1.4. Red Hat OpenShift distributed tracing platform 2.9 のリリースノート
1.4.1. 分散トレースの概要
サービスの所有者は、分散トレースを使用してサービスをインストルメント化し、サービスアーキテクチャーに関する洞察を得ることができます。Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォームを使用すると、最新のクラウドネイティブのマイクロサービスベースのアプリケーションにおいてコンポーネント間の対話のモニタリング、ネットワークプロファイリング、トラブルシューティングが可能です。
分散トレースプラットフォームを使用すると、以下の機能を実行できます。
- 分散トランザクションの監視
- パフォーマンスとレイテンシーの最適化
- 根本原因分析の実行
分散トレースプラットフォームは、以下の 3 つのコンポーネントで設定されます。
- Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Jaeger)。これは、オープンソースの Jaeger プロジェクト に基づいています。
- Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Tempo)。オープンソースの Grafana Tempo プロジェクト に基づいています。
- Red Hat build of OpenTelemetry。オープンソースの OpenTelemetry プロジェクト に基づいています。
1.4.2. Red Hat OpenShift distributed tracing platform 2.9 のコンポーネントバージョン
Operator | コンポーネント | バージョン |
---|---|---|
Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Jaeger) | Jaeger | 1.47.0 |
Red Hat build of OpenTelemetry | OpenTelemetry | 0.81.0 |
Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Tempo) | Tempo | 2.1.1 |
1.4.3. Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Jaeger)
1.4.3.1. 新機能および機能拡張
- なし。
1.4.3.2. バグ修正
-
この更新以前は、
jaeger-query
デプロイメントに gRPC ポートがないため、接続が拒否されていました。その結果、transport: Error while dialing: dial tcp :16685: connect: connection refused
エラーメッセージが表示されていました。今回の更新により、Jaeger Query gRPC ポート (16685) が、Jaeger Query サービスで正常に公開されるようになりました。(TRACING-3322) -
今回の更新以前は、
jaeger-production-query
で誤ったポートが公開されていたため、接続が拒否されていました。今回の更新では問題が修正され、Jaeger Query デプロイメントで Jaeger Query gRPC ポート (16685) が公開されています。(TRACING-2968) -
この更新以前は、非接続環境のシングルノード OpenShift クラスターに Service Mesh をデプロイすると、Jaeger Pod が頻繁に
Pending
状態になりました。この更新により、問題が修正されました。(TRACING-3312) -
今回の更新以前は、
OOMKilled
エラーメッセージが原因で、Jaeger Operator Pod はデフォルトのメモリー値で再起動されていました。今回の更新で、この問題はリソース制限を削除することで修正されています。(TRACING-3173)
1.4.3.3. 既知の問題
- Apache Spark はサポートされていません。
- AMQ/Kafka 経由のストリーミングデプロイメントは、IBM Z および IBM Power Systems ではサポートされません。
1.4.4. Red Hat OpenShift 分散トレーシングプラットフォーム (Tempo)
Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Tempo) は、テクノロジープレビュー機能です。テクノロジープレビュー機能は、Red Hat 製品サポートのサービスレベルアグリーメント (SLA) の対象外であり、機能的に完全ではない場合があります。Red Hat は、実稼働環境でこれらを使用することを推奨していません。テクノロジープレビュー機能は、最新の製品機能をいち早く提供して、開発段階で機能のテストを行いフィードバックを提供していただくことを目的としています。
Red Hat のテクノロジープレビュー機能のサポート範囲に関する詳細は、テクノロジープレビュー機能のサポート範囲 を参照してください。
1.4.4.1. 新機能および機能拡張
このリリースでは、distributed tracing platform (Tempo) に次の機能拡張が導入されました。
-
Operator 成熟度 レベル IV、Deep Insights をサポートします。これにより、
TempoStack
インスタンスと Tempo Operator のアップグレード、モニタリング、アラートが可能になります。 - ゲートウェイの Ingress および Route 設定を追加します。
-
TempoStack
カスタムリソースのmanaged
およびunmanaged
の状態をサポートします。 - Distributor サービスで、追加の取り込みプロトコル (Jaeger Thrift バイナリー、Jaeger Thrift コンパクト、Jaeger gRPC、Zipkin) を公開します。ゲートウェイが有効になっている場合は、OpenTelemetry プロトコル (OTLP) gRPC のみが有効になります。
- Query Frontend サービスで Jaeger Query gRPC エンドポイントを公開します。
- ゲートウェイの認証および認可なしでマルチテナンシーをサポートします。
1.4.4.2. バグ修正
- この更新以前は、Tempo Operator は非接続環境と互換性がありませんでした。今回の更新により、Tempo Operator は非接続環境をサポートするようになりました。(TRACING-3145)
- この更新以前は、TLS を使用する Tempo Operator を OpenShift Container Platform で起動できませんでした。今回の更新により、Tempo コンポーネント間で mTLS 通信が有効になり、Operand が正常に起動し、Jaeger UI にアクセスできるようになりました。(TRACING-3091)
-
この更新以前は、Tempo Operator からのリソース制限により、
reason: OOMKilled
などのエラーメッセージが表示されていました。今回の更新では、このようなエラーを回避するために、Tempo Operator のリソース制限が削除されました。(TRACING-3204)
1.4.4.3. 既知の問題
- 現在、オブジェクトストレージに接続するためのカスタム TLS CA オプションは実装されていません。(TRACING-3462)
