2.7. ノードセレクターの使用による特定ノードへの Pod の配置
ノードセレクター は、キーと値のペアのマップを指定します。ルールは、ノード上のカスタムラベルと Pod で指定されたセレクターを使って定義されます。特定のノードセレクターを使用して特定の Pod を特定のノードに配置し、プロジェクトノードセレクターを使用して新規 Pod をプロジェクトで特定ノード内のプロジェクトに配置することができます。または、クラスタースコープのデフォルトノードセレクターを使用して、新規 Pod をクラスター内の任意の場所に配置することができます。
Pod がノードで実行する要件を満たすには、Pod にはノードのラベルとして同じキーと値のペアがなければなりません。
同じ Pod 設定でノードセレクターとノードのアフィニティーを使用している場合は、以下のルールが Pod のノードへの配置を制御します。
-
nodeSelector
とnodeAffinity
の両方を設定する場合、Pod が候補ノードでスケジュールされるにはどちらの条件も満たしている必要があります。 -
nodeAffinity
タイプに関連付けられた複数のnodeSelectorTerms
を指定する場合、nodeSelectorTerms
のいずれかが満たされている場合に Pod をノードにスケジュールすることができます。 -
nodeSelectorTerms
に関連付けられた複数のmatchExpressions
を指定する場合、すべてのmatchExpressions
が満たされている場合にのみ Pod をノードにスケジュールすることができます。
2.7.1. ノードセレクターの使用による Pod 配置の制御
Pod にノードセレクターのラベルを使用することで、Pod がスケジュールされる場所を制御できます。
ノードセレクターにより、OpenShift Container Platform は一致するラベルが含まれるノード上に Pod をスケジュールします。
ノードセレクターを既存 Pod に追加するには、ノードセレクターを ReplicaSet、Daemonset、または StatefulSet などのノードの制御オブジェクトに追加します。制御オブジェクト下の既存 Pod は、一致するラベルを持つノードで再作成されます。新規 Pod を作成する場合、ノードセレクターを Pod 仕様に直接追加できます。
ラベルはノードまたは MachineConfig に追加できますが、ノードまたはマシンが停止するとラベルは維持されません。MachineSet にラベルを追加すると、新しいノードまたはマシンにそのラベルが追加されます。
ノードセレクターを既存のスケジュールされている Pod に直接追加することはできません。
前提条件
ノードセレクターを既存 Pod に追加するには、Pod の制御オブジェクトを判別します。たとえば、router-default-66d5cf9464-m2g75
Pod は router-default-66d5cf9464
ReplicaSet によって制御されます。
$ oc describe pod router-default-66d5cf9464-7pwkc Name: router-default-66d5cf9464-7pwkc Namespace: openshift-ingress .... Controlled By: ReplicaSet/router-default-66d5cf9464
Web コンソールでは、Pod YAML の ownerReferences
に制御オブジェクトを一覧表示します。
ownerReferences: - apiVersion: apps/v1 kind: ReplicaSet name: router-default-66d5cf9464 uid: d81dd094-da26-11e9-a48a-128e7edf0312 controller: true blockOwnerDeletion: true
手順
MachineSet を使用するか、またはノードを直接編集してラベルをノードに追加します。
MachineSet を使用して、ノードの作成時に MachineSet によって管理されるノードにラベルを追加します。
以下のコマンドを実行してノードセレクターを MachineSet に追加します。
$ oc patch MachineSet <name> --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"<key>"="<value>","<key>"="<value>"}}]' -n openshift-machine-api
以下は例になります。
$ oc patch MachineSet abc612-msrtw-worker-us-east-1c --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"type":"user-node","region":"east"}}]' -n openshift-machine-api
oc edit
コマンドを使用して、ラベルが MachineSet に追加されていることを確認します。以下は例になります。
$ oc edit MachineSet abc612-msrtw-worker-us-east-1c -n openshift-machine-api
MachineSet オブジェクトの例
apiVersion: machine.openshift.io/v1beta1 kind: MachineSet .... spec: ... template: metadata: ... spec: metadata: labels: region: east type: user-node ....
