10.5. キックスタートインストールの開始
キックスタートインストールは、複数の方法で開始できます。
- 自動的に PXE ブートで起動オプションを編集することもできます。
- 特定の名前を持つボリュームに、自動的にファイルを提供することもできます。
Red Hat コンテンツ配信ネットワーク (CDN) を使用すると、RHEL を登録できます。CDN は地理的に分散された一連の Web サーバーです。これらのサーバーは、たとえば、有効なサブスクリプションを持つ RHEL ホストにパッケージや更新を提供します。
インストール中に、CDN から RHEL を登録してインストールすると、次のような利点があります。
- インストール後すぐに最新のシステムで最新のパッケージを利用できます。
- Red Hat Insights に接続し、システムの目的を有効にするための統合サポートを利用できます。
10.5.1. PXE を使用した自動キックスタートインストールの開始
AMD64、Intel 64、および 64 ビット ARM システム、ならびに IBM Power Systems サーバーでは、PXE サーバーを使用して起動する機能があります。PXE サーバーの設定時に、ブートローダー設定ファイルに起動オプションを追加できます。これにより、インストールを自動的に開始できるようになります。このアプローチにより、ブートプロセスを含めたインストールを完全に自動化できるようになります。
この手順は一般的な参考資料として提供されています。詳細な手順はシステムのアーキテクチャーによって異なります。すべてのオプションが、すべてのアーキテクチャーで使用できるわけではありません (たとえば、64 ビットの IBM Z で PXE ブートを使用することはできません)。
前提条件
- インストールするシステムからアクセスできる場所に、キックスタートファイルを用意しておきます。
- システムを起動してインストールを開始するために使用できる PXE サーバーが用意されています。
手順
PXE サーバー上でブートローダー設定ファイルを開き、
inst.ks=
起動オプションを適切な行に追加します。ファイル名と構文は、システムのアーキテクチャーおよびハードウェアにより異なります。BIOS が搭載される AMD64 システムおよび Intel 64 システムのファイル名は、デフォルトまたはシステムの IP アドレスをベースにしたもののいずれかになります。このケースでは、インストールエントリーにある append 行に、
inst.ks=
オプションを追加します。設定ファイルの append 行は以下のようになります。append initrd=initrd.img inst.ks=http://10.32.5.1/mnt/archive/RHEL-8/8.x/x86_64/kickstarts/ks.cfg
GRUB ブートローダーを使用するシステム (UEFI ファームウェアを搭載した AMD64、Intel 64、64 ビット ARM システム、および IBM Power Systems サーバー) では、ファイル名は
grub.cfg
です。このファイルのインストールエントリーに含まれる kernel 行に、inst.ks=
オプションを追加します。設定ファイルの kernel 行の例を以下に示します。kernel vmlinuz inst.ks=http://10.32.5.1/mnt/archive/RHEL-8/8.x/x86_64/kickstarts/ks.cfg
ネットワークサーバーからインストールを起動します。
これでキックスタートファイルで指定されているインストールオプションを使用したインストールが開始します。キックスタートファイルに問題がなく、必要なコマンドがすべて含まれていれば、インストールは完全に自動で行われます。
UEFI セキュアブートが有効になっているシステムに、Red Hat Enterprise Linux ベータ版リリースをインストールした場合は、システムの Machine Owner Key (MOK) リストにベータ版の公開鍵を追加します。
関連情報
- PXE サーバーの設定は、PXE インストールソースの準備 を参照してください。
10.5.2. ローカルボリュームを使用した自動キックスタートインストールの開始
特別にラベルが追加されたストレージボリュームで、特定の名前が付いたキックスタートファイルを置くことで、キックスタートインストールを開始できます。
前提条件
-
ラベル
OEMDRV
で準備されたボリューム、およびそのルートにks.cfg
として存在するキックスタートファイルがあります。 - このボリュームを含むドライブは、インストールプログラムの起動時にシステムで使用できます。
手順
- ローカルメディア (CD、DVD、USB フラッシュドライブなど) を使用してシステムを起動します。
起動プロンプトで、必要な起動オプションを指定します。
-
必要なリポジトリーがネットワーク上にある場合は、
ip=
オプションを使用したネットワークの設定が必要になる場合があります。インストーラーは、このオプションを使用せずに、デフォルトで DHCP プロトコルを使用するすべてのネットワークデバイスを設定しようとします。 必要なパッケージがインストールされるソフトウェアソースにアクセスするには
inst.repo=
オプションを追加しないといけない場合があります。このオプションを指定しないと、キックスタートファイルでインストールソースを指定する必要があります。インストールソースの詳細は、インストールプログラムの設定とフロー制御のためのキックスタートコマンド を参照してください。
-
必要なリポジトリーがネットワーク上にある場合は、
追加した起動オプションを確認してインストールを開始します。
インストールが開始し、キックスタートファイルが自動的に検出され、自動化されたキックスタートインストールを開始します。
