第13章 スケジューリングリソース
13.1. ノードセレクターを使用したロギングリソースの移動
ノードセレクター は、ノードのカスタムラベルと Pod で指定されるセレクターを使用して定義されるキー/値のペアのマップを指定します。
Pod がノードで実行する要件を満たすには、Pod にはノードのラベルと同じキー/値のペアがなければなりません。
13.1.1. ノードセレクターについて
Pod でノードセレクターを使用し、ノードでラベルを使用して、Pod がスケジュールされる場所を制御できます。ノードセレクターを使用すると、Red Hat OpenShift Service on AWS は一致するラベルが含まれるノード上に Pod をスケジュールします。
ノードセレクターを使用して特定の Pod を特定のノードに配置し、クラスタースコープのノードセレクターを使用して特定ノードの新規 Pod をクラスター内の任意の場所に配置し、プロジェクトノードを使用して新規 Pod を特定ノードのプロジェクトに配置できます。
たとえば、クラスター管理者は、作成するすべての Pod にノードセレクターを追加して、アプリケーション開発者が地理的に最も近い場所にあるノードにのみ Pod をデプロイできるインフラストラクチャーを作成できます。この例では、クラスターは 2 つのリージョンに分散する 5 つのデータセンターで構成されます。米国では、ノードに us-east
、us-central
、または us-west
のラベルを付けます。アジア太平洋リージョン (APAC) では、ノードに apac-east
または apac-west
のラベルを付けます。開発者は、Pod がこれらのノードにスケジュールされるように、作成する Pod にノードセレクターを追加できます。
Pod
オブジェクトにノードセレクターが含まれる場合でも、一致するラベルを持つノードがない場合、Pod はスケジュールされません。
同じ Pod 設定でノードセレクターとノードのアフィニティーを使用している場合は、以下のルールが Pod のノードへの配置を制御します。
-
nodeSelector
とnodeAffinity
の両方を設定する場合、Pod が候補ノードでスケジュールされるにはどちらの条件も満たしている必要があります。 -
nodeAffinity
タイプに関連付けられた複数のnodeSelectorTerms
を指定する場合、nodeSelectorTerms
のいずれかが満たされている場合に Pod をノードにスケジュールすることができます。 -
nodeSelectorTerms
に関連付けられた複数のmatchExpressions
を指定する場合、すべてのmatchExpressions
が満たされている場合にのみ Pod をノードにスケジュールすることができます。
- 特定の Pod およびノードのノードセレクター
ノードセレクターおよびラベルを使用して、特定の Pod がスケジュールされるノードを制御できます。
ノードセレクターおよびラベルを使用するには、まずノードにラベルを付けて Pod がスケジュール解除されないようにしてから、ノードセレクターを Pod に追加します。
注記ノードセレクターを既存のスケジュールされている Pod に直接追加することはできません。デプロイメント設定などの Pod を制御するオブジェクトにラベルを付ける必要があります。
たとえば、以下の
Node
オブジェクトにはregion: east
ラベルがあります。ラベルを含む
Node
オブジェクトのサンプルkind: Node apiVersion: v1 metadata: name: ip-10-0-131-14.ec2.internal selfLink: /api/v1/nodes/ip-10-0-131-14.ec2.internal uid: 7bc2580a-8b8e-11e9-8e01-021ab4174c74 resourceVersion: '478704' creationTimestamp: '2019-06-10T14:46:08Z' labels: kubernetes.io/os: linux topology.kubernetes.io/zone: us-east-1a node.openshift.io/os_version: '4.5' node-role.kubernetes.io/worker: '' topology.kubernetes.io/region: us-east-1 node.openshift.io/os_id: rhcos node.kubernetes.io/instance-type: m4.large kubernetes.io/hostname: ip-10-0-131-14 kubernetes.io/arch: amd64 region: east 1 type: user-node #...
- 1
- Pod ノードセレクターに一致するラベル。
Pod には
type: user-node,region: east
ノードセレクターがあります。ノードセレクターが含まれる
Pod
オブジェクトのサンプルapiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: s1 #... spec: nodeSelector: 1 region: east type: user-node #...
