25.2. OpenShift SDN ネットワークプラグインへの移行


クラスター管理者は、OVN-Kubernetes ネットワークプラグインから OpenShift SDN ネットワークプラグインに移行できます。

OpenShift SDN の詳細は、OpenShift SDN ネットワークプラグインについて を参照してください。

25.2.1. 移行プロセスの仕組み

以下の表は、プロセスのユーザーが開始する手順と、移行が応答として実行するアクション間を区分して移行プロセスを要約しています。

表25.2 OVN-Kubernetes から OpenShift SDN への移行
ユーザーが開始する手順移行アクティビティー

cluster という名前の Network.operator.openshift.io カスタムリソース (CR) の migration フィールドを OpenShiftSDN に設定します。migration フィールドを値に設定する前に null であることを確認します。

Cluster Network Operator (CNO)
cluster という名前の Network.config.openshift.io CR のステータスを更新します。
Machine Config Operator (MCO)
OpenShift SDN に必要な systemd 設定の更新をロールアウトします。デフォルトでは、MCO はプールごとに一度に 1 台のマシンを更新するため、クラスターのサイズに応じて移行にかかる合計時間が長くなります。

Network.config.openshift.io CR の networkType フィールドを更新します。

CNO

以下のアクションを実行します。

  • OVN-Kubernetes コントロールプレーン Pod を破棄します。
  • OpenShift SDN コントロールプレーン Pod をデプロイします。
  • Multus オブジェクトを更新して、新しいネットワークプラグインを反映します。

クラスターの各ノードを再起動します。

クラスター
ノードが再起動すると、クラスターは IP アドレスを OpenShift SDN クラスターネットワーク上の Pod に割り当てます。

25.2.2. OpenShift SDN ネットワークプラグインへの移行

クラスター管理者は、オフライン移行方法を使用して、OpenShift SDN Container Network Interface (CNI) ネットワークプラグインにロールバックできます。移行中は、クラスター内のすべてのノードを手動で再起動する必要があります。オフライン移行方法では、ダウンタイムが発生し、その間はクラスターにアクセスできなくなります。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • インフラストラクチャーにインストールされたクラスターが OVN-Kubernetes ネットワークプラグインで設定されている。
  • etcd データベースの最新のバックアップが利用可能である。
  • 再起動は、ノードごとに手動でトリガーできます。
  • クラスターは既知の正常な状態にあり、エラーがない。

手順

  1. Machine Config Operator (MCO) によって管理されるすべてのマシン設定プールを停止します。

    • CLI で次のコマンドを入力して、master 設定プールを停止します。

      $ oc patch MachineConfigPool master --type='merge' --patch \
        '{ "spec": { "paused": true } }'
    • CLI で次のコマンドを入力して、worker マシン設定プールを停止します。

      $ oc patch MachineConfigPool worker --type='merge' --patch \
        '{ "spec":{ "paused": true } }'
  2. 移行の準備をするには、CLI で次のコマンドを入力して、移行フィールドを null に設定します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{ "spec": { "migration": null } }'
  3. CLI で次のコマンドを入力して、Network.config.openshift.io オブジェクトの移行ステータスが空であることを確認します。空のコマンド出力は、オブジェクトが移行操作中ではないことを示しています。

    $ oc get Network.config cluster -o jsonpath='{.status.migration}'
  4. CLI で次のコマンドを入力して、Network.operator.openshift.io オブジェクトにパッチを適用し、ネットワークプラグインを OpenShift SDN に戻します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{ "spec": { "migration": { "networkType": "OpenShiftSDN" } } }'
    重要

    Network.operator.openshift.io オブジェクトでパッチ操作が終了する前に Network.config.openshift.io オブジェクトにパッチを適用した場合、Cluster Network Operator (CNO) は degradation 状態になり、CNO が degradation 状態から回復するまでわずかな遅延が発生します。

