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4.4. ルートベースのデプロイメントストラテジーの使用

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デプロイメントストラテジーは、アプリケーションを進化させる手段として使用します。一部のストラテジーは DeploymentConfigs は、アプリケーションに解決されるすべてのルートのユーザーが確認できる変更を実行します。このセクションで説明される他の高度なストラテジーでは、ルーターを DeploymentConfig と併用して特定のルートに影響を与えます。

最も一般的なルートベースのストラテジーとして blue-green デプロイメント を使用します。新規バージョン (blue バージョン) を、テストと評価用に起動しつつ、安定版 (green バージョン) をユーザーが継続して使用します。準備が整ったら、blue バージョンに切り替えられます。問題が発生した場合には、green バージョンに戻すことができます。

一般的な別のストラテジーとして、A/B バージョン がいずれも、同時にアクティブな状態で、A バージョンを使用するユーザーも、B バージョンを使用するユーザーもいるという方法があります。これは、ユーザーインターフェースや他の機能の変更をテストして、ユーザーのフィードバックを取得するために使用できます。また、ユーザーに対する問題の影響が限られている場合に、実稼働のコンテキストで操作が正しく行われていることを検証するのに使用することもできます。

カナリアデプロイメントでは、新規バージョンをテストしますが、問題が検出されると、すぐに以前のバージョンにフォールバックされます。これは、上記のストラテジーどちらでも実行できます。

ルートベースのデプロイメントストラテジーでは、サービス内の Pod 数はスケーリングされません。希望とするパフォーマンスの特徴を維持するには、デプロイメント設定をスケーリングする必要がある場合があります。

4.4.1. プロキシーシャードおよびトラフィック分割

実稼働環境で、特定のシャードに到達するトラフィックの分散を正確に制御できます。多くのインスタンスを扱う場合は、各シャードに相対的なスケールを使用して、割合ベースのトラフィックを実装できます。これは、他の場所で実行中の別のサービスやアプリケーションに転送または分割する プロキシーシャード とも適切に統合されます。

最も単純な設定では、プロキシーは要求を変更せずに転送します。より複雑な設定では、受信要求を複製して、別のクラスターだけでなく、アプリケーションのローカルインスタンスにも送信して、結果を比較することができます。他のパターンとしては、DR のインストールのキャッシュを保持したり、分析目的で受信トラフィックをサンプリングすることができます。

TCP (または UDP) のプロキシーは必要なシャードで実行できます。oc scale コマンドを使用して、プロキシーシャードで要求に対応するインスタンスの相対数を変更してください。より複雑なトラフィックを管理する場合には、OpenShift Container Platform ルーターを比例分散機能でカスタマイズすることを検討してください。

4.4.2. N-1 互換性

新規コードと以前のコードが同時に実行されるアプリケーションの場合は、新規コードで記述されたデータが、以前のバージョンのコードで読み込みや処理 (または正常に無視) できるように注意する必要があります。これは、スキーマの進化と呼ばれる複雑な問題です。

これは、ディスクに保存したデータ、データベース、一時的なキャッシュ、ユーザーのブラウザーセッションの一部など、多数の形式を取ることができます。多くの Web アプリケーションはローリングデプロイメントをサポートできますが、アプリケーションをテストし、設計してこれに対応させることが重要です。

アプリケーションによっては、新旧のコードが並行的に実行されている期間が短いため、バグやユーザーのトランザクションに失敗しても許容範囲である場合があります。別のアプリケーションでは失敗したパターンが原因で、アプリケーション全体が機能しなくなる場合もあります。

N-1 互換性を検証する 1 つの方法として、A/B デプロイメントを使用できます。 制御されたテスト環境で、以前のコードと新しいコードを同時に実行して、新規デプロイメントに流れるトラフィックが以前のデプロイメントで問題を発生させないかを確認します。

4.4.3. 正常な終了

OpenShift Container Platform および Kubernetes は、負荷分散のローテーションから削除する前にアプリケーションインスタンスがシャットダウンする時間を設定します。ただし、アプリケーションでは、終了前にユーザー接続が正常に中断されていることを確認する必要があります。

