18.16. ストレージデバイス


さまざまなストレージデバイスに Red Hat Enterprise Linux をインストールできます。「インストール先」 で説明されているように、インストール先 のページ で、ローカルにアクセス可能な基本的なストレージデバイスを確認できます。専用のストレージデバイスを追加するには、画面の 特殊 なディスク およびネットワークディスク セクションの ディスクの追加 ボタンをクリックします。
ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなど、ローカルシステムに直接接続されている基本的なストレージデバイスは、画面のローカルの 標準ディスク セクション に表示されます。IBM Z の場合、作動している DASD (Direct Access Storage Devices) が表示されます。
警告
既知の問題により、HyperPAV エイリアスとして設定された DASD をインストール後に自動的にシステムにアタッチすることはできません。これらのストレージデバイスはインストール中にこの画面で利用できますが、インストールが完了して再起動しても、すぐにはアクセスできません。HyperPAV エイリアスデバイスをアタッチするには、「DASD のオンラインでの永続的な設定」 の説明に従って、システムの /etc/dasd.conf 設定ファイルに手動で追加します。

図18.25 ストレージ領域の概要

ストレージ領域の概要

18.16.1. ストレージデバイス選択の画面

ストレージデバイス選択画面には、Anaconda インストールプログラムがアクセスできるすべてのストレージデバイスが表示されます。
デバイスは、次のタブに分類されます。
マルチパスデバイス
同じシステムにある、複数の SCSI コントローラーやファイバーチャネルポートなどの複数のパスからアクセスできるストレージデバイスです。
重要
インストールプログラムで検出できるのは、16 文字または 32 文字の長さのシリアル番号を持つマルチパスストレージデバイスのみです。
その他の SAN デバイス
単独パスで接続の FCP LUN など、SAN (Storage Area Network) で利用できる他のデバイスです。
ファームウェア RAID
ファームウェア RAID コントローラーに接続されているストレージデバイスです。このタブは、IBM Z では該当しません。
System z デバイス
このタブには、zSeries Linux FCP (ファイバーチャネルプロトコル) ドライバーで接続された ストレージデバイスもしくは LUN (論理ユニット) が含まれています。

図18.26 タブを使ってグループ分けされている特殊ストレージデバイスの概要

タブを使ってグループ分けされている特殊ストレージデバイスの概要
画面右下にボタンが表示されます。これらのボタンを使用して、新たなストレージデバイスを追加します。以下のボタンが利用可能です。
概要ページには Search タブも含まれており、このタブでは、アクセスする World Wide Identifier (WWID)またはポート、ターゲット、または 論理ユニット番号 (LUN)別にストレージデバイスをフィルターできます。

図18.27 ストレージデバイスの検索タブ

ストレージデバイスの検索タブ
Search タブには、ポート、ターゲット、LUN、または WWID での検索を選択する Search By ドロップダウンメニューが含まれます。WWID または LUN で検索するには、対応する入力テキストフィールドに値を入力する必要があります。検索 ボタンを クリック して検索を開始します。
左側にチェックボックスが付いたデバイスが列ごとに表示されます。インストールプロセス中にそのデバイスを使用可能にする場合は、このチェックボックスをクリックします。インストールプロセスの後半では、Red Hat Enterprise Linux のインストール先として、ここで選択したデバイスのいずれかを指定することができます。また、インストール完了後のシステムの一部として、ここで選択したデバイスの自動マウントを指定することができます。
ここで選択するデバイスのデータがインストールプロセスで自動的に消去されるわけではありません。この画面上でデバイスを選択しても、それだけでデバイスに保存されているデータが抹消されるわけではありません。また、インストールしたシステムの一部を形成するために選択しないデバイスは、インストール後に /etc/fstab ファイルを変更してシステムに追加できます。
インストール時に利用できるようにするストレージデバイスを選択したら、完了 を クリック して インストール先 画面に戻ります。

18.16.1.1. DASD の低レベルフォーマット

DASD へのインストールの場合は、Compatible Disk Layout (CDL) フォーマットでの低レベルフォーマットが推奨されます。ただし、CMS フォーマットの FBA DASD を使用することもできます。インストール 画面で DASD を選択して 完了 をクリックすると、インストールプログラムがフォーマットされていないディスクまたは互換性のないフォーマットディスクを検出し、以下のダイアログが表示されます。

