32.2. Anaconda のレスキューモード
Anaconda インストールプログラムのレスキューモードは、Red Hat Enterprise Linux 7 DVD またはその他の起動メディアから起動できる最小限の Linux 環境です。さまざまな問題を修復するコマンドラインユーティリティーが含まれています。このレスキューモードは、ブートメニューの サブメニューからアクセスできます。このモードでは、ファイルシステムを読み取り専用としてマウントすることや、マウント自体をしない選択や、ドライバーディスクで提供されるドライバーのブラックリスト登録または追加、さらにはシステムパッケージのインストールやアップグレード、またはパーティションの管理を実行することができます。
注記
Anaconda のレスキューモードは、systemd システムおよびサービスマネージャーの一部として提供される レスキュー モード( シングルユーザーモード と同等)と緊急モード とは異なります。これらのモードの詳細は、Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイドを参照してください。
Anaconda レスキューモードで起動するには、最小限の起動ディスクや USB ドライブ、フルインストール DVD など、Red Hat Enterprise Linux ブートメディアを使用してシステムを起動できる必要があります。
Red Hat が提供するメディアを使用してシステムを起動する詳細な情報については、該当する章を参照してください。
- 64 ビット AMD、Intel、および ARM システムの場合は7章64 ビット AMD、Intel、および ARM システムでのインストールの起動を参照してください。
- IBM Power Systems サーバーの場合は12章IBM Power Systems でのインストールの起動を参照してください。
- IBM Z の場合は16章IBM Z でのインストールの起動を参照してください。
重要
iSCSI デバイスや zFCP デバイスなどの高度なストレージは、
dracut
起動オプション( rd.zfcp=
、root=iscsi:options
など)を使用するか、IBM Z の CMS 設定ファイルで設定する必要があります。レスキューモードで起動した後は、ストレージデバイスを対話的に設定することはできません。
dracut
起動オプションの詳細は、man ページの dracut.cmdline (7)
を参照してください。CMS 設定ファイルの詳細は、21章IBM Z でのパラメーターと設定ファイル を参照してください。
手順32.1 Anaconda レスキューモードで起動する
- 最小限の起動メディアまたは完全インストール DVD もしくは USB ドライブからシステムを起動し、ブートメニューが表示されるまで待ちます。
- 起動メニューからサブメニューから オプションを選択するか、
inst.rescue
オプションを起動コマンドラインに追加します。起動コマンドラインに入るには、BIOS ベースのシステムで Tab キーを押すか、UEFI ベースのシステムで e キーを押します。 - 起動する ドライバーディスク で提供されるサードパーティーのドライバーが必要な場合は、
inst.dd=driver_name
を起動コマンドラインに追加します。inst.rescue inst.dd=driver_name
起動時にドライバーディスクを使用する方法の詳細については、「手動によるドライバー更新」 (AMD64 および Intel 64 システム) または「手動によるドライバー更新」 (IBM Power Systems サーバー) を参照してください。 - Red Hat Enterprise Linux 7 ディストリビューションに含まれるドライバーが原因でシステムが起動しない場合は、
modprobe.blacklist=
オプションを起動コマンドラインに追加します。inst.rescue modprobe.blacklist=driver_name
ドライバーのブラックリスト登録の詳細については、「ブラックリストへのドライバーの登録」 を参照してください。 - 準備ができたら、Enter (BIOS ベースのシステム)または Ctrl+X (UEFI ベースのシステム)を押して、変更したオプションを起動します。以下のメッセージが表示されるまで待機します。
The rescue environment will now attempt to find your Linux installation and mount it under the
/mnt/sysimage/
directory. You can then make any changes required to your system. If you want to proceed with this step choose 'Continue'. You can also choose to mount your file systems read-only instead of read-write by choosing 'Read-only'. If for some reason this process fails you can choose 'Skip' and this step will be skipped and you will go directly to a command line./mnt/sysimage/
ディレクトリーにマウントしようとします。パーティションのマウントが失敗した場合、その旨が通知されます。 を選択すると、ファイルシステムを/mnt/sysimage/
ディレクトリーにマウントしようとしますが、読み取り専用モードになります。 を選択した場合には、ファイルシステムがマウントされません。ファイルシステムが破損していると思われる場合は、 を選択します。 - システムをレスキューモードで使用すると、VC (仮想コンソール)1 および VC 2 にプロンプトが表示されます(VC 1 にアクセスするには Ctrl+Alt+F1 キーの組み合わせを使用し、VC 2 にアクセスするには Ctrl+Alt+F2 を使用します)。