ラベルをノードに直接追加します。
ノードの
Node
オブジェクトを編集します。$ oc label nodes <name> <key>=<value>
たとえば、ノードにラベルを付けるには、以下を実行します。
$ oc label nodes ip-10-0-142-25.ec2.internal type=user-node region=east
ラベルがノードに追加されていることを確認します。
$ oc get nodes -l type=user-node,region=east
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ip-10-0-142-25.ec2.internal Ready worker 17m v1.18.3+002a51f
一致するノードセレクターを Pod に追加します。
ノードセレクターを既存 Pod および新規 Pod に追加するには、ノードセレクターを Pod の制御オブジェクトに追加します。
ReplicaSet オブジェクトの例
kind: ReplicaSet .... spec: .... template: metadata: creationTimestamp: null labels: ingresscontroller.operator.openshift.io/deployment-ingresscontroller: default pod-template-hash: 66d5cf9464 spec: nodeSelector: beta.kubernetes.io/os: linux node-role.kubernetes.io/worker: '' type: user-node 1
- 1
- ノードセレクターを追加します。
ノードセレクターを特定の Pod に追加するには、セレクターを
Pod
オブジェクトに直接追加します。Pod オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Pod ... spec: nodeSelector: <key>: <value> ...
以下は例になります。
ノードセレクターを持つ Pod オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Pod .... spec: nodeSelector: region: east type: user-node
2.7.2. クラスタースコープのデフォルトノードセレクターの作成
クラスター内の作成されたすべての Pod を特定のノードに制限するために、デフォルトのクラスタースコープのノードセレクターをノード上のラベルと共に Pod で使用することができます。
クラスター全体のノードセレクターを使用する場合、クラスターで Pod を作成すると、OpenShift Container Platform はデフォルトのノードセレクターを Pod に追加し、一致するラベルのあるノードで Pod をスケジュールします。
スケジューラー Operator カスタムリソース (CR) を作成して、クラスタースコープのノードセレクターを設定します。Node オブジェクト、MachineSet、または MachineConfig を編集してラベルをノードに追加します。MachineSet にラベルを追加すると、ノードまたはマシンが停止した場合に、新規ノードにそのラベルが追加されます。ノードまたは MachineConfig に追加されるラベルは、ノードまたはマシンが停止すると維持されません。
たとえば、スケジューラーはクラスタースコープの region=east
ノードセレクターを設定します。
スケジューラー Operator カスタムリソースの例
apiVersion: config.openshift.io/v1
kind: Scheduler
metadata:
name: cluster
...
spec:
defaultNodeSelector: type=user-node,region=east 1
...
クラスター内のノードには type=user-node,region=east
ラベルがあります。
Node オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Node metadata: name: ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 ... labels: region: east type: user-node ...
Pod をクラスターに作成する場合、Pod はクラスタースコープのノードセレクターで作成され、ラベルが付けられたノードにスケジュールされます。
Pod オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Pod ... spec: nodeSelector: region: east ...
