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53.3. フェンスデバイスの一般的なプロパティー

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フェンスデバイスにも設定可能な一般的なプロパティーや、フェンスの動作を決定するさまざまなクラスタープロパティーがあります。

クラスターノードは、フェンスリソースが開始しているかどうかに関わらず、フェンスデバイスでその他のクラスターノードをフェンスできます。以下の例外を除き、リソースが開始しているかどうかは、デバイスの定期的なモニターのみを制御するものとなり、使用可能かどうかは制御しません。

  • フェンスデバイスは、pcs stonith disable stonith_id コマンドを実行して無効にできます。これにより、ノードがそのデバイスを使用できないように設定できます。
  • 特定のノードがフェンスデバイスを使用できないようにするには、pcs constraint location …​ avoids コマンドで、フェンスリソースの場所制約を設定できます。
  • stonith-enabled=false を設定すると、フェンシングがすべて無効になります。ただし、実稼働環境でフェンシングを無効にすることは適していないため、フェンシングが無効になっている場合は、Red Hat ではクラスターがサポートされないことに注意してください。

以下の表は、フェンスデバイスに設定できる一般的なプロパティーを説明します。

表53.1 フェンスデバイスの一般的なプロパティー
フィールドタイプデフォルト説明

pcmk_host_map

文字列

 

ホスト名を、ホスト名に対応していないデバイスのポート番号へマッピングします。たとえば、node1:1;node2:2,3 の場合は、node1 にはポート 1 を使用し、node2 にはポート 2 と 3 を使用するようにクラスターに指示します。RHEL 8.7 以降、pcmk_host_map プロパティーは、値の前にバックスラッシュを使用して pcmk_host_map 値内の特殊文字をサポートします。たとえば、pcmk_host_map="node3:plug\ 1" を指定して、ホストエイリアスにスペースを含めることができます。

pcmk_host_list

文字列

 

このデバイスで制御するマシンのリストです (pcmk_host_check=static-list 以外は任意)。

pcmk_host_check

文字列

* pcmk_host_list または pcmk_host_map が設定されている場合は static-list

* それが設定されておらず、フェンスデバイスが list アクションに対応する場合は dynamic-list になります。

* それ以外で、フェンスデバイスが status アクションに対応している場合は status になります。

* それ以外は、none になります。

デバイスで制御するマシンを指定します。使用できる値は、dynamic-list (デバイスへの問い合わせ)、static-list (pcmk_host_list 属性の確認)、なし (すべてのデバイスで全マシンのフェンスが可能と見なされる) です。

以下の表では、フェンスデバイスに設定できるその他のプロパティーをまとめています。これらのオプションは高度な設定を行う場合にのみ使用されます。

表53.2 フェンスデバイスの高度なプロパティー
フィールドタイプデフォルト説明

pcmk_host_argument

文字列

port

port の代替パラメーターです。デバイスによっては、標準の port パラメーターに対応していない場合や、そのデバイス固有のパラメーターも提供している場合があります。このパラメーターを使用して、デバイス固有の代替パラメーターを指定します。これは、フェンシングするマシンを示します。クラスターが追加パラメーターを提供しないようにする場合は、none 値を使用します。

pcmk_reboot_action

文字列

reboot

reboot の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このパラメーターを使用して、再起動を実行するデバイス固有の代替コマンドを指定します。

pcmk_reboot_timeout

時間

60s

stonith-timeout の代替コマンドで、再起動にタイムアウトを指定します。再起動が完了するまでに通常より長い時間を要するデバイスもあれば、通常より短い時間で完了するデバイスもあります。このパラメーターを使用して、再起動にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_reboot_retries

整数

2

タイムアウト期間内に、reboot コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が失敗する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker による再起動の動作の再試行回数を変更する場合に使用します。

pcmk_off_action

文字列

off

off の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このような場合は、このパラメーターを使用して、オフ操作を実行するデバイス固有のコマンドを指定します。

pcmk_off_timeout

時間

60s

stonith-timeout の代替コマンドで、オフ操作にタイムアウトを指定します。デバイスによって、この操作が完了するのにかかる時間が、通常と大きく異なる場合があります。このパラメーターを使用して、オフ操作にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_off_retries

