42.5. サポートしている kdump の設定とダンプ出力先
42.5.1. kdump メモリー要件
kdump
でカーネルクラッシュのダンプをキャプチャーして分析のため保存するには、キャプチャーカーネル用にシステムメモリーの一部を永続的に予約しておく必要があります。予約されている場合、システムメモリーのこの部分はメインカーネルでは使用できません。
メモリー要件は、特定のシステムパラメーターによって異なります。主な要因は、システムのハードウェアアーキテクチャーです。正確なマシンアーキテクチャー (Intel 64 や AMD64 (x86_64) など) を調べ、それを標準出力に出力するには、以下のコマンドを使用します。
$ uname -m
kdump
に必要な予約メモリーの最小量 の表には、利用可能な最新バージョンで kdump
のメモリーサイズを自動的に予約するための最小メモリー要件が含まれています。システムのアーキテクチャーと利用可能な物理メモリーの合計に応じて、サイズが変更されます。
アーキテクチャー | 使用可能なメモリー | 最小予約メモリー |
---|---|---|
AMD64 と Intel 64 ( | 1 GB から 4 GB | 192 MB のメモリー |
4 GB から 64 GB | 256 MB のメモリー | |
64 GB 以上 | 512 MB のメモリー | |
64 ビット ARM アーキテクチャー ( | 2 GB 以上 | 480 MB のメモリー |
IBM Power Systems ( | 2 GB から 4 GB | 384 MB のメモリー |
4 GB から 16 GB | 512 MB のメモリー | |
16 GB から 64 GB | 1 GB のメモリー | |
64 GB から 128 GB | 2 GB のメモリー | |
128 GB 以上 | 4 GB のメモリー | |
IBM Z ( | 1 GB から 4 GB | 192 MB のメモリー |
4 GB から 64 GB | 256 MB のメモリー | |
64 GB 以上 | 512 MB のメモリー |
多くのシステムでは、kdump
は必要なメモリー量を予測して、自動的に予約できます。この動作はデフォルトで有効になっていますが、利用可能な合計メモリーサイズが一定以上搭載されているシステムに限られます。この自動割り当て動作に必要なメモリーサイズはシステムのアーキテクチャーによって異なります。
システムのメモリー合計量に基づく予約メモリーの自動設定は、ベストエフォート予測です。実際に必要なメモリーは、I/O デバイスなどの他の要素により異なる場合があります。メモリーが十分でない場合は、カーネルパニックが発生したときにデバッグカーネルがキャプチャーカーネルとして起動できなくなる可能性があります。この問題を回避するには、クラッシュカーネルメモリーを十分なサイズにします。
42.5.2. メモリー自動予約の最小しきい値
一部のシステムでは、ブートローダー設定ファイルで crashkernel=auto
パラメーターを使用するか、グラフィカル設定ユーティリティーでこのオプションを有効にすることで、kdump
用のメモリーを自動的に割り当てることができます。ただし、この自動予約が機能するには、合計メモリーの特定量のメモリーを利用できる必要があります。必要な容量は、システムのアーキテクチャーによって異なります。
次の表は、自動メモリー割り当てのしきい値のリストです。システムのメモリーが指定のしきい値よりも小さい場合は、メモリーを手動で設定する必要があります。
アーキテクチャー | 必要なメモリー |
---|---|
AMD64 と Intel 64 ( | 2 GB |
IBM Power Systems ( | 2 GB |
IBM Z ( | 4 GB |
42.5.3. サポートしている kdump のダンプ出力先
カーネルクラッシュがキャプチャされたら、vmcore ダンプファイルはデバイスに直接書き込むか、ローカルファイルシステム上でファイルとして保存されるか、ネットワークで送信されます。以下の表に、現在対応のダンプ出力先、または kdump
が明示的に対応していないダンプ出力先の完全なリストを示します。
タイプ | 対応しているダンプ出力先 | 対応していないダンプ出力先 |
---|---|---|
Raw デバイス | ローカルで添付されたすべての raw ディスクとパーティション | |
ローカルファイルシステム |
直接接続されているディスクドライブ、ハードウェア RAID 論理ドライブ、LVM デバイス、 |
|
リモートディレクトリー |
|
|
ハードウェアおよびソフトウェアイニシエーター上で |
| マルチパスベースのストレージ |
| ||
| ||
| ||
ワイヤレスネットワークインターフェイスを使用してアクセスするリモートディレクトリー |
fadump
(firmware assisted dump) を使用して vmcore を取得し、SSH プロトコルまたは NFS プロトコルを使用してリモートマシンに保存すると、ネットワークインターフェイスの名前が kdump-<interface-name>
に変更になります。名前変更は、<interface-name>
が *eth#
、net#
などのように一般的な場合に発生します。この問題は、初期 RAM ディスク (initrd
) の vmcore 取得スクリプトが、ネットワークインターフェイス名に接尾辞 kdump- を追加して、永続的な名前付けを保護するために発生します。同じ initrd
が通常の起動にも使用されるため、実稼働環境のカーネルのインターフェイス名も変更されます。
関連情報
42.5.4. 対応している kdump のフィルターレベル
ダンプファイルのサイズを縮小するために、kdump
は makedumpfile
コアコレクターを使用してデータを圧縮し、必要に応じて不要な情報を省略します。以下の表に、makedumpfile
ユーティリティーで現在対応しているフィルターレベルの完全なリストを示します。
オプション | 説明 |
---|---|
| ゼロページ |
| キャッシュページ |
| キャッシュプライベート |
| ユーザーページ |
| フリーページ |
makedumpfile
コマンドは、透過的な大規模ページおよび hugetlbfs ページの削除に対応しています。これらのタイプの hugepages User Page の両方を考えて、-8
レベルを使用して削除します。
関連情報
42.5.5. 対応しているデフォルトの障害応答
デフォルトでは、kdump
がコアダンプを作成できない場合、オペレーティングシステムが再起動します。ただし、コアダンプをプライマリーターゲットに保存できない場合は、kdump
が別の操作を実行するように設定できます。次の表は、現在対応しているすべてのデフォルトアクションのリストです。
オプション | 説明 |
---|---|
| root ファイルシステムにコアダンプの保存を試行します。ネットワーク上のダンプ出力先と併用する場合に特に便利なオプションです。ネットワーク上のダンプ出力先にアクセスできない場合、ローカルにコアダンプを保存するよう kdump の設定を行います。システムは、後で再起動します。 |
| システムを再起動します。コアダンプは失われます。 |
| システムを停止します。コアダンプは失われます。 |
| システムの電源を切ります。コアダンプは失われます。 |
| initramfs 内から shell セッションを実行して、ユーザーが手動でコアダンプを記録できるようにします。 |
|
|
関連情報
42.5.6. final_action パラメーターの使用
final_action
パラメーターを使用すると、kdump
の成功後、または、 shell
または dump_to_rootfs
を使用した無効な failure_response
メカニズムの完了時に、reboot
、halt
および poweroff
アクションなど、特定の操作を追加で使用できます。final_action
オプションを指定しない場合には、この値はデフォルトで reboot
になります。
手順
/etc/kdump.conf
ファイルを編集し、final_action
パラメーターを追加します。final_action <reboot | halt | poweroff>
kdump
サービスを再起動します。kdumpctl restart