7.4. ブリッジネットワークの設定
クラスター管理者は、ブリッジの Container Network Interface (CNI) プラグインを使用して、クラスターの追加ネットワークを設定できます。設定時に、ノード上のすべての Pod が仮想スイッチに接続されます。各 Pod には追加のネットワークの IP アドレスが割り当てられます。
7.4.1. ブリッジ CNI プラグインを使用した追加ネットワーク割り当ての作成
Cluster Network Operator (CNO) は追加ネットワークの定義を管理します。作成する追加ネットワークを指定する場合、CNO は NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを自動的に作成します。
Cluster Network Operator が管理する NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトは編集しないでください。これを実行すると、追加ネットワークのネットワークトラフィックが中断する可能性があります。
前提条件
-
OpenShift CLI (
oc
) をインストールしている。 -
cluster-admin
権限を持つユーザーとしてログインしている。
手順
クラスターの追加ネットワークを作成するには、以下の手順を実施します。
以下のコマンドを実行して CNO CR を編集します。
$ oc edit networks.operator.openshift.io cluster
以下のサンプル CR のように、作成される追加ネットワークの設定を追加して、作成している CR を変更します。
以下の YAML はブリッジ CNI プラグインを設定します。
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: additionalNetworks: 1 - name: test-network-1 namespace: test-1 type: Raw rawCNIConfig: '{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "test-network-1", "type": "bridge", "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "191.168.1.23/24" } ] } }'
- 1
- 追加ネットワーク割り当て定義の設定を指定します。
- 変更を保存し、テキストエディターを終了して、変更をコミットします。
オプション: 以下のコマンドを実行して、CNO が
NetworkAttachmentDefinition
オブジェクトを作成していることを確認します。CNO が CR を作成するまでに遅延が生じる可能性があります。$ oc get network-attachment-definitions -n <namespace>
出力例
NAME AGE test-network-1 14m
7.4.1.1. ブリッジの設定
ブリッジ Container Network Interface (CNI) プラグインを使用する追加ネットワーク割り当ての設定は、以下の 2 つの部分に分けて提供されます。
- Cluster Network Operator (CNO) の設定
- CNI プラグインの設定
CNO 設定では、追加ネットワーク割り当ての名前と割り当てを作成する namespace を指定します。このプラグインは、CNO 設定の rawCNIConfig
パラメーターで指定される JSON オブジェクトで設定されます。
以下の YAML は、CNO の設定パラメーターについて説明しています。
Cluster Network Operator YAML の設定
name: <name> 1 namespace: <namespace> 2 rawCNIConfig: '{ 3 ... }' type: Raw
以下のオブジェクトは、ブリッジ CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。
ブリッジ CNI プラグイン JSON 設定オブジェクト
{ "cniVersion": "0.3.1", "name": "<name>", 1 "type": "bridge", "bridge": "<bridge>", 2 "ipam": { 3 ... }, "ipMasq": false, 4 "isGateway": false, 5 "isDefaultGateway": false, 6 "forceAddress": false, 7 "hairpinMode": false, 8 "promiscMode": false, 9 "vlan": <vlan>, 10 "mtu": <mtu> 11 }
- 1
- CNO 設定に以前に指定した
name
パラメーターの値を指定します。 - 2
- 使用する仮想ブリッジの名前を指定します。ブリッジインターフェイスがホストに存在しない場合は、これが作成されます。デフォルト値は
cni0
です。 - 3
- IPAM CNI プラグインの設定オブジェクトを指定します。プラグインは、ネットワーク割り当て定義についての IP アドレスの割り当てを管理します。
- 4
- 仮想ネットワークから外すトラフィックについて IP マスカレードを有効にするには、
true
に設定します。すべてのトラフィックのソース IP アドレスは、ブリッジの IP アドレスに書き換えられます。ブリッジに IP アドレスがない場合は、この設定は影響を与えません。デフォルト値はfalse
です。 - 5
- IP アドレスをブリッジに割り当てるには
true
に設定します。デフォルト値はfalse
です。 - 6
- ブリッジを仮想ネットワークのデフォルトゲートウェイとして設定するには、
true
に設定します。デフォルト値はfalse
です。isDefaultGateway
がtrue
に設定される場合、isGateway
も自動的にtrue
に設定されます。 - 7
- 仮想ブリッジの事前に割り当てられた IP アドレスの割り当てを許可するには、
true
に設定します。false
に設定される場合、重複サブセットの IPv4 アドレスまたは IPv6 アドレスが仮想ブリッジに割り当てられるとエラーが発生します。デフォルト値はfalse
