12.3. 仮想リソースの Prometheus クエリー


OpenShift Virtualization は、vCPU、ネットワーク、ストレージ、ゲストメモリースワッピングなどのクラスターインフラストラクチャーリソースの消費を監視するために使用できるメトリックを提供します。メトリクスを使用して、ライブマイグレーションのステータスを照会することもできます。

12.3.1. 前提条件

  • vCPU メトリックを使用するには、schedstats=enable カーネル引数を MachineConfig オブジェクトに適用する必要があります。このカーネル引数を使用すると、デバッグとパフォーマンスチューニングに使用されるスケジューラーの統計が有効になり、スケジューラーに小規模な負荷を追加できます。詳細は、ノードへのカーネル引数の追加 を参照してください。
  • ゲストメモリースワップクエリーがデータを返すには、仮想ゲストでメモリースワップを有効にする必要があります。

12.3.2. メトリクスのクエリー

OpenShift Container Platform モニタリングダッシュボードでは、Prometheus のクエリー言語 (PromQL) クエリーを実行し、プロットに可視化されるメトリクスを検査できます。この機能により、クラスターの状態と、モニターしているユーザー定義のワークロードに関する情報が提供されます。

クラスター管理者は、すべての OpenShift Container Platform のコアプロジェクトおよびユーザー定義プロジェクトのメトリクスをクエリーできます。

開発者として、メトリクスのクエリー時にプロジェクト名を指定する必要があります。選択したプロジェクトのメトリクスを表示するには、必要な権限が必要です。

12.3.2.1. クラスター管理者としてのすべてのプロジェクトのメトリクスのクエリー

クラスター管理者またはすべてのプロジェクトの表示権限を持つユーザーとして、メトリクス UI ですべてのデフォルト OpenShift Container Platform およびユーザー定義プロジェクトのメトリクスにアクセスできます。

前提条件

  • cluster-admin クラスターロールまたはすべてのプロジェクトの表示権限を持つユーザーとしてクラスターにアクセスできる。
  • OpenShift CLI (oc) がインストールされている。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールの Administrator パースペクティブから、Observe Metrics を選択します。
  2. 1 つ以上のクエリーを追加するには、次のいずれかを実行します。

    オプション説明

    カスタムクエリーを作成します。

    Prometheus Query Language (PromQL) クエリーを Expression フィールドに追加します。

    PromQL 式を入力すると、オートコンプリートの提案がドロップダウンリストに表示されます。これらの提案には、関数、メトリクス、ラベル、および時間トークンが含まれます。キーボードの矢印を使用して提案された項目のいずれかを選択し、Enter を押して項目を式に追加できます。また、マウスポインターを推奨項目の上に移動して、その項目の簡単な説明を表示することもできます。

    複数のクエリーを追加します。

    クエリーの追加 を選択します。

    既存のクエリーを複製します。

    オプションメニューを選択します kebab クエリーの横にある Duplicate query を選択します。

    クエリーの実行を無効にします。

    オプションメニューを選択します kebab クエリーの横にある Disable query を選択します。

  3. 作成したクエリーを実行するには、Run queries を選択します。クエリーからのメトリクスはプロットで可視化されます。クエリーが無効な場合は、UI にエラーメッセージが表示されます。

    注記

    大量のデータで動作するクエリーは、時系列グラフの描画時にタイムアウトするか、ブラウザーをオーバーロードする可能性があります。これを回避するには、Hide graph を選択し、メトリクステーブルのみを使用してクエリーを調整します。次に、使用できるクエリーを確認した後に、グラフを描画できるようにプロットを有効にします。

    注記

    デフォルトでは、クエリーテーブルに、すべてのメトリクスとその現在の値をリスト表示する拡張ビューが表示されます。˅ を選択すると、クエリーの拡張ビューを最小にすることができます。

  4. オプション: ページ URL には、実行したクエリーが含まれます。このクエリーのセットを再度使用できるようにするには、この URL を保存します。
  5. 視覚化されたメトリクスを調べます。最初に、有効な全クエリーの全メトリクスがプロットに表示されます。次のいずれかを実行して、表示するメトリクスを選択できます。

