16.3. Outpost のネットワークの設定
VPC クラスターを Outpost に拡張するには、次のネットワーク設定タスクを完了する必要があります。
- クラスターネットワークの MTU を変更します。
- Outpost にサブネットを作成します。
16.3.1. AWS Outposts をサポートするためのクラスターネットワーク MTU の変更
クラスターネットワークの最大伝送単位 (MTU) は、インストール中に、クラスター内のノードのプライマリーネットワークインターフェイスの MTU に基づいて自動的に検出されます。場合によっては、AWS Outposts サブネットをサポートするために、クラスターネットワークの MTU 値を減らす必要があります。
移行には中断が伴うため、MTU 更新が有効になると、クラスター内のノードが一時的に使用できなくなる可能性があります。
サービス中断に関する重要な考慮事項など、移行プロセスの詳細は、この手順の関連情報の「クラスターネットワークの MTU 変更」を参照してください。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つアカウントを使用してクラスターにアクセスできる。 -
クラスターのターゲット MTU を特定している。OVN-Kubernetes ネットワークプラグインの MTU は、クラスター内の最小のハードウェア MTU 値から
100
を引いた値に設定する必要があります。
手順
クラスターネットワークの現在の MTU を取得するには、次のコマンドを入力します。
$ oc describe network.config cluster
出力例
... Status: Cluster Network: Cidr: 10.217.0.0/22 Host Prefix: 23 Cluster Network MTU: 1400 Network Type: OVNKubernetes Service Network: 10.217.4.0/23 ...
MTU 移行を開始するには、次のコマンドを入力して移行設定を指定します。Machine Config Operator は、MTU の変更に備えて、クラスター内のノードをローリングリブートします。
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": { "mtu": { "network": { "from": <overlay_from>, "to": <overlay_to> } , "machine": { "to" : <machine_to> } } } } }'
ここでは、以下のようになります。
<overlay_from>
- 現在のクラスターネットワークの MTU 値を指定します。
<overlay_to>
-
クラスターネットワークのターゲット MTU を指定します。この値は、
<machine_to>
の値を基準にして設定します。OVN-Kubernetes の場合、この値は<machine_to>
の値から100
を引いた値である必要があります。 <machine_to>
- 基盤となるホストネットワークのプライマリーネットワークインターフェイスの MTU を指定します。
クラスターの MTU を減らす例
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": { "mtu": { "network": { "from": 1400, "to": 1000 } , "machine": { "to" : 1100} } } } }'
Machine Config Operator (MCO) は、各マシン設定プール内のマシンを更新するときに、各ノードを 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。
$ oc get machineconfigpools
正常に更新されたノードには、
UPDATED=true
、UPDATING=false
、DEGRADED=false
のステータスがあります。注記Machine Config Operator は、デフォルトでプールごとに 1 つずつマシンを更新するため、クラスターのサイズに応じて移行にかかる合計時間が増加します。
ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。
マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前をリスト表示するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"
出力例
kubernetes.io/hostname=master-0 machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b machineconfiguration.openshift.io/reason: machineconfiguration.openshift.io/state: Done
以下のステートメントが true であることを確認します。
-
machineconfiguration.openshift.io/state
フィールドの値はDone
です。 -
machineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig
フィールドの値と等しくなります。
-
マシン設定が正しいことを確認するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc get machineconfig <config_name> -o yaml | grep ExecStart
ここで、
<config_name>
はmachineconfiguration.openshift.io/currentConfig
フィールドのマシン設定の名前になります。マシン設定には、systemd 設定に以下の更新を含める必要があります。
ExecStart=/usr/local/bin/mtu-migration.sh
MTU の移行を完了するために、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインに対して次のコマンドを入力します。
$ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge --patch \ '{"spec": { "migration": null, "defaultNetwork":{ "ovnKubernetesConfig": { "mtu": <mtu> }}}}'
ここでは、以下のようになります。
<mtu>
-
<overlay_to>
で指定した新しいクラスターネットワーク MTU を指定します。
MTU の移行が完了すると、各マシン設定プールノードが 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。
$ oc get machineconfigpools
正常に更新されたノードには、
UPDATED=true
、UPDATING=false
、DEGRADED=false
のステータスがあります。
検証
次のコマンドを入力して、クラスター内のノードが指定した MTU を使用していることを確認します。