です。 - 8
- 仮想ブリッジが受信時に使用した仮想ポートでイーサネットフレームを送信できるようにするには、
true
に設定します。このモードは、Reflective Relay (リフレクティブリレー) としても知られています。デフォルト値はfalse
です。 - 9
- ブリッジで無作為検出モード (Promiscuous Mode) を有効にするには、
true
に設定します。デフォルト値はfalse
です。 - 10
- 仮想 LAN (VLAN) タグを整数値として指定します。デフォルトで、VLAN タグは割り当てません。
- 11
- 最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。
7.4.1.1.1. ブリッジ設定の例
以下の例では、bridge-net
という名前の追加のネットワークを設定します。
name: bridge-net
namespace: work-network
type: Raw
rawCNIConfig: '{ 1
"cniVersion": "0.3.1",
"name": "work-network",
"type": "bridge",
"isGateway": true,
"vlan": 2,
"ipam": {
"type": "dhcp"
}
}'
- 1
- CNI 設定オブジェクトは YAML 文字列として指定されます。
7.4.1.2. IPAM CNI プラグインの設定
IPAM Container Network Interface (CNI) プラグインは、他の CNI プラグインに IP アドレス管理 (IPAM) を提供します。DHCP を使用して、静的 IP アドレスの割り当てまたは動的 IP アドレスの割り当てのいずれかに IPAM を設定することができます。指定する DHCP サーバーは、追加のネットワークから到達可能である必要があります。
以下の JSON 設定オブジェクトは設定できるパラメーターについて説明しています。
7.4.1.2.1. 静的 IP アドレス割り当ての設定
以下の JSON は、静的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。
静的割り当ての設定
{ "ipam": { "type": "static", "addresses": [ 1 { "address": "<address>", 2 "gateway": "<gateway>" 3 } ], "routes": [ 4 { "dst": "<dst>", 5 "gw": "<gw>" 6 } ], "dns": { 7 "nameservers": ["<nameserver>"], 8 "domain": "<domain>", 9 "search": ["<search_domain>"] 10 } } }
- 1
- 仮想インターフェイスに割り当てる IP アドレスを記述する配列。IPv4 と IPv6 の IP アドレスの両方がサポートされます。
- 2
- 指定する IP アドレスおよびネットワーク接頭辞。たとえば、
10.10.21.10/24
を指定すると、追加のネットワークに IP アドレスの10.10.21.10
が割り当てられ、ネットマスクは255.255.255.0
になります。 - 3
- egress ネットワークトラフィックをルーティングするデフォルトのゲートウェイ。
- 4
- Pod 内で設定するルートを記述する配列。
- 5
- CIDR 形式の IP アドレス範囲 (
192.168.17.0/24
、またはデフォルトルートの0.0.0.0/0
)。 - 6
- ネットワークトラフィックがルーティングされるゲートウェイ。
- 7
- オプション: DNS 設定。
- 8
- DNS クエリーの送信先となる 1 つ以上の IP アドレスの配列。
- 9
- ホスト名に追加するデフォルトのドメイン。たとえば、ドメインが
example.com
に設定されている場合、example-host
の DNS ルックアップクエリーはexample-host.example.com
として書き換えられます。 - 10
- DNS ルックアップのクエリー時に非修飾ホスト名に追加されるドメイン名の配列 (例:
example-host
)。
7.4.1.2.2. 動的 IP アドレス割り当ての設定
以下の JSON は、DHCP を使用した動的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。
Pod は、作成時に元の DHCP リースを取得します。リースは、クラスターで実行している最小限の DHCP サーバーデプロイメントで定期的に更新する必要があります。
DHCP サーバーのデプロイメントをトリガーするには、以下の例にあるように Cluster Network Operator 設定を編集して shim ネットワーク割り当てを作成する必要があります。
shim ネットワーク割り当ての定義例
apiVersion: operator.openshift.io/v1 kind: Network metadata: name: cluster spec: ... additionalNetworks: - name: dhcp-shim namespace: default rawCNIConfig: |- { "name": "dhcp-shim", "cniVersion": "0.3.1", "type": "bridge", "master": "ens5", "ipam": { "type": "dhcp" } }
DHCP 割り当ての設定
{ "ipam": { "type": "dhcp" } }
7.4.1.2.3. 静的 IP アドレス割り当ての設定例
静的 IP アドレスの割り当てに IPAM を設定することができます。
{ "ipam": { "type": "static", "addresses": [ { "address": "191.168.1.7" } ] } }
7.4.1.2.4. DHCP を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定例
DHCP に IPAM を設定できます。
{ "ipam": { "type": "dhcp" } }