  5. CLI で次のコマンドを入力して、Network.config.openshift.io cluster オブジェクトのネットワークプラグインの移行ステータスが OpenShiftSDN であることを確認します。

    $ oc get Network.config cluster -o jsonpath='{.status.migration.networkType}'
  6. CLI で次のコマンドを入力して、Network.config.openshift.io オブジェクトにパッチを適用し、ネットワークプラグインを OpenShift SDN に戻します。

    $ oc patch Network.config.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{ "spec": { "networkType": "OpenShiftSDN" } }'
  7. オプション: いくつかの OVN-Kubernetes 機能の OpenShift SDN 同等機能への自動移行を無効化します。

    • Egress IP
    • Egress ファイアウォール
    • マルチキャスト

    前述の OpenShift SDN 機能の設定の自動移行を無効にするには、次のキーを指定します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{
        "spec": {
          "migration": {
            "networkType": "OpenShiftSDN",
            "features": {
              "egressIP": <bool>,
              "egressFirewall": <bool>,
              "multicast": <bool>
            }
          }
        }
      }'

    ここでは、以下のようになります。

    bool: 機能の移行を有効にするかどうかを指定します。デフォルトは true です。

  8. オプション: ネットワークインフラストラクチャーの要件を満たすように OpenShift SDN の以下の設定をカスタマイズできます。

    • 最大伝送単位 (MTU)
    • VXLAN ポート

    前述の設定のいずれかまたは両方をカスタマイズするには、CLI で次のコマンドをカスタマイズして入力します。デフォルト値を変更する必要がない場合は、パッチのキーを省略します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "openshiftSDNConfig":{
              "mtu":<mtu>,
              "vxlanPort":<port>
        }}}}'
    mtu
    VXLAN オーバーレイネットワークの MTU。この値は通常は自動的に設定されますが、クラスターにあるノードすべてが同じ MTU を使用しない場合、これを最小のノード MTU 値よりも 50 小さく設定する必要があります。
    port
    VXLAN オーバーレイネットワークの UDP ポート。値が指定されない場合は、デフォルトは 4789 になります。ポートは OVN-Kubernetes で使用される Geneve ポートと同じにすることはできません。Geneve ポートのデフォルト値は 6081 です。

    patch コマンドの例

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "openshiftSDNConfig":{
              "mtu":1200
        }}}}'

  9. クラスター内の各ノードを再起動します。次のいずれかの方法で、クラスター内のノードを再起動できます。

    • oc rsh コマンドでは、次のような bash スクリプトを使用できます。

      #!/bin/bash
      readarray -t POD_NODES <<< "$(oc get pod -n openshift-machine-config-operator -o wide| grep daemon|awk '{print $1" "$7}')"
      
      for i in "${POD_NODES[@]}"
      do
        read -r POD NODE <<< "$i"
        until oc rsh -n openshift-machine-config-operator "$POD" chroot /rootfs shutdown -r +1
          do
            echo "cannot reboot node $NODE, retry" && sleep 3
          done
      done
    • ssh コマンドでは、次のような bash スクリプトを使用できます。このスクリプトは、パスワードの入力を求めないように sudo が設定されていることを前提としています。

      #!/bin/bash
      
      for ip in $(oc get nodes  -o jsonpath='{.items[*].status.addresses[?(@.type=="InternalIP")].address}')
      do
         echo "reboot node $ip"
         ssh -o StrictHostKeyChecking=no core@$ip sudo shutdown -r -t 3
      done
  10. Multus デーモンセットのロールアウトが完了するまで待機します。次のコマンドを実行して、ロールアウトのステータスを確認します。

    $ oc -n openshift-multus rollout status daemonset/multus

    Multus Pod の名前の形式は multus-<xxxxx> です。ここで、<xxxxx> は文字のランダムなシーケンスになります。Pod が再起動するまでにしばらく時間がかかる可能性があります。

    出力例

    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 1 out of 6 new pods have been updated...
    ...
    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 5 of 6 updated pods are available...
    daemon set "multus" successfully rolled out