図18.28 DASD デバイスフォーマットのダイアログ

DASD デバイスフォーマットのダイアログ
ダイアログでは、キャンセル をクリックして インストール先 画面に戻り、ディスクの選択を編集できます。選択が正しければ、dasdfmt を使用したフォーマット ボタンをクリックして、フォーマットされていないすべての DASD で dasdfmt ユーティリティーを起動します。
フォーマットプロセスが完了したら、OK ボタンをクリックすると、DASD の一覧が更新される インストール先 画面に戻ります。この後にインストール用のディスクを再度選択して、進みます。
フォーマットされていないオンライン DASD の低レベルのフォーマットを自動的に許可するには、キックスタートコマンド zerombr を指定します。詳細は zerombr (オプション) を参照してください。
FBA DASD CMS ディスクレイアウトをターゲットとして IBM Z に Red Hat Enterprise Linux をインストールする場合には、使用可能なパーティションは 3 つのみです。インストーラーはまず msdos パーティションテーブルをターゲットの DASD に作成します。この表では、1 つの DASD デバイスで 3 つを超えるパーティションを使用することはできません。パーティションを手動で作成するか、または autopart --nohome キックスタートオプションを使用して、インストーラーが別の /home/ パーティションを作成しないようにします。ホーム ディレクトリーがない場合は、パーティションの数が 3 つに保たれます。

18.16.1.2. 高度なストレージオプション

高度なストレージデバイスを使用する場合は、インストール先の画面の右下にあるボタンをクリックして、iSCSI (SCSI over TCP/IP) ターゲットまたは zFCP (zSeries Fibre Channel Protocol) LUN (論理ユニット) を設定します。iSCSI の概要は、付録B iSCSI ディスク を参照してください。

図18.29 高度なストレージオプション

高度なストレージオプション
18.16.1.2.1. iSCSI パラメーターの設定
Add iSCSI target... ボタンをクリックすると、iSCSI ターゲットの追加 ダイアログが 表示されます。

図18.30 iSCSI 検出詳細のダイアログ

iSCSI 検出詳細のダイアログ
インストールに iSCSI ストレージデバイスを使用するには、Anaconda が iSCSI ターゲットとして 検出 し、それにアクセスするための iSCSI セッション を作成できる必要があります。検出、セッションの作成それぞれで CHAP (Challenge Handshake Authentication Protocol) 認証用のユーザー名とパスワードが必要になる場合があります。また、検出、セッションの作成いずれの場合も、iSCSI ターゲット側でターゲットの接続先となるシステムの iSCSI イニシエータを認証するよう設定することもできます (リバース CHAP)。CHAP とリバース CHAP を併用する場合は 相互 CHAP または 双方向 CHAP と呼ばれます。相互 CHAP を使用すると、特に CHAP 認証とリバース CHAP 認証でユーザー名やパスワードが異なる場合などに、iSCSI 接続に対する最大限の安全レベルを確保できます。
注記
iSCSI 検出と iSCSI ログインの手順を繰り返して、必要なすべての iSCSI ストレージの追加を行います。ただし、初回の検出試行後は、iSCSI イニシエーターの名前の変更はできません。iSCSI イニシエーターの名前を変更する場合は、インストールを最初からやり直す必要があります。