整数

2

タイムアウト期間内に、off コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が失敗する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker によるオフ動作の再試行回数を変更する場合に使用します。

pcmk_list_action

文字列

list

list の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このような場合は、このパラメーターを使用して、list 操作を実行するデバイス固有のコマンドを指定します。

pcmk_list_timeout

時間

60s

list 操作にタイムアウトを指定します。デバイスによって、この操作が完了するのにかかる時間が、通常と大きく異なる場合があります。このパラメーターを使用して、list 操作にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_list_retries

整数

2

タイムアウト期間内に、list コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が失敗する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker による list 動作の再試行回数を変更する場合に使用します。

pcmk_monitor_action

文字列

monitor

monitor の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このような場合は、このパラメーターを使用して、監視操作を実行するデバイス固有のコマンドを指定します。

pcmk_monitor_timeout

時間

60s

stonith-timeout の代替コマンドで、監視にタイムアウトを指定します。デバイスによって、この操作が完了するのにかかる時間が、通常と大きく異なる場合があります。このパラメーターを使用して、監視操作にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_monitor_retries

整数

2

タイムアウト期間内に、monitor コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が失敗する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker による監視操作の再試行回数を変更する場合に使用します。

pcmk_status_action

文字列

status

status の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このような場合は、このパラメーターを使用して、status 操作を実行するデバイス固有のコマンドを指定します。

pcmk_status_timeout

時間

60s

stonith-timeout の代替コマンドで、status 操作にタイムアウトを指定します。デバイスによって、この操作が完了するのにかかる時間が、通常と大きく異なる場合があります。このパラメーターを使用して、status 操作にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_status_retries

整数

2

タイムアウト期間内に、status コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が失敗する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker による status 動作の再試行回数を変更する場合に使用します。

pcmk_delay_base

文字列

0s

stonith 操作のベース遅延を有効にし、ベース遅延の値を指定します。ノードの数が偶数になるクラスターでは、遅延を設定すると、均等の分割時に同時にノードが互いにフェンシングするのを回避できます。ランダムな遅延は、すべてのノードに同じフェンスデバイスが使用されている場合に役に立つことがあります。また、静的遅延を変更すると、各ノードで異なるデバイスが使用される場合に各フェンシングデバイスで役に立つことがあります。全体の遅延は、合計が最大遅延を下回るように、ランダムな遅延値に静的遅延を加算します。pcmk_delay_base を設定し、pcmk_delay_max を設定しない場合は、遅延にランダムなコンポーネントはなく、pcmk_delay_base の値となります。

Red Hat Enterprise Linux 8.6 では、pcmk_delay_base パラメーターを使用して、ノードごとに異なる値を指定できます。これにより、ノードごとに異なる遅延を使用して、単一のフェンスデバイスを 2 ノードクラスターで使用できます。これは、各ノードが同時に他のノードをフェンスしようとする状況を防ぐのに役立ちます。ノードごとに異なる値を指定するには、pcmk_host_map と同様の構文を使用して、ホスト名をそのノードの遅延値にマップします。たとえば、node1:0;node2:10s は、node1 をフェンシングするときに遅延を使用せず、node2 をフェンシングするときに 10 秒の遅延を使用します。

各フェンスエージェントには delay パラメーターが実装されています。これは、pcmk_delay_* プロパティーで設定された遅延の影響は受けません。この遅延の両方が設定されている場合は、その両方が一緒に追加されるため、通常は併用されません。

pcmk_delay_max

時間

0s

stonith 動作のランダムな遅延を有効にし、ランダムな遅延の最大値を指定します。ノードの数が偶数になるクラスターでは、遅延を設定すると、均等の分割時に同時にノードが互いにフェンシングするのを回避できます。ランダムな遅延は、すべてのノードに同じフェンスデバイスが使用されている場合に役に立つことがあります。また、静的遅延を変更すると、各ノードで異なるデバイスが使用される場合に各フェンシングデバイスで役に立つことがあります。全体の遅延は、合計が最大遅延を下回るように、このランダムな遅延値に静的遅延を加算します。pcmk_delay_max を設定し、pcmk_delay_base を設定しない場合は、静的なコンポーネントが遅延に含まれません。