ラベルが付けられたノード上の Pod を含む Pod 一覧の例
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE NOMINATED NODE READINESS GATES pod-s1 1/1 Running 0 20s 10.131.2.6 ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 <none> <none>
Pod を作成するプロジェクトにプロジェクトノードセレクターがある場合、そのセレクターはクラスタースコープのセレクターよりも優先されます。Pod 仕様のノードセレクターがプロジェクトノードセレクターを使用しない場合、Pod は作成されたり、スケジュールされたりしません。
Pod
オブジェクトにクラスタースコープのノードセレクターではなく、プロジェクトノードセレクターではないノードセレクターが含まれる場合、Pod は作成またはスケジュールされません。たとえば、以下の Pod をサンプルプロジェクトにデプロイする場合、これは作成されません。
無効なノードセレクターを持つ Pod 出力の例
apiVersion: v1 kind: Pod .... spec: nodeSelector: region: west
その仕様から Pod を作成すると、以下のメッセージと同様のエラーが表示されます。
エラーメッセージの例
Error from server (Forbidden): error when creating "pod.yaml": pods "pod-4" is forbidden: pod node label selector conflicts with its project node label selector
Pod にキーと値のペアを追加できます。ただし、デフォルトのプロジェクトキーに異なる値を追加することはできません。
手順
デフォルトのクラスタースコープのセレクターを追加するには、以下を実行します。
スケジューラー Operator カスタムリソースを編集し、クラスターノードクラスターを追加します。
$ oc edit scheduler cluster
apiVersion: config.openshift.io/v1 kind: Scheduler metadata: name: cluster ... spec: defaultNodeSelector: type=user-node,region=east 1 mastersSchedulable: false policy: name: ""
この変更を加えた後に、
openshift-kube-apiserver
プロジェクトの Pod の再デプロイを待機します。これには数分の時間がかかる場合があります。デフォルトのクラスターノードセレクターは、Pod の再起動まで有効になりません。MachineSet を使用するか、またはノードを直接編集してラベルをノードに追加します。
MachineSet を使用して、ノードの作成時に MachineSet によって管理されるノードにラベルを追加します。
以下のコマンドを実行してノードセレクターを MachineSet に追加します。
$ oc patch MachineSet <name> --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"<key>"="<value>","<key>"="<value>"}}]' -n openshift-machine-api 1
- 1
- 各ノードセレクターに
<key> /<value>
ペアを追加します。
以下は例になります。
$ oc patch MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"type":"user-node","region":"east"}}]' -n openshift-machine-api
oc edit
コマンドを使用して、ラベルが MachineSet に追加されていることを確認します。以下は例になります。
$ oc edit MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
出力例
apiVersion: machine.openshift.io/v1beta1 kind: MachineSet metadata: ... spec: ... template: metadata: ... spec: metadata: labels: region: east type: user-node
0
にスケールダウンし、ノードをスケールアップして、その MachineSet に関連付けられたノードを再デプロイします。以下は例になります。
$ oc scale --replicas=0 MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
$ oc scale --replicas=1 MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
ノードの準備ができ、利用可能な状態になったら、
oc get
コマンドを使用してラベルがノードに追加されていることを確認します。$ oc get nodes -l <key>=<value>
以下は例になります。
$ oc get nodes -l type=user-node
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c-vmqzp Ready worker 61s v1.18.3+002a51f
ラベルをノードに直接追加します。
ノードの
Node
オブジェクトを編集します。$ oc label nodes <name> <key>=<value>
たとえば、ノードにラベルを付けるには、以下を実行します。
$ oc label nodes ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-b-tgq49 type=user-node region=east
oc get
コマンドを使用して、ラベルがノードに追加されていることを確認します。$ oc get nodes -l <key>=<value>,<key>=<value>
以下は例になります。
$ oc get nodes -l type=user-node,region=east
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-b-tgq49 Ready worker 17m v1.18.3+002a51f
2.7.3. プロジェクトスコープのノードセレクターの作成
プロジェクトで作成されたすべての Pod をラベルが付けられたノードに制限するために、プロジェクトのノードセレクターをノード上のラベルと共に使用できます。
このプロジェクトで Pod を作成する場合、OpenShift Container Platform はノードセレクターをプロジェクトの Pod に追加し、プロジェクトの一致するラベルを持つノードで Pod をスケジュールします。クラスタースコープのデフォルトノードセレクターがない場合、プロジェクトノードセレクターが優先されます。
ラベル定義が含まれる openshift.io/node-selector
パラメーターを追加するには、Namespace
オブジェクトを編集してラベルをプロジェクトに追加します。Node オブジェクト、MachineSet、または MachineConfig を編集してラベルをノードに追加します。MachineSet にラベルを追加すると、ノードまたはマシンが停止した場合に、新規ノードにそのラベルが追加されます。ノードまたは MachineConfig に追加されるラベルは、ノードまたはマシンが停止すると維持されません。
Pod にキーと値のペアを追加できます。ただし、デフォルトのプロジェクトキーに異なる値を追加することはできません。
たとえば、以下のプロジェクトには region=east
ノードセレクターがあります。
namespace オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Namespace metadata: annotations: openshift.io/node-selector: "region=east" ...
以下のノードには type=user-node,region=east
ラベルがあります。
Node オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Node metadata: name: ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 ... labels: region: east type: user-node ...
