第15章 Security Context Constraints の管理
OpenShift Container Platform では、Security Context Constraint (SCC) を使用して、クラスター内の Pod のアクセス許可を制御できます。
デフォルトの SCC は、インストール中、および一部の Operator またはその他のコンポーネントをインストールするときに作成されます。クラスター管理者は、OpenShift CLI (oc
) を使用して独自の SCC を作成することもできます。
デフォルトの SCC は変更しないでください。デフォルトの SCC をカスタマイズすると、プラットフォームの Pod をデプロイ時または OpenShift Container Platform のアップグレード時に問題が発生する可能性があります。さらに、一部のクラスターのアップグレード中にデフォルトの SCC 値がデフォルトにリセットされ、それらの SCC に対するすべてのカスタマイズが破棄されます。
デフォルトの SCC を変更する代わりに、必要に応じて独自の SCC を作成および変更します。詳細な手順は、Security Context Constraints の作成 を参照してください。
15.1. Security Context Constraints について
RBAC リソースがユーザーアクセスを制御するのと同じ方法で、管理者は Security Context Constraints (SCC) を使用して Pod のパーミッションを制御できます。これらのアクセス許可によって、Pod が実行できるアクションとアクセスできるリソースが決まります。SCC を使用して、Pod がシステムに受け入れられるために必要な Pod の実行に関する条件の一覧を定義できます。
管理者は Security Context Constraints で、以下を制御できます。
-
Pod が
allowPrivilegedContainer
フラグが付いた特権付きコンテナーを実行できるかどうか -
Pod が
allowPrivilegeEscalation
フラグで制約されているかどうか - コンテナーが要求できる機能
- ホストディレクトリーのボリュームとしての使用
- コンテナーの SELinux コンテキスト
- コンテナーのユーザー ID
- ホストの namespace とネットワークの使用
-
Pod ボリュームを所有する
FSGroup
の割り当て - 許可される補助グループの設定
- コンテナーが root ファイルシステムへの書き込みアクセスを必要とするかどうか
- ボリュームタイプの使用
-
許可される
seccomp
プロファイルの設定
OpenShift Container Platform のネームスペースにopenshift.io/run-level
ラベルを設定しないでください。このラベルは、Kubernetes API サーバーや OpenShift API サーバーなどの主要な API グループの起動を管理するために内部 OpenShift Container Platform コンポーネントで使用されます。openshift.io/run-level
ラベルが設定される場合には、対象の namespace の Pod に SCC が適用されず、その namespace で実行されるワークロードには高度な特権が割り当てられます。
15.1.1. デフォルトの Security Context Constraints
クラスターには、以下の表で説明されているように、デフォルトの SCC (Security Context Constraints) が複数含まれます。オペレーターまたはその他のコンポーネントを OpenShift Container Platform にインストールすると、追加の SCC がインストールされる場合があります。
デフォルトの SCC は変更しないでください。デフォルトの SCC をカスタマイズすると、プラットフォームの Pod をデプロイ時または OpenShift Container Platform のアップグレード時に問題が発生する可能性があります。さらに、一部のクラスターのアップグレード中にデフォルトの SCC 値がデフォルトにリセットされ、それらの SCC に対するすべてのカスタマイズが破棄されます。
デフォルトの SCC を変更する代わりに、必要に応じて独自の SCC を作成および変更します。詳細な手順は、Security Context Constraints の作成 を参照してください。
Security context constraint (SCC) | 説明 |
---|---|
|
SCC のすべての機能が |
| ホストの全 namespace にアクセスできますが、対象の namespace に割り当てられた UID および SELinux コンテキストで Pod を実行する必要があります。 警告 この SCC で、ホストは namespace、ファイルシステム、および PID にアクセスできます。信頼できる Pod だけがこの SCC を使用する必要があります。付与には注意が必要です。 |
|
SCC のすべての機能を 警告 この SCC は、UID 0 を含む任意の UID としてホストファイルシステムにアクセスできます。付与には注意が必要です。 |
| ホストのネットワークおよびホストポートを使用できますが、対象の namespace に割り当てられた UID および SELinux コンテキストで Pod を実行する必要があります。 警告
追加のワークロードをコントロールプレーンホストで実行する場合は、 |
|
|
| Prometheus ノードエクスポーターに使用されます。 警告 この SCC は、UID 0 を含む任意の UID としてホストファイルシステムにアクセスできます。付与には注意が必要です。 |
|
SCC のすべての機能が |
|
|
| すべての特権およびホスト機能にアクセスでき、任意のユーザー、任意のグループ、FSGroup、および任意の SELinux コンテキストで実行できます。 警告 これは最も制限の少ない SCC であり、クラスター管理にのみ使用してください。付与には注意が必要です。