$ oc describe network.config cluster
関連情報
16.3.2. AWS エッジコンピュートサービス用のサブネットの作成
OpenShift Container Platform クラスターのエッジコンピュートノードのマシンセットを設定する前に、AWS Outposts にサブネットを作成する必要があります。
このドキュメントの CloudFormation テンプレートを使用して、CloudFormation スタックを作成できます。その後、このスタックを使用してサブネットをカスタムプロビジョニングできます。
このドキュメントの CloudFormation テンプレートを使用して AWS インフラストラクチャーを作成しない場合は、記載されている情報を確認し、インフラストラクチャーを手動で作成する必要があります。クラスターが適切に初期化されない場合、インストールログを用意して Red Hat サポートに問い合わせする必要がある可能性があります。
前提条件
- AWS アカウントを設定している。
-
aws configure
を実行して、AWS キーおよびリージョンをローカルの AWS プロファイルに追加している。 - OpenShift Container Platform クラスター、Outpost、および AWS アカウントから環境に関する必要な情報を取得している。
手順
- このドキュメントの「VPC サブネット用の CloudFormation テンプレート」セクションに移動し、テンプレートから構文をコピーします。コピーしたテンプレートの構文を YAML ファイルとしてローカルシステムに保存します。このテンプレートは、クラスターに必要な VPC を記述しています。
次のコマンドを実行して CloudFormation テンプレートをデプロイします。これにより、VPC を表す AWS リソースのスタックが作成されます。
$ aws cloudformation create-stack --stack-name <stack_name> \1 --region ${CLUSTER_REGION} \ --template-body file://<template>.yaml \2 --parameters \ ParameterKey=VpcId,ParameterValue="${VPC_ID}" \3 ParameterKey=ClusterName,ParameterValue="${CLUSTER_NAME}" \4 ParameterKey=ZoneName,ParameterValue="${ZONE_NAME}" \5 ParameterKey=PublicRouteTableId,ParameterValue="${ROUTE_TABLE_PUB}" \6 ParameterKey=PublicSubnetCidr,ParameterValue="${SUBNET_CIDR_PUB}" \7 ParameterKey=PrivateRouteTableId,ParameterValue="${ROUTE_TABLE_PVT}" \8 ParameterKey=PrivateSubnetCidr,ParameterValue="${SUBNET_CIDR_PVT}" \9 ParameterKey=PrivateSubnetLabel,ParameterValue="private-outpost" \ ParameterKey=PublicSubnetLabel,ParameterValue="public-outpost" \ ParameterKey=OutpostArn,ParameterValue="${OUTPOST_ARN}" 10
- 1
<stack_name>
は、CloudFormation スタックの名前です (cluster-<outpost_name>
など)。- 2
<template>
は、保存した CloudFormation テンプレート YAML ファイルの相対パスと名前です。- 3
${VPC_ID}
は VPC ID であり、VPC 用の CloudFormation テンプレートの出力に含まれる値VpcID
です。- 4
${CLUSTER_NAME}
は、新しい AWS リソース名の接頭辞として使用する ClusterName の値です。- 5
${ZONE_NAME}
は、サブネットを作成する AWS Outposts 名の値です。- 6
${ROUTE_TABLE_PUB}
は、Outpost 上のパブリックサブネットを関連付けるために使用する、${VPC_ID}
に作成されたパブリックルートテーブル ID です。このスタックによって作成された Outpost サブネットを関連付けるパブリックルートテーブルを指定します。- 7
${SUBNET_CIDR_PUB}
は、パブリックサブネットの作成に使用する有効な CIDR ブロックです。このブロックは、VPC CIDR ブロックVpcCidr
の一部である必要があります。- 8
${ROUTE_TABLE_PVT}
は、Outpost 上のプライベートサブネットを関連付けるために使用する、${VPC_ID}
に作成されたプライベートルートテーブル ID です。このスタックによって作成された Outpost サブネットを関連付けるプライベートルートテーブルを指定します。- 9
${SUBNET_CIDR_PVT}
は、プライベートサブネットの作成に使用する有効な CIDR ブロックです。このブロックは、VPC CIDR ブロックVpcCidr
の一部である必要があります。- 10
${OUTPOST_ARN}
は、Outpost の Amazon Resource Name (ARN) です。
出力例
arn:aws:cloudformation:us-east-1:123456789012:stack/<stack_name>/dbedae40-820e-11eb-2fd3-12a48460849f
検証
次のコマンドを実行して、テンプレートコンポーネントが存在することを確認します。
$ aws cloudformation describe-stacks --stack-name <stack_name>
StackStatus
にCREATE_COMPLETE
が表示されると、出力に次のパラメーターの値が表示されます。PublicSubnetId
CloudFormation スタックによって作成されたパブリックサブネットの ID。
PrivateSubnetId
CloudFormation スタックによって作成されたプライベートサブネットの ID。
これらのパラメーター値を、クラスターを作成するために実行する他の CloudFormation テンプレートに必ず指定してください。
16.3.3. VPC サブネット用の CloudFormation テンプレート
次の CloudFormation テンプレートを使用して、Outpost サブネットをデプロイできます。
例16.1 VPC サブネット用の CloudFormation テンプレート