各フェンスエージェントには delay パラメーターが実装されています。これは、pcmk_delay_* プロパティーで設定された遅延の影響は受けません。この遅延の両方が設定されている場合は、その両方が一緒に追加されるため、通常は併用されません。

pcmk_action_limit

整数

1

このデバイスで並行して実行できる操作の上限です。最初に、クラスタープロパティーの concurrent-fencing=true を設定する必要があります (これは、RHEL 8.1 以降のデフォルト値です)。値を -1 にすると無制限になります。

pcmk_on_action

文字列

on

高度な使用のみon の代替コマンドです。標準的なコマンドに対応していないデバイスや、別のコマンドを提供しているデバイスがあります。このような場合は、このパラメーターを使用して、on 操作を実行するデバイス固有のコマンドを指定します。

pcmk_on_timeout

時間

60s

高度な使用のみstonith-timeout の代替コマンドで、on 操作にタイムアウトを指定します。デバイスによって、この操作が完了するのにかかる時間が、通常と大きく異なる場合があります。このパラメーターを使用して、on 操作にデバイス固有のタイムアウトを指定します。

pcmk_on_retries

整数

2

高度な使用のみタイムアウト期間内に、on コマンドを再試行する回数の上限です。複数の接続に対応していないデバイスもあります。デバイスが別のタスクでビジー状態になると操作が 失敗 する場合があるため、タイムアウトに達していなければ、Pacemaker が操作を自動的に再試行します。Pacemaker による on 動作の再試行回数を変更する場合に使用します。

個々のフェンスデバイスに設定できるプロパティーのほかにも、以下の表で説明しているように、フェンス動作を判断するクラスタープロパティーも設定できます。

表53.3 フェンスの動作を決定するクラスタープロパティー
オプションデフォルト説明

stonith-enabled

true

障害が発生したノードと、停止できないリソースが含まれるノードをフェンスする必要があることを示します。データを保護するには、true に設定する必要があります。

true または未設定の場合は、STONITH リソースが設定されていない限り、クラスターによりリソースの起動が拒否されます。

Red Hat は、この値が true に設定されたクラスターのみをサポートします。

stonith-action

reboot

STONITH デバイスに送るアクション。使用できる値は rebootoff です。poweroff 値も使用できますが、レガシーデバイスでのみ使用されます。

stonith-timeout

60s

STONITH アクションが完了するのを待つ時間。

stonith-max-attempts

10

クラスターがすぐに再起動できなくなるまで、ターゲットでフェンシングが失敗する回数。

stonith-watchdog-timeout

 

ノードがハードウェアウォッチドッグによって強制終了すまで待機する最大時間。この値は、ハードウェアウォッチドッグのタイムアウト値の倍に設定することが推奨されます。このオプションは、ウォッチドッグのみの SBD 設定がフェンシングに使用される場合にのみ必要です。

concurrent-fencing

true (RHEL 8.1 以降)

フェンシング操作を並行して実行できるようにします。

fence-reaction

stop

(Red Hat Enterprise Linux 8.2 以降) 独自のフェンシングの通知を受信した場合は、クラスターノードがどのように反応するかを決定します。クラスターノードは、フェンシングの設定が間違っている場合に独自のフェンシングの通知を受信するか、ファブリックフェンシングがクラスター通信を遮断しない状態である可能性があります。許可される値は、Pacemaker をすぐに停止し、停止したままにする stop と、ローカルノードを直ちに再起動して失敗した場合に停止する panic です。

このプロパティーのデフォルト値は stop ですが、この値に最も安全な選択肢は panic であり、ローカルノードを直ちに再起動しようとします。停止動作を希望する場合は、おそらくファブリックフェンシングと併用する場合は、明示的に指定することが推奨されます。

クラスターのプロパティーの設定は、クラスターのプロパティーの設定と削除 を参照してください。

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