注記
Pod の仕様で |
| すべてのホスト機能へのアクセスが拒否され、Pod を UID および namespace に割り当てられる SELinux コンテキストで実行する必要があります。
4.10 以前の OpenShift Container Platform からアップグレードされたクラスターでは、認証済みのユーザーであれば、この SCC を利用できます。アクセスが明示的に付与されない限り、新しい OpenShift Container Platform 4.11 以降のインストールのユーザーは |
|
これは新規インストールで提供され、デフォルトで認証済みユーザーに使用される最も制限の厳しい SCC です。 注記
|
15.1.2. Security Context Constraints の設定
Security Context Constraints (SCC) は、Pod がアクセスできるセキュリティー機能を制御する設定およびストラテジーで構成されています。これらの設定は以下のカテゴリーに分類されます。
カテゴリー | 説明 |
---|---|
ブール値による制御 |
このタイプのフィールドはデフォルトで最も制限のある値に設定されます。たとえば、 |
許可されるセットによる制御 | このタイプのフィールドがセットに対してチェックされ、その値が許可されることを確認します。 |
ストラテジーによる制御 | 値を生成するストラテジーを持つ項目は以下を提供します。
|
CRI-O には、Pod の各コンテナーについて許可されるデフォルトの機能リストがあります。
-
CHOWN
-
DAC_OVERRIDE
-
FSETID
-
FOWNER
-
SETGID
-
SETUID
-
SETPCAP
-
NET_BIND_SERVICE
-
KILL
コンテナーはこのデフォルトリストから機能を使用しますが、Pod マニフェストの作成者は追加機能を要求したり、デフォルト動作の一部を削除してリストを変更できます。allowedCapabilities
パラメーター、defaultAddCapabilities
パラメーター、および requiredDropCapabilities
パラメーターを使用して、Pod からのこのような要求を制御します。これらのパラメーターを使用して、(各コンテナーに追加する必要のある機能や、各コンテナーから禁止または破棄する必要のあるものなど) 要求できる機能を指定できます。
requiredDropCapabilities
パラメーターを ALL
に設定すると、すべての capabilites をコンテナーから取り除くことができます。これは、restricted-v2
SCC の機能です。
15.1.3. Security Context Constraints ストラテジー
RunAsUser
MustRunAs
:runAsUser
が設定されることを要求します。デフォルトで設定済みのrunAsUser
を使用します。設定済みのrunAsUser
に対して検証します。MustRunAs
スニペットの例... runAsUser: type: MustRunAs uid: <id> ...
MustRunAsRange
: 事前に割り当てられた値を使用していない場合に、最小値および最大値が定義されることを要求します。デフォルトでは最小値を使用します。許可される範囲全体に対して検証します。MustRunAsRange
スニペットの例... runAsUser: type: MustRunAsRange uidRangeMax: <maxvalue> uidRangeMin: <minvalue> ...
MustRunAsNonRoot
: Pod がゼロ以外のrunAsUser
で送信されること、またはUSER
ディレクティブをイメージに定義することを要求します。デフォルトは指定されません。MustRunAsNonRoot
スニペットの例... runAsUser: type: MustRunAsNonRoot ...
RunAsAny
: デフォルトは指定されません。runAsUser
の指定を許可します。RunAsAny
スニペットの例... runAsUser: type: RunAsAny ...
SELinuxContext
-
MustRunAs
: 事前に割り当てられた値を使用していない場合にseLinuxOptions
が設定されることを要求します。デフォルトとしてseLinuxOptions
を使用します。seLinuxOptions
に対して検証します。 -
RunAsAny
: デフォルトは指定されません。seLinuxOptions
の指定を許可します。
SupplementalGroups
-
MustRunAs
: 事前に割り当てられた値を使用していない場合に、少なくとも 1 つの範囲が指定されることを要求します。デフォルトとして最初の範囲の最小値を使用します。すべての範囲に対して検証します。 -
RunAsAny
: デフォルトは指定されません。supplementalGroups
の指定を許可します。
FSGroup
-
MustRunAs
: 事前に割り当てられた値を使用していない場合に、少なくとも 1 つの範囲が指定されることを要求します。デフォルトとして最初の範囲の最小値を使用します。最初の範囲の最初の ID に対して検証します。 -
RunAsAny
: デフォルトは指定されません。fsGroup
ID の指定を許可します。
15.1.4. ボリュームの制御
特定のボリュームタイプの使用は、SCC の volumes
フィールドを設定して制御できます。
このフィールドの許容値は、ボリュームの作成時に定義されるボリュームソースに対応します。
-
awsElasticBlockStore
-
azureDisk
-
azureFile
-
cephFS
-
cinder
-
configMap
-
csi
-
downwardAPI
-
emptyDir
-
fc
-
flexVolume
-
flocker