手順18.1 iSCSI の検出と iSCSI セッションの開始

iSCSI ストレージターゲットの追加 ダイアログを使用して、iSCSI ターゲットの検出に必要な情報を Anaconda に提供します。
  1. ターゲット IP アドレス フィールドに iSCSI ターゲットの IP アドレスを入力し ます。
  2. iSCSI イニシエーター名 フィールドに iSCSI 修飾名 (IQN)形式で iSCSI イニシエーターの名前 を指定します。IQN エントリーには次を含めてください。
    • word . の 文字列(ピリオドに注意)
    • 日付コード (企業や組織のインターネットドメイン名またはサブドメイン名が登録された年と月、記述の順序は年を表す 4 桁の数字、ダッシュ記号、月を表す 2 桁の数字、ピリオドの順で設定。たとえば、2010 年 9 月を 2010-09 と 表します。
    • 企業や組織のインターネットドメイン名またはサブドメイン名 (トップレベルのドメインを先頭にして逆順で表す。たとえば、storage.example.com のサブドメインは com.example.storageと表現します。
    • コロン (:) と、ドメインまたはサブドメイン内でその iSCSI イニシエーターを固有に識別する文字列。例: :diskarrays-sn-a8675309
    そのため、完全な IQN は次のようになり ます。iqn.2010-09.storage.example.com:diskarrays-sn-a8675309anaconda は、設定に役立つように、この形式で iSCSI Initiator Name フィールドに名前を入力します。
    IQN の詳細については、 http://tools.ietf.org/html/rfc3720#section-3.2.6 に記載の『RFC 3720 - Internet Small Computer Systems Interface (iSCSI)』の『3.2.6. iSCSI Names』のセクションや、http://tools.ietf.org/html/rfc3721#section-1 に記載の『RFC 3721 - Internet Small Computer Systems Interface (iSCSI) Naming and Discovery』の 『1. iSCSI Names and Addresses』 のセクションを参照してください。
  3. 認証タイプの検出 ドロップダウン メニューを使用して、iSCSI 検出に使用する認証タイプを指定します。以下のタイプが使用できます。
    • 証明書なし
    • CHAP 秘密鍵
    • CHAP 秘密鍵とリバースペア
    • 認証タイプに CHAP ペア を選択した場合は、CHAP ユーザー名 と CHAP パスワード フィールドに iSCSI ターゲットのユーザー名 とパスワードを指定 ます。
    • 認証タイプに CHAP ペアとリバースペア を選択した場合は、CHAP ユーザー名 と CHAP パスワード フィールドに iSCSI ターゲットのユーザー名 とパスワードを入力します。また、リバース CHAP ユーザー名 と Reverse CHAP パスワード の各フィールドに、iSCSI イニシエーターのユーザー名 とパスワードを指定します。
  4. 必要に応じて、Bind targets to network interfaces というラベルが付いたボックスにチェックを入れます。
  5. Start Discovery ボタンをクリックします。Anaconda は指定した情報に基づいて iSCSI ターゲットを検出しようとします。検出に成功すると、ダイアログにターゲット上で検出された全 iSCSI ノードの一覧が表示されます。
  6. 各ノードにはチェックボックスが付いています。インストールに使用するノードのチェックボックスをクリックします。

    図18.31 検出された iSCSI ノードを表示しているダイアログ

    検出された iSCSI ノードを表示しているダイアログ
  7. Node login authentication type メニューは、手順 3 で説明されている Discovery Authentication Type メニューと同じオプションを提供します。ただし、認証タイプの検索に認証情報を必要とした場合、検出したノードへのログインにも同じ認証情報を使用するのが一般的です。これを行うには、追加の Use the credentials from discovery オプションを使用します。適切な認証情報を指定すると、ログイン ボタンが利用可能になります。
  8. ログイン をクリックして iSCSI セッションを開始します。
18.16.1.2.2. DASD ストレージデバイス
Installation Destination 画面の Add DASD ボタンをクリックすると、DASD (Direct Access Storage Device)ストレージデバイスを追加するダイアログが表示されます。このダイアログでは、インストール開始時には検出されなかった新たな DASD をアタッチすることができます。

