11.12. OpenShift Virtualization と IBM Fusion Access for SAN の使用


11.12.1. IBM Fusion Access for SAN について

IBM Fusion Access for SAN は、エンタープライズストレージ用のスケーラブルなクラスターファイルシステムを提供するソリューションです。統合されたブロックレベルのデータストレージへのアクセスを提供することを主な目的としています。ディスクアレイなどのストレージデバイスを、直接接続されたストレージであるかのようにオペレーティングシステムに提示します。

このソリューションは、特に OpenShift Virtualization のエンタープライズストレージ向けに設計されており、既存のストレージエリアネットワーク (SAN) インフラストラクチャーを活用します。SAN は、ローカルエリアネットワーク (LAN) 経由では通常アクセスできないストレージデバイスの専用ネットワークです。

OpenShift Virtualization を IBM Fusion Access for SAN とともに使用するには、まず Fusion Access for SAN Operator をインストールする必要があります。

次に、Kubernetes プルシークレットを作成し、FusionAccess カスタムリソース (CR) を作成する必要があります。

最後に、OpenShift Container Platform Web コンソールのウィザードに従って、ストレージクラスター、ローカルディスク、およびファイルシステムを設定します。

11.12.1.1. Fusion Access for SAN を使用すべき理由

使いやすさ
Fusion Access for SAN は、ストレージクラスター、ファイルシステム、およびストレージクラスをインストールおよび設定するためのウィザードベースのユーザーインターフェイス (UI) を備えており、セットアッププロセスを簡素化します。
既存のインフラストラクチャーの活用
組織は、OpenShift Virtualization に移行したり、OpenShift Virtualization で拡張したりする際に、ファイバーチャネル (FC) や iSCSI テクノロジーなどの既存の SAN 製品を活用できます。
スケーラビリティー
ストレージクラスターは、OpenShift Container Platform クラスターと仮想マシン (VM) のワークロードに合わせて拡張できるように設計されています。6 台のベアメタルホスト上で最大約 3000 台の仮想マシンをサポートできます。ファイルシステムを追加したり、特定のストレージクラスパラメーターを使用したりすることで、さらに拡張することも可能です。
統合および共有ストレージ
SAN を使用すると、複数のサーバーが大きな共有データストレージ容量を利用できるようになります。このアーキテクチャーにより、自動データバックアップと、ストレージおよびバックアッププロセスの継続的な監視が容易になります。
高速なデータ転送
Fusion Access for SAN は、ストレージ専用の高速ネットワークを使用することで、特に大容量データの場合に従来の LAN で発生する可能性のあるデータ転送のボトルネックを解消します。
ファイルレベルのアクセス
SAN は主にブロックレベルで動作しますが、SAN ストレージ上に構築されたファイルシステムは、共有ディスクファイルシステムを通じてファイルレベルのアクセスを提供できます。
管理の一元化
基盤となる SAN ソフトウェアは、サーバー、ストレージデバイス、およびネットワークを管理し、サーバーの介入を最小限に抑えながら、ストレージデバイス間でデータを直接移動できるようにします。また、論理ユニット番号 (LUN) などの SAN コンポーネントの一元的な管理と設定もサポートしています。

11.12.2. Fusion Access for SAN の前提条件と制限事項

11.12.2.1. 前提条件

Fusion Access for SAN をインストールして設定するには、次の前提条件を満たす必要があります。

  • SAN ストレージが接続されたベアメタルワーカーノード。
  • 動作するコンテナーレジストリーが有効になっている。
  • すべてのワーカーノードが同じ LUN に接続している。

    共有 LUN は、すべてのワーカーノードが同時にアクセスする共有ディスクです。

  • Kubernetes プルシークレット。

11.12.2.2. 制限事項

  • Fusion Access for SAN の制限は、IBM Storage Scale container native の制限に依存しており、IBM Storage Scale container native のドキュメントに記載されています。
  • Hosted Control Plane (HCP) クラスターはサポートされていません。

11.12.3. Fusion Access for SAN Operator のインストール

Fusion Access for SAN Operator は、OpenShift Container Platform Web コンソールの OperatorHub からインストールします。

前提条件

  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • 動作するコンテナーレジストリーが有効になっている。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールで、Operators OperatorHub ページに移動します。
  2. Filter by keyword フィールドに Fusion Access for SAN と入力します。
  3. Fusion Access for SAN タイルを選択し、Install をクリックします。
  4. Install Operator ページで、Update ChannelVersion、および Installation mode のデフォルトの選択をそのままにします。
  5. Installed NamespaceOperator recommended Namespace が選択されていることを確認します。

