13.2. 追加のネットワークの設定
クラスター管理者は、クラスターの追加のネットワークを設定できます。以下のネットワークタイプに対応しています。
13.2.1. 追加のネットワークを管理するためのアプローチ
追加したネットワークのライフサイクルを管理するには、2 つのアプローチがあります。各アプローチは同時に使用できず、追加のネットワークを管理する場合に 1 つのアプローチしか使用できません。いずれの方法でも、追加のネットワークは、お客様が設定した Container Network Interface (CNI) プラグインで管理します。
追加ネットワークの場合には、IP アドレスは、追加ネットワークの一部として設定する IPAM(IP Address Management)CNI プラグインでプロビジョニングされます。IPAM プラグインは、DHCP や静的割り当てなど、さまざまな IP アドレス割り当ての方法をサポートしています。
-
Cluster Network Operator (CNO) の設定を変更する: CNO は自動的に
Network Attachment Definition
オブジェクトを作成し、管理します。CNO は、オブジェクトのライフサイクル管理に加えて、DHCP で割り当てられた IP アドレスを使用する追加のネットワークで確実に DHCP が利用できるようにします。 -
YAML マニフェストを適用する:
Network Attachment Definition
オブジェクトを作成することで、追加のネットワークを直接管理できます。この方法では、CNI プラグインを連鎖させることができます。
13.2.2. ネットワーク追加割り当ての設定
追加のネットワークは、k8s.cni.cncf.io
API グループの Network Attachment Definition
API で設定されます。
Network Attachment Definition
オブジェクトには、プロジェクト管理ユーザーがアクセスできるので、機密情報やシークレットを保存しないでください。
API の設定については、以下の表で説明されています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
| 追加のネットワークの名前です。 |
|
| オブジェクトが関連付けられる namespace。 |
|
| JSON 形式の CNI プラグイン設定。 |
13.2.2.1. Cluster Network Operator による追加ネットワークの設定
追加のネットワーク割り当ての設定は、Cluster Network Operator (CNO) の設定の一部として指定します。
以下の YAML は、CNO で追加のネットワークを管理するための設定パラメーターを記述しています。
Cluster Network Operator (CNO) の設定
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: # ... additionalNetworks: 1 - name: <name> 2 namespace: <namespace> 3 rawCNIConfig: |- 4 { ... } type: Raw
13.2.2.2. YAML マニフェストからの追加ネットワークの設定
追加ネットワークの設定は、以下の例のように YAML 設定ファイルから指定します。
apiVersion: k8s.cni.cncf.io/v1 kind: NetworkAttachmentDefinition metadata: name: <name> 1 spec: config: |- 2 { ... }
13.2.3. 追加のネットワークタイプの設定
次のセクションでは、追加のネットワークの具体的な設定フィールドについて説明します。
13.2.3.1. ブリッジネットワークの追加設定
以下のオブジェクトは、ブリッジ CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
| |
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|
使用する仮想ブリッジの名前を指定します。ブリッジインターフェイスがホストに存在しない場合は、これが作成されます。デフォルト値は |
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| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、割り当て定義についての IP アドレスの割り当てを管理します。 |
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|
仮想ネットワークから外すトラフィックについて IP マスカレードを有効にするには、 |
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|
IP アドレスをブリッジに割り当てるには |
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ブリッジを仮想ネットワークのデフォルトゲートウェイとして設定するには、 |
|
|
仮想ブリッジの事前に割り当てられた IP アドレスの割り当てを許可するには、 |
|
|
仮想ブリッジが受信時に使用した仮想ポートでイーサネットフレームを送信できるようにするには、 |
|
|
ブリッジで無作為検出モード (Promiscuous Mode) を有効にするには、 |
|
| 仮想 LAN (VLAN) タグを整数値として指定します。デフォルトで、VLAN タグは割り当てません。 |
|
| 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
13.2.3.1.1. ブリッジ設定の例
以下の例では、bridge-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "work-network", "type": "bridge", "isGateway": true, "vlan": 2, "ipam": { "type": "dhcp" } }
13.2.3.2. ホストデバイスの追加ネットワークの設定
device
、hwaddr
、 kernelpath
、または pciBusID
のいずれかのパラメーターを設定してネットワークデバイスを指定します。
以下のオブジェクトは、ホストデバイス CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
|
オプション: |
|
| オプション: デバイスハードウェアの MAC アドレス。 |
|
|
オプション: |
