36.6. スワップの使用
スワップ領域を使用して、非アクティブなプロセスとデータに一時的なストレージを提供し、物理メモリーがいっぱいになった場合に発生するメモリー不足エラーを防ぎます。スワップ領域は物理メモリーの拡張として機能し、物理メモリーが使い果たされた場合でもシステムがスムーズに動作し続けることを可能にします。スワップ領域を使用するとシステムのパフォーマンスが低下する可能性があるため、スワップ領域を利用する前に物理メモリーの使用を最適化するほうが望ましい場合があることに注意してください。
36.6.1. スワップ領域の概要
Linux の スワップ領域 は、物理メモリー (RAM) が不足すると使用されます。システムに多くのメモリーリソースが必要で、RAM が不足すると、メモリーの非アクティブなページがスワップ領域に移動します。スワップ領域は、RAM が少ないマシンで役に立ちますが、RAM の代わりに使用しないようにしてください。
スワップ領域はハードドライブにあり、そのアクセス速度は物理メモリーに比べると遅くなります。スワップ領域の設定は、専用のスワップパーティション (推奨)、スワップファイル、またはスワップパーティションとスワップファイルの組み合せが考えられます。
過去数年、推奨されるスワップ領域のサイズは、システムの RAM サイズに比例して増加していました。しかし、最近のシステムには通常、数百ギガバイトの RAM が含まれます。結果として、推奨されるスワップ領域は、システムのメモリーではなく、システムメモリーのワークロードの機能とみなされます。
- スワップ領域の追加
以下は、さまざまな方法でスワップ領域を追加する方法です。
- LVM2 論理ボリュームでのスワップ領域の拡張
- スワップの LVM2 論理ボリュームの作成
たとえば、システムの RAM 容量を 1 GB から 2 GB にアップグレードするときに、スワップスペースが 2 GB しかないとします。メモリーを大幅に消費する操作を実行している場合や、大量のメモリーを必要とするアプリケーションを実行する場合は、スワップ領域を 4 GB に増やすことが有益となる可能性があります。
- スワップ領域の削除
スワップ領域を削除するには、以下の異なる方法を使用します。
- LVM2 論理ボリュームでのスワップ領域の縮小
- スワップの LVM2 論理ボリュームの削除
たとえば、システムの RAM 容量を 1 GB から 512 MB にダウングレードするとします。しかし、依然として 2 GB のスワップ容量が割り当てられています。ディスク領域が大きくなる (2 GB など) と無駄になる可能性があるため、スワップ領域を 1 GB に減らすことでメリットを得られることがあります。
36.6.2. システムの推奨スワップ領域
このセクションでは、システム内の RAM の量と、システムがハイバネートになるために十分なメモリーを必要とするかどうかに応じた、スワップパーティションの推奨サイズについて説明します。推奨されるスワップパーティションのサイズは、インストール時に自動的に確定されます。ハイバネートを可能にするには、カスタムのパーティション分割段階でスワップ領域を編集する必要があります。
以下の推奨は、1GB 以下など、メモリーが少ないシステムで特に重要です。このようなシステムで十分なスワップ領域を割り当てられないと、不安定になる問題が生じたり、インストールしたシステムが起動できなくなる可能性があります。
システム内の RAM の容量 | 推奨されるスワップ領域 | ハイバネートを許可する場合に推奨されるスワップ領域 |
---|---|---|
⩽ 2 GB | RAM 容量の 2 倍 | RAM 容量の 3 倍 |
> 2 GB ~ 8 GB | RAM 容量と同じ | RAM 容量の 2 倍 |
> 8 GB ~ 64 GB | 最低 4GB | RAM 容量の 1.5 倍 |
> 64 GB | 最低 4GB | ハイバネートは推奨されない |
値が、この表の範囲の境界線上にある場合 (システムの RAM が 2GB、8GB、または 64GB などの場合)、選択したスワップ領域とハイバネートへのサポートに関しては、適宜判断してください。システムリソースに余裕がある場合は、スワップ領域を増やすとパフォーマンスが向上することがあります。
高速のドライブ、コントローラー、およびインターフェイスを搭載したシステムでは、複数のストレージデバイスにスワップ領域を分散すると、スワップ領域のパフォーマンスも向上します。
スワップ領域として割り当てたファイルシステムおよび LVM2 ボリュームは、変更時に 使用しない でください。システムプロセスまたはカーネルがスワップ領域を使用していると、スワップの修正に失敗します。free
コマンドおよび cat /proc/swaps
コマンドを使用して、スワップの使用量と、使用中の場所を確認します。
スワップ領域のサイズを変更すると、システムのスワップ領域が一時的に削除されます。これは、実行中のアプリケーションが追加のスワップ領域に依存し、メモリーが不足する可能性がある場合に問題になる可能性があります。レスキューモードからスワップのサイズを変更することが推奨されます。Performing an advanced RHEL 8 installation の Debug boot options を参照してください。ファイルシステムをマウントするように指示されたら、 を選択します。
36.6.3. LVM2 論理ボリュームでのスワップ領域の拡張
この手順では、既存の LVM2 論理ボリュームでスワップ領域を拡張する方法を説明します。ここでは、2 GB 拡張するボリュームを /dev/VolGroup00/LogVol01 とします。
前提条件
- 十分なディスク領域がある。
手順
関連付けられている論理ボリュームのスワップ機能を無効にします。
# swapoff -v /dev/VolGroup00/LogVol01
LVM2 論理ボリュームのサイズを 2 GB 増やします。
# lvresize /dev/VolGroup00/LogVol01 -L +2G
新しいスワップ領域をフォーマットします。