sh-4.2#
ファイルシステムがマウントされている場合でも、Anaconda レスキューモードにおけるデフォルトの root パーティションは一時的な root パーティションであり、通常のユーザーモード(
multi-user.target
または graphical.target
)で使用されるファイルシステムの root パーティションではありません。ファイルシステムのマウントを選択して正常にマウントした場合は、以下のコマンドを実行して Anaconda レスキューモード環境の root パーティションをファイルシステムの root パーティションに変更できます。
sh-4.2#
chroot /mnt/sysimage
これは、ルートパーティションを
/
としてマウントする必要がある rpm などのコマンドを実行する必要がある場合に便利です。chroot 環境を終了するには、exit と入力してプロンプトに戻ります。
/directory/
などのディレクトリーを作成し、次のコマンドを入力して、Anaconda レスキューモード内でパーティションまたは LVM2 論理ボリュームを手動でマウントできます。
sh-4.2#
mount -t xfs /dev/mapper/VolGroup00-LogVol02 /directory
上記のコマンドでは、
/directory/
は作成したディレクトリーで、/dev/mapper/VolGroup00-LogVol02 はマウントする LVM2 論理ボリュームです。パーティションが XFS 以外のタイプの場合は、xfs 文字列を正しいタイプ( ext4
など)に置き換えます。
すべての物理パーティションの名前が不明な場合は、次のコマンドを実行すると一覧が表示されます。
sh-4.2#
fdisk -l
LVM2 物理ボリューム、ボリュームグループ、または論理ボリュームの名前がわからない場合は、それぞれ pvdisplay コマンド、vgdisplay コマンド、または lvdisplay コマンドを使用します。
プロンプトから、以下のような多くの便利なコマンドが実行できます。
- ネットワークが開始されている場合の SSH、scp、および ping詳細は『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
- テープドライブを使用するユーザーの ダンプ および 復元詳細は、RHEL Backup and Restore Assistant を参照してください。
- パーティションを管理するための parted と fdisk詳細は、『Red Hat Enterprise Linux 7 ストレージ管理ガイド』を参照してください。
- ソフトウェアのインストールまたはアップグレードを行う yum詳細については、『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
32.2.1. sosreport
のキャプチャー
sosreport
コマンドラインユーティリティーは、実行中のカーネルバージョン、ロードされたモジュール、システムおよびサービス設定ファイルなどの設定および診断情報をシステムから収集します。ユーティリティーの出力は、/var/tmp/
ディレクトリーの tar アーカイブに保存されます。
sosreport
ユーティリティーは、システムエラーの分析に役立ち、トラブルシューティングを容易にします。以下の手順では、Anaconda レスキューモードで sosreport
出力をキャプチャーする方法を説明します。
手順32.2 Anaconda レスキューモードでの sosreport
の使用
- 手順32.1「Anaconda レスキューモードで起動する」 の手順に従って、Anaconda レスキューモードで起動します。インストール済みのシステムの
/
(root)パーティションを読み書きモードでマウントするようにしてください。 - root ディレクトリーを
/mnt/sysimage/
ディレクトリーに変更します。sh-4.2#
chroot /mnt/sysimage/ sosreport
を実行して、システム設定および診断情報を含むアーカイブを生成します。sh-4.2#
sosreport重要sosreport
を実行すると、Red Hat サポートサービスに連絡し、新しいサポートケースを作成する際に得られる名前とケース番号の入力を求めるプロンプトが表示されます。次の文字またはスペースを追加するとレポートが使用できなくなる可能性があるため、英数字のみを使用してください。# % & { } \ < > > * ? / $ ~ ' " : @ + ` | =
- 任意です。ネットワークを使用して、生成されたアーカイブを新しい場所に転送する場合は、ネットワークインターフェイスを設定する必要があります。動的 IP アドレス設定を使用する場合は、他に必要な手順はありません。ただし、静的アドレスを使用する場合は、次のコマンドを実行して、ネットワークインターフェイス (dev eth0 など) に IP アドレス (10.13.153.64/23 など) を割り当てます。
bash-4.2#
ip addr add 10.13.153.64/23 dev eth0静的アドレス指定の詳細は、 Red Hat Enterprise Linux 7 ネットワークガイドを参照してください。 - chroot 環境を終了します。
sh-4.2#
exit - 生成されたアーカイブを新しい場所に保存し、その場所からアーカイブへのアクセスを容易にします。
sh-4.2#
cp /mnt/sysimage/var/tmp/sosreport new_locationネットワークを介してアーカイブを転送するには、scp
ユーティリティーを使用します。sh-4.2#