-
gcePersistentDisk
-
ephemeral
-
gitRepo
-
glusterfs
-
hostPath
-
iscsi
-
nfs
-
persistentVolumeClaim
-
photonPersistentDisk
-
portworxVolume
-
projected
-
quobyte
-
rbd
-
scaleIO
-
secret
-
storageos
-
vsphereVolume
- * (すべてのボリュームタイプの使用を許可する特殊な値)
-
none
(すべてのボリュームタイプの使用を無効にする特殊な値。後方互換の場合にのみ存在する)
新規 SCC について許可されるボリュームの推奨される最小セットは、configMap
、downwardAPI
、emptyDir
、persistentVolumeClaim
, secret
、および projected
です。
許可されるボリュームタイプのリストは、新規タイプが OpenShift Container Platform の各リリースと共に追加されるため、網羅的なリストである必要はありません。
後方互換性を確保するため、allowHostDirVolumePlugin
の使用は volumes
フィールドの設定をオーバーライドします。たとえば、allowHostDirVolumePlugin
が false に設定されていて、volumes
フィールドで許可されている場合は、volumes
から hostPath
値が削除されます。
15.1.5. アドミッション制御
SCC が設定された アドミッション制御 により、ユーザーに付与された機能に基づいてリソースの作成に対する制御が可能になります。
SCC の観点では、これはアドミッションコントローラーが、SCC の適切なセットを取得するためにコンテキストで利用可能なユーザー情報を検査できることを意味します。これにより、Pod はその運用環境に関する要求を行ったり、Pod に適用する一連の制約を生成したりする権限が与えられます
アドミッションが Pod を許可するために使用する SCC のセットはユーザーアイデンティティーおよびユーザーが属するグループによって決定されます。さらに、Pod がサービスアカウントを指定する場合は、許可される SCC のセットに、サービスアカウントでアクセスできる制約が含まれます。
デプロイメントなどのワークロードリソースを作成する場合、SCC の検索と、作成された Pod の許可には、サービスアカウントのみが使用されます。
アドミッションは以下の方法を使用して、Pod の最終的なセキュリティーコンテキストを作成します。
- 使用できるすべての SCC を取得します。
- 要求に指定されていないセキュリティーコンテキストに、設定のフィールド値を生成します。
- 利用可能な制約に対する最終的な設定を検証します。
制約の一致するセットが検出される場合は、Pod が受け入れられます。要求が SCC に一致しない場合は、Pod が拒否されます。
Pod はすべてのフィールドを SCC に対して検証する必要があります。以下は、検証する必要がある 2 つのフィールドの例です。
これらの例は、事前に割り当てられた値を使用するストラテジーに関連します。
MustRunAs
の FSGroup SCC ストラテジー
Pod が fsGroup
ID を定義する場合、その ID はデフォルトの fsGroup
ID と同一にする必要があります。そうでない場合は、Pod が SCC で検証されず、次の SCC が評価されます。
SecurityContextConstraints.fsGroup
フィールドに値 RunAsAny
があり、Pod 仕様で Pod.spec.securityContext.fsGroup
が省略されると、このフィールドは有効とみなされます。検証時に、他の SCC 設定が他の Pod フィールドを拒否し、そのため Pod を失敗させる可能性があることに注意してください。
MustRunAs
の SupplementalGroups
SCC ストラテジー
Pod 仕様が 1 つ以上の supplementalGroups
ID を定義する場合、Pod の ID は namespace の openshift.io/sa.scc.supplemental-groups
アノテーションの ID のいずれかと同一にする必要があります。そうでない場合は、Pod が SCC で検証されず、次の SCC が評価されます。
SecurityContextConstraints.supplementalGroups
フィールドに値 RunAsAny
があり、Pod 仕様が Pod.spec.securityContext.supplementalGroups
を省略する場合、このフィールドは有効とみなされます。検証時に、他の SCC 設定が他の Pod フィールドを拒否し、そのため Pod を失敗させる可能性があることに注意してください。
15.1.6. Security Context Constraints の優先度設定
SCC (Security Context Constraints) には優先度フィールドがあり、アドミッションコントローラーの要求検証を試行する順序に影響を与えます。
優先順位値 0
は可能な限り低い優先順位です。nil 優先順位は 0
または最低の優先順位とみなされます。優先順位の高い SCC は、並べ替え時にセットの先頭に移動します。
使用可能な SCC の完全なセットが決定すると、SCC は次の方法で順序付けられます。
- 最も優先度の高い SCC が最初に並べられます。
- 優先度が等しいと、SCC は最も制限の多いものから少ないものの順に並べ替えられます。
- 優先度と制限の両方が等しいと、SCC は名前でソートされます。
デフォルトで、クラスター管理者に付与される anyuid
SCC には SCC セットの優先度が指定されます。これにより、クラスター管理者は Pod の SecurityContext
で RunAsUser
を指定することにより、任意のユーザーとして Pod を実行できます。