第2章 ポリシーおよびサービス定義


2.1. Red Hat OpenShift Service on AWS のサポート

可用性と障害を回避することは、どのアプリケーションプラットフォームでも非常に重要な要素です。Red Hat OpenShift Service on AWS (ROSA) は複数のレベルで障害に対する保護を提供しますが、お客様がデプロイするアプリケーションは高可用性を確保するために適切に設定される必要があります。クラウドプロバイダーで発生する可能性のある停止状態に対応するために、複数のアベイラビリティーゾーンにクラスターをデプロイしたり、フェイルオーバーメカニズムで複数のクラスターを維持したりするなどの追加のオプションを選択できます。

2.1.1. 潜在的な障害点

Red Hat OpenShift Service on AWS (ROSA) は、ダウンタイムに対してワークロードを保護するために多くの機能およびオプションを提供しますが、アプリケーションはこれらの機能を利用できるように適切に設計される必要があります。

ROSA は、Red Hat Site Reliability Engineering (SRE) によるサポートと、複数のアベイラビリティゾーンクラスターをデプロイする方法をさらに備えており、多くの一般的な Kubernetes の問題からの保護を強化できますが、それでもコンテナーやインフラストラクチャーに障害が発生する可能性は多数あります。潜在的な障害点を理解することで、リスクを理解し、アプリケーションとクラスターの両方が特定のレベルで必要に応じて回復性を持つように設計できます。

注記

停止状態は、インフラストラクチャーおよびクラスターコンポーネントの複数の異なるレベルで生じる可能性があります。

2.1.1.1. コンテナーまたは Pod の障害

設計上、Pod は短期間存在することが意図されています。アプリケーション Pod の複数のインスタンスが実行されている場合は、個別の Pod またはコンテナーの問題から保護できるようにサービスを適切にスケーリングします。OpenShift ノードスケジューラーは、回復性をさらに強化するために、これらのワークロードが異なるワーカーノードに分散するようにします。

Pod の障害に対応する場合は、ストレージがアプリケーションに割り当てられる方法も理解することが重要になります。単一 Pod に割り当てられる単一の永続ボリュームは、Pod のスケーリングを完全に活用できませんが、複製されるデータベース、データベースサービス、または共有ストレージはこれを活用できます。

アップグレードなどの計画メンテナンス中にアプリケーションが中断されるのを防ぐには、Pod の Disruption Budget (停止状態の予算) を定義することが重要です。これらは Kubernetes API の一部であり、他のオブジェクトタイプと同様に oc コマンドで管理できます。この設定により、メンテナンスのためのノードのドレイン (解放) などの操作時に Pod への安全面の各種の制約を指定できます。

2.1.1.2. ワーカーノードの障害

ワーカーノードは、アプリケーション Pod が含まれる仮想マシンです。デフォルトで、ROSA クラスターには単一アベイラビリティーゾーンのクラスター用のワーカーノードが 2 つ以上含まれます。ワーカーノードに障害が発生した場合、Pod は、既存ノードに関する問題が解決するか、ノードが置き換えられるまで、十分な容量がある限り、機能しているワーカーノードに移行します。ワーカーノードを追加することは、単一ノードの停止状態に対する保護策を強化することを意味し、ノードに障害が発生した場合に再スケジュールされる Pod の適切なクラスター容量を確保できます。

注記

ノードの障害に対応する場合は、ストレージへの影響を把握することも重要になります。EFS ボリュームはノードの障害による影響を受けません。ただし、EBS ボリュームは、障害が発生するノードに接続されている場合はアクセスできません。

2.1.1.3. クラスターの障害

シングル AZ ROSA クラスターには、プライベートサブネット内の同じアベイラビリティゾーン (AZ) に少なくとも 3 つのコントロールプレーンと 2 つのインフラストラクチャーノードがあります。

マルチ AZ ROSA クラスターには、選択したクラスターのタイプに応じて、少なくとも 3 つのコントロールプレーンノードと 3 つのインフラストラクチャーノードがあり、高可用性のために事前設定されています。コントロールプレーンおよびインフラストラクチャーノードはワーカーノードと同じ耐障害性があり、この場合は Red Hat によって完全に管理される利点を活用できます。

コントロールプレーンが完全に停止する場合、OpenShift API は機能せず、既存のワーカーノード Pod は影響を受けません。ただし、Pod またはノードが同時に停止している場合は、コントロールプレーンのリカバリーが新規 Pod またはノードを追加される前、またはスケジュールする前に必要になります。

インフラストラクチャーノードで実行しているすべてのサービスは、高可用性を持ち、インフラストラクチャーノード間に分散されるように Red Hat によって設定されます。インフラストラクチャーが完全に停止すると、これらのサービスはこれらのノードが回復するまで利用できなくなります。

2.1.1.4. ゾーンの障害

AWS のゾーン障害は、すべての仮想コンポーネント (ワーカーノード、ブロックまたは共有ストレージ、単一のアベイラビリティーゾーンに固有のロードバランサーなど) に影響を及ぼします。ゾーンの障害から保護するために、ROSA は複数のアベイラビリティーゾーンクラスターとして知られる 3 つのアベイラビリティーゾーンに分散するクラスターに関するオプションを提供します。既存のステートレスワークロードは、十分な容量がある限り、停止時に影響を受けないゾーンに再分散されます。

2.1.1.5. ストレージの障害

ステートフルなアプリケーションをデプロイしている場合、ストレージは重要なコンポーネントであり、高可用性を検討する際に考慮に入れる必要があります。単一ブロックストレージ PV は、Pod レベルでも停止状態になった状態では実行できません。ストレージの可用性を維持する最適な方法として、複製されたストレージソリューション、停止による影響を受けない共有ストレージ、またはクラスターから独立したデータベースサービスを使用できます。

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