UEFI セキュアブートが有効になっているシステムに、Red Hat Enterprise Linux ベータ版リリースをインストールした場合は、システムの Machine Owner Key (MOK) リストにベータ版の公開鍵を追加します。UEFI セキュアブートおよび Red Hat Enterprise Linux ベータ版リリースの詳細は、UEFI セキュアブートとベータ版リリースの要件 を参照してください。
10.5.3. IBM Z でインストールを起動して LPAR に RHEL をインストールする
10.5.3.1. SFTP、FTPS、または FTP サーバーから RHEL インストールを起動して IBM Z LPAR にインストールする
SFTP、FTPS、または FTP サーバーを使用して、RHEL を LPAR にインストールできます。
手順
- LPAR に新しいオペレーティングシステムをインストールできる十分な権限を持つユーザーとして、IBM Z Hardware Management Console (HMC) または Support Element (SE) にログインします。
- Systems タブで、作業するメインフレームを選択し、Partitions タブで、インストールする LPAR を選択します。
- 画面下部の Daily の下にある Operating System Messages を探します。Operating System Messages をダブルクリックして、Linux の起動メッセージが表示されるテキストコンソールを表示します。
- Load from Removable Media or Server をダブルクリックします。
次のダイアログボックスで、SFTP/FTPS/FTP Server を選択し、次の情報を入力します。
- Host Computer - インストール元となる FTP サーバーのホスト名または IP アドレス (ftp.redhat.com など) です。
- User ID - FTP サーバーのユーザー名または、anonymous を指定します。
- Password - パスワード匿名でログインする場合は、メールアドレスを使用します。
- File location (optional) - Red Hat Enterprise Linux for IBM Z を保持している FTP サーバー上のディレクトリー (例 :/rhel/s390x/)。
- Continue をクリックします。
- 続いて表示されるダイアログボックスで、generic.ins のデフォルト選択はそのままにして、Continue をクリックします。
10.5.3.2. 準備した DASD から RHEL インストールを起動して IBM Z LPAR にインストールする
すでに準備されている DASD を使用して LPAR に Red Hat Enterprise Linux をインストールする場合は、この手順を使用します。
手順
- LPAR に新しいオペレーティングシステムをインストールできる十分な権限を持つユーザーとして、IBM Z Hardware Management Console (HMC) または Support Element (SE) にログインします。
- Systems タブで、作業するメインフレームを選択し、Partitions タブで、インストールする LPAR を選択します。
- 画面下部の Daily の下にある Operating System Messages を探します。Operating System Messages をダブルクリックして、Linux の起動メッセージが表示されるテキストコンソールを表示します。
- Load をダブルクリックします。
- 続いて表示されるダイアログボックスの Load type で Normal を選択します。
- Load address に、DASD のデバイス番号を入力します。
- OK ボタンをクリックします。
10.5.3.3. FCP で接続された SCSI ディスクから RHEL インストールを起動して IBM Z LPAR にインストールする
すでに準備されている FCP 接続 SCSI ディスクを使用して Red Hat Enterprise Linux を LPAR にインストールする場合は、この手順を使用します。
手順
- LPAR に新しいオペレーティングシステムをインストールできる十分な権限を持つユーザーとして、IBM Z Hardware Management Console (HMC) または Support Element (SE) にログインします。
- Systems タブで、作業するメインフレームを選択し、Partitions タブで、インストールする LPAR を選択します。
- 画面下部の Daily の下にある Operating System Messages を探します。Operating System Messages をダブルクリックして、Linux の起動メッセージが表示されるテキストコンソールを表示します。
- Load をダブルクリックします。
- 続いて表示されるダイアログボックスの Load typeで SCSI を選択します。
- Load address (ロードアドレス) には、SCSI ディスクに接続している FCP チャネルのデバイス番号を入力します。
- World wide port name には、ディスクを含むストレージシステムの WWPN の 16 進数を入力します。
- Logical unit number には、ディスクの LUN を、16 桁の 16 進数で入力します。
- Boot record logical block address は 0 のままにしておきます。また、Operating system specific load parameters は空のままにしておきます。
- OK ボタンをクリックします。
10.5.3.4. FCP 接続 SCSI DVD ドライブから RHEL インストールを起動して IBM Z LPAR にインストールする