    これにより、Operator が ibm-fusion-access namespace にインストールされます。この namespace がまだ存在しない場合は、自動的に作成されます。

    警告

    Fusion Access for SAN Operator は、ibm-fusion-access namespace にインストールする必要があります。他の namespace へのインストールはサポートされていません。

  6. Update Approval でデフォルトの Automatic が選択されていることを確認します。

    これにより、新しい z-stream リリースが利用可能になったときに自動更新が可能になります。

  7. Install をクリックします。

    これにより、Operator がインストールされます。

検証

  1. Operators Installed Operators に移動します。
  2. Fusion Access for SAN Operator が表示されていることを確認します。

11.12.4. Kubernetes プルシークレットの作成

Fusion Access for SAN Operator をインストールした後、Kubernetes シークレットオブジェクトを作成する必要があります。これは、IBM コンテナーレジストリーから必要なコンテナーイメージをプルする IBM エンタイトルメントキーを保持するためのものです。

前提条件

  • oc CLI がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • Fusion Access for SAN Operator をインストールし、そのプロセスで ibm-fusion-access namespace を作成した。

手順

  1. Fusion Access for SAN の IBMidpassword を使用して、IBM Container software library にログインします。
  2. IBM Container software library で、エンタイトルメントキーを取得します。

    1. エンタイトルメントキーがまだない場合は、Get entitlement key または Add new key をクリックし、Copy をクリックします。
    2. エンタイトルメントキーがすでにある場合は、Copy をクリックします。
  3. エンタイトルメントキーを安全な場所に保存します。
  4. oc create コマンドを実行して、シークレットオブジェクトを作成します。

    $ oc create secret -n ibm-fusion-access generic fusion-pullsecret \
    --from-literal=ibm-entitlement-key=<ibm-entitlement-key> 
    1
    Copy to Clipboard Toggle word wrap
    1
    これは、ステップ 2 で IBM Container software library からコピーしたエンタイトルメントキーです。

検証

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールで、Workloads Secrets に移動します。
  2. リストで fusion-pullsecret を見つけます。

11.12.5. FusionAccess CR の作成

Fusion Access for SAN Operator をインストールし、Kubernetes プルシークレットを作成した後、FusionAccess カスタムリソース (CR) を作成する必要があります。

FusionAccess CR を作成すると、正しいバージョンの IBM Storage Scale のインストールがトリガーされ、共有 LUN を持つワーカーノードが検出されます。

前提条件

  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • Fusion Access for SAN Operator をインストールした。
  • Kubernetes プルシークレットを作成した。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールで、Operators Installed Operators に移動します。
  2. インストールした Fusion Access for SAN Operator をクリックします。
  3. Fusion Access for SAN ページで、Fusion Access タブを選択します。
  4. Create FusionAccess をクリックします。
  5. Create FusionAccess ページで、オブジェクトの Name を入力します。
  6. オプション: 関連する場合は Labels を追加することもできます。
  7. ドロップダウンリストから IBM Storage Scale Version を選択します。
  8. Create をクリックします。

検証

  • Fusion Access for SAN Operator ページの Fusion Access タブで、作成した FusionAccess CR に Ready ステータスが表示されていることを確認します。

11.12.6. Fusion Access for SAN を使用したストレージクラスターの作成

Fusion Access for SAN Operator をインストールしたら、共有ストレージノードを使用してストレージクラスターを作成できます。

OpenShift Container Platform Web コンソールのストレージクラスター作成ウィザードでは、わかりやすい手順が提供され、共有ディスクを持つ関連するワーカーノードのリストが表示されます。

前提条件

  • 認識および接続された共有 LUN を持つベアメタルワーカーノードがある。

    共有 LUN は、すべてのワーカーが同時にアクセスする共有ディスクです。

  • Fusion Access for SAN Operator をインストールした。
  • ibm-fusion-access namespace に FusionAccess カスタムリソース (CR) を作成した。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールで、Storage Fusion Access for SAN に移動します。
  2. Create storage cluster をクリックします。
  3. 共有 LUN を持つワーカーノードを選択します。