Pod をこのサンプルプロジェクトで作成する場合、Pod はプロジェクトノードセレクターで作成され、ラベルが付けられたノードにスケジュールされます。
Pod オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Pod metadata: ... spec: nodeSelector: region: east type: user-node ...
ラベルが付けられたノード上の Pod を含む Pod 一覧の例
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE NOMINATED NODE READINESS GATES pod-s1 1/1 Running 0 20s 10.131.2.6 ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 <none> <none>
Pod に異なるノードセレクターが含まれる場合、プロジェクトの Pod は作成またはスケジュールされません。たとえば、以下の Pod をサンプルプロジェクトにデプロイする場合、これは作成されません。
無効なノードセレクターを持つ Pod オブジェクトの例
apiVersion: v1 kind: Pod ... spec: nodeSelector: region: west ....
Pod を作成すると、以下のメッセージと同様のエラーが表示されます。
エラーメッセージの例
Error from server (Forbidden): error when creating "pod.yaml": pods "pod-4" is forbidden: pod node label selector conflicts with its project node label selector
手順
デフォルトのプロジェクトノードセレクターを追加するには、以下を実行します。
プロジェクトを作成するか、または既存プロジェクトを編集して
openshift.io/node-selector
パラメーターを追加します。$ oc edit project <name>
apiVersion: v1 kind: Project metadata: annotations: openshift.io/node-selector: "type=user-node,region=east" 1 openshift.io/sa.scc.mcs: s0:c17,c14 openshift.io/sa.scc.supplemental-groups: 1000300000/10000 openshift.io/sa.scc.uid-range: 1000300000/10000 creationTimestamp: 2019-06-10T14:39:45Z labels: openshift.io/run-level: "0" name: demo resourceVersion: "401885" selfLink: /api/v1/namespaces/openshift-kube-apiserver uid: 96ecc54b-8b8d-11e9-9f54-0a9ae641edd0 spec: finalizers: - kubernetes status: phase: Active
- 1
- 適切な
<key>:<value>
ペアを持つopenshift.io/node-selector
を追加します。
MachineSet を使用するか、またはノードを直接編集してラベルをノードに追加します。
MachineSet を使用して、ノードの作成時に MachineSet によって管理されるノードにラベルを追加します。
以下のコマンドを実行してノードセレクターを MachineSet に追加します。
$ oc patch MachineSet <name> --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"<key>"="<value>","<key>"="<value>"}}]' -n openshift-machine-api
以下は例になります。
$ oc patch MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c --type='json' -p='[{"op":"add","path":"/spec/template/spec/metadata/labels", "value":{"type":"user-node","region":"east"}}]' -n openshift-machine-api
oc edit
コマンドを使用して、ラベルが MachineSet に追加されていることを確認します。以下は例になります。
$ oc edit MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
出力例
apiVersion: machine.openshift.io/v1beta1 kind: MachineSet metadata: ... spec: ... template: metadata: ... spec: metadata: labels: region: east type: user-node
その MachineSet に関連付けられたノードを再デプロイします。
以下は例になります。
$ oc scale --replicas=0 MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
$ oc scale --replicas=1 MachineSet ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c -n openshift-machine-api
oc get
コマンドを使用して、ノードの準備ができ、利用可能な場合にラベルがノードに追加されていることを確認します。$ oc label MachineSet abc612-msrtw-worker-us-east-1c type=user-node region=east
以下は例になります。
$ oc get nodes -l type=user-node
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c-vmqzp Ready worker 61s v1.18.3+002a51f
ラベルをノードに直接追加します。
Node
オブジェクトを編集してラベルを追加します。$ oc label <resource> <name> <key>=<value>
たとえば、ノードにラベルを付けるには、以下を実行します。
$ oc label nodes ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-c-tgq49 type=user-node region=east
oc get
コマンドを使用して、ラベルがノードに追加されていることを確認します。$ oc get nodes -l <key>=<value>
以下は例になります。
$ oc get nodes -l type=user-node,region=east
出力例
NAME STATUS ROLES AGE VERSION ci-ln-l8nry52-f76d1-hl7m7-worker-b-tgq49 Ready worker 17m v1.18.3+002a51f