scp /mnt/sysimage/var/tmp/sosreport username@hostname:sosreport
詳細は、以下の参考情報をご覧ください。
sosreport
に関する一般的な情報は、What is a sosreport and how to create one in Red Hat Enterprise Linux 4.6 and later? を参照してください。- Anaconda レスキューモード内で
sosreport
を使用する方法は、How to generate sosreport from the rescue environment を参照してください。 sosreport
を/tmp
以外の場所に生成する方法については、How do I make sosreport write to an alternative location? を参照してください。sosreport
を手動で収集する方法は、Sosreport fails を参照してください。 を参照してください。
32.2.2. ブートローダーの再インストール
GRUB2 ブートローダーが誤って削除されたり、破損したり、または他のオペレーティングシステムによって置き換えられたりする場合があります。以下の手順は、マスターブートレコードに GRUB を再インストールするプロセスについて詳述しています。
手順32.3 GRUB2 ブートローダーを再インストールする
- Anaconda レスキューモードで起動するには、手順32.1「Anaconda レスキューモードで起動する」 の手順に従います。インストール済みのシステムの
/
(root)パーティションを読み書きモードでマウントするようにしてください。 - root パーティションを変更します。
sh-4.2#
chroot /mnt/sysimage/ - 以下のコマンドを使用して GRUB2 ブートローダーを再インストールします。ここで、install_device はブートデバイス (通常は /dev/sda) になります。
sh-4.2#
/sbin/grub2-install install_device - システムを再起動します。
32.2.3. RPM によるドライバーの追加、削除、置換
ドライバーが誤作動する場合やドライバーが不足している場合は、システムの起動時に問題が生じる可能性があります。Anaconda レスキューモードは、システムが起動に失敗した場合でもドライバーを追加、削除、または交換できる環境を提供します。可能な場合は、RPM パッケージマネージャーを使用して誤作動するドライバーを削除するか、更新されたドライバーまたは欠落しているドライバーを追加することを推奨します。
注記
ドライバーディスクからドライバーをインストールする場合、ドライバーディスクはこのドライバーを使用するためにシステム上のすべての initramfs イメージを更新します。ドライバーが原因でシステムが起動できない場合は、別の initramfs イメージからシステムを起動する方法は使用できません。
手順32.4 RPM を使用してドライバーを削除する
- Anaconda レスキューモードでシステムを起動します。手順32.1「Anaconda レスキューモードで起動する」 にある説明に従ってください。インストール済みのシステムは必ず読み取りと書き込み (read-write) モードでマウントしてください。
- root ディレクトリーを
/mnt/sysimage/
に変更します。sh-4.2#
chroot /mnt/sysimage/ - rpm -e コマンドを使用して、ドライバーパッケージを削除します。たとえば、xorg-x11-drv-wacom ドライバーパッケージを削除するには、次のコマンドを実行します。
sh-4.2#
rpm -e xorg-x11-drv-wacom - chroot 環境を終了します。
sh-4.2#
exit
誤作動を起こすドライバーを何らかの理由で削除できない場合は、ドライバーが起動時に読み込まれないようにするため、代わりにドライバーを ブラックリスト に登録できます。ドライバーのブラックリスト登録に関する情報は 「ブラックリストへのドライバーの登録」 および 23章起動オプション を参照してください。
ドライバーをインストールするプロセスもこれに似ていますが、RPM パッケージがシステム上で利用できる状態である必要があります。
手順32.5 RPM パッケージからドライバーをインストールする
- Anaconda レスキューモードでシステムを起動します。手順32.1「Anaconda レスキューモードで起動する」 にある説明に従ってください。インストール済みのシステムは、読み取り専用でマウントしないでください。
- そのドライバーを含む RPM パッケージを利用できるようにします。たとえば、CD または USB フラッシュドライブをマウントし、RPM パッケージを
/mnt/sysimage/
の下の任意の場所にコピーします(例:/mnt/sysimage/root/drivers/
)。 - root ディレクトリーを
/mnt/sysimage/
に変更します。sh-4.2#
chroot /mnt/sysimage/ - rpm -ivh コマンドを使用してドライバーパッケージをインストールします。たとえば、xorg-x11-drv-wacom ドライバーパッケージを
/root/drivers/
からインストールするには、次のコマンドを実行します。sh-4.2#
rpm -ivh /root/drivers/xorg-x11-drv-wacom-0.23.0-6.el7.x86_64.rpm注記この chroot 環境の/root/drivers/
ディレクトリーは、元のレスキュー環境の/mnt/sysimage/root/drivers/
ディレクトリーです。 - chroot 環境を終了します。
sh-4.2#
exit
ドライバーの削除、インストールが終了したら、システムを再起動します。