# mkswap /dev/VolGroup00/LogVol01
拡張論理ボリュームを有効にします。
# swapon -v /dev/VolGroup00/LogVol01
検証
スワップ論理ボリュームが正常に拡張され、アクティブになったかをテストするには、次のコマンドを使用して、アクティブなスワップ領域を調べます。
$ cat /proc/swaps $ free -h
36.6.4. スワップの LVM2 論理ボリュームの作成
この手順では、スワップ用に LVM2 論理ボリュームを作成する方法を説明します。ここでは、追加するスワップボリュームを /dev/VolGroup00/LogVol02 とします。
前提条件
- 十分なディスク領域がある。
手順
サイズが 2 GB の LVM2 論理ボリュームを作成します。
# lvcreate VolGroup00 -n LogVol02 -L 2G
新しいスワップ領域をフォーマットします。
# mkswap /dev/VolGroup00/LogVol02
次のエントリーを
/etc/fstab
ファイルに追加します。/dev/VolGroup00/LogVol02 none swap defaults 0 0
システムが新しい設定を登録するように、マウントユニットを再生成します。
# systemctl daemon-reload
論理ボリュームでスワップをアクティブにします。
# swapon -v /dev/VolGroup00/LogVol02
検証
スワップ論理ボリュームが正常に作成され、アクティブになったかをテストするには、次のコマンドを使用して、アクティブなスワップ領域を調べます。
$ cat /proc/swaps $ free -h
36.6.5. スワップファイルの作成
この手順では、スワップファイルの作成方法を説明します。
前提条件
- 十分なディスク領域がある。
手順
- 新しいスワップファイルのサイズをメガバイト単位で指定してから、そのサイズに 1024 をかけてブロック数を指定します。たとえばスワップファイルのサイズが 64 MB の場合は、ブロック数が 65536 になります。
空のファイルの作成:
# dd if=/dev/zero of=/swapfile bs=1024 count=65536
65536 を、目的のブロックサイズと同じ値に置き換えます。
次のコマンドでスワップファイルをセットアップします。
# mkswap /swapfile
スワップファイルのセキュリティーを変更して、全ユーザーで読み込みができないようにします。
# chmod 0600 /swapfile
システムの起動時にスワップファイルを有効にするには、次のエントリーを使用して
/etc/fstab
ファイルを編集します。/swapfile none swap defaults 0 0
次にシステムが起動すると新しいスワップファイルが有効になります。
システムが新しい
/etc/fstab
設定を登録するように、マウントユニットを再生成します。# systemctl daemon-reload
すぐにスワップファイルをアクティブにします。
# swapon /swapfile
検証
新しいスワップファイルが正常に作成され、有効になったかをテストするには、次のコマンドを使用して、アクティブなスワップ領域を調べます。
$ cat /proc/swaps $ free -h
36.6.6. LVM2 論理ボリュームでのスワップ領域の縮小
この手順では、LVM2 論理ボリュームでスワップを減らす方法を説明します。ここでは、縮小するボリュームを /dev/VolGroup00/LogVol01 とします。
手順
関連付けられている論理ボリュームのスワップ機能を無効にします。
# swapoff -v /dev/VolGroup00/LogVol01
LVM2 論理ボリュームのサイズを変更して 512 MB 削減します。
# lvreduce /dev/VolGroup00/LogVol01 -L -512M
新しいスワップ領域をフォーマットします。
# mkswap /dev/VolGroup00/LogVol01
論理ボリュームでスワップをアクティブにします。
# swapon -v /dev/VolGroup00/LogVol01
検証
スワップ論理ボリュームが正常に削減されたかをテストするには、次のコマンドを使用して、アクティブなスワップ領域を調べます。
$ cat /proc/swaps $ free -h
36.6.7. スワップの LVM2 論理ボリュームの削除
この手順では、スワップ用に LVM2 論理ボリュームを削除する方法を説明します。削除するスワップボリュームを /dev/VolGroup00/LogVol02 とします。
手順
関連付けられている論理ボリュームのスワップ機能を無効にします。
# swapoff -v /dev/VolGroup00/LogVol02
LVM2 論理ボリュームを削除します。
# lvremove /dev/VolGroup00/LogVol02
次の関連エントリーを
/etc/fstab
ファイルから削除します。/dev/VolGroup00/LogVol02 none swap defaults 0 0
システムが新しい設定を登録するように、マウントユニットを再生成します。
# systemctl daemon-reload
検証
論理ボリュームが正常に削除されたかをテストするには、次のコマンドを使用して、アクティブなスワップ領域を調べます。
$ cat /proc/swaps $ free -h
36.6.8. スワップファイルの削除
この手順では、スワップファイルを削除する方法を説明します。
手順
シェルプロンプトで次のコマンドを実行してスワップファイルを無効にします (スワップファイルの場所が
/swapfile
であるとします)。# swapoff -v /swapfile
-
/etc/fstab
ファイルからエントリーを削除します。 システムが新しい設定を登録するように、マウントユニットを再生成します。
# systemctl daemon-reload
実際のファイルを削除します。
# rm /swapfile