シャットダウン時に、OpenShift Container Platform はコンテナーのプロセスに TERM シグナルを送信します。SIGTERM を受信すると、アプリケーションコードは、新規接続の受け入れを停止します。これにより、ロードバランサーによって他のアクティブなインスタンスにトラフィックがルーティングされるようになります。アプリケーションコードは、開放されている接続がすべて終了する (または、次の機会に個別接続が正常に終了される) まで待機してから終了します。

正常に終了する期間が終わると、終了されていないプロセスに KILL シグナルが送信され、プロセスが即座に終了されます。Pod の terminationGracePeriodSeconds 属性または Pod テンプレートは正常に終了する期間 (デフォルトの 30 秒) を制御し、必要に応じてこれらをアプリケーションごとにカスタマイズすることができます。

4.4.4. Blue-Green デプロイメント

Blue-green デプロイメントでは、同時にアプリケーションの 2 つのバージョンを実行し、実稼働版 (green バージョン) からより新しいバージョン (blue バージョン) にトラフィックを移動します。ルートでは、ローリングストラテジーまたは切り替えサービスを使用できます。

多くのアプリケーションは永続データに依存するので、N-1 互換性 をサポートするアプリケーションが必要です。つまり、データを共有して、データ層を 2 つ作成し、データベース、ストアまたはディスク間のライブマイグレーションを実装します。

新規バージョンのテストに使用するデータについて考えてみてください。実稼働データの場合には、新規バージョンのバグにより、実稼働版を破損してしまう可能性があります。

4.4.4.1. Blue-Green デプロイメントの設定

Blue-green デプロイメントでは 2 つの DeploymentConfig を使用します。どちらも実行され、実稼働のデプロイメントはルートが指定するサービスによって変わります。この際、各 DeploymentConfig は異なるサービスに公開されます。

注記

ルートは、Web (HTTP および HTTPS) トラフィックを対象としているので、この手法は Web アプリケーションに最適です。

新規バージョンに新規ルートを作成し、これをテストすることができます。準備ができたら、実稼働ルートのサービスが新規サービスを参照するように変更します。 新規 (blue) バージョンは有効になります。

必要に応じて以前のバージョンにサービスを切り替えて、以前の green バージョンにロールバックすることができます。

手順

  1. アプリケーションサンプルの 2 つのコピーを作成します。

    $ oc new-app openshift/deployment-example:v1 --name=example-green
    $ oc new-app openshift/deployment-example:v2 --name=example-blue

    上記のコマンドにより、独立したアプリケーションコンポーネントが 2 つ作成されます。 1 つは、example-green サービスで v1 イメージを実行するコンポーネントと、もう 1 つは example-blue サービスで v2 イメージを実行するコンポーネントです。

  2. 以前のサービスを参照するルートを作成します。

    $ oc expose svc/example-green --name=bluegreen-example
  3. example-green.<project>.<router_domain> でアプリケーションを参照し、v1 イメージが表示されることを確認します。
  4. ルートを編集して、サービス名を example-blue に変更します。

    $ oc patch route/bluegreen-example -p '{"spec":{"to":{"name":"example-blue"}}}'
  5. ルートが変更されたことを確認するには、v2 イメージが表示されるまで、ブラウザーを更新します。

4.4.5. A/B デプロイメント

A/B デプロイメントストラテジーでは、新しいバージョンのアプリケーションを実稼働環境での制限された方法で試すことができます。実稼働バージョンは、ユーザーの要求の大半に対応し、要求の一部が新しいバージョンに移動されるように指定できます。

各バージョンへの要求の割合を制御できるので、テストが進むにつれ、新しいバージョンへの要求を増やし、最終的に以前のバージョンの使用を停止することができます。各バージョン要求負荷を調整する際に、期待どおりのパフォーマンスを出せるように、各サービスの Pod 数もスケーリングする必要が生じる場合があります。

ソフトウェアのアップグレードに加え、この機能を使用してユーザーインターフェースのバージョンを検証することができます。以前のバージョンを使用するユーザーと、新しいバージョンを使用するユーザーが出てくるので、異なるバージョンに対するユーザーの反応を評価して、設計上の意思決定を知らせることができます。

