用できません。

手順27.2 ブートローダー設定を編集してキックスタートを使ったインストールを開始する

  1. PXE サーバー上でブートローダー設定ファイルを開き、inst.ks= 起動オプションを適切な行に追加します。ファイル名と構文は、システムのアーキテクチャーおよびハードウェアにより異なります。
    • BIOS が搭載されている AMD64 システムおよび Intel 64 システムの場合、ファイル名は デフォルト か、システムの IP アドレスを基にできます。この場合は、インストールエントリーの append 行に inst.ks= オプションを追加します。設定ファイルの append 行の例を以下に示します。
      append initrd=initrd.img inst.ks=http://10.32.5.1/mnt/archive/RHEL-7/7.x/Server/x86_64/kickstarts/ks.cfg
    • GRUB2 ブートローダーを使用するシステム(64 ビット AMD、Intel、および ARM システムで UEFI ファームウェアおよび IBM Power Systems サーバーがある)システムでは、ファイル名は grub.cfg になります。このファイルで、インストールエントリーの kernel 行に inst.ks= オプションを追加します。設定ファイルの kernel 行の例を以下に示します。
      kernel vmlinuz inst.ks=http://10.32.5.1/mnt/archive/RHEL-7/7.x/Server/x86_64/kickstarts/ks.cfg
  2. ネットワークサーバーからインストールを起動します。アーキテクチャー固有の詳細については以下をご覧ください。
これでキックスタートファイルで指定されているインストールオプションを使用したインストールが開始します。キックスタートファイルに問題がなく、必要なコマンドがすべて含まれていれば、インストールは完全に自動で行われます。
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