第8章 キックスタートを使用した自動インストールの実行
8.1. キックスタートインストールの基礎
以下は、キックスタートの基本情報と、それを使用して Red Hat Enterprise Linux のインストールを自動化する方法を説明します。
8.1.1. キックスタートを使用したインストールの概要
キックスタートは、RHEL インストールプロセスを部分的または完全に自動化する方法を提供します。
キックスタートファイルには、RHEL インストールオプションの一部またはすべてが含まれます。たとえば、タイムゾーン、ドライブのパーティション設定方法、インストールするパッケージなどです。事前に準備したキックスタートファイルを使用すると、ユーザーによる操作を必要としないインストールが可能になります。これは、Red Hat Enterprise Linux を多数のシステムに一度にデプロイする場合などに特に便利です。
キックスタートファイルによりソフトウェア選択の幅を広げることができます。グラフィカルインストールインターフェイスで Red Hat Enterprise Linux を手動でインストールする場合、ソフトウェアの選択は事前定義されている環境とアドオンの選択に限られます。キックスタートファイルを使用すると、パッケージを個別にインストールしたり、除外したりできます。
キックスタートファイルを 1 つのサーバーに置くことで、インストール時に各コンピューターが読み込むことができます。この方法を使用すると、1 つのキックスタートファイルで複数のマシンに Red Hat Enterprise Linux をインストールできるため、ネットワークおよびシステム管理者には理想的な方法になります。
キックスタートスクリプトおよびそのスクリプトの実行により生成されるログファイルは、インストール問題のデバッグの手助けとなるよう、新たにインストールしたシステムの /tmp
ディレクトリーにすべて保存されます。インストールに使用されるキックスタートおよび Anaconda が生成した出力キックスタートは、ターゲットシステムの /root
に保存され、キックスタートスクリプトレット実行のログは /var/log/anaconda
に保存されます。
キックスタートは、Red Hat Enterprise Linux の以前のバージョンではシステムをアップグレードするのに使用できました。Red Hat Enterprise Linux 7 以降では、この機能は削除されており、システムのアップグレードではなく、特殊なツールにより処理されます。Red Hat Enterprise Linux 8 へのアップグレードの詳細は、Upgrading from RHEL 7 to RHEL 8 および Considerations in adopting RHEL を参照してください。
8.1.2. 自動インストールのワークフロー
キックスタートを使用したインストールは、ローカルの DVD またはハードドライブを使用するか、NFS、FTP、HTTP、または HTTPS で実行できます。本セクションでは、キックスタートの使用方法の概要を説明します。
- キックスタートファイルを作成します。手動で作成したり、手動インストール後に保存したキックファイルファイルをコピーしたり、オンライン生成ツールを使用してファイルを作成したりして、後で編集したりできます。Creating Kickstart files を参照してください。
- リムーバブルメディア、ハードドライブ、ならびに HTTP (S) サーバー、FTP サーバー、または NFS サーバーに置いたインストールプログラムでキックスタートファイルを使用できるようにしてある。Making Kickstart files available to the installation program を参照してください。
- インストール開始に使用する起動用メディアを作成します。起動可能なインストールメディアの作成 および PXE によるネットワークからのインストールの準備 を参照してください。
- インストールソースをインストールプログラムに利用できるようにします。Creating installation sources for Kickstart installations を参照してください。
- ブートメディアおよびキックスタートファイルを使用して、インストールを開始します。Starting Kickstart installations を参照してください。
これは、キックスタートファイルが必須のコマンドおよびセクションをすべて含む場合に、インストールが自動的に行われます。必須部分が 1 つ以上欠けている場合、またはエラーが発生した場合は、インストールを手動で行う必要があります。
UEFI セキュアブートが有効になっているシステムに Red Hat Enterprise Linux のベータ版リリースをインストールする予定がある場合は、UEFI セキュアブートオプションを無効にしてから、インストールを開始します。
UEFI セキュアブートでは、オペレーティングシステムのカーネルが、対応する公開鍵を使用してシステムのファームウェアが検証する、認識済みの秘密鍵で署名されている必要があります。Red Hat Enterprise Linux ベータ版リリースの場合には、カーネルは Red Hat ベータ版固有の秘密鍵で署名されていますが、この秘密鍵はデフォルトではシステムで認識できません。その結果、システムはインストールメディアの起動に失敗します。