- 1
- ノードトラベルに一致するノードセレクター。ノードには、各ノードセレクターのラベルが必要です。
サンプル Pod 仕様を使用して Pod を作成する場合、これはサンプルノードでスケジュールできます。
- クラスタースコープのデフォルトノードセレクター
デフォルトのクラスタースコープのノードセレクターを使用する場合、クラスターで Pod を作成すると、Red Hat OpenShift Service on AWS はデフォルトのノードセレクターを Pod に追加し、一致するラベルのあるノードで Pod をスケジュールします。
たとえば、以下の
Scheduler
オブジェクトにはデフォルトのクラスタースコープのregion=east
およびtype=user-node
ノードセレクターがあります。スケジューラー Operator カスタムリソースの例
apiVersion: config.openshift.io/v1 kind: Scheduler metadata: name: cluster #... spec: defaultNodeSelector: type=user-node,region=east #...
クラスター内のノードには
type=user-node,region=east
ラベルがあります。Node
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Node metadata: name: ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 #... labels: region: east type: user-node #...
ノードセレクターを持つ
Pod
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: s1 #... spec: nodeSelector: region: east #...
サンプルクラスターでサンプル Pod 仕様を使用して Pod を作成する場合、Pod はクラスタースコープのノードセレクターで作成され、ラベルが付けられたノードにスケジュールされます。
ラベルが付けられたノード上の Pod を含む Pod リストの例
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE NOMINATED NODE READINESS GATES pod-s1 1/1 Running 0 20s 10.131.2.6 ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 <none> <none>
注記Pod を作成するプロジェクトにプロジェクトノードセレクターがある場合、そのセレクターはクラスタースコープのセレクターよりも優先されます。Pod にプロジェクトノードセレクターがない場合、Pod は作成されたり、スケジュールされたりしません。
- プロジェクトノードセレクター
プロジェクトノードセレクターを使用する場合、このプロジェクトで Pod を作成すると、Red Hat OpenShift Service on AWS はノードセレクターを Pod に追加し、一致するラベルを持つノードで Pod をスケジュールします。クラスタースコープのデフォルトノードセレクターがない場合、プロジェクトノードセレクターが優先されます。
たとえば、以下のプロジェクトには
region=east
ノードセレクターがあります。Namespace
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Namespace metadata: name: east-region annotations: openshift.io/node-selector: "region=east" #...
以下のノードには
type=user-node,region=east
ラベルがあります。Node
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Node metadata: name: ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 #... labels: region: east type: user-node #...
Pod をこのサンプルプロジェクトでサンプル Pod 仕様を使用して作成する場合、Pod はプロジェクトノードセレクターで作成され、ラベルが付けられたノードにスケジュールされます。
Pod
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Pod metadata: namespace: east-region #... spec: nodeSelector: region: east type: user-node #...
ラベルが付けられたノード上の Pod を含む Pod リストの例
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE NOMINATED NODE READINESS GATES pod-s1 1/1 Running 0 20s 10.131.2.6 ci-ln-qg1il3k-f76d1-hlmhl-worker-b-df2s4 <none> <none>
Pod に異なるノードセレクターが含まれる場合、プロジェクトの Pod は作成またはスケジュールされません。たとえば、以下の Pod をサンプルプロジェクトにデプロイする場合、これは作成されません。
無効なノードセレクターを持つ
Pod
オブジェクトの例apiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: west-region #... spec: nodeSelector: region: west #...
13.1.2. Loki Pod の配置
Pod の toleration またはノードセレクターを使用して、Loki Pod が実行するノードを制御し、他のワークロードがそれらのノードを使用しないようにできます。
LokiStack カスタムリソース (CR) を使用して toleration をログストア Pod に適用し、ノード仕様を使用して taint をノードに適用できます。ノードの taint は、taint を容認しないすべての Pod を拒否するようノードに指示する key:value
ペアです。他の Pod にはない特定の key:value
ペアを使用すると、ログストア Pod のみがそのノードで実行できるようになります。
ノードセレクターを使用する LokiStack の例
apiVersion: loki.grafana.com/v1 kind: LokiStack metadata: name: logging-loki namespace: openshift-logging spec: # ... template: compactor: 1 nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" 2 distributor: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" gateway: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" indexGateway: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" ingester: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" querier: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" queryFrontend: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" ruler: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" # ...
