第1章 分散トレースに関するリリースノート
1.1. Red Hat OpenShift distributed tracing platform 3.0 のリリースノート
1.1.1. 分散トレースの概要
サービスの所有者は、分散トレースを使用してサービスをインストルメント化し、サービスアーキテクチャーに関する洞察を得ることができます。Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォームを使用すると、最新のクラウドネイティブのマイクロサービスベースのアプリケーションにおいてコンポーネント間の対話のモニタリング、ネットワークプロファイリング、トラブルシューティングが可能です。
分散トレースプラットフォームを使用すると、以下の機能を実行できます。
- 分散トランザクションの監視
- パフォーマンスとレイテンシーの最適化
- 根本原因分析の実行
分散トレースプラットフォームは、以下の 3 つのコンポーネントで設定されます。
- Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Jaeger)。これは、オープンソースの Jaeger プロジェクト に基づいています。
- Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Tempo)。オープンソースの Grafana Tempo プロジェクト に基づいています。
- Red Hat build of OpenTelemetry。オープンソースの OpenTelemetry プロジェクト に基づいています。
1.1.2. Red Hat OpenShift distributed tracing platform 3.0 のコンポーネントバージョン
Operator | コンポーネント | バージョン |
---|---|---|
Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Jaeger) | Jaeger | 1.51.0 |
OpenTelemetry | 0.89.0 | |
Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Tempo) | Tempo | 2.3.0 |
1.1.3. Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Jaeger)
1.1.3.1. 非推奨になった機能
Red Hat OpenShift distributed tracing 3.0 では、Jaeger と Elasticsearch が非推奨となり、どちらも今後のリリースで削除される予定です。Red Hat は、現行リリースのライフサイクルにおいて、該当コンポーネントの「重大」以上の CVE に対するバグ修正とサポートを提供しますが、機能拡張は提供しません。
Red Hat OpenShift distributed tracing 3.0 では、Tempo Operator によって提供される Tempo と、Red Hat build of OpenTelemetry によって提供される OpenTelemetry コレクターが、分散トレーシングの収集および保存に推奨される Operator です。OpenTelemetry および Tempo 分散トレーシングスタックは、今後の強化対象スタックとなっているため、すべてのユーザーが採用する必要があります。
1.1.3.2. 新機能および機能拡張
この更新では、分散トレーシングプラットフォーム (Jaeger) に次の機能拡張が導入されました。
- ARM アーキテクチャーのサポート。
- クラスター全体のプロキシー環境のサポート。
1.1.3.3. バグ修正
この更新では、分散トレーシングプラットフォーム (Jaeger) の次のバグ修正が導入されています。
-
oc adm category Mirror
CLI コマンドを使用する場合の、非接続環境のサポートが修正されました。(TRACING-3546)
1.1.3.4. 既知の問題
- 現在、Apache Spark はサポートされていません。
- 現在、AMQ/Kafka を介したストリーミングデプロイメントは、IBM Z および IBM Power Systems アーキテクチャーではサポートされていません。
1.1.4. Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Tempo)
1.1.4.1. 新機能および機能拡張
この更新では、分散トレーシングプラットフォーム (Tempo) に次の機能拡張が導入されました。
- ARM アーキテクチャーのサポート。
- スパン要求数、期間、およびエラー数 (RED) メトリクスのサポート。メトリクスは、Tempo の一部としてデプロイされた Jaeger コンソール、または Web コンソールの Observe メニューで表示できます。
1.1.4.2. バグ修正
この更新では、分散トレーシングプラットフォーム (Tempo) の次のバグ修正が導入されています。
- オブジェクトストレージに接続するためのカスタム TLS CA オプションのサポートを修正しました。(TRACING-3462)
-
oc adm category Mirror
CLI コマンドを使用する場合の、非接続環境のサポートが修正されました。(TRACING-3523) - ゲートウェイがデプロイメントされていない場合の mTLS を修正しました。(TRACING-3510)
1.1.4.3. 既知の問題
- 現在、Tempo Operator と併用すると、Jaeger UI には過去 15 分間にトレースを送信したサービスのみが表示されます。過去 15 分間にトレースを送信していないサービスの場合、トレースは保存されますが、Jaeger UI には表示されません。(TRACING-3139)
-
現在、IBM Z (
s390x
)アーキテクチャーでは、distributed tracing platform (Tempo) が失敗します。(TRACING-3545)
1.1.5. サポート
本書で説明されている手順、または OpenShift Container Platform で問題が発生した場合は、Red Hat カスタマーポータル にアクセスしてください。カスタマーポータルでは、次のことができます。
- Red Hat 製品に関するアーティクルおよびソリューションを対象とした Red Hat ナレッジベースの検索またはブラウズ。
- Red Hat サポートに対するサポートケースの送信。
- その他の製品ドキュメントへのアクセス。
クラスターの問題を特定するには、OpenShift Cluster Manager Hybrid Cloud Console で Insights を使用できます。Insights により、問題の詳細と、利用可能な場合は問題の解決方法に関する情報が提供されます。
本書の改善への提案がある場合、またはエラーを見つけた場合は、最も関連性の高いドキュメントコンポーネントの Jira Issue を送信してください。セクション名や OpenShift Container Platform バージョンなどの具体的な情報を提供してください。
1.1.6. 多様性を受け入れるオープンソースの強化
Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ をご覧ください。