このデプロイメントを有効にするには、以前のバージョンと新しいバージョンは同時に実行できるほど類似している必要があります。これは、バグ修正リリースや新機能が以前の機能と干渉しないようにする場合の一般的なポイントになります。これらのバージョンが正しく連携するには N-1 互換性が必要です。

OpenShift Container Platform は、Web コンソールと CLI で N-1 互換性をサポートします。

4.4.5.1. A/B テスト用の負荷分散

ユーザーは複数のサービスでルートを設定します。各サービスは、アプリケーションの 1 つのバージョンを処理します。

各サービスには weight が割り当てられ、各サービスへの要求の部分については service_weightsum_of_weights で除算します。エンドポイントの weights の合計がサービスの weight になるように、サービスごとの weight がサービスのエンドポイントに分散されます。

ルートにはサービスを最大で 4 つ含めることができます。サービスの weight は、0 から 256 の間で指定してください。weight0 の場合は、サービスはロードバランシングに参加せず、既存の持続する接続を継続的に提供します。サービスの weight0 でない場合は、エンドポイントの最小 weight1 となります。これにより、エンドポイントが多数含まれるサービスでは、最終的に weight は必要な値よりも大きくなる可能性があります。このような場合は、負荷分散の weight を必要なレベルに下げるために Pod の数を減らします。

手順

A/B 環境を設定するには、以下を実行します。

  1. 2 つのアプリケーションを作成して、異なる名前を指定します。それぞれが DeploymentConfig を作成します。これらのアプリケーションは同じアプリケーションのバージョンであり、通常 1 つは現在の実稼働バージョンで、もう 1 つは提案される新規バージョンとなります。

    $ oc new-app openshift/deployment-example --name=ab-example-a
    $ oc new-app openshift/deployment-example --name=ab-example-b

    どちらのアプリケーションもデプロイされ、サービスが作成されます。

  2. ルート経由でアプリケーションを外部から利用できるようにします。この時点でサービスを公開できます。現在の実稼働バージョンを公開してから、後でルートを編集して新規バージョンを追加すると便利です。

    $ oc expose svc/ab-example-a

    ab-example-<project>.<router_domain> でアプリケーションを参照して、必要なバージョンが表示されていることを確認します。

  3. ルートをデプロイする場合には、ルーターはサービスに指定した weights に従ってトラフィックを分散します。この時点では、デフォルトの weight=1 と指定されたサービスが 1 つ存在するので、すべての要求がこのサービスに送られます。他のサービスを alternateBackends として追加し、weights を調整すると、A/B 設定が機能するようになります。これは、oc set route-backends コマンドを実行するか、ルートを編集して実行できます。

    oc set route-backend0 に設定することは、サービスがロードバランシングに参加しないが、既存の持続する接続を提供し続けることを意味します。

    注記

    ルートに変更を加えると、さまざまなサービスへのトラフィックの部分だけが変更されます。DeploymentConfig をスケーリングして、必要な負荷を処理できるように Pod 数を調整する必要がある場合があります。

    ルートを編集するには、以下を実行します。

    $ oc edit route <route_name>
    ...
    metadata:
      name: route-alternate-service
      annotations:
        haproxy.router.openshift.io/balance: roundrobin
    spec:
      host: ab-example.my-project.my-domain
      to:
        kind: Service
        name: ab-example-a
        weight: 10
      alternateBackends:
      - kind: Service
        name: ab-example-b
        weight: 15
    ...
4.4.5.1.1. Web コンソールを使用した重みの管理

手順

  1. Route の詳細ページ (Applications/Routes) に移動します。
  2. Actions メニューから Edit を選択します。
  3. Split traffic across multiple services にチェックを入れます。
  4. Service Weights スライダーで、各サービスに送信するトラフィックの割合を設定します。

    3 つ以上のサービスにトラフィックを分割する場合には、各サービスに 0 から 256 の整数を使用して、相対的な重みを指定します。

    トラフィックの重みは、トラフィックを分割したアプリケーションの行を展開すると Overview に表示されます。

4.4.5.1.2. CLI を使用した重みの管理

手順

  1. サービスおよび対応する重みのルートによる負荷分散を管理するには、oc set route-backends コマンドを使用します。

    $ oc set route-backends ROUTENAME \
        [--zero|--equal] [--adjust] SERVICE=WEIGHT[%] [...] [options]