  11. クラスター内のノードが再起動し、multus Pod がロールアウトされたら、次のコマンドを実行してすべてのマシン設定プールを起動します。

    • マスター設定プールを開始します。

      $ oc patch MachineConfigPool master --type='merge' --patch \
        '{ "spec": { "paused": false } }'
    • ワーカー設定プールを開始します。

      $ oc patch MachineConfigPool worker --type='merge' --patch \
        '{ "spec": { "paused": false } }'

    MCO が各設定プールのマシンを更新すると、各ノードを再起動します。

    デフォルトで、MCO は一度にプールごとに単一のマシンを更新するため、移行が完了するまでに必要な時間がクラスターのサイズと共に増加します。

  12. ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。

    1. マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前をリスト表示するには、CLI で以下のコマンドを入力します。

      $ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"

      出力例

      kubernetes.io/hostname=master-0
      machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/reason:
      machineconfiguration.openshift.io/state: Done

      以下のステートメントが true であることを確認します。

      • machineconfiguration.openshift.io/state フィールドの値は Done です。
      • machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig フィールドの値と等しくなります。
    2. マシン設定が正しいことを確認するには、CLI で以下のコマンドを入力します。

      $ oc get machineconfig <config_name> -o yaml

      ここで、<config_name>machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドのマシン設定の名前になります。

  13. 移行が正常に完了したことを確認します。

    1. ネットワークプラグインが OpenShift SDN であることを確認するには、CLI で次のコマンドを入力します。status.networkType の値は OpenShiftSDN である必要があります。

      $ oc get Network.config/cluster -o jsonpath='{.status.networkType}{"\n"}'
    2. クラスターノードが Ready 状態にあることを確認するには、CLI で以下のコマンドを入力します。

      $ oc get nodes
    3. ノードが NotReady 状態のままになっている場合、マシン設定デーモン Pod のログを調べ、エラーを解決します。

      1. Pod をリスト表示するには、CLI で次のコマンドを入力します。

        $ oc get pod -n openshift-machine-config-operator

        出力例

        NAME                                         READY   STATUS    RESTARTS   AGE
        machine-config-controller-75f756f89d-sjp8b   1/1     Running   0          37m
        machine-config-daemon-5cf4b                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-7wzcd                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-fc946                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-g2v28                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-gcl4f                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-l5tnv                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-operator-79d9c55d5-hth92      1/1     Running   0          37m
        machine-config-server-bsc8h                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-hklrm                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-k9rtx                  1/1     Running   0          43h

        設定デーモン Pod の名前は以下の形式になります。machine-config-daemon-<seq><seq> 値は、ランダムな 5 文字の英数字シーケンスになります。

      2. 前の出力に示されている各マシン設定デーモン Pod の Pod ログを表示するには、CLI で次のコマンドを入力します。

        $ oc logs <pod> -n openshift-machine-config-operator

        ここで、pod はマシン設定デーモン Pod の名前になります。

      3. 直前のコマンドの出力で示されるログ内のエラーを解決します。
    4. Pod がエラー状態ではないことを確認するには、CLI で次のコマンドを入力します。

      $ oc get pods --all-namespaces -o wide --sort-by='{.spec.nodeName}'

      ノードの Pod がエラー状態にある場合は、そのノードを再起動します。

  14. 以下の手順は、移行に成功し、クラスターの状態が正常である場合にのみ実行します。

    1. Cluster Network Operator 設定オブジェクトから移行設定を削除するには、CLI で次のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "migration": null } }'
    2. OVN-Kubernetes 設定を削除するには、CLI で次のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "defaultNetwork": { "ovnKubernetesConfig":null } } }'
    3. OVN-Kubernetes ネットワークプロバイダー namespace を削除するには、CLI で次のコマンドを入力します。

      $ oc delete namespace openshift-ovn-kubernetes

25.2.3. 関連情報

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