これには、FCP-SCSI ブリッジに接続された SCSI DVD ドライブが必要であり、そのブリッジは IBM Z マシンの FCP アダプターに接続されます。FCP アダプターを設定し、LPAR で利用可能にしておく必要があります。
手順
- LPAR に新しいオペレーティングシステムをインストールできる十分な権限を持つユーザーとして、IBM Z Hardware Management Console (HMC) または Support Element (SE) にログインします。
- [システム] タブで、操作するメインフレームを選択し、[パーティション] タブでインストールする LPAR を選択します。
- 画面下部の Daily の下にある Operating System Messages を探します。Operating System Messages をダブルクリックして、Linux の起動メッセージが表示されるテキストコンソールを表示します。
- DVD ドライブに Red Hat Enterprise Linux for 64-bit IBM Z DVD を挿入します。
- Load をダブルクリックします。
- 続いて表示されるダイアログボックスの Load typeで SCSI を選択します。
- Load address (ロードアドレス)には、FCP-to-SCSI ブリッジに接続している FCP チャネルのデバイス番号を入力します。
- World wide port name には、FCP-to-SCSI ブリッジの WWPN の 16 進数を入力します。
- Logical unit number (論理ユニット番号) には、DVD ドライブの LUN の 16 進数を入力します。
- ブートプログラムセレクター として番号 1 を入力し、Red Hat Enterprise Linux for 64 ビット IBM Z DVD 上のブートエントリーを選択します。
- Boot record logical block address は 0 のままにしておきます。また、Operating system specific load parameters は空のままにしておきます。
- OK ボタンをクリックします。
10.5.4. IBM Z でインストールを起動して z/VM に RHEL をインストールする
z/VM 環境にインストールする場合は、以下から起動できます。
- z/VM 仮想リーダー
- DASD または FCP 接続の SCSI ディスク (zipl ブートローダーを設定済み)
- FCP 接続の SCSI DVD ドライブ
10.5.4.1. z/VM Reader を使用して RHEL インストールを起動する
z/VM リーダーから起動できます。
手順
必要に応じて、z/VM の TCP/IP ツールを含むデバイスを CMS ディスクのリストに追加します。以下に例を示します。
cp link tcpmaint 592 592
acc 592 fm
fm を
FILEMODE
文字で置き換えます。FTPS サーバーに接続するために、次のように実行します。
ftp <host> (secure
host
は、ブートイメージ (kernel.img
およびinitrd.img
) をホストする FTP サーバーのホスト名または IP アドレスです。ログインして以下のコマンドを実行します。既存の
kernel.img
ファイル、initrd.img
ファイル、generic.prm
ファイル、またはredhat.exec
ファイルを上書きしている場合は、(repl
オプションを使用します。cd /location/of/install-tree/images/
ascii
get generic.prm (repl
get redhat.exec (repl
locsite fix 80
binary
get kernel.img (repl
get initrd.img (repl
quit
オプション: CMS コマンド
filelist を
使用して受信したファイルとその形式を表示し、ファイルが正しく転送されたかどうかを確認します。kernel.img
とinitrd.img
では、Format 列の固定レコード長の形式が F と示され、Lrecl 列のレコード長が 80 であることが重要です。以下に例を示します。VMUSER FILELIST A0 V 169 Trunc=169 Size=6 Line=1 Col=1 Alt=0 Cmd Filename Filetype Fm Format Lrecl Records Blocks Date Time REDHAT EXEC B1 V 22 1 1 4/15/10 9:30:40 GENERIC PRM B1 V 44 1 1 4/15/10 9:30:32 INITRD IMG B1 F 80 118545 2316 4/15/10 9:30:25 KERNEL IMG B1 F 80 74541 912 4/15/10 9:30:17
PF3 を押して filelist を終了し、CMS プロンプトに戻ります。
必要に応じて、
generic.prm
内の起動パラメーターをカスタマイズします。詳細は、ブートパラメーターのカスタマイズ を参照してください。CMS 設定ファイルを使用して、ストレージデバイスおよびネットワークデバイスを設定する方法もあります。そのような場合は、
CMSDASD=
パラメーターおよびCMSCONFFILE=
パラメーターをgeneric.prm
に追加します。最後に、REXX スクリプト redhat.exec を実行してインストールプログラムを起動します。
redhat
10.5.4.2. 準備した DASD を使用して RHEL インストールを起動する
設定済み DASD を使用するには、以下の手順を実行します。
手順