    オプション説明

    クエリーからすべてのメトリクスを非表示にします。

    オプションメニューをクリックします kebab クエリーを選択し、Hide all series をクリックします。

    特定のメトリクスを非表示にします。

    クエリーテーブルに移動し、メトリクス名の近くにある色付きの四角形をクリックします。

    プロットを拡大し、時間範囲を変更します。

    次のいずれかになります。

    • プロットを水平にクリックし、ドラッグして、時間範囲を視覚的に選択します。
    • 左上隅のメニューを使用して、時間範囲を選択します。

    時間範囲をリセットします。

    Reset zoom を選択します。

    特定の時点でのすべてのクエリーの出力を表示します。

    その時点でプロット上にマウスカーソルを置きます。クエリーの出力はポップアップに表示されます。

    プロットを非表示にします。

    Hide graph を選択します。

12.3.2.2. 開発者が行うユーザー定義プロジェクトのメトリクスのクエリー

ユーザー定義のプロジェクトのメトリクスには、開発者またはプロジェクトの表示権限を持つユーザーとしてアクセスできます。

Developer パースペクティブには、選択したプロジェクトの事前に定義された CPU、メモリー、帯域幅、およびネットワークパケットのクエリーが含まれます。また、プロジェクトの CPU、メモリー、帯域幅、ネットワークパケット、およびアプリケーションメトリクスについてカスタム Prometheus Query Language (PromQL) クエリーを実行することもできます。

注記

開発者は Developer パースペクティブのみを使用でき、Administrator パースペクティブは使用できません。開発者は、1 度に 1 つのプロジェクトのメトリクスのみをクエリーできます。

前提条件

  • 開発者として、またはメトリクスで表示しているプロジェクトの表示権限を持つユーザーとしてクラスターへのアクセスがある。
  • ユーザー定義プロジェクトのモニタリングが有効化されている。
  • ユーザー定義プロジェクトにサービスをデプロイしている。
  • サービスのモニター方法を定義するために、サービスの ServiceMonitor カスタムリソース定義 (CRD) を作成している。

手順

  1. OpenShift Container Platform Web コンソールの Developer パースペクティブから、Observe Metrics を選択します。
  2. Project: 一覧でメトリクスで表示するプロジェクトを選択します。
  3. Select query 一覧からクエリーを選択するか、Show PromQL を選択して、選択したクエリーに基づいてカスタム PromQL クエリーを作成します。クエリーからのメトリクスはプロットで可視化されます。

    注記

    Developer パースペクティブでは、1 度に 1 つのクエリーのみを実行できます。

  4. 次のいずれかを実行して、視覚化されたメトリクスを調べます。

    オプション説明

    プロットを拡大し、時間範囲を変更します。

    次のいずれかになります。

    • プロットを水平にクリックし、ドラッグして、時間範囲を視覚的に選択します。
    • 左上隅のメニューを使用して、時間範囲を選択します。

    時間範囲をリセットします。

    Reset zoom を選択します。

    特定の時点でのすべてのクエリーの出力を表示します。

    その時点でプロット上にマウスカーソルを置きます。クエリーの出力はポップアップに表示されます。

12.3.3. 仮想化メトリクス

以下のメトリクスの記述には、Prometheus Query Language (PromQL) クエリーのサンプルが含まれます。これらのメトリクスは API ではなく、バージョン間で変更される可能性があります。仮想化メトリクスの完全なリストは、KubeVirt components metrics を参照してください。

注記

以下の例では、期間を指定する topk クエリーを使用します。その期間中に仮想マシンが削除された場合でも、クエリーの出力に依然として表示されます。

12.3.3.1. vCPU メトリック

以下のクエリーは、入出力 I/O) を待機している仮想マシンを特定します。

kubevirt_vmi_vcpu_wait_seconds
仮想マシンの vCPU の待機時間 (秒単位) を返します。タイプ: カウンター。

'0' より大きい値は、仮想 CPU は実行する用意ができているが、ホストスケジューラーがこれをまだ実行できないことを意味します。実行できない場合には I/O に問題があることを示しています。

注記

vCPU メトリックをクエリーするには、最初に schedstats=enable カーネル引数を MachineConfig オブジェクトに適用する必要があります。このカーネル引数を使用すると、デバッグとパフォーマンスチューニングに使用されるスケジューラーの統計が有効になり、スケジューラーに小規模な負荷を追加できます。

vCPU 待機時間クエリーの例

topk(3, sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_vcpu_wait_seconds[6m]))) > 0 1

1
このクエリーは、6 分間の任意の全タイミングで I/O を待機する上位 3 の仮想マシンを返します。

12.3.3.2. ネットワークメトリック

以下のクエリーは、ネットワークを飽和状態にしている仮想マシンを特定できます。

kubevirt_vmi_network_receive_bytes_total
仮想マシンのネットワークで受信したトラフィックの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: カウンター。
kubevirt_vmi_network_transmit_bytes_total
仮想マシンのネットワーク上で送信されるトラフィックの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: カウンター。

ネットワークトラフィッククエリーの例

topk(3, sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_network_receive_bytes_total[6m])) + sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_network_transmit_bytes_total[6m]))) > 0 1

