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第13章 システム全体の暗号化ポリシーの使用

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システム全体の暗号化ポリシーは、コア暗号化サブシステムを設定するシステムコンポーネントで、TLS、IPsec、SSH、DNSSec、および Kerberos の各プロトコルに対応します。これにより、管理者が選択できる小規模セットのポリシーを提供します。

13.1. システム全体の暗号化ポリシー

システム全体のポリシーを設定すると、RHEL のアプリケーションはそのポリシーに従い、ポリシーを満たしていないアルゴリズムやプロトコルを使用するように明示的に要求されない限り、その使用を拒否します。つまり、システムが提供した設定で実行する際に、デフォルトのアプリケーションの挙動にポリシーを適用しますが、必要な場合は上書きできます。

RHEL 8 には、以下の定義済みポリシーが含まれています。

DEFAULT

デフォルトのシステム全体の暗号化ポリシーレベルで、現在の脅威モデルに対して安全なものです。TLS プロトコルの 1.2 と 1.3、IKEv2 プロトコル、および SSH2 プロトコルが使用できます。RSA 鍵と Diffie-Hellman パラメーターは長さが 2048 ビット以上であれば許容されます。

LEGACY

このポリシーは、Red Hat Enterprise Linux 5 以前のリリースとの互換性を最大化しますが、攻撃領域が大きくなるため脆弱になります。DEFAULT レベルでのアルゴリズムとプロトコルに加えて、TLS プロトコル 1.0 および 1.1 を許可します。アルゴリズム DSA、3DES、および RC4 が許可され、RSA 鍵と Diffie-Hellman パラメーターの長さが 1023 ビット以上であれば許容されます。

FUTURE

近い将来の攻撃に耐えられると考えられている保守的なセキュリティーレベルです。このレベルは、署名アルゴリズムに SHA-1 の使用を許可しません。TLS プロトコルの 1.2 と 1.3、IKEv2 プロトコル、および SSH2 プロトコルが使用できます。RSA 鍵と Diffie-Hellman パラメーターは、ビット長が 3072 以上だと許可されます。

FIPS

FIPS140-2 要件に準拠するポリシールールです。これは、fips-mode-setup ツールの内部で使用され、RHEL システムを FIPS モードに切り替えます。

Red Hat は常に、レガシーポリシーの使用時以外、全ライブラリーにセキュアなデフォルト値が提供されるように、全ポリシーレベルを調節します。レガシープロファイルではセキュアなデフォルト値が提供されませんが、簡単に悪用できるアルゴリズムは含まれません。このため、提供されたポリシーで有効なアルゴリズムのセットまたは許容可能な鍵サイズは、Red Hat Enterprise Linux の存続期間中に変更する可能性があります。

このような変更は、新しいセキュリティー標準や新しいセキュリティー調査を反映しています。Red Hat Enterprise Linux の有効期間中、特定のシステムとの相互運用性を確保する必要がある場合は、そのシステムと相互作用するコンポーネントの暗号化ポリシーから除外し、カスタムポリシーを使用して特定のアルゴリズムを再度有効にする必要があります。

重要

カスタマーポータル API の証明書が使用する暗号化鍵は FUTURE のシステム全体の暗号化ポリシーが定義する要件を満たさないので、現時点で redhat-support-tool ユーティリティーは、このポリシーレベルでは機能しません。

この問題を回避するには、カスタマーポータル API への接続中に DEFAULT 暗号化ポリシーを使用します。

注記

ポリシーレベルで許可されていると記載されている特定のアルゴリズムと暗号は、アプリケーションがそれに対応している場合に限り使用できます。

暗号化ポリシーを管理するツール

現在のシステム全体の暗号化ポリシーを表示または変更するには、update-crypto-policies ツールを使用します。以下に例を示します。

$ update-crypto-policies --show
DEFAULT
# update-crypto-policies --set FUTURE
Setting system policy to FUTURE

暗号化ポリシーの変更を確実に適用するには、システムを再起動します。

安全ではない暗号スイートおよびプロトコルを削除した、強力な暗号デフォルト

以下の一覧は、Red Hat Enterprise Linux 8 のコア暗号ライブラリーから削除された暗号スイートとプロトコルを示しています。このアプリケーションはソースには存在しないか、ビルド時にサポートを無効にしているため、アプリケーションは使用できません。

  • DES (RHEL 7 以降)
  • すべてのエクスポートグレードの暗号化スイート (RHEL 7 以降)
  • 署名内の MD5 (RHEL 7 以降)
  • SSLv2 (RHEL 7 以降)
  • SSLv3 (RHEL 8 以降)
  • 224 ビットより小さいすべての ECC 曲線 (RHEL 6 以降)
  • すべてのバイナリーフィールドの ECC 曲線 (RHEL 6 以降)

すべてのポリシーレベルで無効になっている暗号スイートおよびプロトコル

以下の暗号スイートおよびプロトコルは、すべての暗号化ポリシーレベルで無効になっています。これは、各アプリケーションで明示的に有効にした場合に限り利用可能にできます。

  • パラメーターが 1024 ビットより小さい DH
  • 鍵のサイズが 1024 ビットより小さい RSA
  • Camellia
  • ARIA
  • SEED
  • IDEA
  • 完全性のみの暗号スイート
  • SHA-384 HMAC を使用した TLS CBC モード暗号化スイート
  • AES-CCM8
  • TLS 1.3 と互換性がないすべての ECC 曲線 (secp256k1 を含む)
  • IKEv1 (RHEL 8 以降)

暗号ポリシーレベルで有効な暗号スイートおよびプロトコル

次の表は、暗号ポリシーの各レベルで有効な暗号化スイートおよびプロトコルを示しています。

 LEGACYDEFAULTFIPSFUTURE

IKEv1

いいえ

いいえ

いいえ

いいえ

3DES

はい

いいえ

いいえ

いいえ

RC4

はい

いいえ

いいえ

いいえ

DH

最低 1024 ビット

最低 2048 ビット

最低 2048 ビット

最低 3072 ビット

RSA

最低 1024 ビット

最低 2048 ビット

最低 2048 ビット

最低 3072 ビット

DSA

はい

いいえ

いいえ

いいえ

TLS v1.0

はい

いいえ

いいえ

いいえ

TLS v1.1

はい

いいえ

いいえ

いいえ

デジタル署名における SHA-1

はい

はい

いいえ

いいえ

CBC モード暗号

はい

はい

はい

任意[a]

256 ビットより小さい鍵を持つ対称暗号

はい

はい

はい

いいえ

証明書における SHA-1 および SHA-224 の署名

はい

はい

はい

いいえ

[a] TLS の CBC 暗号が無効になっています。TLS 以外のシナリオでは、AES-128-CBC は無効になっていますが、AES-256-CBC が有効になります。AES-256-CBC も無効にするには、カスタムのサブポリシーを適用します。

関連情報

  • update-crypto-policies(8) の man ページ
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