準備済みの DASD から起動して、Red Hat Enterprise Linux インストールプログラムを参照する zipl ブートメニューエントリーを選択します。コマンドを次の形式で使用します。
cp ipl DASD_device_number loadparm boot_entry_number
DASD_device_number を、起動デバイスのデバイス番号に置き換え、boot_entry_number を、このデバイスの zipl 設定メニューに置き換えます。以下に例を示します。
cp ipl eb1c loadparm 0
10.5.4.3. FCP で接続された準備済みの SCSI ディスクを使用して RHEL インストールを起動する
FCP で接続された準備済みの SCSI ディスクから起動するには、次の手順を実行します。
手順
FCP ストレージエリアネットワーク内に準備した SCSI ディスクにアクセスできるように z/VM の SCSI ブートローダーを設定します。Red Hat Enterprise Linux インストールプログラムを参照する設定済み zipl ブートメニューエントリーを選択します。コマンドを次の形式で使用します。
cp set loaddev portname WWPN lun LUN bootprog boot_entry_number
WWPN を、ストレージシステムのワールドワイドポート名に置き換え、LUN を、ディスクの論理ユニット番号に置き換えます。16 桁の 16 進数は、それぞれ 8 桁の 2 つのペアに分割する必要があります。以下に例を示します。
cp set loaddev portname 50050763 050b073d lun 40204011 00000000 bootprog 0
オプション: 次のコマンドで設定を確認します。
query loaddev
以下のコマンドを使用して、ディスクを含むストレージシステムに接続している FCP デバイスを起動します。
cp ipl FCP_device
以下に例を示します。
cp ipl fc00
10.5.4.4. FCP 接続 SCSI DVD ドライブを使用して RHEL インストールを起動する
以下の手順に従って、設定済み FCP を接続した SCSI DVD ドライブを使用します。
前提条件
- SCSI DVD ドライブを FCP-to-SCSI ブリッジに接続し、このブリッジを 64 ビットの IBM Z の FCP アダプターに接続する必要があります。FCP アダプターを設定して z/VM 環境で使用できるようにしておきます。
手順
- DVD ドライブに Red Hat Enterprise Linux for 64-bit IBM Z DVD を挿入します。
FCP Storage Area Network の DVD ドライブにアクセスできるように z/VM の SCSI ブートローダーを設定し、Red Hat Enterprise Linux for 64-bit IBM Z DVD のブートエントリーに
1
を指定します。コマンドを次の形式で使用します。cp set loaddev portname WWPN lun FCP_LUN bootprog 1
WWPN は、FCP-to-SCSI ブリッジの WWPN に、FCP_LUN は、DVD ドライブの LUN に置き換えます。16 桁の 16 進数は、それぞれ 8 桁の 2 つのペアに分割する必要があります。以下に例を示します。
cp set loaddev portname 20010060 eb1c0103 lun 00010000 00000000 bootprog 1
オプション: 次のコマンドで設定を確認します。
cp query loaddev
FCP-to-SCSI ブリッジに接続している FCP デバイスで IPL を行います。
cp ipl FCP_device
以下に例を示します。
cp ipl fc00
10.5.5. インストール中のコンソールとロギング
Red Hat Enterprise Linux インストーラーは、tmux 端末マルチプレクサーを使用して、メインのインターフェイスのほかに複数の画面を表示し、制御します。この画面は、それぞれ目的が異なり、インストールプロセス中に発生した問題をトラブルシューティングするのに使用できるさまざまなログを表示します。画面の 1 つでは、起動オプションまたはキックスタートコマンドを使用して明示的に無効にしない限り、root
権限で使用できる対話式シェルプロンプトを使用できます。
端末マルチプレクサーは、仮想コンソール 1 で実行しています。インストール環境を、tmux に変更する場合は、Ctrl+Alt+F1 を押します。仮想コンソール 6 で実行されているメインのインストールインターフェイスに戻るには、Ctrl+Alt+F6 を押します。テキストモードでインストールする場合は、仮想コンソール 1 (tmux) で起動し、コンソール 6 に切り替えると、グラフィカルインターフェイスではなくシェルプロンプトが開きます。
tmux を実行しているコンソールには、利用可能な画面が 5 つあります。その内容と、キーボードショートカットは、以下の表で説明します。キーボードショートカットは 2 段階となっており、最初に Ctrl+b を押し、両方のキーを離してから、使用する画面で数字キーを押す必要があります。
また、Ctrl+b n、Alt+ Tab、および Ctrl+b p を使用して、次または前の tmux 画面に切り替えることもできます。
ショートカット | 内容 |
---|---|
Ctrl+b 1 | メインのインストールプログラム画面。テキストベースのプロンプト (テキストモードのインストール中もしくは VNC Direct モードを使用の場合) とデバッグ情報があります。 |
Ctrl+b 2 |
|
Ctrl+b 3 |
インストールログ: |
Ctrl+b 4 |
ストレージログ - |
Ctrl+b 5 |
プログラムログ - |