図18.32 DASD ストレージターゲットの追加

DASD ストレージターゲットの追加
DASD ストレージターゲットの追加 ダイアログで は、0.0.0204 などのデバイス番号を指定するように求められます。アタッチする DASD のデバイス番号を入力し、検出を開始 をクリックします。
指定されたデバイス番号の DASD が見つかり、これがアタッチされていない場合は、ダイアログウィンドウが閉じて発見されたドライブが 「ストレージデバイス選択の画面」 のドライブ一覧に表示されるようになります。ここでは、画面の左側にあるチェックボックスを使用して、どのドライブを利用可能にするかを選択できます。これを行ったら、左上隅にある Done を押して 「インストール先」 に戻ります。画面の ローカルの標準ディスク セクションで、新しい DASD が選択できるようになります( DASD device 0.0.xxxxとマークされます)。
無効なデバイス番号を入力した場合、または指定したデバイス番号の DASD が既にシステムに割り当てられている場合は、ダイアログウィンドウにエラーメッセージとその理由が表示され、別のデバイス番号で再試行するように求められます。
18.16.1.2.3. FCP デバイス
ZFCP LUN を追加 ボタンをクリックすると、FCP (Fibre Channel Protocol)ストレージデバイスを追加するダイアログが表示されます。
FCP デバイスは、IBM Z が DASD デバイスの代わりに、または DASD デバイスに加えて、SCSI デバイスを使用できるようにするものです。FCP デバイスは交換ファブリックスイッチを提供し、これにより IBM Z システムが SCSI LUN を従来の DASD デバイスとして用いる使い方に加えて、ディスクデバイスとして使えるようにします。
IBM Z では、インストールプログラムが FCP LUN をアクティベートするために、いずれの FCP デバイスも手動で入力される必要があります。これは、Anaconda で対話的に行うか、パラメーターまたは CMS 設定ファイル内で一意のパラメーターエントリーとして指定できます。ここで入力される値は、設定されている各サイトに固有のものとなります。

注記

  • FCP デバイスの対話形式の作成は、グラフィカルモードでのみ可能です。テキストモードのインストールでは、FCP デバイスを対話形式で設定できません。
  • 16 進法で小文字のみを使用してください。誤った値を入力して 検出を開始 ボタンを押すと、インストールプログラムが警告を表示し、設定情報を編集し、検出の試行を再試行できます。
  • これらの値については、ハードウェアに添付のドキュメントを参照し、このシステムのネットワークを設定したシステム管理者に確認してください。
FCP SCSI デバイスを設定するには、16 ビットのデバイス番号、64 ビットの World Wide Port Number (WWPN)、および、64 ビットの FCP LUN の識別子を入力します。検出を開始 ボタンをクリックして、この情報を使用して FCP デバイスに接続します。

図18.33 FCP デバイスの追加

FCP デバイスの追加
新たに追加されたデバイスは、インストール先 画面の System z Devices タブに表示されます。
重要
SCSI のみのインストールでは DASD がないことを示すために、DASD= をパラメーターもしくは CMS 設定ファイルから削除してください。
18.16.1.2.4. FCoE パラメーターの設定
FCoE SAN を追加 ボタンをクリックすると、FCoE ストレージデバイスを検出するようにネットワークインターフェイスを設定するダイアログが表示されます。
まず、NIC ドロップダウンメニューで FCoE スイッチに接続するネットワークインターフェイスを選択し、FCoE ディスクの追加 ボタンをクリックして SAN デバイスのネットワークをスキャンします。

図18.34 FCoE パラメーターの設定

FCoE パラメーターの設定
追加オプションには、以下のものがあります。
DCB を使用する
Data Center Bridging (DCB) とは、ストレージネットワークやクラスターでイーサネット接続の効率性を向上させる目的で設計されたイーサネットプロトコルに対する拡張セットです。このダイアログのチェックボックスを使って、インストールプログラムによる DCB 認識を有効または無効にします。このオプションは、ネットワークインターフェイスでホストベースの DCBX クライアントを必要とする場合にのみ有効にします。ハードウェアの DCBX クライアントを実装するインターフェイス上での設定の場合には、このチェックボックスは空のままにしておいてください。
自動 vlan の使用
自動 VLAN では、VLAN 検出を行うかどうかを指定します。このボックスにチェックを入れると、リンク設定が検証された後、FIP (FCoE Initiation Protocol) VLAN 検出プロトコルがイーサネットインタフェースで実行されます。まだ設定が行われていない場合には、検出された FCoE VLAN 全てに対してネットワークインターフェイスが自動的に作成され、FCoE のインスタンスが VLAN インターフェイス上に作成されます。このオプションはデフォルトで有効になっています。
検出された FCoE デバイスが、インストール先 画面の 他の SAN デバイス タブに表示されます。
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