|
|
オプション: |
13.2.3.2.1. ホストデバイス設定例
以下の例では、hostdev-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "work-network", "type": "host-device", "device": "eth1" }
13.2.3.3. IPVLAN 追加ネットワークの設定
以下のオブジェクトは、IPVLAN CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
|
仮想ネットワークの操作モード。この値は、 |
|
|
ネットワーク割り当てに関連付けるイーサネットインターフェイス。 |
|
| 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、割り当て定義についての IP アドレスの割り当てを管理します。
|
13.2.3.3.1. IPVLAN 設定例
以下の例では、ipvlan-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "work-network", "type": "ipvlan", "master": "eth1", "mode": "l3", "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "192.168.10.10/24" } ] } }
13.2.3.4. MACVLAN 追加ネットワークの設定
以下のオブジェクトは、macvlan CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CNI 仕様のバージョン。値 |
|
|
CNO 設定に以前に指定した |
|
|
設定する CNI プラグインの名前: |
|
|
仮想ネットワークのトラフィックの可視性を設定します。 |
|
| 新しく作成された macvlan インターフェイスに関連付けるホストネットワークインターフェイス。値が指定されていない場合は、デフォルトのルートインターフェイスが使用されます。 |
|
| 最大転送単位 (MTU) を指定された値。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。 |
|
| IPAM CNI プラグインの設定オブジェクト。プラグインは、割り当て定義についての IP アドレスの割り当てを管理します。 |
プラグイン設定の master
キーを指定する場合は、競合の可能性を回避するために、プライマリーネットワークプラグインに関連付けられているものとは異なる物理ネットワークインターフェイスを使用してください。
13.2.3.4.1. macvlan 設定の例
以下の例では、macvlan-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "macvlan-net", "type": "macvlan", "master": "eth1", "mode": "bridge", "ipam": { "type": "dhcp" } }
13.2.4. 追加ネットワークの IP アドレス割り当ての設定
IPAM (IP アドレス管理) Container Network Interface (CNI) プラグインは、他の CNI プラグインの IP アドレスを提供します。
以下の IP アドレスの割り当てタイプを使用できます。
- 静的割り当て。
- DHCP サーバーを使用した動的割り当て。指定する DHCP サーバーは、追加のネットワークから到達可能である必要があります。
- Whereabouts IPAM CNI プラグインを使用した動的割り当て。
13.2.4.1. 静的 IP アドレス割り当ての設定
以下の表は、静的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
|
| 仮想インターフェイスに割り当てる IP アドレスを指定するオブジェクトの配列。IPv4 と IPv6 の IP アドレスの両方がサポートされます。 |
|
| Pod 内で設定するルートを指定するオブジェクトの配列です。 |
|
| オプション: DNS の設定を指定するオブジェクトの配列です。 |
addresses
の配列には、以下のフィールドのあるオブジェクトが必要です。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
指定する IP アドレスおよびネットワーク接頭辞。たとえば、 |
|
| egress ネットワークトラフィックをルーティングするデフォルトのゲートウェイ。 |
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
CIDR 形式の IP アドレス範囲 ( |
|
| ネットワークトラフィックがルーティングされるゲートウェイ。 |
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
| DNS クエリーの送信先となる 1 つ以上の IP アドレスの配列。 |
|
|
ホスト名に追加するデフォルトのドメイン。たとえば、ドメインが |
|
|
DNS ルックアップのクエリー時に非修飾ホスト名に追加されるドメイン名の配列 (例: |
静的 IP アドレス割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "191.168.1.7/24" } ] } }
13.2.4.2. 動的 IP アドレス (DHCP) 割り当ての設定
以下の JSON は、DHCP を使用した動的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。
Pod は、作成時に元の DHCP リースを取得します。リースは、クラスターで実行している最小限の DHCP サーバーデプロイメントで定期的に更新する必要があります。
DHCP サーバーのデプロイメントをトリガーするには、以下の例にあるように Cluster Network Operator 設定を編集して shim ネットワーク割り当てを作成する必要があります。
shim ネットワーク割り当ての定義例
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: additionalNetworks: - name: dhcp-shim namespace: default type: Raw rawCNIConfig: |- { "name": "dhcp-shim", "cniVersion": "0.3.1", "type": "bridge", "ipam": { "type": "dhcp" } } # ...
