第9章 IP フェイルオーバーの設定
このトピックでは、OpenShift Container Platform クラスターの Pod およびサービスの IP フェイルオーバーの設定について説明します。
IP フェイルオーバーは、ノードセットの仮想 IP (VIP) アドレスのプールを管理します。セットのすべての VIP はセットから選択されるノードによって提供されます。VIP は単一ノードが利用可能である限り提供されます。ノード上で VIP を明示的に配布する方法がないため、VIP のないノードがある可能性も、多数の VIP を持つノードがある可能性もあります。ノードが 1 つのみ存在する場合は、すべての VIP がそのノードに配置されます。
VIP はクラスター外からルーティングできる必要があります。
IP フェイルオーバーは各 VIP のポートをモニターし、ポートがノードで到達可能かどうかを判別します。ポートが到達不能な場合、VIP はノードに割り当てられません。ポートが 0
に設定されている場合、このチェックは抑制されます。check スクリプトは必要なテストを実行します。
IP フェイルオーバーは Keepalived を使用して、一連のホストでの外部からアクセスできる VIP アドレスのセットをホストします。各 VIP は 1 度に 1 つのホストによって提供されます。Keepalived は Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) を使用して、(一連のホストの) どのホストがどの VIP を提供するかを判別します。ホストが利用不可の場合や Keepalived が監視しているサービスが応答しない場合は、VIP は一連のホストの別のホストに切り換えられます。したがって、VIP はホストが利用可能である限り常に提供されます。
Keepalived を実行するノードが check スクリプトを渡す場合、ノードの VIP はプリエンプションストラテジーに応じて、その優先順位および現在のマスターの優先順位に基づいて master
状態になることができます。
クラスター管理者は OPENSHIFT_HA_NOTIFY_SCRIPT
変数を介してスクリプトを提供できます。このスクリプトは、ノードの VIP の状態が変更されるたびに呼び出されます。Keepalived は VIP を提供する場合は master
状態を、別のノードが VIP を提供する場合は backup
状態を、または check スクリプトが失敗する場合は fault
状態を使用します。notify スクリプトは、状態が変更されるたびに新規の状態で呼び出されます。
OpenShift Container Platform で IP フェイルオーバーのデプロイメント設定を作成できます。IP フェイルオーバーのデプロイメント設定は VIP アドレスのセットを指定し、それらの提供先となるノードのセットを指定します。クラスターには複数の IP フェイルオーバーのデプロイメント設定を持たせることができ、それぞれが固有な VIP アドレスの独自のセットを管理します。IP フェイルオーバー設定の各ノードは IP フェイルオーバー Pod として実行され、この Pod は Keepalived を実行します。
VIP を使用してホストネットワークを持つ Pod にアクセスする場合、アプリケーション Pod は IP フェイルオーバー Pod を実行しているすべてのノードで実行されます。これにより、いずれの IP フェイルオーバーノードもマスターになり、必要時に VIP を提供することができます。アプリケーション Pod が IP フェイルオーバーのすべてのノードで実行されていない場合、一部の IP フェイルオーバーノードが VIP を提供できないか、または一部のアプリケーション Pod がトラフィックを受信できなくなります。この不一致を防ぐために、IP フェイルオーバーとアプリケーション Pod の両方に同じセレクターとレプリケーション数を使用します。
VIP を使用してサービスにアクセスしている間は、アプリケーション Pod が実行されている場所に関係なく、すべてのノードでサービスに到達できるため、任意のノードをノードの IP フェイルオーバーセットに含めることができます。いずれの IP フェイルオーバーノードも、いつでもマスターにすることができます。サービスは外部 IP およびサービスポートを使用するか、または NodePort
を使用することができます。
サービス定義で外部 IP を使用する場合、VIP は外部 IP に設定され、IP フェイルオーバーのモニターリングポートはサービスポートに設定されます。ノードポートを使用する場合、ポートはクラスター内のすべてのノードで開かれ、サービスは、現在 VIP にサービスを提供しているあらゆるノードからのトラフィックの負荷を分散します。この場合、IP フェイルオーバーのモニターリングポートはサービス定義で NodePort
に設定されます。
NodePort
のセットアップは特権付きの操作で実行されます。
サービス VIP の可用性が高い場合でも、パフォーマンスに影響が出る可能性があります。Keepalived は、各 VIP が設定内の一部のノードによってサービスされることを確認し、他のノードに VIP がない場合でも、複数の VIP が同じノードに配置される可能性があります。IP フェイルオーバーによって複数の VIP が同じノードに配置されると、VIP のセット全体で外部から負荷分散される戦略が妨げられる可能性があります。
ingressIP
を使用する場合は、IP フェイルオーバーを ingressIP
範囲と同じ VIP 範囲を持つように設定できます。また、モニターリングポートを無効にすることもできます。この場合、すべての VIP がクラスター内の同じノードに表示されます。すべてのユーザーが ingressIP
でサービスをセットアップし、これを高い可用性のあるサービスにすることができます。
クラスター内の VIP の最大数は 254 です。
9.1. IP フェイルオーバーの環境変数
以下の表は、IP フェイルオーバーの設定に使用される変数を示しています。
変数名 | デフォルト | 説明 |
---|---|---|
|
|
IP フェイルオーバー Pod は、各仮想 IP (VIP) のこのポートに対して TCP 接続を開こうとします。接続が設定されると、サービスは実行中であると見なされます。このポートが |
|
IP フェイルオーバーが Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) トラフィックの送信に使用するインターフェイス名。デフォルト値は | |
|
|
作成するレプリカの数です。これは、IP フェイルオーバーデプロイメント設定の |
|
複製する IP アドレス範囲の一覧です。これは指定する必要があります例: | |
|
|
仮想ルーター ID の設定に使用されるオフセット値。異なるオフセット値を使用すると、複数の IP フェイルオーバー設定が同じクラスター内に存在できるようになります。デフォルトのオフセットは |
|
VRRP に作成するグループの数です。これが設定されていない場合、グループは | |
| INPUT |
iptables チェーンの名前であり、 |
| アプリケーションが動作していることを確認するために定期的に実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。 | |
|
| check スクリプトが実行される期間 (秒単位) です。 |
| 状態が変更されるたびに実行されるスクリプトの Pod ファイルシステム内の完全パス名です。 | |
|
|
新たな優先度の高いホストを処理するためのストラテジーです。 |