- 現在、Tempo Operator と併用すると、Jaeger UI には過去 15 分間にトレースを送信したサービスのみが表示されます。過去 15 分間にトレースを送信していないサービスの場合、トレースは保存されますが、Jaeger UI には表示されません。(TRACING-3139)
-
現在、IBM Z (
s390x
)アーキテクチャーでは、distributed tracing platform (Tempo) が失敗します。(TRACING-3545) 現在、ゲートウェイがデプロイされていない場合、Tempo クエリーフロントエンドサービスは内部 mTLS を使用できません。この問題は Jaeger Query API には影響しません。回避策としては、mTLS を無効にします。(TRACING-3510)
回避策
次のように mTLS を無効にします。
以下のコマンドを実行して、編集するために Tempo Operator ConfigMap を開きます。
$ oc edit configmap tempo-operator-manager-config -n openshift-tempo-operator 1
- 1
- Tempo Operator がインストールされているプロジェクトです。
YAML ファイルを更新して、Operator 設定で mTLS を無効にします。
data: controller_manager_config.yaml: | featureGates: httpEncryption: false grpcEncryption: false builtInCertManagement: enabled: false
以下のコマンドを実行して Tempo Operator Pod を再起動します。
$ oc rollout restart deployment.apps/tempo-operator-controller -n openshift-tempo-operator
制限された環境で Tempo Operator を実行するためのイメージがありません。Red Hat OpenShift distributed tracing platform (Tempo) CSV に、オペランドイメージへの参照がありません。(TRACING-3523)
回避策
ミラーリングツールに Tempo Operator 関連のイメージを追加して、イメージをレジストリーにミラーリングします。
kind: ImageSetConfiguration apiVersion: mirror.openshift.io/v1alpha2 archiveSize: 20 storageConfig: local: path: /home/user/images mirror: operators: - catalog: registry.redhat.io/redhat/redhat-operator-index:v4.13 packages: - name: tempo-product channels: - name: stable additionalImages: - name: registry.redhat.io/rhosdt/tempo-rhel8@sha256:e4295f837066efb05bcc5897f31eb2bdbd81684a8c59d6f9498dd3590c62c12a - name: registry.redhat.io/rhosdt/tempo-gateway-rhel8@sha256:b62f5cedfeb5907b638f14ca6aaeea50f41642980a8a6f87b7061e88d90fac23 - name: registry.redhat.io/rhosdt/tempo-gateway-opa-rhel8@sha256:8cd134deca47d6817b26566e272e6c3f75367653d589f5c90855c59b2fab01e9 - name: registry.redhat.io/rhosdt/tempo-query-rhel8@sha256:0da43034f440b8258a48a0697ba643b5643d48b615cdb882ac7f4f1f80aad08e
1.4.5. Red Hat build of OpenTelemetry
Red Hat build of OpenTelemetry はテクノロジープレビュー機能です。テクノロジープレビュー機能は、Red Hat 製品サポートのサービスレベルアグリーメント (SLA) の対象外であり、機能的に完全ではない場合があります。Red Hat は、実稼働環境でこれらを使用することを推奨していません。テクノロジープレビュー機能は、最新の製品機能をいち早く提供して、開発段階で機能のテストを行いフィードバックを提供していただくことを目的としています。
Red Hat のテクノロジープレビュー機能のサポート範囲に関する詳細は、テクノロジープレビュー機能のサポート範囲 を参照してください。
1.4.5.1. 新機能および機能拡張
このリリースでは、Red Hat build of OpenTelemetry に次の機能拡張が導入されています。
-
OTLP メトリクスの取り込みをサポートします。メトリクスは、Prometheus エクスポーターを使用して
user-workload-monitoring
に転送し、保存できます。 -
Operator 成熟度 レベル IV、Deep Insights をサポートします。これにより、
OpenTelemetry Collector
インスタンスおよび Red Hat build of OpenTelemetry Operator のアップグレードと監視が可能になります。 - OTLP、または HTTP および HTTPS を使用して、リモートクラスターからトレースとメトリクスを報告します。
-
resourcedetection
プロセッサー経由で、OpenShift Container Platform リソース属性を収集します。 -
OpenTelemetryCollector
カスタムリソースのmanaged
およびunmanaged
の状態をサポートします。
1.4.5.2. バグ修正
なし。
1.4.5.3. 既知の問題
- 現在は、Operator の成熟度 を Level IV の Deep Insights に手動で設定する必要があります。(TRACING-3431)
1.4.6. サポート
本書で説明されている手順、または OpenShift Container Platform で問題が発生した場合は、Red Hat カスタマーポータル にアクセスしてください。カスタマーポータルでは、次のことができます。
- Red Hat 製品に関するアーティクルおよびソリューションを対象とした Red Hat ナレッジベースの検索またはブラウズ。
- Red Hat サポートに対するサポートケースの送信。
- その他の製品ドキュメントへのアクセス。
クラスターの問題を特定するには、OpenShift Cluster Manager Hybrid Cloud Console で Insights を使用できます。Insights により、問題の詳細と、利用可能な場合は問題の解決方法に関する情報が提供されます。
本書の改善への提案がある場合、またはエラーを見つけた場合は、最も関連性の高いドキュメントコンポーネントの Jira Issue を送信してください。セクション名や OpenShift Container Platform バージョンなどの具体的な情報を提供してください。
1.4.7. 多様性を受け入れるオープンソースの強化
Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ をご覧ください。