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
動的 IP アドレス (DHCP) 割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "dhcp" } }
13.2.4.3. Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定
Whereabouts CNI プラグインにより、DHCP サーバーを使用せずに IP アドレスを追加のネットワークに動的に割り当てることができます。
以下の表は、Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定について説明しています。
フィールド | 型 | 説明 |
---|---|---|
|
|
IPAM のアドレスタイプ。値 |
|
| IP アドレスと範囲を CIDR 表記。IP アドレスは、この範囲内のアドレスから割り当てられます。 |
|
| オプション: CIDR 表記の IP アドレスと範囲 (0 個以上) の一覧。除外されたアドレス範囲内の IP アドレスは割り当てられません。 |
Whereabouts を使用する動的 IP アドレス割り当ての設定例
{ "ipam": { "type": "whereabouts", "range": "192.0.2.192/27", "exclude": [ "192.0.2.192/30", "192.0.2.196/32" ] } }
13.2.5. Cluster Network Operator による追加ネットワーク割り当ての作成
Cluster Network Operator (CNO) は追加ネットワークの定義を管理します。作成する追加ネットワークを指定する場合、CNO は NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを自動的に作成します。
Cluster Network Operator が管理する NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトは編集しないでください。これを実行すると、追加ネットワークのネットワークトラフィックが中断する可能性があります。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
CNO 設定を編集するには、以下のコマンドを入力します。
$ oc edit networks.operator.openshift.io cluster
以下のサンプル CR のように、作成される追加ネットワークの設定を追加して、作成している CR を変更します。
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: # ... additionalNetworks: - name: tertiary-net namespace: project2 type: Raw rawCNIConfig: |- { "cniVersion": "0.3.1", "name": "tertiary-net", "type": "ipvlan", "master": "eth1", "mode": "l2", "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "192.168.1.23/24" } ] } }
- 変更を保存し、テキストエディターを終了して、変更をコミットします。
検証
以下のコマンドを実行して、CNO が NetworkAttachmentDefinition オブジェクトを作成していることを確認します。CNO がオブジェクトを作成するまでに遅延が生じる可能性があります。
$ oc get network-attachment-definitions -n <namespace>
ここでは、以下のようになります。
<namespace>
- CNO の設定に追加したネットワーク割り当ての namespace を指定します。
出力例
NAME AGE test-network-1 14m
13.2.6. YAML マニフェストを適用した追加のネットワーク割り当ての作成
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) がインストールされている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
以下の例のように、追加のネットワーク設定を含む YAML ファイルを作成します。
apiVersion: k8s.cni.cncf.io/v1 kind: NetworkAttachmentDefinition metadata: name: next-net spec: config: |- { "cniVersion": "0.3.1", "name": "work-network", "type": "host-device", "device": "eth1", "ipam": { "type": "dhcp" } }
追加のネットワークを作成するには、次のコマンドを入力します。
$ oc apply -f <file>.yaml
ここでは、以下のようになります。
<file>
- YAML マニフェストを含むファイルの名前を指定します。