前述の設定例では、すべての Loki Pod が node-role.kubernetes.io/infra: ""
ラベルを含むノードに移動されます。
ノードセレクターと toleration を使用する LokiStack CR の例
apiVersion: loki.grafana.com/v1 kind: LokiStack metadata: name: logging-loki namespace: openshift-logging spec: # ... template: compactor: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved distributor: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved indexGateway: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved ingester: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved querier: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved queryFrontend: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved ruler: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved gateway: nodeSelector: node-role.kubernetes.io/infra: "" tolerations: - effect: NoSchedule key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved - effect: NoExecute key: node-role.kubernetes.io/infra value: reserved # ...
LokiStack (CR) の nodeSelector
フィールドと tolerations
フィールドを設定するには、oc explain
コマンドを使用して、特定のリソースの説明とフィールドを表示します。
$ oc explain lokistack.spec.template
出力例
KIND: LokiStack VERSION: loki.grafana.com/v1 RESOURCE: template <Object> DESCRIPTION: Template defines the resource/limits/tolerations/nodeselectors per component FIELDS: compactor <Object> Compactor defines the compaction component spec. distributor <Object> Distributor defines the distributor component spec. ...
詳細情報用に、特定のフィールドを追加できます。
$ oc explain lokistack.spec.template.compactor
出力例
KIND: LokiStack VERSION: loki.grafana.com/v1 RESOURCE: compactor <Object> DESCRIPTION: Compactor defines the compaction component spec. FIELDS: nodeSelector <map[string]string> NodeSelector defines the labels required by a node to schedule the component onto it. ...
13.1.3. リソースの設定とロギングコレクターのスケジュール設定
管理者は、サポートされている ClusterLogForwarder
CR と同じ namespace 内に、同じ名前の ClusterLogging
カスタムリソース (CR) を作成することで、コレクターのリソースまたはスケジュールを変更できます。
デプロイメントで複数のログフォワーダーを使用する場合に ClusterLogging
CR に適用できるスタンザは、managementState
と collection
です。他のスタンザはすべて無視されます。
前提条件
- 管理者権限がある。
- Red Hat OpenShift Logging Operator バージョン 5.8 以降がインストールされている。
-
ClusterLogForwarder
CR が作成されている。
手順
既存の
ClusterLogForwarder
CR をサポートするClusterLogging
CR を作成します。ClusterLogging
CR YAML の例apiVersion: logging.openshift.io/v1 kind: ClusterLogging metadata: name: <name> 1 namespace: <namespace> 2 spec: managementState: "Managed" collection: type: "vector" tolerations: - key: "logging" operator: "Exists" effect: "NoExecute" tolerationSeconds: 6000 resources: limits: memory: 1Gi requests: cpu: 100m memory: 1Gi nodeSelector: collector: needed # ...
次のコマンドを実行して、
ClusterLogging
CR を適用します。$ oc apply -f <filename>.yaml
13.1.4. ロギングコレクター Pod の表示
ロギングコレクター Pod と、それらが実行されている対応するノードを表示できます。
手順
プロジェクトで次のコマンドを実行して、ロギングコレクター Pod とその詳細を表示します。
$ oc get pods --selector component=collector -o wide -n <project_name>
出力例
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE NOMINATED NODE READINESS GATES collector-8d69v 1/1 Running 0 134m 10.130.2.30 master1.example.com <none> <none> collector-bd225 1/1 Running 0 134m 10.131.1.11 master2.example.com <none> <none> collector-cvrzs 1/1 Running 0 134m 10.130.0.21 master3.example.com <none> <none> collector-gpqg2 1/1 Running 0 134m 10.128.2.27 worker1.example.com <none> <none> collector-l9j7j 1/1 Running 0 134m 10.129.2.31 worker2.example.com <none> <none>