第53章 Pacemaker クラスターのプロパティー


クラスターのプロパティーは、クラスター操作中に生じる可能性のある各状況でのクラスターの動作を制御します。

53.1. クラスタープロパティーおよびオプションの要約

以下の表には、Pacemaker クラスターのプロパティーのデフォルト値や、設定可能な値などをまとめています。

フェンス動作を決定するクラスタープロパティーがあります。これらのプロパティーの詳細は、フェンシングデバイスの一般的なプロパティー の表フェンスの動作を決定するクラスタープロパティーを参照してください。

注記

この表に記載しているプロパティー以外にも、クラスターソフトウェアで公開されるクラスタープロパティーがあります。このようなプロパティーでは、デフォルト値を別の値には変更しないことが推奨されます。

表53.1 クラスターのプロパティー
オプションデフォルト説明

batch-limit

0

クラスターを並列に実行できるリソースアクションの数。正しい値は、ネットワークおよびクラスターノードの速度と負荷によって異なります。デフォルト値の 0 は、任意のノードで CPU の負荷が高い場合に動的に制限を課すことを意味します。

migration-limit

-1 (無制限)

クラスターが、ノードで並行に実行することが許可されている移行ジョブの数。

no-quorum-policy

stop

クラスターにクォーラムがない場合のアクション。設定できる値は以下のとおりです。

* ignore - 全リソースの管理を続行する

* freeze - リソース管理は継続するが、影響を受けるパーティションに含まれないノードのリソースは復帰させない

* stop - 影響を受けるクラスターパーティション内の全リソースを停止する

* suicide - 影響を受けるクラスターパーティション内の全ノードをフェンスする

* demote - クラスターパーティションがクォーラムを失うと、プロモートされたリソースを降格し、その他のリソースを停止する

symmetric-cluster

true

リソースを、デフォルトで任意のノードで実行できるかどうかを示します。

cluster-delay

60s

(アクションの実行を除く) ネットワーク上のラウンドトリップ遅延です。正しい値は、ネットワークおよびクラスターノードの速度と負荷によって異なります。

dc-deadtime

20s

起動時に他のノードからの応答を待つ時間。正しい値は、ネットワークの速度と負荷、および使用するスイッチの種類によって異なります。

stop-orphan-resources

true

削除されたリソースを停止すべきかどうかを示します。

stop-orphan-actions

true

削除されたアクションをキャンセルするかどうかを示します。

start-failure-is-fatal

true

特定のノードでリソースの起動に失敗した場合に、そのノードで開始試行を行わないようにするかを示します。false に設定すると、クラスターは、同じノードで開始するかどうかを、リソースが失敗した回数と、移行しきい値により設定します。リソースに migration-threshold オプションを設定する方法は、リソースのメタオプションの設定 を参照してください。

start-failure-is-fatalfalse に設定すると、リソースを起動できない障害があるノードが、すべての依存アクションを遅らせる可能性があるというリスクが発生します。この理由により、start-failure-is-fatal のデフォルトは true となっています。start-failure-is-fatal=false を設定するリスクは、移行しきい値を低く設定することで軽減できます。これにより、何度も失敗してもその他のアクションを続行できます。

pe-error-series-max

-1 (すべて)

ERROR となるスケジューラー入力を保存する数。問題を報告する場合に使用されます。

pe-warn-series-max

-1 (すべて)

WARNING となるスケジューラー入力を保存する数。問題を報告する場合に使用されます。

pe-input-series-max

-1 (すべて)

normal となるスケジューラー入力を保存する数。問題を報告する場合に使用されます。

cluster-infrastructure

 

Pacemaker が現在実行しているメッセージングスタック。情報提供および診断目的に使用されます。ユーザーは設定できません。

dc-version

 

クラスターの DC (Designated Controller) で Pacemaker のバージョン。診断目的に使用され、ユーザーは設定できません。

cluster-recheck-interval

15 分

Pacemaker は基本的にイベント駆動型で、失敗によるタイムアウトやほとんどの時間ベースのルールについてクラスターを再確認するタイミングを予め把握します。Pacemaker は、このプロパティーで指定された非アクティブ期間の後にもクラスターを再確認します。このクラスターの再確認には 2 つの目的があります。date-spec のルールがこの頻繁で必ず確認されるようにすることと、一部のタイプのスケジューラーバグについてフェイルセーフとして機能することです。0 を値として指定すると、このポーリングが無効になります。正の値は時間間隔を示します。

maintenance-mode

false

メンテナンスモードでは、クラスターが干渉されないモードになり、指示されない限り、サービスを起動したり、停止したりしません。メンテナンスモードが完了すると、クラスターは、サービスの現在の状態のサニティーチェックを実行してから、これを必要とするサービスを停止するか、開始します。

shutdown-escalation

20min

正常にシャットダウンして終了を試みるのをやめる時間。高度な使用のみ。

stop-all-resources

false

クラスターがすべてのリソースを停止します。

enable-acl

false

クラスターが、pcs acl コマンドで設定したアクセス制御リストを使用できるかどうかを示します。

placement-strategy

default

クラスターノードでリソースの配置を決定する際に、クラスターが使用率属性を考慮にいれるかどうかと、どのように考慮するかを示します。

node-health-strategy

none

ヘルスリソースエージェントと組み合わせて使用し、Pacemaker がノードヘルスの変化にどのように応答するかを制御します。設定できる値は以下のとおりです。

* none - ノードヘルスを追跡しません。

* migrate-on-red - リソースは、エージェントが監視するローカルの状態に基づき、ノードのステータスが red であるとヘルスエージェントが判断したノードから移動されます。

* only-green - リソースは、エージェントが監視するローカルの状態に基づき、ノードのステータスが yellow または red であるとヘルスエージェントが判断したノードから移動されます。

* progressive, custom - ヘルス属性の内部数値に従って、ヘルス状態に対するクラスターの応答をよりきめ細かく制御できる高度なノードヘルスストラテジー。

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