    注記

    リストから選択できるのは、最低 20 GB の RAM を持つワーカーノードのみです。

  4. Create storage cluster をクリックします。

    ページが再読み込みされ、新しいストレージクラスターの Fusion Access for SAN ページが開きます。

11.12.7. Fusion Access for SAN を使用したファイルシステムの作成

必要なストレージを表すファイルシステムを作成する必要があります。

ファイルシステムは、ストレージクラスターの作成時に選択したワーカーノードで使用可能なストレージに基づいて作成されます。

前提条件

  • Fusion Access for SAN ストレージクラスターを作成した。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールで、Storage Fusion Access for SAN に移動します。
  2. File systems タブで、Create file system をクリックします。
  3. 新しいファイルシステムの Name を入力します。
  4. ファイルシステムのストレージボリュームとして使用する LUN を選択します。
  5. Create file system をクリックします。

    Fusion Access for SAN ページが再読み込みされ、新しいファイルシステムが File systems タブに表示されます。

次のステップ

作成するファイルシステムごとにこの手順を繰り返します。

検証

  1. File systems タブでファイルシステムの Status を監視し、それが Healthy とマークされるまで待ちます。

    注記

    これは数分かかる可能性があります。

  2. ファイルシステムの StorageClass をクリックします。
  3. YAML タブで、次の点を確認します。

    1. name フィールドの値は作成したファイルシステムの名前です。
    2. provisioner フィールドの値は spectrumscale.csi.ibm.com です。
    3. volBackendFs フィールドの値は、作成したファイルシステムの名前と同じになります。

      kind: StorageClass
      apiVersion: storage.k8s.io/v1
      metadata:
        name: filesystem1
        uid: eb410309-a043-a89b-9bb05483872a
        resourceVersion: '87746'
        creationTimestamp: '2025-05-14T12:30:08Z'
        managedFields:
      provisioner: spectrumscale.csi.ibm.com
      parameters:
        volBackendFs: filesystem1
      reclaimPolicy: Delete
      allowVolumeExpansion: true
      volumeBindingMode: Immediate
      Copy to Clipboard Toggle word wrap

11.12.8. 次のステップ

ストレージクラスターとファイルシステムを作成したら、ストレージクラスター上に仮想マシン (VM) を作成できます。

インスタンスタイプまたはテンプレートから仮想マシンを作成し、作成したファイルシステムのいずれかに対応するストレージクラスをストレージタイプとして選択します。

11.12.9. IBM Fusion Access for SAN のリリース更新情報

新機能、バグ修正、既知の問題を含む、IBM Fusion Access for SAN のリリース更新情報です。

11.12.9.1. 新機能および変更された機能

カーネルモジュール管理に関するイメージレジストリー要件
IBM Fusion Access for SAN は、カーネルモジュールの管理に OpenShift Container Platform イメージレジストリーを使用します。emptyDir ストレージを使用するようにレジストリーを設定しないでください。emptyDir ストレージは一時的なストレージしか提供せず、実稼働環境での使用には適していないためです。Operator をインストールした後、FusionAccess CR を作成する前に、config map とシークレットを作成し、別のイメージレジストリーを使用するように IBM Fusion Access for SAN を設定してください。(OCPNAS-213)

11.12.9.2. バグ修正

デーモンが準備完了になるまでファイルシステム作成ボタンが無効のままになる
IBM Fusion Access for SAN Operator が更新され、ファイルシステムの作成を許可する前にファイルシステムデーモンの準備状況をチェックするようになりました。環境が準備完了になるまで、Web コンソールの Create file system ボタンが無効のままになり、条件を説明するツールヒントが表示されます。この変更により、作成中にファイルシステムが停止したように見えることがなくなります。(OCPNAS-184)
ユーザーインターフェイスからファイルシステムを削除できない
OpenShift Container Platform Web コンソールはファイルシステムの削除をサポートしていません。ファイルシステムを削除するには、OpenShift CLI (oc) を使用してください。(OCPNAS-217)

11.12.9.3. 既知の問題

コア Pod の削除時にファイルシステムの作成が失敗する場合がある

複数のコア Pod が同時に削除されると、ファイルシステムの作成が失敗する場合があります。ファイルシステムが LUN 上に部分的に作成される場合があります。その場合、次の永続的なエラーが発生します。

Disk <ID> may still belong to an active file system
Copy to Clipboard Toggle word wrap

回避策はありません。サポートが必要な場合は、IBM サポートにお問い合わせください。(OCPNAS-233)

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