1
このクエリーは、6 分間の任意のタイミングで最大のネットワークトラフィックを送信する上位 3 の仮想マシンを返します。

12.3.3.3. ストレージメトリクス

12.3.3.3.1. ストレージ関連のトラフィック

以下のクエリーは、大量のデータを書き込んでいる仮想マシンを特定できます。

kubevirt_vmi_storage_read_traffic_bytes_total
仮想マシンのストレージ関連トラフィックの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: カウンター。
kubevirt_vmi_storage_write_traffic_bytes_total
仮想マシンのストレージ関連トラフィックのストレージ書き込みの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: カウンター。

ストレージ関連のトラフィッククエリーの例

topk(3, sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_storage_read_traffic_bytes_total[6m])) + sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_storage_write_traffic_bytes_total[6m]))) > 0 1

1
上記のクエリーは、6 分間の任意のタイミングで最も大きなストレージトラフィックを送信する上位 3 の仮想マシンを返します。
12.3.3.3.2. ストレージスナップショットデータ
kubevirt_vmsnapshot_disks_restored_from_source_total
ソース仮想マシンから復元された仮想マシンディスクの総数を返します。タイプ: ゲージ。
kubevirt_vmsnapshot_disks_restored_from_source_bytes
ソース仮想マシンから復元された容量をバイト単位で返します。タイプ: ゲージ。

ストレージスナップショットデータクエリーの例

kubevirt_vmsnapshot_disks_restored_from_source_total{vm_name="simple-vm", vm_namespace="default"} 1

1
このクエリーは、ソース仮想マシンから復元された仮想マシンディスクの総数を返します。
kubevirt_vmsnapshot_disks_restored_from_source_bytes{vm_name="simple-vm", vm_namespace="default"} 1
1
このクエリーは、ソース仮想マシンから復元された容量をバイト単位で返します。
12.3.3.3.3. I/O パフォーマンス

以下のクエリーで、ストレージデバイスの I/O パフォーマンスを判別できます。

kubevirt_vmi_storage_iops_read_total
仮想マシンが実行している 1 秒あたりの書き込み I/O 操作の量を返します。タイプ: カウンター。
kubevirt_vmi_storage_iops_write_total
仮想マシンが実行している 1 秒あたりの読み取り I/O 操作の量を返します。タイプ: カウンター。

I/O パフォーマンスクエリーの例

topk(3, sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_storage_iops_read_total[6m])) + sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_storage_iops_write_total[6m]))) > 0 1

1
上記のクエリーは、6 分間の任意のタイミングで最も大きな I/O 操作を実行している上位 3 の仮想マシンを返します。

12.3.3.4. ゲストメモリーのスワップメトリクス

以下のクエリーにより、メモリースワップを最も多く実行しているスワップ対応ゲストを特定できます。

kubevirt_vmi_memory_swap_in_traffic_bytes_total
仮想ゲストがスワップされているメモリーの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: ゲージ。
kubevirt_vmi_memory_swap_out_traffic_bytes_total
仮想ゲストがスワップアウトされているメモリーの合計量 (バイト単位) を返します。タイプ: ゲージ。

メモリースワップクエリーの例

topk(3, sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_memory_swap_in_traffic_bytes_total[6m])) + sum by (name, namespace) (rate(kubevirt_vmi_memory_swap_out_traffic_bytes_total[6m]))) > 0 1

1
上記のクエリーは、6 分間の任意のタイミングでゲストが最も大きなメモリースワップを実行している上位 3 の仮想マシンを返します。
注記

メモリースワップは、仮想マシンがメモリー不足の状態にあることを示します。仮想マシンのメモリー割り当てを増やすと、この問題を軽減できます。

12.3.3.5. ライブマイグレーションのメトリクス

次のメトリックをクエリーして、ライブマイグレーションのステータスを表示できます。

kubevirt_migrate_vmi_data_processed_bytes
新しい仮想マシン (VM) に移行されたゲストオペレーティングシステムデータの量。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_data_remaining_bytes
移行されていないゲストオペレーティングシステムデータの量。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_dirty_memory_rate_bytes
ゲスト OS でメモリーがダーティーになる速度。ダーティメモリーとは、変更されたがまだディスクに書き込まれていないデータです。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_pending_count
保留中の移行の数。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_scheduling_count
スケジュール移行の数。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_running_count
実行中の移行の数。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_succeeded
正常に完了した移行の数。タイプ: ゲージ。
kubevirt_migrate_vmi_failed
失敗した移行の数。タイプ: ゲージ。

12.3.4. 関連情報

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