AWSTemplateFormatVersion: 2010-09-09 Description: Template for Best Practice Subnets (Public and Private) Parameters: VpcId: Description: VPC ID that comprises all the target subnets. Type: String AllowedPattern: ^(?:(?:vpc)(?:-[a-zA-Z0-9]+)?\b|(?:[0-9]{1,3}\.){3}[0-9]{1,3})$ ConstraintDescription: VPC ID must be with valid name, starting with vpc-.*. ClusterName: Description: Cluster name or prefix name to prepend the Name tag for each subnet. Type: String AllowedPattern: ".+" ConstraintDescription: ClusterName parameter must be specified. ZoneName: Description: Zone Name to create the subnets, such as us-west-2-lax-1a. Type: String AllowedPattern: ".+" ConstraintDescription: ZoneName parameter must be specified. PublicRouteTableId: Description: Public Route Table ID to associate the public subnet. Type: String AllowedPattern: ".+" ConstraintDescription: PublicRouteTableId parameter must be specified. PublicSubnetCidr: AllowedPattern: ^(([0-9]|[1-9][0-9]|1[0-9]{2}|2[0-4][0-9]|25[0-5])\.){3}([0-9]|[1-9][0-9]|1[0-9]{2}|2[0-4][0-9]|25[0-5])(\/(1[6-9]|2[0-4]))$ ConstraintDescription: CIDR block parameter must be in the form x.x.x.x/16-24. Default: 10.0.128.0/20 Description: CIDR block for public subnet. Type: String PrivateRouteTableId: Description: Private Route Table ID to associate the private subnet. Type: String AllowedPattern: ".+" ConstraintDescription: PrivateRouteTableId parameter must be specified. PrivateSubnetCidr: AllowedPattern: ^(([0-9]|[1-9][0-9]|1[0-9]{2}|2[0-4][0-9]|25[0-5])\.){3}([0-9]|[1-9][0-9]|1[0-9]{2}|2[0-4][0-9]|25[0-5])(\/(1[6-9]|2[0-4]))$ ConstraintDescription: CIDR block parameter must be in the form x.x.x.x/16-24. Default: 10.0.128.0/20 Description: CIDR block for private subnet. Type: String PrivateSubnetLabel: Default: "private" Description: Subnet label to be added when building the subnet name. Type: String PublicSubnetLabel: Default: "public" Description: Subnet label to be added when building the subnet name. Type: String OutpostArn: Default: "" Description: OutpostArn when creating subnets on AWS Outpost. Type: String Conditions: OutpostEnabled: !Not [!Equals [!Ref "OutpostArn", ""]] Resources: PublicSubnet: Type: "AWS::EC2::Subnet" Properties: VpcId: !Ref VpcId CidrBlock: !Ref PublicSubnetCidr AvailabilityZone: !Ref ZoneName OutpostArn: !If [ OutpostEnabled, !Ref OutpostArn, !Ref "AWS::NoValue"] Tags: - Key: Name Value: !Join ['-', [ !Ref ClusterName, !Ref PublicSubnetLabel, !Ref ZoneName]] - Key: kubernetes.io/cluster/unmanaged 1 Value: true PublicSubnetRouteTableAssociation: Type: "AWS::EC2::SubnetRouteTableAssociation" Properties: SubnetId: !Ref PublicSubnet RouteTableId: !Ref PublicRouteTableId PrivateSubnet: Type: "AWS::EC2::Subnet" Properties: VpcId: !Ref VpcId CidrBlock: !Ref PrivateSubnetCidr AvailabilityZone: !Ref ZoneName OutpostArn: !If [ OutpostEnabled, !Ref OutpostArn, !Ref "AWS::NoValue"] Tags: - Key: Name Value: !Join ['-', [!Ref ClusterName, !Ref PrivateSubnetLabel, !Ref ZoneName]] - Key: kubernetes.io/cluster/unmanaged 2 Value: true PrivateSubnetRouteTableAssociation: Type: "AWS::EC2::SubnetRouteTableAssociation" Properties: SubnetId: !Ref PrivateSubnet RouteTableId: !Ref PrivateRouteTableId Outputs: PublicSubnetId: Description: Subnet ID of the public subnets. Value: !Join ["", [!Ref PublicSubnet]] PrivateSubnetId: Description: Subnet ID of the private subnets. Value: !Join ["", [!Ref PrivateSubnet]]