    たとえば、以下のコマンドは ab-example-aweight=198 を指定して主要なサービスとし、ab-example-bweight=2 を指定して 1 番目の代用サービスとして設定します。

    $ oc set route-backends ab-example ab-example-a=198 ab-example-b=2

    つまり、99% のトラフィックはサービス ab-example-a に、1% はサービス ab-example-b に送信されます。

    このコマンドでは、DeploymentConfig はスケーリングされません。要求の負荷を処理するのに十分な Pod がある状態でこれを実行する必要があります。

  2. フラグなしのコマンドを実行して、現在の設定を確認します。

    $ oc set route-backends ab-example
    NAME                    KIND     TO           WEIGHT
    routes/ab-example       Service  ab-example-a 198 (99%)
    routes/ab-example       Service  ab-example-b 2   (1%)
  3. --adjust フラグを使用すると、個別のサービスの重みを、それ自体に対して、または主要なサービスに対して相対的に変更できます。割合を指定すると、主要サービスまたは 1 番目の代用サービス (主要サービスを設定している場合) に対して相対的にサービスを調整できます。他にバックエンドがある場合には、重みは変更に比例した状態になります。

    以下は例になります。

    $ oc set route-backends ab-example --adjust ab-example-a=200 ab-example-b=10
    $ oc set route-backends ab-example --adjust ab-example-b=5%
    $ oc set route-backends ab-example --adjust ab-example-b=+15%

    --equal フラグでは、全サービスの weight100 になるように設定します。

    $ oc set route-backends ab-example --equal

    --zero フラグは、全サービスの weight0 に設定します。すべての要求に対して 503 エラーが返されます。

    注記

    ルートによっては、複数のバックエンドまたは重みが設定されたバックエンドをサポートしないものがあります。

4.4.5.1.3. 1 サービス、複数の DeploymentConfig

手順

  1. すべてのシャードに共通の ab-example=true ラベルを追加して新規アプリケーションを作成します。

    $ oc new-app openshift/deployment-example --name=ab-example-a

    アプリケーションがデプロイされ、サービスが作成されます。これは最初のシャードです。

  2. ルートを使用してアプリケーションを利用できるようにしてください (または、サービス IP を直接使用してください)。

    $ oc expose svc/ab-example-a --name=ab-example
  3. ab-example-<project>.<router_domain> でアプリケーションを参照し、v1 イメージが表示されることを確認します。
  4. 1 つ目のシャードと同じソースイメージおよびラベルに基づくが、別のバージョンがタグ付けされたバージョンと一意の環境変数を指定して 2 つ目のシャードを作成します。

    $ oc new-app openshift/deployment-example:v2 \
        --name=ab-example-b --labels=ab-example=true \
        SUBTITLE="shard B" COLOR="red"
  5. この時点で、いずれの Pod もルートでサービスが提供されます。しかし、両ブラウザー (接続を開放) とルーター (デフォルトでは cookie を使用) で、バックエンドサーバーへの接続を維持しようとするので、シャードが両方返されない可能性があります。

    1 つのまたは他のシャードに対してブラウザーを強制的に実行するには、以下を実行します。

    1. oc scale コマンドを使用して、ab-example-a のレプリカを 0 に減らします。

      $ oc scale dc/ab-example-a --replicas=0

      ブラウザーを更新して、v2 および shard B (赤) を表示させます。

    2. ab-example-a1 レプリカに、ab-example-b0 にスケーリングします。

      $ oc scale dc/ab-example-a --replicas=1; oc scale dc/ab-example-b --replicas=0

      ブラウザーを更新して、v1 および shard A (青) を表示します。

  6. いずれかのシャードでデプロイメントをトリガーする場合、そのシャードの Pod のみが影響を受けます。どちらかの DeploymentConfig で SUBTITLE 環境変数を変更してデプロイメントをトリガーできます。

    $ oc edit dc/ab-example-a

    または、以下を実行します。

    $ oc edit dc/ab-example-b
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